31 / 47
31:招待状
しおりを挟む
皆様こんにちは。コーラルです。
3歳も近くなり、私はマサよりお嬢様としての基礎を学ぶことになりました。
貴族としての挨拶と礼節ですね。
1歳の時にお母様の墓の前で会ったあの失礼な人のようにはなりたくありません。
がんばります。
「招待状……ですか」
「しょーたいじょー」
ぽかんとするのは私とお兄様です。
礼儀作法の勉強が終わってお兄様と遊んでいる時にやってきたお父様。
もたらされたものは王家主催であるお茶会の招待状だった。
「そうだ」
お父様を見るのも凄い久しぶりな気がします。
いつも寝ている時か眠い時にくるのでぼやぼやとしかお会いしてませんでしたし。
こうしてしっかりと起きている時に会うのはどれくらいぶりでしょう。
ぽかんとしている私達2人が面白かったのでしょうか。
お父様の眉尻が下がります。
お父様っていつも無表情なのですが、単純に顔に出辛い人なのだと知ったのはつい最近。
仕事が落ち着いてきたのでしょうか。
それとも心が落ち着いてきたのでしょうか。
以前よりも早めに家に帰ってこられるそうです。
まあ、その頃には私は寝ているわけですが……。
「第2王子がそろそろ6歳を迎えられるとのことで、年の近い貴族の子供と顔合わせするのだ」
へー。と私はなんの感慨もなしに返します。
そもそも王子様が2人もいることを知ったのも初めてです。
お兄様は隣でなにやら考えていらっしゃるようでした。
私達の反応を見ながら、お父様は両手を広げます。
「おいで」
お父様。そんな人じゃなかったですよね。
なんて野暮はいいません。
少なくとも無表情で言う言葉ではありませんよ。
私はお兄様の手を借りて立ち上がるとお父様に飛び込みます。
「わ、私はそのような年ではありません」
そうそう。お兄様の第一人称も変わってきたんです。
僕から私へ。
お兄様はいつかお父様のあとを継ぐために勉強しているそうです。
その仕事の割合が増えて大人と同じように自分のことを『私』と呼ぶようにしたのだとか。
照れ照れのお兄様も可愛いですね。
お父様はお兄様なんてお構いなしに無言で引き寄せます。
お兄様ごとぎゅっと抱きしめられました。
こんなことは初めてではないでしょうか。
「お前達には母がいない。マサ達が手伝ってくれるが、それでも苦労をかけるだろう。すまないな」
「お茶会は必ず出席ですか」
「王家主催だからな。断れないだろう」
未来の側近や婚約者候補を集めて相性を見るんですね。
早ければ早いほうがいいと。
そんな意図が透けて見えます。
貴族ってややこしいですね。
もっと気楽に考えてもいいと思うのですが、そんな価値観は私だけでしょう。
「とーたま、わたしも?」
「あぁ、そうだ」
どうやらお茶会は私が3歳を迎えた1ヶ月後のようで。
魔核が安定している10歳までの高位貴族、招待状のある貴族の子供のみ参加とのこと。
侯爵家なら絶対参加ですよねー。そんな気はします。
あと、私の魔核が安定していることも関係しているのだと思います。
マサが連れてきた神官が私の魔核を確認してくれたんですよ。
だからこそ庭にも出られたと知ったのはこの前の魔法が使いたいと言ってから。
3歳くらいから魔核を更に安定させるための方法も学べるみたいです。
神官を連れてきたということは対外的に知られることみたいですね。
断ったけど断れなかった。そんな雰囲気がお父様から感じられます。
「父上。鼻血」
お兄様がハンカチをお父様の鼻に当てます。
鼻血?
