転生幼女の引き籠りたい日常～何故か魔王と呼ばれておりますがただの引き籠りです～

３９：魔力遊び

　サムの授業を受けてからです。
　私は暇な時は魔力循環を行うという日課が増えました。
　魔力循環とは、一番はじめにサムに教えてもらった魔力を動かす方法です。
　コツがうまくつかめなくて始めはサムに手伝ってもらっていましたが、２週間もすれば一人で出来るようになりました。

「お嬢様は根気強くて教えがいがありますのぉ」

　ほほほとサムが朗らかに笑います。
　普通の３歳時でここまでコツコツと魔力循環に精を出す子供はいないでしょう。
　前世の記憶のせいでしょうか。
　少なからずとも影響しているとは思います。
　魔力循環は体内にある魔力を名前の通り循環させることです。
　血液の流れのように体の中を魔力が絶え間なく循環します。
　そうすることで体を魔力でコーティングし、疑似免疫として機能させているのですね。
　病弱設定はどうしましょう。
　まあ、お父様も社交界に無理に出る必要はないと仰っていますし。
　甘えさせて頂ければ良いと思います。

「くるぅくるー」

　前世では無いものというのはとても目新しいですね。
　自分でもよく飽きないなと思いながら、下手をすれば寝る直前まで魔力循環を行っています。
　魔力循環をしている間はとても体が暖かいのですよね。
　かと言って暑い日はさらに暑いと感じる訳ではなく体にとって丁度良い温度に感じます。
　体温というのは適切な温度が決まっているので、魔力が空気に何らかの干渉を行っているのでしょうか。
　想像だけしか今の私には出来ませんが。

「お嬢様は魔力循環がとてもお上手ですね」

　アンナがニコニコとしながら褒めてくれます。
　きっと私の年齢にしては魔力循環が上手という意味なのでしょう。
　これだけ毎日欠かさずやっていることですもの。
　魔力循環を始めてから１ヶ月。
　流石に多少はうまくなるというものです。
　ところで、この魔力。
　体の中を循環させるのは出来るようになってきたのですが、外に出すことは出来ないのでしょうか。
　魔力循環は自分の望み通りに魔力を循環させること。
　意識していない状態の魔力は基本的に血管に沿って体内に送られているようです。
　血管は体の隅々まで行き渡っていますからね。
　循環させるのには最適ということです。

「うー？」

　まず手に魔力を集めます。
　魔力循環を行っているので魔力操作に関しては大分うまくなってきたと思います。
　これくらいなら簡単です。
　手を籠手のようなものでコーティングするイメージをしていると、体内から滲み出た魔力が薄皮一枚分ですが手を包み込みました。

「まりょく、そと」

　魔力はどうやら外に出せるようです。
　魔力が体外に出る時というのは特に感触はないのですが、感覚的には針で手を切った場所から血が流れ出るような。そんな感覚です。
　血糖値検査とかで人差し指を専用針でプスッとさす奴ありますよね。
　前世で私はその際に痛みを感じなかったタイプなのですが、今まさにそんな感覚です。
　魔力を外へ出すというのはどうやら手だけではなく、体であればどこでも可能なようです。
　試しにコーティングした手で積み木を握ってみましょう。

「ぎゅぅ」

　やることに対して口に出るのは許してください。
　なんというか変に癖づいてきているみたいです。
　そのうち直します。多分。

「あ」

　思わず声が出て、手をコーティングした魔力が霧散します。
　円柱の積み木を握っていたのですが、見事に幼児の手の形にひしゃげましたね。
　肉体強化ということでしょうか。
　痛いのは嫌なので積み木を手に落としたりはしませんが。

「お、お嬢様……？」

　アンナが驚きに目を剥いています。
　いや、ゴリラというわけではないんです。
　本当です。アンナ、信じてください。