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第4章 アグレット大炎上!
第5話 アグレットの終焉(中編)
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一気にアグレットの背後へと回り込む。
アグレットはぼくの動きを目で追うこともできていない様子だ。
「なっ!?」
ぼくはアグレットの脇腹を思いっきり蹴飛ばした。
アグレットはその場でうずくまった。
もちろん、イリエナちゃんをつかみ続けることなどできるはずもない。
解放されたイリエナちゃんは、ぼくに駆け寄ってきた。
「カイさん、ありがとうございます」
「大丈夫、イリエナちゃん?」
「はい」
「恐い思いをさせてごめんね、イリエナちゃん。ぼくがおトイレなんかに行ったから」
ぼくのバカ!
何が「冒険者に悪い人はいない」だ。
アグレットみたいなヤツもいるって知っていたのに。
「でも、カイさんのことを信じていましたから……」
そっかぁ、信じてくれたんだ。
「ありがとう、イリエナちゃん」
「わたしこそごめんなさい。あっさり捕まっちゃって。せっかくカイさんからプレゼントしてもらったステッキも上手く使えなくて……」
そういえば、イリエナちゃんにプレゼントしたステッキが床に転がっていた。
「イリエナちゃんが無事で良かったよ。大丈夫、ケガはすぐ治すから」
ぼくは言いながら、イリエナちゃんの首の傷に回復魔法をかけた。
首の切り傷はすぐに消えた。
「ありがとうございます」
そう言うと、イリエナちゃんはぼくの胸にしがみついて泣き出した。
恐かったんだろうな。
「もう大丈夫だから、ね」
「はい……すみません、みっともないですよね。でも、でも……」
イリエナちゃんの涙はすぐには止まりそうもない。
一方、アグレットは苦しげにうめいていた。
手加減なしで蹴飛ばしたし、内蔵付近の骨の1本や二本折れているかもしれない。
でも、罪悪感なんてないよ。
だって、イリエナちゃんをこんな目に遭わせたんだからっ!
ぼくはイリエナちゃんを抱きしめたまま、倒れてうめき続けるアグレットを睨んだ。
最初はダンジョンの中でぼくを攻撃してきた。
だけど、ぼくは復讐なんて考えなかった。
自分の夢の方が大切だったからだ。
次はプリラおねーさんにひどいことをしようとした。
それでも、両足を折るだけで許した。
ギルドから追い出される姿に、ざまぁみろとは思ったけど、それ以上何かしようとは思わなかった。
だけど。
その結果がこれだ。
イリエナちゃんに恐い思いをさせた。
ううん。
一歩間違えていたら、イリエナちゃんを殺されていたかもしれない。
もし、そうなっていたら……
「アグレット、覚悟はできてる?」
ぼくの口から出た声は、自分のものとは思えないくらい冷たかった。
ああ、そうだ。
ぼくは怒っている。
こんなに腹が立ったのは初めてだ。
イリエナちゃんがそっとぼくから離れた。
「カイさん……?」
「イリエナちゃん、ちょっとだけ待ってて。決着を付けるから」
そう言って、ぼくは腰の剣を抜いた。
「カイさん、なにを……?」
決まってる。
今度こそ許せない。
アグレットを……
倒れてうめくアグレットに、ぼくは剣を向けた。
「アグレット、何か言うことはある?」
もし、ここでアグレットが心から謝罪してくれたら……
もしかして、ぼくも許せたかもしれない。
もう一発蹴飛ばして、それで終わりにしたかも。
でも、アグレットが吐き捨てたのは別の言葉だった。
「クソガキどもがっ、いつかぶっ殺す!」
ああ、これはダメだ。
今許したら、きっと次はもっとひどいことになる。
ぼくを襲ってくるならまだいい。
また返り討ちにするだけだ。
でも、プリラおねーさんやイリエナちゃんや、あるいはマリアさんに何かされたら……
そんなことは許せない。
だから。
ぼくは剣を振り上げた。
イリエナちゃんが声を上げた。
「カイさんっ!」
きっと、イリエナちゃんはぼくを止めようとしてくれたんだと思う。
それはイリエナちゃんの優しさだと思う。
思うけど。
ぼくだって、人殺しなんてしたくないけど。
まして、一時でも仲間だったアグレットにこんなことしたくないけど。
でも。
前にギルド長のおじいちゃんも言っていた。
優しさと甘さは違う。
これ以上、アグレットに甘いことはできない。
だから、ぼくはっ!!
ぼくがアグレットめがけて剣を振り下ろそうとしたときだった!
