追放配信 ~最強ちびっ子冒険者カイと美少女エルフのわくわくダンジョン動画撮影記♪時々ざまぁ~

ななくさ ゆう

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第5章 ちびっ子B-Tuber大量出現!?レインボーブーストポーションの陰謀

第6話 ダンジョンの子ども達

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 突然のサニアの訪問から一夜明けて。
 ぼくとイリエナちゃんは今日もダンジョンにやって来ていた。
 今日の第1階層は森のダンジョン。
 第1階層を歩きながら、イリエナちゃんがぼくに言った。

「あの、カイさん」
「なぁに? イリエナちゃん?」
「例のポーションのことなんですけど」
「レインボーブーストポーション?」

 イリエナちゃんは頷いた。

「はい」
「気にすることはないよ。ぼくはあんなの使ってないって、動画でちゃんと言ったし」

 昨日、サニアが去ってからぼくは緊急で動画を上げた。
 なにしろ、勝手にCM動画に名前を使われたのだ。
 しかも、大嘘な内容だもん。
 視聴者の皆さんにちゃんと『あれは嘘だよ』ってお知らせしないとね!

「それはそうなんですけど……」

 イリエナちゃんはまだ何か言いたそうだ。

「どうかしたの?」
「もし、あのポーションがあったら、私も第6階層に行けるんじゃないかなって」

 あー、なるほど。

「でも、サニアは子どもにしか効果が無いって言ってたよ」

 わすれがちだけど、イリエナちゃんは15歳。
 子どもにしか聞かないポーションの効果があるかは微妙だと思う。

「それは試してみないと分からないですけど……」
「それにさ。ブースト系のポーションで強くなっても、自分の力じゃないし。だからこそ、今日の撮影じゃん」
「それは、そうですけど……」

 うーん、なんだかイリエナちゃんが煮え切らない。
 このままだと危ないかなぁ。

 今日の目標はイリエナちゃん1人でコボルトを倒すこと。
 動画のタイトルは『イリエナちゃん1人でコボルトを倒してみたよ』とかかな?

 コボルトは魔法使いには倒しにくい相手だ。
 何しろ、イリエナちゃんが歌い出す前に、棍棒でゴッチーンってされちゃうから。
 でもでも、第6階層に行こうと思ったら、イリエナちゃん1人でもコボルトくらい倒せないとダメだよね。

 ってことで、さっそくコボルト発見!

「じゃあ、イリエナちゃん。がんばって」
「はい!」

 今回、ぼくは手を出さない。
 もちろん、本当に危なくなったら助けるつもりだけどね。

 コボルトは牙をむいてこちらに遅いかかてきた。
 イリエナちゃんは魔法のステッキをかまえた。
 ステッキから風が吹き出す。
 コボルトを倒すような力は無いけど、動きが鈍くなった。
 同時にイリエナちゃんは【炎の歌】を歌う。

 風と炎が一体になって、コボルトに襲いかかった。
 コボルトはあっさりと焼け焦げ、やがて小さな魔石になった。

 イリエナちゃんは大喜びで魔石をひろいに走った。

「やりました! カイさん」

 喜ぶイリエナちゃんの気持ちは分かる。
 だけど。

 ぼくは警告の声を上げた。

「イリエナちゃん! 上!」
「え?」

 それ以上会話を続ける余裕はなかった。
 だって、よろこんで魔石を拾おうとするイリエナちゃんに、頭上からイエローバタフライが襲いかかっていたんだから!

 ぼくは【風刃】のスキルでイエローバタフライをやっつけた。
 その時になって、ようやくイリエナちゃんは自分が襲われかけていたと気づいたらしい。

「油断大敵だよ、イリエナちゃん」
「ごめんなさい……」
「ううん。コボルトはちゃんと倒せたし、がんばったよ」
「はい。でも、こんなんだ第6階層には行けないですよね」
「うん、もうちょっと修行しないとね」

 とはいえ、どうしたものか。
 イリエナちゃんの歌魔法は間違いなく強力だ。
 でも、発動まで時間がかかる。 
 今みたいに油断しているところを不意打ちされることもある。
 それに対応するためには、やっぱり物理系のスキルも身につけてもらうしかないかなぁ。
 でも、一朝一夕で剣を使うようになるのは無理だよねぇ。
 
 昨日、サニアが言っていたように、魔法使いならレインボーブーストポーションがほしくなるっていうのは、あながち間違ってはないのかも……

 ……って、ダメダメ。 
 ブースト系のポーションを必ずしも否定はしないけど、サニアを頼るなんてどんな目に遭うかわかんないもん。

 と。
 通路の向こうからコボルト3匹が襲いかかってきた。

「イリエナちゃん!」
「はい!」

 イリエナちゃんは再び魔法のステッキを構えた。
 風が吹き出す。
 同時に【炎の歌】を歌い始め……るまえに、コボルトとイリエナちゃんの間に3人の少年が現れた。
 そのうち1人は長髪だから、女の子かも。
 年齢は全員10歳くらい?
 武具は持っていない。

【俊足】のスキルで回り込んだのか?
 ぼくにすら見えないスピードだった。

 っていうか、この子達、たしか!?

「え?」

 イリエナちゃんは慌てて歌をやめた。
 この状態で【炎の歌】を使ったら、コボルトよりも目の前の少年達を焼いてしまいいかねない。

「へっへ、コボルトか。雑魚だな。やるぞ!」
「おう!」
「わかったわ」

 3人は言って、素手でコボルトに殴りかかる。
 ぼくとイリエナちゃんはぼーぜんとそれを見守った。

 少年達のパンチいっぱつずつで、3匹のコボルトは、それぞれ頭蓋骨を粉砕されて魔石へと変わった。
 少年たちががイリエナちゃんに言った。

「へへへっ、危なかったな」
「お礼はいいぞ。当然のことをしたまでだ」
「私たちにとっては良い獲物だしね」

 うーん、なんだろう。
 善意で助けようとしてくれたのかもしないけど、やっていることは獲物の横取りだ。

 ちょっぴりプンスカしながら、ぼくは言った。

「きみたち、じゃましないでよ!」
「ああ、なんだよ? せっかく助けてやったのに!」
「別に助けなんていらないもん」

 実際、この子達が何もしなくてもイリエナちゃんはコボルト達を倒せたと思う。
 仮にそれが無理でも、ぼくが助けたし。
 だけど。少年達はぼくに言った。
 
「なんだと、このガキ!」
「ほっとけよ。そんなヤツ」
「仲間がピンチなのに後ろで震えているような戦士もどきだろ」

 うう。なんかちょっぴりムカムカ。
 っていうか、この子達の方がよっぽどチビじゃないか。
 それにさ。

「ポーション頼みの君たちにいわれたくなよ!」

 そうぼくが言うと、彼らは目を細めた。

「へー、俺たちのこと知っているんだ」
「うん。レインボーブーストポーションのCMに出演していたよね」

 そう。
 目の前にいる彼らこそ、昨日見たどうがで、レインボーブーストポーションを使っていた少年パーティのひとつだった。

「勝手にぼくの名前使ってくれてさ!」

 ぼくがそういうと、少年達は「ああ?」とちょっと戸惑った。

「ひょっとして、お前、カイってやつ?」
「そうだよ!」
「なるほどねぇ……。早速会えるとは運が良いな」

 彼らはニヤリと笑ってから、ぼくに襲いかかってきた!
 って、なんで!!???
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