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35:嘲りの顔
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その人は、誰を模しているのでしょうか。
腰まである髪には花があちらこちらに散らしてあります。
優しげでまるでそこに誰かがそこにいるかのように天を仰ぐその像は、手から水が溢れていました。
女神像と言われても疑わないくらいには綺麗な像ですね。
「ちょっとそこの貴女」
ふわわ~と噴水を見上げていると、少女が声をかけてきます。
赤みがかった金髪に青色の瞳の少女はフリルが沢山付いた赤色のドレスを来ていました。
色がとても目立ちますね。
しかも似合ってるというのも良いと思います。
8歳くらいでしょうか。
扇で口元を隠しながら数人他の少女を引き連れて私に声をかけているようです。
「ファウル様の妹だからと言っていい気にならないことね」
ギッと睨む視線に思わず肩が揺らぎます。
人はどうしてそうも簡単に人を憎めるのでしょう。
私はこちらの少女になにをしたという訳ではありません。
お茶会の行動を振り返ったとしても気に障るようなことはしてないと思うのです。
他の人には聞こえないように。
そして私には聞こえやすいようにその少女は私に近づいて身を屈めます。
「貴女が側にいたせいでファウル様にも殿下にも近付けない子は沢山いたもの。呪い子がお二方の近くにいるというだけでも穢らわしいのに。自分の身分を弁えなさいな」
とても口が達者でいらっしゃいますね。
お兄様も私が物心つく頃には綺麗な発音をされていらっしゃいました。
そういうものなのでしょうか。早いような気もします。
そしてここでも出ました。
呪い子。
2年くらい言われてない言葉ですね。
私に意味が通じないと思って彼女は言っているのでしょう。
顔が嘲りとともにそう言っています。
母の死と共に生まれてきた子供。
推察するにそういう意味だと思います。
実際にはお母様が亡くなるのとタイムラグがあるのでそうではないとお父様は言っていらっしゃいましたが。
この歳でこれですか。
「……」
「あら、声も出せないの?」
人を見下す人種というものに年齢は関係ないのでしょうか。
大人だった前世の私なら、何かしら言い返したのかも知れません。
ですが、今生の私は彼女をとても恐ろしいと感じました。
この世界に生まれてたった3年。
まだ言葉すら拙い子に対してすら容赦はない。
まるで鬼と相対したような気持ちです。
この歳でこのように他者を見下すのです。
後ろに控える子達もそう。
この子達が大人になった時、どれほど醜悪な人になるのでしょうか。
社交界とはそういう人ばかりなのでしょうか。
「……おねえしゃんは、あたまがわるいにょ?」
最も、お兄様の名前が出たということはお兄様目当てでもあるのでしょう。
それにも関わらず実妹に対してこのような態度を取るなんて。
先程の行為を見ていたら兄妹仲が良いことくらいわかるでしょうに。
自分からポイントを下げているなんて頭が悪すぎる。
ただ、特定の誰かを貶めることは得意なようですね。
「っこの……!」
カッとなった少女は手を振り上げます。
殴られる。そう思って私は身を固くしました。
けれど、いつまでも痛みはやってきません。
恐る恐る目を開けると、それはそれは良い笑顔のお兄様が少女の手首を掴んでいました。
「僕の妹に、なにをしているのかな」
「ふぁ、ファウル様……」
お兄様、第一人称が僕になっちゃってますよ。
軽蔑の表情を浮かべたお兄様は少女の手を離します。
「ディスマルク伯爵令嬢。このことは正式に抗議させて頂きます。母娘共に頭が悪いようで」
んー?
