転生幼女の引き籠りたい日常~何故か魔王と呼ばれておりますがただの引き籠りです~

暁月りあ

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9:またまた森の中です

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 さて、私の前世の話でもしましょうか。
 つまらない? そんなことは言わないでください。
 享年恐らく32歳。趣味は読書とその他諸々。少々飽き性だった私。
 中途半端な知識が沢山ありますが、人間そんなものだと割り切っています。
 知っているだけ人生有利になりますから、知識人であるに越したことはありませんがね。
 私は何故死んだのか。
 そこをよく覚えていないのです。
 事故か、病気か、それとも自然災害か。
 最後の記憶は取引先から飲みに誘われて、上司と2人で取引先の方と飲みに行って接待をして。疲れ果てて家に帰ったところまでです。布団に入った記憶はありますよ。スーツのままでしたけど。
 急性アルコール中毒かなあ。いや、そんなに飲んでないと思うんですよね。
 そもそもからして、私は人付き合いが苦手なんです。
 2人で話すのも苦手だし、3人でコミュニケーションはぎりぎり限界。4人5人となれば私なんていらなくないですか? ってなる。できれば帰って一人で読書したいな~なんて思っちゃいます。
 家族は別ですよ。
 弟と義妹と父と母。そして私。このメンバーは5人でいても大丈夫でした。
 生まれた頃から付き合っているだけあって、黙っていても間が保つのです。
 義妹も弟の2つ下で幼馴染ですしね。
 私にとっては弟と結婚する前から家族のようなものです。

「う~あ~……」

 現在は昼間。
 若干湿った土。
 風に揺れる木の葉。

 さて、何故こんな話をしたのか。皆様おわかりでしょうか。
 こんな展開見たなーとか思わないでください。
 今、私は森の中にいます。

「うー」

 お昼寝をしていた筈なんですね。私。
 また寝ている間にスキルが発動してしまったみたいでして。
 仕方ないのでハイハイで進みます。
 土が若干痛いですが、文句は言っていられません。ぽろぽろ泣くのは本能です。声をあげて居ないだけマシではないでしょうか。

「うぐ~ふぅっ」

 嘘です。多少グズってます。
 仕方ないじゃないですか。
 こんな森の中、赤ちゃんが1人ですよ。
 泣かない方がおかしいです。
 少し進んだところで止まります。
 ハイハイってとても筋肉を使うんですよね。
 しかも地面についているところが痛くなるおまけ付き。
 最初にいた地点がとても近いところでギブアップです。

 暫くそうしていましたが、考えたのです。
 焦ってもこの体で出来ることはないのでは?
 帰りたいな~って思いながら待っているのがいいのでは?
 迷子の鉄則。動かない。
 まあ、悟ってしまったんですね。

「うぶぅう」

 そう考えていると、何故か涙は止まります。
 そうです。待っていれば前回みたいに光の通路が現れるかも知れませんしね。
 動いて余計な体力を消耗するのはよくありません。
 そしてそのまますやすやと眠りの中へ。
 一眠りした後にはベビーベッドの上で寝ておりました。

「お嬢様、またどちらかに行かれたのですね」

 泣き腫らした目で私を抱き上げるアンナ。
 いつも心配させていて申し訳ないです。
 でも、やはり思ってしまうのです。
 あの場所は、私にとって危険な場所ではないんじゃないかと。
 なぜかは分からないんですけどね。それこそ、本能で感じるようなものです。
 お兄様からも大好きのギューを頂きまして、今日も一日を終えました。
 それからも度々森の中に移動することがあったのですが、一定時間いると元の場所に戻っているみたいです。
 次第に皆も慣れていくのですが、それはまだ未来のお話です。
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