あんまりです、お姉様〜悪役令嬢がポンコツ過ぎたので矯正頑張ります〜

暁月りあ

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暗殺なんて、あんまりです!

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「おねぇさま! おたんじょうび、おめでとうございます!!」

 あれからまた時が過ぎて。
 誕生日を迎えたアマリリスに、リリィは飛びついてそう伝えた。

「ありがとう、リリィ」

 寝ぼけ眼で照れながら礼をいうアマリリスは最高に可愛かった。
 一緒の寝台で寝るのにも慣れたもので。いつもその可愛い寝顔を見ているが、やはり起きて、話して、笑っているアマリリスは寝顔の数倍可愛いとリリィは鼻血が出ないように気をつけながら息を荒くする。
 幼女がしてはいけない顔である。

(どこかに神絵師はいませんか? スチルありませんか?)

 リリィがそわそわと脳内で暴走するのも致し方ないレベルの可愛さだった。
 そのまま寝台で戯れたかったが、侍女達が入室して二人は準備に取り掛かる。
 朝食の席に付けば、ブルックスが入室する前にこっそりと使用人達もアマリリスを祝った。
 それに対してとても喜んでいるアマリリス。まるでこの世界に祝福されたように笑うその姿に、リリィだけではなく侍女達もほっこりとした。

「アマリリス。誕生日おめでとう」

 ブルックスからも祝の言葉が送られて、今日のお披露目パーティで着るドレスに合わせた髪飾りが送られる。

「まあ、おとうさま。ありがとうございます」

 アマリリスは箱を開けて中身を確認した後、大事そうに箱を抱えてブルックスにお礼を言った。
 そうしてのほほんとしていられたのも朝食まで。
 あれよあれよという間に朝食が済めばアマリリスは連れて行かれる。
 これからお披露目パーティまでにコンディションを整えるのだ。

「たのんでいたもの、できた?」

 今日のリリィがしなけらばならないお仕事はおとなしくしていること。
 夜会とは違ってお披露目パーティは日中に行われるため、その邪魔にならないように部屋に籠もっているように指示が出されている。様々な人が出入りするため、警護面においてもその方が楽だからだ。
 部屋に戻る前に庭師に会いに行って、前もって頼んでおいたものが出来ているのか確認する。

「はい。リリィお嬢様。こちらでよろしいでしょうか」

 見習い庭師が持った花束に視線を向けて、老年の庭師がリリィに確認をとった。
 その花束は庭で見事に咲いていた白と赤の薔薇と紫色の花で構成されている。
 残念ながら青に近い紫系統の薔薇はまだない。
 前世でもバイオテクノロジー技術でブルーローズが生まれるまでは『不可能』という花言葉がある色だったのだ。
 科学が発達していないこの世界ではブルーローズが生まれるまで、あとどれほど時間がかかるのかはわからない。おそらくリリィ達が生きている間には実現しないだろう。
 それでも、アマリリスを連想させるような紫を中心とした花束は、リリィの満足いくようなものだった。

「ありがとう。おねぇさまのじゃまにならないよう、とどけてくれりゅ?」
「仰せのままに」

 3歳にできるプレゼントなんてたかがしれている。
 自分で用意出来るとしたら肩たたき券くらいか。まだ針さえ持たせてもらえないのだから致し方ない。
 けれど、こうして使用人の手を借りれば、庭の花でなんとか豪華な花束も用意出来るというものだ。
 リリィも自分で渡したいが、今日はもう寝る前にしかアマリリスに会うことが出来ない。
 そんな時間に持ってこられても困るだろうと昼食のときにでも自室で見てもらえるように手配した。
 邪魔にならないように自室で本を読んで過ごす。
 

*****


 時間は代わり、夜。

「リリィ。ありがとう! 嬉しいわ!!」

 寝間着姿でアマリリスの部屋を訪れると、アマリリスは頬を上気させてリリィを抱きしめた。
 部屋には薔薇の香りが漂い、アマリリスからは石鹸のいい匂いがする。
 アマリリスのありがとうが花束に対するものだとわかったのは、部屋に飾ってある薔薇で理解した。
 喜んでくれるアマリリスを落ち着かせて、今日が最後だからとお喋りしながら布団に入る。
 アマリリスはお披露目パーティで疲れたのか、すぐに寝てしまった。
 侍女達も今日は疲れたのか、控室から物音一つしなくなる。
 そうして夜も深まり、全てのモノが静寂に包まれた頃。
 それはやってきた。

 物音1つなかった。
 寝台の隣になにかが立つ。その瞬間まで気づけなかったのはさすが本職というべきか。
 もっとなにか小さな物音を立てて入室してくるのだと思っていた。
 実際にはずっとそこに立っていたように、窓や扉一つとして物音をたてていない。

「いらっしゃい」

 その人物が刃を振り上げた時、なるべく落ち着いた声音でリリィはそう話しかけた。
 むくりと起き上がる。侵入者が殺そうとしたのとは逆側の、小さな影。
 振り上げた刃をそのままに、部屋に入ってくる月明かりだけで顔もよく見えないその人物を、リリィは笑みを向けた。

「こんばんは」
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