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第3章 ドキドキの初コラボ!エルフの歌い手イリエナちゃん
第5話 イリエナちゃんの夢、ぼくの夢
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サンドイッチを食べながら、イリエナちゃんはこれまでのことと自分の夢を語った。
「エルフ族ってほとんど里から出ない自給自足の生活をしているんです。でも、わたしはわたしの歌を世界中のみんなにとどけたくて。でも、里から出ることは許されなかったんです」
「そうなんだ」
「だから、せめて歌い手になりたいと思って。でも、それも両親に反対されちゃって。当時11歳の私にはマホメラやマホレットを手に入れることすら難しかったんです」
悔しかったとイリエナちゃんは言う。
ぼくにも少しだけその気持ちは分かる。
お父さんやお母さんはB-Tuberのことをあんまりよく思ってなくて。
独り立ちするまで、B-Tuberになることを許してもらえなかったんだ。
ぼくがそう言うと、イリエナちゃんは頷いた。
「お互い、親には苦労しますね」
「そうだよねー」
「でも、わたしも諦めきれなくて。里の歌祭りで優勝してわがまま言いました」
「歌祭り?」
「はい。優勝するとなんでも好きな物をもらえるんです。それで、マホメラとマホレットを手に入れて歌い手になれたんです」
冒険者ギルドとちがって、芸能ギルドはマホレットがあれば、ギルドに直接訪れなくても登録できるらしい。
歌い手として有名になるうちに、イリエナちゃんはさらなる夢を持った。
「わたし、みんなにエルフの歌声をもっともっと届けたいんです」
「うん、ぼくもイリエナちゃんのお歌を聴けてうれしかったよ!」
「ありがとうございます。でも、動画だと歌魔法としての効果は無いみたいで。わたしは歌魔法の力も見せたいんです」
イリエナちゃんは自分の歌を聴かせたいだけじゃない。
エルフ歌魔法の価値をもっと知ってほしいんだという。
「もちろん、大人たちには大人たちの考えがあると思います。でも、わたしにはもったいないとしか思えないんです」
「そうだね。歌魔法はすごいよ!」
「はい。回復だけじゃなくて攻撃の歌魔法も使えます。冒険者としてもきっと役に立つはずです」
なるほどなぁ。
それがイリエナちゃんの夢なんだ。
「だから、冒険者としての実績が欲しかったんです。今人気急上昇中の冒険者とコラボしようって思って。カイくんなら年齢も近いですし、天才少年冒険者と天才少女歌い手って話題になりそうだなぁって」
たしかに、大人とコラボするよりも話題になるかもしれない。
「利用するようで申し訳ありません。不愉快でしょうか?」
「そんなことはないよ! イリエナちゃんとコラボして、ぼくもいっぱいお勉強できたし、とっても楽しいし、それに……」
ぼくはそこで言葉を句切った。
正直に言ってもいいのかな?
イリエナちゃんがここまで言ってくれたんだから、言うべきだよね。
「ぼくだって、『自分の夢のためにイリエナちゃんのことを利用しよう』っていう気持ちもあったから」
「カイくんの夢ってなんですか?」
「世界一のB-Tuber……ダンジョン動画配信者になること」
それがぼくの夢。
「ぼくもイリエナちゃんと同じだよ。ダンジョン攻略系B-Tuberの動画を初めて見たとき、すっごくカッコイイって憧れたんだ。でもさ、さっきも言ったとおり、お父さんもお母さんもぼくがB-Tuberになるのに反対で」
「どうしてですか?」
「2人とも動画配信みたいなミーハーなことは嫌いなんだって。だから、ぼくは13歳になって独り立ちを許されるまで我慢したんだ」
その後はアグレットみたいなクズにたよっちゃったり、プリラおねーさんやマリアさんに助けられたりと色々あったんだけどね。
「世界一のB-Tuberになるのがぼくの夢。今回も人気の歌い手とコラボしたら動画がもっとバズるかなぁって考えたりしたよ」
ぼくが考えたというよりも、マリアさんにそうアドバイスされたっていう方が正しいけど。
「そうだったんですね」
「あ、でもでも、イリエナちゃんとコラボするのは楽しいよ! これは本当」
「わたしもカイくんとコラボができてとってもうれしいです」
それから、ぼくらはもっともっと色々お話しした。
エルフの里のこと、イリエナちゃんの歌魔法のこと、ぼくの両親やふくふく亭のみんなのこと。
それから、それから……
他にもいっぱいいっぱいだ。
イリエナちゃんとお話をするのはとっても楽しくて。
この時間がずっと続けばいいのにって感じていた。
「お互い、子どもだからって認めてもらえないのはつらかったよね」
「そうですね……」
「でも、ぼくらはも成人したんだ。自分の夢に向かって頑張ろうよ」
「はい」
そのあと、ぼくはジッと考えた。
イリエナちゃんの夢のために、ぼくにできることは何だろう?
