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後編
焦がれ
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あの日、気付くとプレハブの窓から既にくっきりと陽が射してて、膝枕の姿勢のまま布団に寝ていた私は、もう昼近いことを悟った。誰も居ない部屋を後にしようと起き上がると、ふと、コピー紙を綺麗に破ったような紙が目に入る。「先生へ」そしてLINEのアカウント走り書き。「おいおい、不用心だなぁ。誰かに盗まれたらどうするの?」と苦笑しつつも、傍の事務所机の上に置いてあった鞄にしっかりとそれを仕舞い込んだ。
あれから4年。
時々、リョウとLINEのやり取りをして来た私は、リョウが高校を卒業して就職したことを知った。それまでも、タイムラインには彼女の存在を匂わせる写真やコメントが寄せられるにも拘らず、なお私と二人きりのトークルームを切らさない事に対し「出来過ぎな理性も持ちながら、やはりこの子はワルだな…彼女が知ったら悲しむんじゃないの?いや、二人きりのトークルームは私だけじゃ無いのかも…」などと思いながらも、それ以上探りを入れられずにいた。
一方、私もこの4年の間に激務に疲れ果て学校を退職、今は一般事務員として会社勤めをしている。定時に帰れることで、心の余裕が戻った。
そんなある日、リョウが駒を一歩進めて来た。「ねぇ先生、今度の土曜日空いてる?」リョウにも学校を辞めたことは伝えてあったが、彼曰く、私はいつまでも彼にとっての先生だから、と。せめて先輩にしてよ、と言う私に「今更呼びづらい」と。そんなこんなで、先生と呼ばれ続けることは今後も変わらなさそうだ。
リョウはトークルームで言う。「先生ももう学校の先生じゃなくなったし、俺も成人だし。やっと続きができるね」意外にも顔文字を使わないのだ。そんなことより「あの日」を未練がましく覚えているのは私だけだと思ったのだけど。え、もしかして待ってた?と訊く私に「ずっと待ってたよ」と返すリョウ。何それ、確信犯…。
そう思うと俄かに鼓動が速くなり、熱くなった頭に響く。どうして?と送るとそれには数日経っても返信が無かった。ん?怒らせたかな?と少し気掛かりになるも、今はもう金曜日の夜。まあいいか。明日待ち合わせ場所に行って、彼が来なかったら、残念だけど、それまでよね?
土曜日の昼。少しハラハラしながらも、さりげなくお洒落をして待ち合わせ場所に行くと、エンジンを掛けたままの運転席に、白シャツに革ジャケットでお洒落したリョウ。私に気付くと相変わらずの爽やかな笑顔で視線を向けて来た。
車に近付くと、助手席のドアを内側から開け「乗って」と年上のように声を掛けてくるリョウ。4年前のあの日より、声が少し太くなったかな?
元気そうだね?とか、今の互いの仕事の談笑しつつドライブする中、このままでは状況が分からないまま、今度こそ狼の餌食ね?と思った私は思い切って「ねえところで…今は誰かと付き合ってるの?」と訊いた。
リョウは一瞬表情をこわばらせ「…うん。居る。でももう別れようと思って。疲れちゃった」と少し寂しそうな笑顔を向ける。LINEの子?と訊くと、うん、と言い、朝から晩まで束縛が激しい上に最近は浮気してるみたい、と、あの頃より逞しくなった腕を頭にやり、愚痴を漏らした。そうなのか…。それが本当なら、二人は相性がイマイチなのかな?
