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第5章 ちびっ子B-Tuber大量出現!?レインボーブーストポーションの陰謀

第3話 カイのライバル!? ちびっ子B-Tuber大量出現!!

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「大変っす、カイくん! ライバル出現っす! それも大量出現っす! 意味わかんないっす!」

 マリアさんはあわてまくっていて、何が何だか分からない。
 そんなマリアさんの後頭部を、プリラおねーさんがチョップした。

「いたたた、なにするっすか、プリラさん」
「それじゃあ、わかんないわよ。カイくんもイリエナちゃんもびっくりしちゃってるじゃない」

 うん、たしかに全然わかんない。

「そ、そうっすね。とにかくこの動画を見てほしいっす」

 ふくふく亭の食堂で、ぼくらはマホレットをのぞき込んだ。
 マホレットに映し出されているのは、ダンジョンの映像だ。
 数人の冒険者グループが、冒険しているらしい。
 典型的なB-Tubeのダンジョン冒険動画……なんだけど。

「これ、子ども?」

 3人の冒険者達は全員子どもだった。
 背丈はぼくと同じくらい? もう少し低いかな?

 イリエナちゃんがたずねた。

「これ、この子達だけで冒険しているんですか?」
「そうみたいっす。完全にカイくんのライバルっすよ」

 たしかに。
 ぼくの動画が評判になった大きな理由は、ちびっ子冒険者だったからだ。
 ちびっ子B-Tuberが他に現れたというなら、ぼくにとってはライバルだ。
 でも、それ以上に問題なのが……

 イリアナちゃんが首をかしげた。

「カイさんより年下に見えますけど」
「はい。動画の最初に全員10歳って言っていたっす」

 その言葉に、ぼくは顔をしかめた。

「本当に子どもじゃん」

 ぼくが言うのもなんだけどさ。
 いくらなんでも無茶だ。
 この国では13歳で成人。成人前の子達だけでダンジョンなんて!

「この子たちだけじゃないっす」

 マリアさんが次々と動画を見せてくれた。
 そのどれもが、子ども達だけでダンジョンを冒険しているB-Tube動画だった。
 なかには、10歳どころか7歳の子もいた。
 もう、子どもどころか幼児だ。

 イリエナちゃんが不安そうな顔を浮かべた。

「あの、これ……危ないですよね?」
「うん、この子達がどれだけ強いかは知らないけど……」

 プリラおねーさんも顔をしかめた。

「やっぱりそう思うわよね?」
「うん、いくらなんでもまずいよ」

 たしかに、ぼくは物心つく頃にはダンジョンに立ち入っていた。
 でも、それはお父さんやお母さんと一緒にだ。
 あの規格外の2人と一緒だったから無事だっただけだ。
 お母さんは罠を見破る名人だから、転移の罠とかも心配なかったし。

 イリエナちゃんが心配そうな顔をみせた。

「この子達、無事だったんでしょうか?」

 ぼくは「うん」とうなずいた。

「動画をUPしている以上、この時は無事帰還できたはずだよ」

 ダンジョン内でもしもの事があれば、動画のUPはできない。

 ……ってあれ?

「そもそも、未成年だとギルドに登録できないよね? B-Tuberにはなれないんじゃない?」

 この国なら13歳。他の国でも多少の差こそあれ、10歳では未成年だと思う。
 冒険者ギルドに登録するためには成人している必要がある。
 ダンジョンにいくだけなら、ギルドへの登録は必要ないが、B-Tubeに動画をUPするなら話は別だ。

 ぼくの言葉に、マリアさんはうなずいた。

「その通りっす。実はこの動画、UPしているのは全部同じ人っす」

 意味がわかんない。

「もう少し、動画の続きを見てほしいっす。」

 最初の10歳3人パーティの前にモンスターが現れた。
 レッドゴブリン。
 強敵とまでは言わないけど、弱いモンスターでもない。

 少年達は叫んだ。

「よし! みんな! レインボーブーストポーションだ!」

 すると、彼らはふところから小さな瓶を取り出した。
 その中には虹色の液体が入っている。

 イリエナちゃんが首を捻る。

「ブーストポーション? なんですか、それ?」
「一時的に力とか素早さとかをUPさせるお薬だよ。でも、あんな色のブーストポーションはみたことないな」

 正直、ブーストポーションは値段が高い割に効き目は微妙だ。
 力が上がると言っても、2倍も3倍もになるわけじゃない。
 そんなものに頼るようじゃ駄目だって、お父さんは言っていた。

 なんだけど。

 レインボーポーションの威力は絶大だった。
 飲んだ瞬間、少年達はマホメラが追い切れないようなスピードで動き、すででレッドゴブリンをたたきのめしたのだ。

「すごい……」

 イリエナちゃんがそういうのも無理はない。
 ぼくが【俊足】を使っても、彼らのスピードには追いつけそうもない。

「元から強い子達なのかな?」

 首を捻るぼくに、マリアさんは首を横に振った。

「たぶん、違うっす」

 と、そこで動画の映像が切り替わった。
 どうやら、どこかの町の道具屋らしい。
 少年達は口をそろえて言った。

『超強力!あのちびっ子冒険者カイも使っているレインボーブーストポーション!B-netで好評発売中! 君もちびっ子冒険者になろう!』

 と、そこで唐突に動画が終わった。
 ぼくは戸惑うことしかできない。

「え、えーっと???」

 混乱するぼくに、マリアさんは言った。
 他の動画も同じっす。

 ぼくも確認したけど、どの動画も子ども達がレインボーブーストポーションを飲んで、モンスターを倒し、最後にこう言っていた。

『超強力!あのちびっ子冒険者カイも使っているレインボーブーストポーション!B-netで好評発売中! 君もちびっ子冒険者になろう!』

 どういうこと、これ?

「ねえ、マリアさん、これ何?」
「CMっすね」
「CM?」
「コマーシャル動画。このレインボーブーストポーションを売り出すための宣伝っす」
「宣伝……」

 いまいちピンとこないぼくに、プリラおねーさんが説明してくれた。

「つまり、カイくんみたいに、ちびっ子冒険者になりたいって子に、このレインボーブーストポーションを売ろうとしているのよ」
「お値段はけっこうするっすね。でも、お試し価格もあるみたいっす」

 いや、あの、えーっと???

「ぼく、あんなポーション使ってないよ!?」

 問題はそこだ。
 いや、そこだけじゃないかもだけど。

 プリラおねーさんが言った。

「子ども達を危険な目にあわせて、自分の商品のCMをさせる。しかもカイくんが使っているなんて嘘までついて。どういうつもりなのかしら」

 イリエナちゃんが首を捻る。

「これ、ほうっておいていいんでしょうか?」

 マリアさんが困り顔で答えた。

「あんまりよくなさい気もするっすけど、だからってどうしたらいいものか……」

 だよねー。
 ぼくは思いついて言ってみた

「おじいちゃんに相談してみるとか?」

 プリラおねーさんが頷いた。

「ギルド支部長様か……たしかに私たちが相談できる相手といったらそのくらいかしらね……」

 などと言っていたときだった。

 ふくふく亭に思わぬお客さんがやって来た。
 彼女はぼくを見ていった。

「お久しぶりね、カイ」

 冷たく笑ったその女性は。

「サニア!!」

 あのアグレットの相棒、サニアだった。
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