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第3章 ドキドキの初コラボ!エルフの歌い手イリエナちゃん
第4話 ダンジョンに響くイリエナちゃんの歌声♪
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イリエナちゃんの透き通るような歌声が、結界の間に響いた。
そのとても心地よい音色に、ぼくだけじゃなくみんなが耳を傾けていた
うたっているイリエナちゃんは神秘的だ。
女神様の像の前で歌うイリエナちゃんに神々しさすら感じた。
あったかくて、うつくしくて、ぼくはとってもぽかぽかした。
(すごい……)
ふくふく亭で聞いたときもびっくりしたけど、体の疲れがすーっと取れていく。
それだけじゃない。心がとても安らかになっていく。
冒険者の誰かが言った。
「なんで!? さっきオオトカゲに噛まれた傷が消えた」
これが、エルフ族の【癒やしの歌】の効果だ。
心や体の疲労をとるだけでなく、怪我までも治癒する神秘の歌。
いつのまにか、ぼくは……ぼくらは身動き一つせず、イリエナちゃんの歌に聴き惚れていた。
やがて、【癒やしの歌】をうたい終え、イリエナちゃんはゆっくりと頭を下げた。
気がつくと、ぼくらはみんなそろって拍手をしていた。
イリエナちゃんは頭を上げて「ありがとうございます」と笑った。
「すごいや、イリエナちゃん!」
感激で涙すら流れそうになるほどイリエナちゃんはすごかった。
ぼくに続いて、みんなも声援を送る。
「ほんとだぜ、俺、こんなに心引かれる歌を聴いたのははじめてだ!」
「エルフ族ってみんなこんな歌をうたえるのか?」
「すっげー、怪我だけじゃなくて疲労も回復した」
「ひょっとするとMPも回復しているかも……」
「歌い手でカイとコラボ動画ってことは、どこかの動画サイトでこの歌を聴けるのか?」
そんな声に、イリエナちゃんは1つずつ答えていく。
これが大人気歌い手のファンサービスなのか。
ぼくも参考にしなくちゃ。
「それにしても、体力だけじゃなくて、怪我まで治しちゃうなんてすごいね!」
「エルフ族に伝わる歌魔法ですから」
これは本当にすごいよ!
ここにいるみんなを一気に回復しちゃうなんて、ぼくのお母さんの魔法でも難しいかも。
イリエナちゃんはニッコリ笑ったまま言った。
「【癒やしの歌】をうたって、少し疲れちゃいました。カイくんの横に座っても良いですか?」
「うん、もちろんだよ」
イリエナちゃんはぼくの横にちょこんと座った。
2人で肩を寄せ合っていると、ぼくの心臓が再びどくんどくんと飛び跳ね始めた。
【癒やしの歌】で気持ちが落ち着いたはずなのに。
「今は何時くらいでしょうか?」
「えーっと……」
森のダンジョンは空も太陽も見える。
でもその太陽は動かない。時間の参考にはできないのだ。
ぼくは【時計】の魔法を使ってみた。
「ちょうどお昼だね。せっかくだから、お弁当を食べようか」
「はい」
ぼくらはそれぞれのリュックから、プリラおねーさん特製サンドイッチを取り出した。
ふくふく亭の大人気お持ち帰りメニューだ。
大きくお口をあけて頬張ると、柔らかいパンとみずみずしいお野菜、それに美味しいソースのかかった鶏肉が口いっぱいに広がった。
「美味しい! わたし、こんなに美味しいサンドイッチ初めてです」
プリラおねーさんのサンドイッチを褒められて、ぼくはちょっとうれしくなった。
「でしょでしょ、プリラおねーさんのサンドイッチは最高でしょ。サンドイッチだけじゃなくて、他のお料理もすごく美味しいんだよ!」
ぼくがそう言うと、イリエナちゃんはちょっと小首をかしげた。
「カイくんはプリラさんのことが好きなんですか?」
「もちろんっ!」
「そうなんですね……」
あれ、どうしたんだろう?
ちょっとだけイリエナちゃんの声が暗い。
そんなに疲れちゃったのかな?
「マリアさんやイリエナちゃんやお母さんと同じくらい好き!」
「そ、そうですか……なんだかちょっぴり複雑な気持ちです……」
そんな会話を聞いていた冒険者たちが、ちょっとあきれたような声を出した。
「カイのあれ、天然か?」
「天然だろ」
「天然だよなぁ」
???
なんのことだろう???
イリエナちゃんが吐息のあと言った。
「戦っているカイくんはかっこいいですけど、こういう時のカイくんは憎たらしいくらいに幼いですね」
幼い……か。ガキってよく言われるもんなぁ。
「ぼくって、やっぱりガキなのかなぁ」
「ええ、とってもお子様です。でもそこがカイくんの魅力なのかもしれませんね」
う、うーん。よくわかんないや。
でも、このままこの話題を続けると、色々と自爆しそうな予感がする。
話題を変えよう。
「イリエナちゃんはどうしてエルフの歌魔法を広めたいの?」
いくら15歳とはいえ、エルフの里から遠く離れたアンバの町まで1人でやって来て、ダンジョンにまで入るなんて相当な覚悟だ。
すでに歌い手として十分有名人なのに、どうしてそこまでするんだろう?