ファミレスでランチを楽しみ、また車へ。次は?次はどこへ?何も言わないリョウに問いかけたくなるが、缶コーヒーを二つ買って自販機から戻ったリョウから一つ受け取り、少し暑い日差しの中、車の外に立ってそのまま飲むコーヒーが美味しく、黙って今を楽しもうと思った。
が、異変はドライブ再開後に起きた。二人の座席の間のドリンクホルダーに挿したリョウのスマホがバイブで着信を報せる。画面には女の子の名前。彼女だろう。「もしもし?ごめん今運転中。掛け直すから」と切るとリョウは車をコンビニに停めた。車の外で電話するリョウ。友だちとドライブ、とか言って。まあ外れては居ないのかもだけど…。
会話は恙無く終わった様子で運転席に戻ったリョウは「何してるか気になって電話したんだって。どうしようかなぁ」と言うので「何が?」と訊くと、そのままシートに沈み込むように寄り掛かり、斜め上に目線をやり「…」沈黙するリョウ。
数分経ったか?沈黙に耐え切れなくなった私が、ごめん、帰るね?と言おうとしたその時「決めた!」と言うなやリョウは車を住宅街へ走らせ、公園の側に停めた。「ちょっとこのまま待ってて?」と言うと降りて、また電話。「話があるんだけど、今から行っていい?」と。その短い電話の後、少し離れたどこかへ向かうリョウ。曲がり角で姿が見えなくなった。
どのくらい待ったか。1時間?2時間?ちょっと傾き掛けた太陽を窓の外に感じながら、自分の車なんだから戻って来るよね?と思いながら待ち続ける。
やがて少しうなだれて、でも暗くはない口調で「お待たせ、ごめん」と微笑みながら運転席に着くリョウ。ドアを閉めると私の目を見て「別れて来た」と。嗚呼、待ち望んでいた一言。不謹慎、だろうか?でも彼女の方でも別の人が既に居るということなら…多分大丈夫…。
黙って車を遠く郊外へ走らせるリョウ。私も何も言葉を思い付かないまま、車の揺れに身を任せていた。またどのくらいそうしていたか、ぼーっとしてしまった私には分からなかったが、リョウはしっかりと目的地を定めていたのか、不意に車が停まると、人気の無い場所に来ていた。いつの間にか宵闇が迫っていた。
「手、触っていい?」と訊かれ、うん、と言うと、右手にリョウの大きな温かい左手。「可愛い手」とリョウ。手が温かい人は心が冷たい、なんて言うよなぁ。然るべき状況だったとはいえ、あんなにバッサリ彼女を振るなんて。いつか私もそうされてしまうのかな。
そんなことを思ったのも束の間、すぐに私の理性は吹き飛んでしまった。リョウがこちらに体を向け、右手で肩を抱き寄せて来たから。「キスしていい?」私は思わず目のやり場に困りながら、うん、と言うつもりが「ん…」と答えるのが精一杯だった。
分厚く柔らかな唇が遠慮がちに私の唇に触れる。熱に浮かされながらそれが長かったのか短かったのか分からずにいると彼は、一旦唇を離すも、手はしっかり私の肩を抱いたまま、今度は躊躇うことなく口付けをされる。
あの日と同じ…抱きしめられた時の溶ける感覚。吐息が漏れるのが恥ずかしくて、息を止めるように呼吸を整えようとするも、不本意に「ん…っ」と声が漏れてしまう。更に突然唇を離され「はぁ」と息が漏れた私の潤んだ目と紅潮した頬を順に撫で、リョウが「先生、可愛い」と笑う。
そのまま強く抱きしめられ、シャツの下から背中に這う手。「ううっ…」ゾクゾクする。ブラのホックを慣れた手つきで外そうとするリョウに「ま 待って…」と言うと「…先生、もしかしてまだ経験無い?」と。
どうせ私はアラサーになる今まで喪女でしたよ。と、唐突に恥ずかしくなり、俯いて頷くと「良かった。じゃあオレだけの先生だ!」とはしゃぐようにまた抱きつくリョウ。「待って、それもあるけどあの…続きはその…」と言う私にピタッと動きを止め「あ、場所変える?」と気づいてくれるリョウ。うん、と私。カーセックスは聞いたことあるけど、何だか恥ずかしい。
「先生の家ってどこ?オレ行ってみたいなぁ」一人暮らしで良かった。再び車を走らせたリョウを、私の部屋へ。
家の内側から私が鍵を掛けるなり、今度は後ろから抱きつくリョウ。私はまた言葉を失い、全身の力も奪われる。首筋をクンクンする様に軽いキスをしてくるリョウ。だめ、シャワーを浴びたい…でも…
リョウの吐息が首筋に掛かり、ゾクゾクした瞬間、思わず「ん…っ」と小さく声が漏れる。鳥肌が立った私の腕を掴んで「ベッドに行こうよ」と誘うリョウ。
