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44:誘拐という名の
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こんにちは、少年とお話中のコーラルです。
「あんあ……」
私が声を震わせてアンナを呼びます。
しかし、アンナが来るはずもありません。
生まれてすぐからずっと一緒に居たアンナ。
屋敷にいた皆は無事でしょうか。
「あんあ……? ああ、アンナとかいうあの子か。傷一つすらないぜ。俺の一族のスキルはこと暗殺や諜報活動には優秀だからな」
少年が自慢気に言います。
一族のスキル。彼はそう言いました。
スキルというのは基本的に人それぞれです。
お兄様や私のように。
ということは一族で受け継がれるようなスキルも存在するということでしょうか。
「今日の夜になったらここを移動する。前金貰っちまってるから誘拐はしたが、殺せっていう依頼主の命令に背いたからな」
ここにいる人全員で移動すると少年は言います。
「なじぇ……」
私を殺さなかったのか。
実際そうなってしまっては私が困るのですが、誘拐より暗殺の方が手間もかかりません。
誘拐は連れ去ったその後も面倒を見なければなりませんし、暗殺よりも足がつきやすい。
しかも彼はピーネのような幼い子の面倒も見ているのです。
移動するとは言え危険性はとても高い。
「……子供が気にするようなことじゃねえよ」
立ち上がって近づいた少年は、くしゃりと私の頭を撫でようとして私が震えたのでその手を止めます。
ごめんなさい。そんなつもりはないんです。
少なくとも暗殺しろという命令に対して彼は背いたのですから危険はないのです。
けれどお兄様よりも大きい人に触れられるというのは意思に関係なく体が反応してしまうようで。
泣かないことが精一杯です。
「夜になったらまた見に来る。それまでピーネとかが邪魔しに来るかもしれないが、優しくしてやってくれ」
そう少年は苦笑して部屋を出て行きました。
部屋の外ではきゃらきゃらとした甲高い笑い声が響いています。子供が複数人いるのでしょうか。
暗殺や誘拐をするような人達に見えないほど、目を閉じて聞いているだけでは平和な声です。
窓はあります。
けれど私の身長では覗くことすら出来ません。
わかることと言えば背の高い建物が見えるのでまだ王都内であることと、精々今日は晴れであることくらいでしょうか。
「あかちゃーん」
扉を開けて入って来たのはピーネです。
やるべきことを終えて来たのでしょうか。
それとも少年が居なくなったから来たのでしょうか。
ちょっとやんちゃな雰囲気がしますね。
このくらいの歳の子からすると私は赤ちゃんと変わりないのでしょう。
言語を喋る赤ちゃん。怖くないですか。
「よしよし」
自身よりも幼い子に会うのが初めてなのでしょうか。
好奇心の塊みたいです。
目をキラキラとさせて私を覗き込みます。
「ここ、どこぉ?」
せめて正確な場所でも割り出せたらいい。
王都の地図すら知らない私ですが、そう聞いてみます。
「ここはピーネ達のおうちだよ!」
質問の仕方が悪かったようです。
元気に手をあげてそうお返事を頂きました。
「ナハトがね、みーんな助けてくれたの。ここは、ナハトとサシャが悪い人から皆を助けたの。お引越ししたら、次はそこがおうちね!」
にこにことそう説明していただきます。
ナハトとは先程の少年でしょうか。
他にサシャという方もいらっしゃるんですね。
要領を得ない説明でしたが、根からの悪人というわけではなさそうです。
引越しすら平然としているということは、こういうことは1度や2度じゃないということでしょう。
その後は大した情報が収穫できたはずもなく。
ピーネとお喋りやご飯を食べたりして過ごしました。
「あんあ……」
私が声を震わせてアンナを呼びます。
しかし、アンナが来るはずもありません。
生まれてすぐからずっと一緒に居たアンナ。
屋敷にいた皆は無事でしょうか。
「あんあ……? ああ、アンナとかいうあの子か。傷一つすらないぜ。俺の一族のスキルはこと暗殺や諜報活動には優秀だからな」
少年が自慢気に言います。
一族のスキル。彼はそう言いました。
スキルというのは基本的に人それぞれです。
お兄様や私のように。
ということは一族で受け継がれるようなスキルも存在するということでしょうか。
「今日の夜になったらここを移動する。前金貰っちまってるから誘拐はしたが、殺せっていう依頼主の命令に背いたからな」
ここにいる人全員で移動すると少年は言います。
「なじぇ……」
私を殺さなかったのか。
実際そうなってしまっては私が困るのですが、誘拐より暗殺の方が手間もかかりません。
誘拐は連れ去ったその後も面倒を見なければなりませんし、暗殺よりも足がつきやすい。
しかも彼はピーネのような幼い子の面倒も見ているのです。
移動するとは言え危険性はとても高い。
「……子供が気にするようなことじゃねえよ」
立ち上がって近づいた少年は、くしゃりと私の頭を撫でようとして私が震えたのでその手を止めます。
ごめんなさい。そんなつもりはないんです。
少なくとも暗殺しろという命令に対して彼は背いたのですから危険はないのです。
けれどお兄様よりも大きい人に触れられるというのは意思に関係なく体が反応してしまうようで。
泣かないことが精一杯です。
「夜になったらまた見に来る。それまでピーネとかが邪魔しに来るかもしれないが、優しくしてやってくれ」
そう少年は苦笑して部屋を出て行きました。
部屋の外ではきゃらきゃらとした甲高い笑い声が響いています。子供が複数人いるのでしょうか。
暗殺や誘拐をするような人達に見えないほど、目を閉じて聞いているだけでは平和な声です。
窓はあります。
けれど私の身長では覗くことすら出来ません。
わかることと言えば背の高い建物が見えるのでまだ王都内であることと、精々今日は晴れであることくらいでしょうか。
「あかちゃーん」
扉を開けて入って来たのはピーネです。
やるべきことを終えて来たのでしょうか。
それとも少年が居なくなったから来たのでしょうか。
ちょっとやんちゃな雰囲気がしますね。
このくらいの歳の子からすると私は赤ちゃんと変わりないのでしょう。
言語を喋る赤ちゃん。怖くないですか。
「よしよし」
自身よりも幼い子に会うのが初めてなのでしょうか。
好奇心の塊みたいです。
目をキラキラとさせて私を覗き込みます。
「ここ、どこぉ?」
せめて正確な場所でも割り出せたらいい。
王都の地図すら知らない私ですが、そう聞いてみます。
「ここはピーネ達のおうちだよ!」
質問の仕方が悪かったようです。
元気に手をあげてそうお返事を頂きました。
「ナハトがね、みーんな助けてくれたの。ここは、ナハトとサシャが悪い人から皆を助けたの。お引越ししたら、次はそこがおうちね!」
にこにことそう説明していただきます。
ナハトとは先程の少年でしょうか。
他にサシャという方もいらっしゃるんですね。
要領を得ない説明でしたが、根からの悪人というわけではなさそうです。
引越しすら平然としているということは、こういうことは1度や2度じゃないということでしょう。
その後は大した情報が収穫できたはずもなく。
ピーネとお喋りやご飯を食べたりして過ごしました。
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