「あぁ、すまない」
「コーラルが可愛いのは分かりますから落ち着いてください」
どこに可愛い要素があったんですかねぇ。
小さい子って何をしても可愛いとは思いますけど、自身になるとそこまで可愛いとは思えません。
首をかしげようとしたら、お兄様に頭をがしりと支えられました。
あ、だめですか。そうですか。
「コーラル。お父様が倒れるからね」
どういうことだってばよ。
半眼になるのは許してください。
確かに今生の容姿は可愛いと思いますよ。
幼いからか天然パーマがかかっている珊瑚色の髪にお父様やお兄様と同じ水色の瞳。
ぷにぷにボディも点数に入るでしょうか。
ただ、中身が自分だと思うとどうしても、ねぇ。
「とにかく、コーラルはお茶会でスキルを絶対に見せてはいけない」
立ち直ったお父様がなんとか私に伝えてきた内容は結構深刻そうです。
「コーラルのスキルはとても珍しいからね。秘密にしておこう」
「ひみちゅ?」
お父様の言葉よりもお兄様の言葉の方が分かりやすいですね。
ずっと一緒にいるからでしょうか。
お父様よりもすんなりと言葉が頭に入ってきます。
前世の記憶があるからこそ思いますが、私のスキルって利用価値が半端無いですからね。
前世であれば家いらずのスローライフが送れたかもしれないのに。
そんな栓のないことを言っても仕方がないでしょう。
「そう、秘密」
しぃっとお兄様が指を口に当てます。
しぃーっね! と、私も真似っ子しました。
その瞬間、ぐふっと空気が漏れる音が上でしたのでお兄様と胡乱げにお父様を見やります。
「すまない。シュシュの幼い頃そっくりで」
あ、お母様にそっくりなんですね。
お父様ってお母様のこと本当に好きなのでしょう。
お母様と私を重ねて見ていらっしゃるのかもしれません。
それならこうして鼻血が出るのも納得……納得しますか……?
3歳も近くなり、私はマサよりお嬢様としての基礎を学ぶことになりました。
貴族としての挨拶と礼節ですね。
1歳の時にお母様の墓の前で会ったあの失礼な人のようにはなりたくありません。
がんばります。
「招待状……ですか」
「しょーたいじょー」
ぽかんとするのは私とお兄様です。
礼儀作法の勉強が終わってお兄様と遊んでいる時にやってきたお父様。
もたらされたものは王家主催であるお茶会の招待状だった。
「そうだ」
お父様を見るのも凄い久しぶりな気がします。
いつも寝ている時か眠い時にくるのでぼやぼやとしかお会いしてませんでしたし。
こうしてしっかりと起きている時に会うのはどれくらいぶりでしょう。
ぽかんとしている私達2人が面白かったのでしょうか。
お父様の眉尻が下がります。
お父様っていつも無表情なのですが、単純に顔に出辛い人なのだと知ったのはつい最近。
仕事が落ち着いてきたのでしょうか。
それとも心が落ち着いてきたのでしょうか。
以前よりも早めに家に帰ってこられるそうです。
まあ、その頃には私は寝ているわけですが……。
「第2王子がそろそろ6歳を迎えられるとのことで、年の近い貴族の子供と顔合わせするのだ」
へー。と私はなんの感慨もなしに返します。
そもそも王子様が2人もいることを知ったのも初めてです。
お兄様は隣でなにやら考えていらっしゃるようでした。
私達の反応を見ながら、お父様は両手を広げます。
「おいで」
お父様。そんな人じゃなかったですよね。
なんて野暮はいいません。
少なくとも無表情で言う言葉ではありませんよ。
私はお兄様の手を借りて立ち上がるとお父様に飛び込みます。
「わ、私はそのような年ではありません」
そうそう。お兄様の第一人称も変わってきたんです。
僕から私へ。
お兄様はいつかお父様のあとを継ぐために勉強しているそうです。
その仕事の割合が増えて大人と同じように自分のことを『私』と呼ぶようにしたのだとか。
照れ照れのお兄様も可愛いですね。
お父様はお兄様なんてお構いなしに無言で引き寄せます。
お兄様ごとぎゅっと抱きしめられました。
こんなことは初めてではないでしょうか。
「お前達には母がいない。マサ達が手伝ってくれるが、それでも苦労をかけるだろう。すまないな」
「お茶会は必ず出席ですか」
「王家主催だからな。断れないだろう」
未来の側近や婚約者候補を集めて相性を見るんですね。
早ければ早いほうがいいと。
そんな意図が透けて見えます。
貴族ってややこしいですね。
もっと気楽に考えてもいいと思うのですが、そんな価値観は私だけでしょう。
「とーたま、わたしも?」
「あぁ、そうだ」
どうやらお茶会は私が3歳を迎えた1ヶ月後のようで。
魔核が安定している10歳までの高位貴族、招待状のある貴族の子供のみ参加とのこと。
侯爵家なら絶対参加ですよねー。そんな気はします。
あと、私の魔核が安定していることも関係しているのだと思います。
マサが連れてきた神官が私の魔核を確認してくれたんですよ。
だからこそ庭にも出られたと知ったのはこの前の魔法が使いたいと言ってから。
3歳くらいから魔核を更に安定させるための方法も学べるみたいです。
神官を連れてきたということは対外的に知られることみたいですね。
断ったけど断れなかった。そんな雰囲気がお父様から感じられます。
「父上。鼻血」
お兄様がハンカチをお父様の鼻に当てます。
鼻血?