そのまま抵抗できず、ベッドへ雪崩れ込む。「ねぇ、シャワーは?」と、腕を掴まれたまま力無く訊く私に「大丈夫だよ、クサくないよ?…でもオレは?」と訊かれると正直、少し汗の匂いはあるが、それが却って私を興奮させる。「このままがいい」と答える私に「良かった。嫌だったらいつでも言って」と言いながら早くも手を先程と同じようにブラのホック目掛けてシャツに入れる。
ホックが外されたブラが浮き上がったまま、胸に手をあてがわれると、再び衝撃が走り、「ふ…ぅ!」と私はのけぞった。長い髪も乱れ、目の前に垂れ下がる。リョウは右手で私の胸を揉みながら、私のブラウスのボタンを左手で器用に外して行く。そしてインナーも下から胸の上に捲し上げた。
インナーとブラの下に露わになった私の乳首を優しく舐めたり吸ったりし始めるリョウ。
「…あ…あ!!…っ!!」
私はもう体中を激しく走り抜ける一つ一つの衝撃に声を抑えることができなくなっていた。なにこれ…この世にこんなに気持ちいいことが有るなんて。
「もっと…ねぇもっと…う…っ…あ…っ!!」
気付くと私は懇願していた。リョウは黙って私のリクエストに応え続ける。いつしか私の手はリョウの肩に縋り付き、そして…
今まで感じたことの無かったある感覚に襲われていた。…股間が疼く。ムズムズするのだ。これは、何だろう。
「…ねぇ…ねぇ、ありがと…ふ…う…っ!」
乳首を刺激し続けられ、のけぞった勢いで肩に置いていた手が力無く滑る。その腕をすかさず、でも優しく掴むリョウ。「ねぇ、ここ」と、私の手を彼自身の股間にあてがう。Gパンの上からでも分かる、熱く硬い膨らみ。ああ、これが欲しいのかな?私…。そう思うと更に耳まで紅潮して行くのを感じた。恥ずかしくなり俯くと、あの日をまた思い出した。あの時より硬く大きい気がする。
「大丈夫だよ、怖くないから…見る?」と言われるままに頷くと、おもむろにGパンを脱ぎ、トランクスの中に改めて私の手を入れるリョウ。熱い。つるっとした手触りだけど、熱い。そっと撫でたり握ってみるとリョウも「ん…っ」と反応する。
その様が愛おしくなり、リョウの広く大きな背中に私の小さな左手を回し、ペニスの愛撫を続けると、不意にリョウが耳元で「舐めて」と囁く。
えっ…。舐める、って、つまり…。
「舐めて?大丈夫だから…オレ、先生に…んっ…して欲しい…」とリョウは息を荒くして懇願する。「…」
フェラチオ…言葉には聞いたことはあるけど、やはり抵抗があった。固まってしまった私を見てリョウは体を離すと私の顔を覗き込み「…ダメ?…ちょっとだけでいいから…」と懇願を続ける。
私はおずおずと、もう一度ペニスに手を伸ばす。怖いけどでも、さっき沢山してもらったんだもんね…じゃあ今度は、してあげなきゃ…。
トランクスが腿まで下りた状態のまま、リョウは仰向けに寝た。そそり立つペニスにそっと唇を近づけ、思い切って側面を少し舐めてみる。「んっ!」とまたリョウが反応した。気持ちいいのね?また愛おしくなり、ペニスに対する抵抗感を押し切って更に上下にゆっくり舐め回す。
リョウが更に「んんっ…あっ…!」と反応してくれるにつれ、私の身体にはまた不思議な変化が起きていた。ずっと疼き続けている股間から、ドクドクと熱い液が流れ出る。ショーツをねっとり濡らして行く。ああ、それだけじゃない…舌も…彼のペニスを愛撫する私の舌も気持ちが良くて…
気が付くと私はペニスにしゃぶり付いていた。とても大きくて口に入り切らないけれど、包み込むことに一生懸命になっている私の頭を、リョウは優しく撫で続けた。
「うっ…あ…っ…!…は…っ…」
彼を気持ち良くする側のはずの私の口からもまた喘ぎが漏れる。
「ああっ…ねぇ……ねぇ…っ!」
私は訳の分からない気持ちの昂りを抑え切れず、思わずペニスから口を外し、リョウの上へ這い上がる。
「はぁ…はぁ…」
小さく喘ぐ私の顔を、目を閉じて優しく撫でるリョウ。
「…っ…い…入れて…」
私はリョウに馬乗りになり、震えながら懇願していた。そんな私の顔を両手で挟み、軽くキスをすると、リョウは起き上がって私の股間にショーツ越しに手を当てる。「凄い。ビチャビチャだよ?」
そして私を仰向けに寝かせ、ショーツに手を入れると「まだ…。手でしてあげる」と、指を押し当てたクリトリスをグリグリと揉み始める。私の身体に、さっきよりも強い衝撃が走った。
「!んあっ…んっ…な…っ…なにこ…れ…ぅあ…っ!!」
気持ちいい?と私の顔を見て問いかけるリョウ。
「う…うん…っ…あうっ…あ…っ!…す…っごくいい…っ!」
リョウは悪戯っぽく「ええ~?ダメだよこのくらいで驚いてちゃ…」と笑うと「まだまだここから本番なんだから」と言葉を続け、慣れた手付きでコンドームを付ける。
ええ…っ?もう既に頭が真っ白でおかしくなりそうなのに、まだこの上が?
