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約束

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「ふーっ…」

あたしはお風呂から出ると部屋に戻る。
お風呂は共用だけど、部屋は各自1人部屋だ。
だから気兼ね無く使える。
あたしはドライヤーで髪を乾かしながら、携帯をチェックする。

あ…
メール1件。
相手は緑川 貴みどりかわ たかし
昼間、柚季ゆずきに教えてもらった、その人だった。
あたしはドライヤーを放置して、生乾きの髪のまま、携帯にかじりつく。
やばい…こんな早くに連絡が来るなんて…!

『はじめまして、緑川 貴です。琴美ことみちゃんだよね? 柚季から聞いてるかな?』
えぇもー聞いてますともっ!
あたしは自然と笑顔になる。
そしてメールを返す。
『こちらこそはじめまして! 篠原しのはら琴美です。聞いてますよー? 』
とりあえず返して携帯を置こうとした瞬間、また携帯が鳴る。
返信早っ!なんて思いながらも、心はウキウキだった。
『実は琴美ちゃんの写真見せてもらったんだよ。可愛いよねー。本当に彼氏居ないの?』
あたしも速攻返す。
『居ませんよー? 同年代とかガキっぽ過ぎて… なんかムリなんですよねw』
『あはは、そうなんだ? オレは琴美ちゃんより4つ上の21だけど、大丈夫?』
『全っ然大丈夫ですっ! むしろ理想ですっ!』
4つ上の21とか…
大人感満載!
あたしは携帯から手が離せない。

『今度の日曜、空いてる? 遊びに行こうよ。オレもちょうど休みだし』
あ、社会人なんだ…
やばい、ますますいーじゃん!
『空いてますよ? てか社会人なんですね』
『シフト制の仕事だから不定期なんだけど、今度の日曜ならたまたま休みだったからさ? どうかな?』
もー是非っっ!
なんて高鳴る気持ちを抑えて、あたしはメールを返す。
『大丈夫ですよ? どこで待ち合わせにします?』
『○○駅の壁画のとことかどうかな? 日曜だから、人多いかもしれないけどw』
あそこなら、あたしも分かる!
きっと大丈夫だと思うっ!
『平気ですよ! 何時にします?』
『15時とかどうかな?』
『はーいっ、了解ですっ!』

やばい…早速デートのお誘いだよ…
どーしよ…?
やっぱり大人だから、大人の展開とかになっちゃうのかしらっ?
きゃーーーっ!
あたしはベッドに横になれば、1人で恥ずかしくなって足をバタバタさせる。

『じゃー日曜に○○駅の壁画のとこに15時で。それで大丈夫?』
『大丈夫ですっ!』
『あはは、元気だね、琴美ちゃんw 日曜楽しみにしてるね?』
やべ…
子どもっぽ過ぎたかな?
『あたしこそ楽しみにしてますね?』
なんて大人しくメールを返してみる。
でもその後、携帯は鳴らなかった。

シフト制の仕事って言ってた…
仕事してるんだ。
やっぱり大人っ!
なんかすごいっ!
あたしの中の妄想は膨らむばかり。
ドキドキ…する…
何着て行こー?
ちょっと大人っぽいカッコ?
でも、そんなの分かんないし…

4つも上の社会人とか、高校生のあたしからしたらすごく新鮮だし、何より年上彼氏を求めてたから、超絶嬉しいっ!
あーもー柚季にまじ感謝っ!

あたしはその夜、携帯を抱き締めて眠った。
早く日曜にならないかな…
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