そして思い出す。
アグレットたちと組んだときのこと。
あいつらのことはいまでも許せないけど。
……でも。
あの時、ぼくは自分ばかり活躍して、アグレットたちの活躍を取っちゃった。
それは確かにぼくにももんだいがあったわけで。
今回のコラボでも、それは同じかもしれない。
ここまで、イリエナちゃんは戦っていない。
もちろん、それはイリエナちゃんを危ない目に遭わせたくなかったからだけど……
でも、イリエナちゃんの夢のためにはそれじゃダメだ。
だから、ぼくは提案した。
「午後はイリエナちゃんがモンスターを倒してみようよ!」
イリエナちゃんは目をまん丸にしてビックリした様子だった。
「エルフ族ってほとんど里から出ない自給自足の生活をしているんです。でも、わたしはわたしの歌を世界中のみんなにとどけたくて。でも、里から出ることは許されなかったんです」
「そうなんだ」
「だから、せめて歌い手になりたいと思って。でも、それも両親に反対されちゃって。当時11歳の私にはマホメラやマホレットを手に入れることすら難しかったんです」
悔しかったとイリエナちゃんは言う。
ぼくにも少しだけその気持ちは分かる。
お父さんやお母さんはB-Tuberのことをあんまりよく思ってなくて。
独り立ちするまで、B-Tuberになることを許してもらえなかったんだ。
ぼくがそう言うと、イリエナちゃんは頷いた。
「お互い、親には苦労しますね」
「そうだよねー」
「でも、わたしも諦めきれなくて。里の歌祭りで優勝してわがまま言いました」
「歌祭り?」
「はい。優勝するとなんでも好きな物をもらえるんです。それで、マホメラとマホレットを手に入れて歌い手になれたんです」
冒険者ギルドとちがって、芸能ギルドはマホレットがあれば、ギルドに直接訪れなくても登録できるらしい。
歌い手として有名になるうちに、イリエナちゃんはさらなる夢を持った。
「わたし、みんなにエルフの歌声をもっともっと届けたいんです」
「うん、ぼくもイリエナちゃんのお歌を聴けてうれしかったよ!」
「ありがとうございます。でも、動画だと歌魔法としての効果は無いみたいで。わたしは歌魔法の力も見せたいんです」
イリエナちゃんは自分の歌を聴かせたいだけじゃない。
エルフ歌魔法の価値をもっと知ってほしいんだという。
「もちろん、大人たちには大人たちの考えがあると思います。でも、わたしにはもったいないとしか思えないんです」
「そうだね。歌魔法はすごいよ!」
「はい。回復だけじゃなくて攻撃の歌魔法も使えます。冒険者としてもきっと役に立つはずです」
なるほどなぁ。
それがイリエナちゃんの夢なんだ。
「だから、冒険者としての実績が欲しかったんです。今人気急上昇中の冒険者とコラボしようって思って。カイくんなら年齢も近いですし、天才少年冒険者と天才少女歌い手って話題になりそうだなぁって」
たしかに、大人とコラボするよりも話題になるかもしれない。
「利用するようで申し訳ありません。不愉快でしょうか?」
「そんなことはないよ! イリエナちゃんとコラボして、ぼくもいっぱいお勉強できたし、とっても楽しいし、それに……」
ぼくはそこで言葉を句切った。
正直に言ってもいいのかな?
イリエナちゃんがここまで言ってくれたんだから、言うべきだよね。
「ぼくだって、『自分の夢のためにイリエナちゃんのことを利用しよう』っていう気持ちもあったから」
「カイくんの夢ってなんですか?」
「世界一のB-Tuber……ダンジョン動画配信者になること」
それがぼくの夢。
「ぼくもイリエナちゃんと同じだよ。ダンジョン攻略系B-Tuberの動画を初めて見たとき、すっごくカッコイイって憧れたんだ。でもさ、さっきも言ったとおり、お父さんもお母さんもぼくがB-Tuberになるのに反対で」
「どうしてですか?」
「2人とも動画配信みたいなミーハーなことは嫌いなんだって。だから、ぼくは13歳になって独り立ちを許されるまで我慢したんだ」
その後はアグレットみたいなクズにたよっちゃったり、プリラおねーさんやマリアさんに助けられたりと色々あったんだけどね。
「世界一のB-Tuberになるのがぼくの夢。今回も人気の歌い手とコラボしたら動画がもっとバズるかなぁって考えたりしたよ」
ぼくが考えたというよりも、マリアさんにそうアドバイスされたっていう方が正しいけど。
「そうだったんですね」
「あ、でもでも、イリエナちゃんとコラボするのは楽しいよ! これは本当」
「わたしもカイくんとコラボができてとってもうれしいです」
それから、ぼくらはもっともっと色々お話しした。
エルフの里のこと、イリエナちゃんの歌魔法のこと、ぼくの両親やふくふく亭のみんなのこと。
それから、それから……
他にもいっぱいいっぱいだ。
イリエナちゃんとお話をするのはとっても楽しくて。
この時間がずっと続けばいいのにって感じていた。
「お互い、子どもだからって認めてもらえないのはつらかったよね」
「そうですね……」
「でも、ぼくらはも成人したんだ。自分の夢に向かって頑張ろうよ」
「はい」
そのあと、ぼくはジッと考えた。
イリエナちゃんの夢のために、ぼくにできることは何だろう?
そして思い出す。
アグレットたちと組んだときのこと。
あいつらのことはいまでも許せないけど。
……でも。
あの時、ぼくは自分ばかり活躍して、アグレットたちの活躍を取っちゃった。
それは確かにぼくにももんだいがあったわけで。
今回のコラボでも、それは同じかもしれない。
ここまで、イリエナちゃんは戦っていない。
もちろん、それはイリエナちゃんを危ない目に遭わせたくなかったからだけど……
でも、イリエナちゃんの夢のためにはそれじゃダメだ。
だから、ぼくは提案した。
「午後はイリエナちゃんがモンスターを倒してみようよ!」
イリエナちゃんは目をまん丸にしてビックリした様子だった。
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