リョウは喘ぎ続ける私のクリトリスやヴァギナを刺激し続けながら、私の上に腹這いになると再び乳首を舐めて吸った。
「ああ…は…っ…んん…っ…あっ…あ…ん…っ!」
さらに激しい快感が私を襲い、全身が硬直、そして弛緩する。
「はぁっ、はぁっ…いっ…いい…っ!」
身体をバタつかせる私をまた不意に抱きしめてリョウが言う。
「…入れていい?」
ああ。いよいよ来る…。知らないものが…。
思わず少し緊張して身体を強張らせながら「…!う、うん……い いいよ…」と答えると、ヴァギナの入り口に熱い肉の塊を感じた。
…のも束の間、それは私の下の口を無理矢理こじ開けてグイグイ入り込もうとする。
「…いっ…いたっ…!」
思わず声が出る。リョウは動きを止め「大丈夫、ゆっくり入れるから」と、ゆっくり小刻みにピストン運動をし始めた。
「あ…っ…でも…っ…いい…っ…き…きもち…い…っ!!」
痛みの中に次第に不思議な快感が増して来る。さっきまでと次元が違う。身体の真ん中を走り抜けるだけの快感とは違い、今度のは全身を包み込む力強い衝撃。
リョウのピストンが段々激しさを増す。
「…ぁっ…!うあ…っ…はぁ…んっ!ああっ!!」
喘ぎ続ける私に問いかけるリョウ。
「奥まで入れていい?」
「ん…いい…よ…っ…お…ねが…ああいっ…!」
涙目で変な言葉を発し続ける私の中にリョウはズブズブと入り込む。
「!!あああああっ!!あああ…い…っ…イク…っ…イク…っ!!はっ…ああっ…ああああっ!!!」
全身を包み込む快感は更に激しさを増し、気絶しないのが不思議なくらいに私の頭は朦朧としていた。まさか、まだこの上が…?
「ダメだよ?まだ終わらないよ?」
「次は一緒にイこう?」
馬乗りのまま、だらんと弛緩した私の両腕を掴んでリョウが言う。
間髪入れず、再びペニスを今度は最初から奥まで挿し込む。
「あっ!!!も…もうやっ…やめ…っ!」
疲れから痛みを覚えた私は一瞬拒絶の言葉が口から漏れるも、
「…!あ…っ…でも…い…っ…いい…っ…いい…っ!!」
すぐに再び襲い来る快感に身体が悦び始める。
リョウは私の奥を激しく突き始めた。
「あっ…あああっ…!!んっんっ…いっ…いい…っ!!もっと…もっとぉおおお…っ!!!」
気付くと仰向けのまま、私も腰を動かしていた。そうか、セックスってしてもらうんじゃなく、二人でするものなんだね。
「んっ…出る…出して…いい…っ?」
リョウが喘ぎながら言う。
「…い…っ…はっ…は…っあっ!!んあっ…いい…よ…あっ…っ!!」
そう言うや否や、更に激しく腰を動かすリョウ。
「!あああああーっ!!んんんーっ…あっ!!ダ…ダメ…い…イキそう…っ!!!」
「…出る…でる…っ!」
「あああああんっ!!いっ…いいよっ…!!!あ!あああああああ!!!あああああああっ…!!!!」
ドクン!とペニスの膨らみを感じ、私たちは絶頂に達して果てた。
リョウは全身濡れた私を優しく撫で回しながら、自身も私の上に腹這いのまま、目を閉じた。
翌朝、私たちはまたまぐわい、その後シャワーを浴びてリョウは帰った。
付き合う、と約束を交わしたわけでは無かった。でもその日曜日、一日中私は昨夜と今朝のまぐわいを幾度も反芻し、そしてこれからのリョウとの日々に仄かな期待を寄せ、恍惚とし続けた。
あれから4年。
時々、リョウとLINEのやり取りをして来た私は、リョウが高校を卒業して就職したことを知った。それまでも、タイムラインには彼女の存在を匂わせる写真やコメントが寄せられるにも拘らず、なお私と二人きりのトークルームを切らさない事に対し「出来過ぎな理性も持ちながら、やはりこの子はワルだな…彼女が知ったら悲しむんじゃないの?いや、二人きりのトークルームは私だけじゃ無いのかも…」などと思いながらも、それ以上探りを入れられずにいた。
一方、私もこの4年の間に激務に疲れ果て学校を退職、今は一般事務員として会社勤めをしている。定時に帰れることで、心の余裕が戻った。
そんなある日、リョウが駒を一歩進めて来た。「ねぇ先生、今度の土曜日空いてる?」リョウにも学校を辞めたことは伝えてあったが、彼曰く、私はいつまでも彼にとっての先生だから、と。せめて先輩にしてよ、と言う私に「今更呼びづらい」と。そんなこんなで、先生と呼ばれ続けることは今後も変わらなさそうだ。
リョウはトークルームで言う。「先生ももう学校の先生じゃなくなったし、俺も成人だし。やっと続きができるね」意外にも顔文字を使わないのだ。そんなことより「あの日」を未練がましく覚えているのは私だけだと思ったのだけど。え、もしかして待ってた?と訊く私に「ずっと待ってたよ」と返すリョウ。何それ、確信犯…。
そう思うと俄かに鼓動が速くなり、熱くなった頭に響く。どうして?と送るとそれには数日経っても返信が無かった。ん?怒らせたかな?と少し気掛かりになるも、今はもう金曜日の夜。まあいいか。明日待ち合わせ場所に行って、彼が来なかったら、残念だけど、それまでよね?
土曜日の昼。少しハラハラしながらも、さりげなくお洒落をして待ち合わせ場所に行くと、エンジンを掛けたままの運転席に、白シャツに革ジャケットでお洒落したリョウ。私に気付くと相変わらずの爽やかな笑顔で視線を向けて来た。
車に近付くと、助手席のドアを内側から開け「乗って」と年上のように声を掛けてくるリョウ。4年前のあの日より、声が少し太くなったかな?
元気そうだね?とか、今の互いの仕事の談笑しつつドライブする中、このままでは状況が分からないまま、今度こそ狼の餌食ね?と思った私は思い切って「ねえところで…今は誰かと付き合ってるの?」と訊いた。
リョウは一瞬表情をこわばらせ「…うん。居る。でももう別れようと思って。疲れちゃった」と少し寂しそうな笑顔を向ける。LINEの子?と訊くと、うん、と言い、朝から晩まで束縛が激しい上に最近は浮気してるみたい、と、あの頃より逞しくなった腕を頭にやり、愚痴を漏らした。そうなのか…。それが本当なら、二人は相性がイマイチなのかな?
ファミレスでランチを楽しみ、また車へ。次は?次はどこへ?何も言わないリョウに問いかけたくなるが、缶コーヒーを二つ買って自販機から戻ったリョウから一つ受け取り、少し暑い日差しの中、車の外に立ってそのまま飲むコーヒーが美味しく、黙って今を楽しもうと思った。
が、異変はドライブ再開後に起きた。二人の座席の間のドリンクホルダーに挿したリョウのスマホがバイブで着信を報せる。画面には女の子の名前。彼女だろう。「もしもし?ごめん今運転中。掛け直すから」と切るとリョウは車をコンビニに停めた。車の外で電話するリョウ。友だちとドライブ、とか言って。まあ外れては居ないのかもだけど…。
会話は恙無く終わった様子で運転席に戻ったリョウは「何してるか気になって電話したんだって。どうしようかなぁ」と言うので「何が?」と訊くと、そのままシートに沈み込むように寄り掛かり、斜め上に目線をやり「…」沈黙するリョウ。
数分経ったか?沈黙に耐え切れなくなった私が、ごめん、帰るね?と言おうとしたその時「決めた!」と言うなやリョウは車を住宅街へ走らせ、公園の側に停めた。「ちょっとこのまま待ってて?」と言うと降りて、また電話。「話があるんだけど、今から行っていい?」と。その短い電話の後、少し離れたどこかへ向かうリョウ。曲がり角で姿が見えなくなった。
どのくらい待ったか。1時間?2時間?ちょっと傾き掛けた太陽を窓の外に感じながら、自分の車なんだから戻って来るよね?と思いながら待ち続ける。
やがて少しうなだれて、でも暗くはない口調で「お待たせ、ごめん」と微笑みながら運転席に着くリョウ。ドアを閉めると私の目を見て「別れて来た」と。嗚呼、待ち望んでいた一言。不謹慎、だろうか?でも彼女の方でも別の人が既に居るということなら…多分大丈夫…。
黙って車を遠く郊外へ走らせるリョウ。私も何も言葉を思い付かないまま、車の揺れに身を任せていた。またどのくらいそうしていたか、ぼーっとしてしまった私には分からなかったが、リョウはしっかりと目的地を定めていたのか、不意に車が停まると、人気の無い場所に来ていた。いつの間にか宵闇が迫っていた。
「手、触っていい?」と訊かれ、うん、と言うと、右手にリョウの大きな温かい左手。「可愛い手」とリョウ。手が温かい人は心が冷たい、なんて言うよなぁ。然るべき状況だったとはいえ、あんなにバッサリ彼女を振るなんて。いつか私もそうされてしまうのかな。
そんなことを思ったのも束の間、すぐに私の理性は吹き飛んでしまった。リョウがこちらに体を向け、右手で肩を抱き寄せて来たから。「キスしていい?」私は思わず目のやり場に困りながら、うん、と言うつもりが「ん…」と答えるのが精一杯だった。
分厚く柔らかな唇が遠慮がちに私の唇に触れる。熱に浮かされながらそれが長かったのか短かったのか分からずにいると彼は、一旦唇を離すも、手はしっかり私の肩を抱いたまま、今度は躊躇うことなく口付けをされる。
あの日と同じ…抱きしめられた時の溶ける感覚。吐息が漏れるのが恥ずかしくて、息を止めるように呼吸を整えようとするも、不本意に「ん…っ」と声が漏れてしまう。更に突然唇を離され「はぁ」と息が漏れた私の潤んだ目と紅潮した頬を順に撫で、リョウが「先生、可愛い」と笑う。
そのまま強く抱きしめられ、シャツの下から背中に這う手。「ううっ…」ゾクゾクする。ブラのホックを慣れた手つきで外そうとするリョウに「ま 待って…」と言うと「…先生、もしかしてまだ経験無い?」と。
どうせ私はアラサーになる今まで喪女でしたよ。と、唐突に恥ずかしくなり、俯いて頷くと「良かった。じゃあオレだけの先生だ!」とはしゃぐようにまた抱きつくリョウ。「待って、それもあるけどあの…続きはその…」と言う私にピタッと動きを止め「あ、場所変える?」と気づいてくれるリョウ。うん、と私。カーセックスは聞いたことあるけど、何だか恥ずかしい。
「先生の家ってどこ?オレ行ってみたいなぁ」一人暮らしで良かった。再び車を走らせたリョウを、私の部屋へ。
家の内側から私が鍵を掛けるなり、今度は後ろから抱きつくリョウ。私はまた言葉を失い、全身の力も奪われる。首筋をクンクンする様に軽いキスをしてくるリョウ。だめ、シャワーを浴びたい…でも…
リョウの吐息が首筋に掛かり、ゾクゾクした瞬間、思わず「ん…っ」と小さく声が漏れる。鳥肌が立った私の腕を掴んで「ベッドに行こうよ」と誘うリョウ。
そのまま抵抗できず、ベッドへ雪崩れ込む。「ねぇ、シャワーは?」と、腕を掴まれたまま力無く訊く私に「大丈夫だよ、クサくないよ?…でもオレは?」と訊かれると正直、少し汗の匂いはあるが、それが却って私を興奮させる。「このままがいい」と答える私に「良かった。嫌だったらいつでも言って」と言いながら早くも手を先程と同じようにブラのホック目掛けてシャツに入れる。
ホックが外されたブラが浮き上がったまま、胸に手をあてがわれると、再び衝撃が走り、「ふ…ぅ!」と私はのけぞった。長い髪も乱れ、目の前に垂れ下がる。リョウは右手で私の胸を揉みながら、私のブラウスのボタンを左手で器用に外して行く。そしてインナーも下から胸の上に捲し上げた。
インナーとブラの下に露わになった私の乳首を優しく舐めたり吸ったりし始めるリョウ。
「…あ…あ!!…っ!!」
私はもう体中を激しく走り抜ける一つ一つの衝撃に声を抑えることができなくなっていた。なにこれ…この世にこんなに気持ちいいことが有るなんて。
「もっと…ねぇもっと…う…っ…あ…っ!!」
気付くと私は懇願していた。リョウは黙って私のリクエストに応え続ける。いつしか私の手はリョウの肩に縋り付き、そして…
今まで感じたことの無かったある感覚に襲われていた。…股間が疼く。ムズムズするのだ。これは、何だろう。
「…ねぇ…ねぇ、ありがと…ふ…う…っ!」
乳首を刺激し続けられ、のけぞった勢いで肩に置いていた手が力無く滑る。その腕をすかさず、でも優しく掴むリョウ。「ねぇ、ここ」と、私の手を彼自身の股間にあてがう。Gパンの上からでも分かる、熱く硬い膨らみ。ああ、これが欲しいのかな?私…。そう思うと更に耳まで紅潮して行くのを感じた。恥ずかしくなり俯くと、あの日をまた思い出した。あの時より硬く大きい気がする。
「大丈夫だよ、怖くないから…見る?」と言われるままに頷くと、おもむろにGパンを脱ぎ、トランクスの中に改めて私の手を入れるリョウ。熱い。つるっとした手触りだけど、熱い。そっと撫でたり握ってみるとリョウも「ん…っ」と反応する。
その様が愛おしくなり、リョウの広く大きな背中に私の小さな左手を回し、ペニスの愛撫を続けると、不意にリョウが耳元で「舐めて」と囁く。
えっ…。舐める、って、つまり…。
「舐めて?大丈夫だから…オレ、先生に…んっ…して欲しい…」とリョウは息を荒くして懇願する。「…」
フェラチオ…言葉には聞いたことはあるけど、やはり抵抗があった。固まってしまった私を見てリョウは体を離すと私の顔を覗き込み「…ダメ?…ちょっとだけでいいから…」と懇願を続ける。
私はおずおずと、もう一度ペニスに手を伸ばす。怖いけどでも、さっき沢山してもらったんだもんね…じゃあ今度は、してあげなきゃ…。
トランクスが腿まで下りた状態のまま、リョウは仰向けに寝た。そそり立つペニスにそっと唇を近づけ、思い切って側面を少し舐めてみる。「んっ!」とまたリョウが反応した。気持ちいいのね?また愛おしくなり、ペニスに対する抵抗感を押し切って更に上下にゆっくり舐め回す。
リョウが更に「んんっ…あっ…!」と反応してくれるにつれ、私の身体にはまた不思議な変化が起きていた。ずっと疼き続けている股間から、ドクドクと熱い液が流れ出る。ショーツをねっとり濡らして行く。ああ、それだけじゃない…舌も…彼のペニスを愛撫する私の舌も気持ちが良くて…
気が付くと私はペニスにしゃぶり付いていた。とても大きくて口に入り切らないけれど、包み込むことに一生懸命になっている私の頭を、リョウは優しく撫で続けた。
「うっ…あ…っ…!…は…っ…」
彼を気持ち良くする側のはずの私の口からもまた喘ぎが漏れる。
「ああっ…ねぇ……ねぇ…っ!」
私は訳の分からない気持ちの昂りを抑え切れず、思わずペニスから口を外し、リョウの上へ這い上がる。
「はぁ…はぁ…」
小さく喘ぐ私の顔を、目を閉じて優しく撫でるリョウ。
「…っ…い…入れて…」
私はリョウに馬乗りになり、震えながら懇願していた。そんな私の顔を両手で挟み、軽くキスをすると、リョウは起き上がって私の股間にショーツ越しに手を当てる。「凄い。ビチャビチャだよ?」
そして私を仰向けに寝かせ、ショーツに手を入れると「まだ…。手でしてあげる」と、指を押し当てたクリトリスをグリグリと揉み始める。私の身体に、さっきよりも強い衝撃が走った。
「!んあっ…んっ…な…っ…なにこ…れ…ぅあ…っ!!」
気持ちいい?と私の顔を見て問いかけるリョウ。
「う…うん…っ…あうっ…あ…っ!…す…っごくいい…っ!」
リョウは悪戯っぽく「ええ~?ダメだよこのくらいで驚いてちゃ…」と笑うと「まだまだここから本番なんだから」と言葉を続け、慣れた手付きでコンドームを付ける。
ええ…っ?もう既に頭が真っ白でおかしくなりそうなのに、まだこの上が?
リョウは喘ぎ続ける私のクリトリスやヴァギナを刺激し続けながら、私の上に腹這いになると再び乳首を舐めて吸った。
「ああ…は…っ…んん…っ…あっ…あ…ん…っ!」
さらに激しい快感が私を襲い、全身が硬直、そして弛緩する。
「はぁっ、はぁっ…いっ…いい…っ!」
身体をバタつかせる私をまた不意に抱きしめてリョウが言う。
「…入れていい?」
ああ。いよいよ来る…。知らないものが…。
思わず少し緊張して身体を強張らせながら「…!う、うん……い いいよ…」と答えると、ヴァギナの入り口に熱い肉の塊を感じた。
…のも束の間、それは私の下の口を無理矢理こじ開けてグイグイ入り込もうとする。
「…いっ…いたっ…!」
思わず声が出る。リョウは動きを止め「大丈夫、ゆっくり入れるから」と、ゆっくり小刻みにピストン運動をし始めた。
「あ…っ…でも…っ…いい…っ…き…きもち…い…っ!!」
痛みの中に次第に不思議な快感が増して来る。さっきまでと次元が違う。身体の真ん中を走り抜けるだけの快感とは違い、今度のは全身を包み込む力強い衝撃。
リョウのピストンが段々激しさを増す。
「…ぁっ…!うあ…っ…はぁ…んっ!ああっ!!」
喘ぎ続ける私に問いかけるリョウ。
「奥まで入れていい?」
「ん…いい…よ…っ…お…ねが…ああいっ…!」
涙目で変な言葉を発し続ける私の中にリョウはズブズブと入り込む。
「!!あああああっ!!あああ…い…っ…イク…っ…イク…っ!!はっ…ああっ…ああああっ!!!」
全身を包み込む快感は更に激しさを増し、気絶しないのが不思議なくらいに私の頭は朦朧としていた。まさか、まだこの上が…?
「ダメだよ?まだ終わらないよ?」
「次は一緒にイこう?」
馬乗りのまま、だらんと弛緩した私の両腕を掴んでリョウが言う。
間髪入れず、再びペニスを今度は最初から奥まで挿し込む。
「あっ!!!も…もうやっ…やめ…っ!」
疲れから痛みを覚えた私は一瞬拒絶の言葉が口から漏れるも、
「…!あ…っ…でも…い…っ…いい…っ…いい…っ!!」
すぐに再び襲い来る快感に身体が悦び始める。
リョウは私の奥を激しく突き始めた。
「あっ…あああっ…!!んっんっ…いっ…いい…っ!!もっと…もっとぉおおお…っ!!!」
気付くと仰向けのまま、私も腰を動かしていた。そうか、セックスってしてもらうんじゃなく、二人でするものなんだね。
「んっ…出る…出して…いい…っ?」
リョウが喘ぎながら言う。
「…い…っ…はっ…は…っあっ!!んあっ…いい…よ…あっ…っ!!」
そう言うや否や、更に激しく腰を動かすリョウ。
「!あああああーっ!!んんんーっ…あっ!!ダ…ダメ…い…イキそう…っ!!!」
「…出る…でる…っ!」
「あああああんっ!!いっ…いいよっ…!!!あ!あああああああ!!!あああああああっ…!!!!」
ドクン!とペニスの膨らみを感じ、私たちは絶頂に達して果てた。
リョウは全身濡れた私を優しく撫で回しながら、自身も私の上に腹這いのまま、目を閉じた。
翌朝、私たちはまたまぐわい、その後シャワーを浴びてリョウは帰った。
付き合う、と約束を交わしたわけでは無かった。でもその日曜日、一日中私は昨夜と今朝のまぐわいを幾度も反芻し、そしてこれからのリョウとの日々に仄かな期待を寄せ、恍惚とし続けた。
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