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学園編
33週末のお出かけ ぱーと1
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週末。エテルネルの目の前で気分良さ気に鼻歌を歌っている少年が、手を降ってきた。
「では、また来週」
そう別れを告げたのは待ちきれないという態度を全面に出したフォスターである。
エテルネルは敗北を悟りつつ、苦笑と別れを返した。
彼の姿が見えなくなってから、エテルネルとフィリアは動き出すことにした。
「あとで殿下と落ち合うの?」
「警護関係でそんなの出来るわけがないにょ。きっと、おねだりした時にもっと良い条件でも出されたんじゃないかにょ」
少し遠い目になりながら、何も知らないクラスメイトの質問に答える。
週末に来るまで毎日のようにエテルネルへフォスターが『おねだり』をしていたのは周知の事実だ。昨日、陛下の許可が出るなら良いと条件を出してしまったのが敗北の原因か。あの笑顔を見ていれば言わずとも結果はわかった。それをクラスメイトに話す必要はないだろう。
ともあれ、エテルネルもあまり探索をしていない王都である。何度も王都の城下を歩いているフィリアに頼ってここは楽しませてもらうことにしよう。
「待ってたぞ」
準備が終わった後、主に生徒が外出の時に使う門のところで待っていたのは、髪色をよくある茶髪に染めたフォスターであった。瞳の色も地味な色合いに変えており、【忍術技能《シノビスキル》】か【幻術技能《イリュージョンスキル》】の効果だと思われる。首から下げているペンダントが技能の発現場所であるようだ。
服装もいつもより生地のランクを低くし、見た目からして殿下であることが分からないように工夫していることは【鑑定】からわかった。
その隣で静かに立つ女性がぺこりとエテルネル達に頭を下げた。
「ご学友とお出かけと伺っております。護衛のウルドと申します。大人が介入しては不服かと存じますが、何卒ご容赦を」
頭を下げた時にさらりと銀色の髪が揺れ、どこまでも澄んだ美しい水色の瞳が、フィリアの心臓を掴んだのは見ていればわかった。女性同士であるから色恋沙汰には発展しないだろうが、エテルネルの弟が渾身の力を込めて作り上げただけはある容姿である。それに加えて精錬された仕草が、まだ幼い少女にとっては憧れの対象となる。
肩を竦めたエテルネルは、フィリアが不快そうではないと判断し、王都初日に行動を共にしたウルドに頷いた。
「久しぶり。この前はお世話になったにょ」
「あれ、ウルド殿とエテは知り合いだったのか」
驚くフィリアとフォスター。ウルドはいいのか、という視線を投げてきたので曖昧な笑みを返した。
「王都に行く途中の馬車で一緒になってにょ。ついでに安全な宿を教えてもらったにょ」
「そう、いえば、お父さん、お母さん、いない」
「まあ妊婦さんの傍に出来るだけいてほしいって頼んだのは私だからにぇ。王都に着けばなんとでもなると思ってたけど、ウルドがいて助かったにょ」
「なるほど、そういう経緯が」
全て本当の話だ。ただ、それ以前の話を抜いているだけで。
エテルネルの説明でフィリアとフォスターは納得したようだから、余計な話も必要はない。何故警護ではなく、そして呼び捨てなのかは道中とても気の置けない中になったとでもごまかしておけばいい。
「んじゃあ、そろそろ行こうにょ。今日はいっぱい楽しむんだからにぇ!」
「あぁ、そうだな!」
「うん。雑貨屋さん、近い、から。そこから、いこ」
自己紹介もそこそこに動き出したエテルネル達は、フィリアの言うとおり、まずは雑貨屋から行くことにした。
「では、また来週」
そう別れを告げたのは待ちきれないという態度を全面に出したフォスターである。
エテルネルは敗北を悟りつつ、苦笑と別れを返した。
彼の姿が見えなくなってから、エテルネルとフィリアは動き出すことにした。
「あとで殿下と落ち合うの?」
「警護関係でそんなの出来るわけがないにょ。きっと、おねだりした時にもっと良い条件でも出されたんじゃないかにょ」
少し遠い目になりながら、何も知らないクラスメイトの質問に答える。
週末に来るまで毎日のようにエテルネルへフォスターが『おねだり』をしていたのは周知の事実だ。昨日、陛下の許可が出るなら良いと条件を出してしまったのが敗北の原因か。あの笑顔を見ていれば言わずとも結果はわかった。それをクラスメイトに話す必要はないだろう。
ともあれ、エテルネルもあまり探索をしていない王都である。何度も王都の城下を歩いているフィリアに頼ってここは楽しませてもらうことにしよう。
「待ってたぞ」
準備が終わった後、主に生徒が外出の時に使う門のところで待っていたのは、髪色をよくある茶髪に染めたフォスターであった。瞳の色も地味な色合いに変えており、【忍術技能《シノビスキル》】か【幻術技能《イリュージョンスキル》】の効果だと思われる。首から下げているペンダントが技能の発現場所であるようだ。
服装もいつもより生地のランクを低くし、見た目からして殿下であることが分からないように工夫していることは【鑑定】からわかった。
その隣で静かに立つ女性がぺこりとエテルネル達に頭を下げた。
「ご学友とお出かけと伺っております。護衛のウルドと申します。大人が介入しては不服かと存じますが、何卒ご容赦を」
頭を下げた時にさらりと銀色の髪が揺れ、どこまでも澄んだ美しい水色の瞳が、フィリアの心臓を掴んだのは見ていればわかった。女性同士であるから色恋沙汰には発展しないだろうが、エテルネルの弟が渾身の力を込めて作り上げただけはある容姿である。それに加えて精錬された仕草が、まだ幼い少女にとっては憧れの対象となる。
肩を竦めたエテルネルは、フィリアが不快そうではないと判断し、王都初日に行動を共にしたウルドに頷いた。
「久しぶり。この前はお世話になったにょ」
「あれ、ウルド殿とエテは知り合いだったのか」
驚くフィリアとフォスター。ウルドはいいのか、という視線を投げてきたので曖昧な笑みを返した。
「王都に行く途中の馬車で一緒になってにょ。ついでに安全な宿を教えてもらったにょ」
「そう、いえば、お父さん、お母さん、いない」
「まあ妊婦さんの傍に出来るだけいてほしいって頼んだのは私だからにぇ。王都に着けばなんとでもなると思ってたけど、ウルドがいて助かったにょ」
「なるほど、そういう経緯が」
全て本当の話だ。ただ、それ以前の話を抜いているだけで。
エテルネルの説明でフィリアとフォスターは納得したようだから、余計な話も必要はない。何故警護ではなく、そして呼び捨てなのかは道中とても気の置けない中になったとでもごまかしておけばいい。
「んじゃあ、そろそろ行こうにょ。今日はいっぱい楽しむんだからにぇ!」
「あぁ、そうだな!」
「うん。雑貨屋さん、近い、から。そこから、いこ」
自己紹介もそこそこに動き出したエテルネル達は、フィリアの言うとおり、まずは雑貨屋から行くことにした。
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