「あぁ、すまない」
「コーラルが可愛いのは分かりますから落ち着いてください」
どこに可愛い要素があったんですかねぇ。
小さい子って何をしても可愛いとは思いますけど、自身になるとそこまで可愛いとは思えません。
首をかしげようとしたら、お兄様に頭をがしりと支えられました。
あ、だめですか。そうですか。
「コーラル。お父様が倒れるからね」
どういうことだってばよ。
半眼になるのは許してください。
確かに今生の容姿は可愛いと思いますよ。
幼いからか天然パーマがかかっている珊瑚色の髪にお父様やお兄様と同じ水色の瞳。
ぷにぷにボディも点数に入るでしょうか。
ただ、中身が自分だと思うとどうしても、ねぇ。
「とにかく、コーラルはお茶会でスキルを絶対に見せてはいけない」
立ち直ったお父様がなんとか私に伝えてきた内容は結構深刻そうです。
「コーラルのスキルはとても珍しいからね。秘密にしておこう」
「ひみちゅ?」
お父様の言葉よりもお兄様の言葉の方が分かりやすいですね。
ずっと一緒にいるからでしょうか。
お父様よりもすんなりと言葉が頭に入ってきます。
前世の記憶があるからこそ思いますが、私のスキルって利用価値が半端無いですからね。
前世であれば家いらずのスローライフが送れたかもしれないのに。
そんな栓のないことを言っても仕方がないでしょう。
「そう、秘密」
しぃっとお兄様が指を口に当てます。
しぃーっね! と、私も真似っ子しました。
その瞬間、ぐふっと空気が漏れる音が上でしたのでお兄様と胡乱げにお父様を見やります。
「すまない。シュシュの幼い頃そっくりで」
あ、お母様にそっくりなんですね。
お父様ってお母様のこと本当に好きなのでしょう。
お母様と私を重ねて見ていらっしゃるのかもしれません。
それならこうして鼻血が出るのも納得……納得しますか……?
0
お気に入りに追加
201
あなたにおすすめの小説

『俺だけが知っている「隠しクラス」で無双した結果、女神に愛され続けた!』
ソコニ
ファンタジー
勇者パーティから「役立たず」として追放された冒険者レオン・グレイ。彼のクラスは「一般職」――この世界で最も弱く、平凡なクラスだった。
絶望の淵で彼が出会ったのは、青い髪を持つ美しき女神アステリア。彼女は驚くべき事実を告げる。
かつて「役立たず」と蔑まれた青年が、隠されたクラスの力で世界を救う英雄へと成長する物語。そして彼を導く女神の心には、ある特別な感情が芽生え始めていた……。
爽快バトル、秘められた世界の真実、そして禁断の恋。すべてが詰まった本格ファンタジー小説、ここに開幕!

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

マヨマヨ~迷々の旅人~
雪野湯
ファンタジー
誰でもよかった系の人に刺されて笠鷺燎は死んだ。(享年十四歳・男)
んで、あの世で裁判。
主文・『前世の罪』を償っていないので宇宙追放→次元の狭間にポイッ。
襲いかかる理不尽の連続。でも、土壇場で運良く異世界へ渡る。
なぜか、黒髪の美少女の姿だったけど……。
オマケとして剣と魔法の才と、自分が忘れていた記憶に触れるという、いまいち微妙なスキルもついてきた。
では、才能溢れる俺の初クエストは!?
ドブ掃除でした……。
掃除はともかく、異世界の人たちは良い人ばかりで居心地は悪くない。
故郷に帰りたい気持ちはあるけど、まぁ残ってもいいかなぁ、と思い始めたところにとんだ試練が。
『前世の罪』と『マヨマヨ』という奇妙な存在が、大切な日常を壊しやがった。
異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

引きこもり少女、御子になる~お世話係は過保護な王子様~
浅海 景
恋愛
オッドアイで生まれた透花は家族から厄介者扱いをされて引きこもりの生活を送っていた。ある日、双子の姉に突き飛ばされて頭を強打するが、目を覚ましたのは見覚えのない場所だった。ハウゼンヒルト神聖国の王子であるフィルから、世界を救う御子(みこ)だと告げられた透花は自分には無理だと否定するが、御子であるかどうかを判断するために教育を受けることに。
御子至上主義なフィルは透花を大切にしてくれるが、自分が御子だと信じていない透花はフィルの優しさは一時的なものだと自分に言い聞かせる。
「きっといつかはこの人もまた自分に嫌悪し離れていくのだから」
自己肯定感ゼロの少女が過保護な王子や人との関わりによって、徐々に自分を取り戻す物語。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる