追放配信 ~最強ちびっ子冒険者カイと美少女エルフのわくわくダンジョン動画撮影記♪時々ざまぁ~

ななくさ ゆう

文字の大きさ
上 下
23 / 43
第3章 ドキドキの初コラボ!エルフの歌い手イリエナちゃん

第5話 イリエナちゃんの夢、ぼくの夢

しおりを挟む
 サンドイッチを食べながら、イリエナちゃんはこれまでのことと自分の夢を語った。

「エルフ族ってほとんど里から出ない自給自足の生活をしているんです。でも、わたしはわたしの歌を世界中のみんなにとどけたくて。でも、里から出ることは許されなかったんです」
「そうなんだ」
「だから、せめて歌い手になりたいと思って。でも、それも両親に反対されちゃって。当時11歳の私にはマホメラやマホレットを手に入れることすら難しかったんです」

 悔しかったとイリエナちゃんは言う。
 ぼくにも少しだけその気持ちは分かる。
 お父さんやお母さんはB-Tuberのことをあんまりよく思ってなくて。
 独り立ちするまで、B-Tuberになることを許してもらえなかったんだ。

 ぼくがそう言うと、イリエナちゃんは頷いた。

「お互い、親には苦労しますね」
「そうだよねー」
「でも、わたしも諦めきれなくて。里の歌祭りで優勝してわがまま言いました」
「歌祭り?」
「はい。優勝するとなんでも好きな物をもらえるんです。それで、マホメラとマホレットを手に入れて歌い手になれたんです」

 冒険者ギルドとちがって、芸能ギルドはマホレットがあれば、ギルドに直接訪れなくても登録できるらしい。
 歌い手として有名になるうちに、イリエナちゃんはさらなる夢を持った。

「わたし、みんなにエルフの歌声をもっともっと届けたいんです」
「うん、ぼくもイリエナちゃんのお歌を聴けてうれしかったよ!」
「ありがとうございます。でも、動画だと歌魔法としての効果は無いみたいで。わたしは歌魔法の力も見せたいんです」

 イリエナちゃんは自分の歌を聴かせたいだけじゃない。
 エルフ歌魔法の価値をもっと知ってほしいんだという。

「もちろん、大人たちには大人たちの考えがあると思います。でも、わたしにはもったいないとしか思えないんです」
「そうだね。歌魔法はすごいよ!」
「はい。回復だけじゃなくて攻撃の歌魔法も使えます。冒険者としてもきっと役に立つはずです」

 なるほどなぁ。
 それがイリエナちゃんの夢なんだ。

「だから、冒険者としての実績が欲しかったんです。今人気急上昇中の冒険者とコラボしようって思って。カイくんなら年齢も近いですし、天才少年冒険者と天才少女歌い手って話題になりそうだなぁって」

 たしかに、大人とコラボするよりも話題になるかもしれない。

「利用するようで申し訳ありません。不愉快でしょうか?」
「そんなことはないよ! イリエナちゃんとコラボして、ぼくもいっぱいお勉強できたし、とっても楽しいし、それに……」

 ぼくはそこで言葉を句切った。
 正直に言ってもいいのかな?
 イリエナちゃんがここまで言ってくれたんだから、言うべきだよね。

「ぼくだって、『自分の夢のためにイリエナちゃんのことを利用しよう』っていう気持ちもあったから」
「カイくんの夢ってなんですか?」
「世界一のB-Tuber……ダンジョン動画配信者になること」

 それがぼくの夢。

「ぼくもイリエナちゃんと同じだよ。ダンジョン攻略系B-Tuberの動画を初めて見たとき、すっごくカッコイイって憧れたんだ。でもさ、さっきも言ったとおり、お父さんもお母さんもぼくがB-Tuberになるのに反対で」
「どうしてですか?」
「2人とも動画配信みたいなミーハーなことは嫌いなんだって。だから、ぼくは13歳になって独り立ちを許されるまで我慢したんだ」

 その後はアグレットみたいなクズにたよっちゃったり、プリラおねーさんやマリアさんに助けられたりと色々あったんだけどね。

「世界一のB-Tuberになるのがぼくの夢。今回も人気の歌い手とコラボしたら動画がもっとバズるかなぁって考えたりしたよ」

 ぼくが考えたというよりも、マリアさんにそうアドバイスされたっていう方が正しいけど。

「そうだったんですね」
「あ、でもでも、イリエナちゃんとコラボするのは楽しいよ! これは本当」
「わたしもカイくんとコラボができてとってもうれしいです」

 それから、ぼくらはもっともっと色々お話しした。
 エルフの里のこと、イリエナちゃんの歌魔法のこと、ぼくの両親やふくふく亭のみんなのこと。
 それから、それから……
 他にもいっぱいいっぱいだ。
 イリエナちゃんとお話をするのはとっても楽しくて。
 この時間がずっと続けばいいのにって感じていた。

「お互い、子どもだからって認めてもらえないのはつらかったよね」
「そうですね……」
「でも、ぼくらはも成人したんだ。自分の夢に向かって頑張ろうよ」
「はい」

 そのあと、ぼくはジッと考えた。
 イリエナちゃんの夢のために、ぼくにできることは何だろう?

 そして思い出す。
 アグレットたちと組んだときのこと。
 あいつらのことはいまでも許せないけど。
 
……でも。
 あの時、ぼくは自分ばかり活躍して、アグレットたちの活躍を取っちゃった。
 それは確かにぼくにももんだいがあったわけで。
 今回のコラボでも、それは同じかもしれない。
 ここまで、イリエナちゃんは戦っていない。
 もちろん、それはイリエナちゃんを危ない目に遭わせたくなかったからだけど……

 でも、イリエナちゃんの夢のためにはそれじゃダメだ。
 だから、ぼくは提案した。

「午後はイリエナちゃんがモンスターを倒してみようよ!」

 イリエナちゃんは目をまん丸にしてビックリした様子だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

転生しても山あり谷あり!

tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」 兎にも角にも今世は “おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!” を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?

処理中です...