「そこまで!!」
ギルドの中に響いたのは、ギルド支部長のおじいちゃんの声だった。
アグレットはぼくの動きを目で追うこともできていない様子だ。
「なっ!?」
ぼくはアグレットの脇腹を思いっきり蹴飛ばした。
アグレットはその場でうずくまった。
もちろん、イリエナちゃんをつかみ続けることなどできるはずもない。
解放されたイリエナちゃんは、ぼくに駆け寄ってきた。
「カイさん、ありがとうございます」
「大丈夫、イリエナちゃん?」
「はい」
「恐い思いをさせてごめんね、イリエナちゃん。ぼくがおトイレなんかに行ったから」
ぼくのバカ!
何が「冒険者に悪い人はいない」だ。
アグレットみたいなヤツもいるって知っていたのに。
「でも、カイさんのことを信じていましたから……」
そっかぁ、信じてくれたんだ。
「ありがとう、イリエナちゃん」
「わたしこそごめんなさい。あっさり捕まっちゃって。せっかくカイさんからプレゼントしてもらったステッキも上手く使えなくて……」
そういえば、イリエナちゃんにプレゼントしたステッキが床に転がっていた。
「イリエナちゃんが無事で良かったよ。大丈夫、ケガはすぐ治すから」
ぼくは言いながら、イリエナちゃんの首の傷に回復魔法をかけた。
首の切り傷はすぐに消えた。
「ありがとうございます」
そう言うと、イリエナちゃんはぼくの胸にしがみついて泣き出した。
恐かったんだろうな。
「もう大丈夫だから、ね」
「はい……すみません、みっともないですよね。でも、でも……」
イリエナちゃんの涙はすぐには止まりそうもない。
一方、アグレットは苦しげにうめいていた。
手加減なしで蹴飛ばしたし、内蔵付近の骨の1本や二本折れているかもしれない。
でも、罪悪感なんてないよ。
だって、イリエナちゃんをこんな目に遭わせたんだからっ!
ぼくはイリエナちゃんを抱きしめたまま、倒れてうめき続けるアグレットを睨んだ。
最初はダンジョンの中でぼくを攻撃してきた。
だけど、ぼくは復讐なんて考えなかった。
自分の夢の方が大切だったからだ。
次はプリラおねーさんにひどいことをしようとした。
それでも、両足を折るだけで許した。
ギルドから追い出される姿に、ざまぁみろとは思ったけど、それ以上何かしようとは思わなかった。
だけど。
その結果がこれだ。
イリエナちゃんに恐い思いをさせた。
ううん。
一歩間違えていたら、イリエナちゃんを殺されていたかもしれない。
もし、そうなっていたら……
「アグレット、覚悟はできてる?」
ぼくの口から出た声は、自分のものとは思えないくらい冷たかった。
ああ、そうだ。
ぼくは怒っている。
こんなに腹が立ったのは初めてだ。
イリエナちゃんがそっとぼくから離れた。
「カイさん……?」
「イリエナちゃん、ちょっとだけ待ってて。決着を付けるから」
そう言って、ぼくは腰の剣を抜いた。
「カイさん、なにを……?」
決まってる。
今度こそ許せない。
アグレットを……
倒れてうめくアグレットに、ぼくは剣を向けた。
「アグレット、何か言うことはある?」
もし、ここでアグレットが心から謝罪してくれたら……
もしかして、ぼくも許せたかもしれない。
もう一発蹴飛ばして、それで終わりにしたかも。
でも、アグレットが吐き捨てたのは別の言葉だった。
「クソガキどもがっ、いつかぶっ殺す!」
ああ、これはダメだ。
今許したら、きっと次はもっとひどいことになる。
ぼくを襲ってくるならまだいい。
また返り討ちにするだけだ。
でも、プリラおねーさんやイリエナちゃんや、あるいはマリアさんに何かされたら……
そんなことは許せない。
だから。
ぼくは剣を振り上げた。
イリエナちゃんが声を上げた。
「カイさんっ!」
きっと、イリエナちゃんはぼくを止めようとしてくれたんだと思う。
それはイリエナちゃんの優しさだと思う。
思うけど。
ぼくだって、人殺しなんてしたくないけど。
まして、一時でも仲間だったアグレットにこんなことしたくないけど。
でも。
前にギルド長のおじいちゃんも言っていた。
優しさと甘さは違う。
これ以上、アグレットに甘いことはできない。
だから、ぼくはっ!!
ぼくがアグレットめがけて剣を振り下ろそうとしたときだった!
「そこまで!!」
ギルドの中に響いたのは、ギルド支部長のおじいちゃんの声だった。
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