でぃすまるく。
どこかで聞いたような名前です。
あぁ、そういえばお母様の墓前で罵倒してきた方がそんな名前でしたね。
覚えるつもりはなかったのですが、今生初の敵認識なので記憶に残っていました。
お兄様は決して私には向けない冷ややかな視線を少女達に向けます。
終わったんじゃないですかね。この子達。
私をいじめようとしてきた子達です。
助ける気もありませんけどね。
腰まである髪には花があちらこちらに散らしてあります。
優しげでまるでそこに誰かがそこにいるかのように天を仰ぐその像は、手から水が溢れていました。
女神像と言われても疑わないくらいには綺麗な像ですね。
「ちょっとそこの貴女」
ふわわ~と噴水を見上げていると、少女が声をかけてきます。
赤みがかった金髪に青色の瞳の少女はフリルが沢山付いた赤色のドレスを来ていました。
色がとても目立ちますね。
しかも似合ってるというのも良いと思います。
8歳くらいでしょうか。
扇で口元を隠しながら数人他の少女を引き連れて私に声をかけているようです。
「ファウル様の妹だからと言っていい気にならないことね」
ギッと睨む視線に思わず肩が揺らぎます。
人はどうしてそうも簡単に人を憎めるのでしょう。
私はこちらの少女になにをしたという訳ではありません。
お茶会の行動を振り返ったとしても気に障るようなことはしてないと思うのです。
他の人には聞こえないように。
そして私には聞こえやすいようにその少女は私に近づいて身を屈めます。
「貴女が側にいたせいでファウル様にも殿下にも近付けない子は沢山いたもの。呪い子がお二方の近くにいるというだけでも穢らわしいのに。自分の身分を弁えなさいな」
とても口が達者でいらっしゃいますね。
お兄様も私が物心つく頃には綺麗な発音をされていらっしゃいました。
そういうものなのでしょうか。早いような気もします。
そしてここでも出ました。
呪い子。
2年くらい言われてない言葉ですね。
私に意味が通じないと思って彼女は言っているのでしょう。
顔が嘲りとともにそう言っています。
母の死と共に生まれてきた子供。
推察するにそういう意味だと思います。
実際にはお母様が亡くなるのとタイムラグがあるのでそうではないとお父様は言っていらっしゃいましたが。
この歳でこれですか。
「……」
「あら、声も出せないの?」
人を見下す人種というものに年齢は関係ないのでしょうか。
大人だった前世の私なら、何かしら言い返したのかも知れません。
ですが、今生の私は彼女をとても恐ろしいと感じました。
この世界に生まれてたった3年。
まだ言葉すら拙い子に対してすら容赦はない。
まるで鬼と相対したような気持ちです。
この歳でこのように他者を見下すのです。
後ろに控える子達もそう。
この子達が大人になった時、どれほど醜悪な人になるのでしょうか。
社交界とはそういう人ばかりなのでしょうか。
「……おねえしゃんは、あたまがわるいにょ?」
最も、お兄様の名前が出たということはお兄様目当てでもあるのでしょう。
それにも関わらず実妹に対してこのような態度を取るなんて。
先程の行為を見ていたら兄妹仲が良いことくらいわかるでしょうに。
自分からポイントを下げているなんて頭が悪すぎる。
ただ、特定の誰かを貶めることは得意なようですね。
「っこの……!」
カッとなった少女は手を振り上げます。
殴られる。そう思って私は身を固くしました。
けれど、いつまでも痛みはやってきません。
恐る恐る目を開けると、それはそれは良い笑顔のお兄様が少女の手首を掴んでいました。
「僕の妹に、なにをしているのかな」
「ふぁ、ファウル様……」
お兄様、第一人称が僕になっちゃってますよ。
軽蔑の表情を浮かべたお兄様は少女の手を離します。
「ディスマルク伯爵令嬢。このことは正式に抗議させて頂きます。母娘共に頭が悪いようで」
んー?
でぃすまるく。
どこかで聞いたような名前です。
あぁ、そういえばお母様の墓前で罵倒してきた方がそんな名前でしたね。
覚えるつもりはなかったのですが、今生初の敵認識なので記憶に残っていました。
お兄様は決して私には向けない冷ややかな視線を少女達に向けます。
終わったんじゃないですかね。この子達。
私をいじめようとしてきた子達です。
助ける気もありませんけどね。
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