「そうですね。少しお話ししましょうか」
イリエナちゃんは自分の夢をぼくに語ってくれた。
そのとても心地よい音色に、ぼくだけじゃなくみんなが耳を傾けていた
うたっているイリエナちゃんは神秘的だ。
女神様の像の前で歌うイリエナちゃんに神々しさすら感じた。
あったかくて、うつくしくて、ぼくはとってもぽかぽかした。
(すごい……)
ふくふく亭で聞いたときもびっくりしたけど、体の疲れがすーっと取れていく。
それだけじゃない。心がとても安らかになっていく。
冒険者の誰かが言った。
「なんで!? さっきオオトカゲに噛まれた傷が消えた」
これが、エルフ族の【癒やしの歌】の効果だ。
心や体の疲労をとるだけでなく、怪我までも治癒する神秘の歌。
いつのまにか、ぼくは……ぼくらは身動き一つせず、イリエナちゃんの歌に聴き惚れていた。
やがて、【癒やしの歌】をうたい終え、イリエナちゃんはゆっくりと頭を下げた。
気がつくと、ぼくらはみんなそろって拍手をしていた。
イリエナちゃんは頭を上げて「ありがとうございます」と笑った。
「すごいや、イリエナちゃん!」
感激で涙すら流れそうになるほどイリエナちゃんはすごかった。
ぼくに続いて、みんなも声援を送る。
「ほんとだぜ、俺、こんなに心引かれる歌を聴いたのははじめてだ!」
「エルフ族ってみんなこんな歌をうたえるのか?」
「すっげー、怪我だけじゃなくて疲労も回復した」
「ひょっとするとMPも回復しているかも……」
「歌い手でカイとコラボ動画ってことは、どこかの動画サイトでこの歌を聴けるのか?」
そんな声に、イリエナちゃんは1つずつ答えていく。
これが大人気歌い手のファンサービスなのか。
ぼくも参考にしなくちゃ。
「それにしても、体力だけじゃなくて、怪我まで治しちゃうなんてすごいね!」
「エルフ族に伝わる歌魔法ですから」
これは本当にすごいよ!
ここにいるみんなを一気に回復しちゃうなんて、ぼくのお母さんの魔法でも難しいかも。
イリエナちゃんはニッコリ笑ったまま言った。
「【癒やしの歌】をうたって、少し疲れちゃいました。カイくんの横に座っても良いですか?」
「うん、もちろんだよ」
イリエナちゃんはぼくの横にちょこんと座った。
2人で肩を寄せ合っていると、ぼくの心臓が再びどくんどくんと飛び跳ね始めた。
【癒やしの歌】で気持ちが落ち着いたはずなのに。
「今は何時くらいでしょうか?」
「えーっと……」
森のダンジョンは空も太陽も見える。
でもその太陽は動かない。時間の参考にはできないのだ。
ぼくは【時計】の魔法を使ってみた。
「ちょうどお昼だね。せっかくだから、お弁当を食べようか」
「はい」
ぼくらはそれぞれのリュックから、プリラおねーさん特製サンドイッチを取り出した。
ふくふく亭の大人気お持ち帰りメニューだ。
大きくお口をあけて頬張ると、柔らかいパンとみずみずしいお野菜、それに美味しいソースのかかった鶏肉が口いっぱいに広がった。
「美味しい! わたし、こんなに美味しいサンドイッチ初めてです」
プリラおねーさんのサンドイッチを褒められて、ぼくはちょっとうれしくなった。
「でしょでしょ、プリラおねーさんのサンドイッチは最高でしょ。サンドイッチだけじゃなくて、他のお料理もすごく美味しいんだよ!」
ぼくがそう言うと、イリエナちゃんはちょっと小首をかしげた。
「カイくんはプリラさんのことが好きなんですか?」
「もちろんっ!」
「そうなんですね……」
あれ、どうしたんだろう?
ちょっとだけイリエナちゃんの声が暗い。
そんなに疲れちゃったのかな?
「マリアさんやイリエナちゃんやお母さんと同じくらい好き!」
「そ、そうですか……なんだかちょっぴり複雑な気持ちです……」
そんな会話を聞いていた冒険者たちが、ちょっとあきれたような声を出した。
「カイのあれ、天然か?」
「天然だろ」
「天然だよなぁ」
???
なんのことだろう???
イリエナちゃんが吐息のあと言った。
「戦っているカイくんはかっこいいですけど、こういう時のカイくんは憎たらしいくらいに幼いですね」
幼い……か。ガキってよく言われるもんなぁ。
「ぼくって、やっぱりガキなのかなぁ」
「ええ、とってもお子様です。でもそこがカイくんの魅力なのかもしれませんね」
う、うーん。よくわかんないや。
でも、このままこの話題を続けると、色々と自爆しそうな予感がする。
話題を変えよう。
「イリエナちゃんはどうしてエルフの歌魔法を広めたいの?」
いくら15歳とはいえ、エルフの里から遠く離れたアンバの町まで1人でやって来て、ダンジョンにまで入るなんて相当な覚悟だ。
すでに歌い手として十分有名人なのに、どうしてそこまでするんだろう?
「そうですね。少しお話ししましょうか」
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