追放配信 ~最強ちびっ子冒険者カイと美少女エルフのわくわくダンジョン動画撮影記♪時々ざまぁ~

ななくさ ゆう

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第2章 カイの大躍進とアグレットの没落

第1話 クソがっ!なんであのガキが俺より先に動画配信を始めてんだよ!《アグレット視点》

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 病室のベッドの上で、マホレットに表示された動画を見ながら、俺は叫んだ。

「クソがっ!」

 となりのベッドで寝ているサニアがつまらなそうに言った。

「うっさいわねぇ。何かあったの?」
「カイのやろー、オレたちが入院している間にB-Tuberになりやがった!」
「へー、そう」
「なんであのガキが俺より先に動画配信を始めているんだよ!?」
「知らないわよ」
「お前はムカつかないのかよ!?」

 だが、サニアは「ふんっ」とそっぽを向いた。

「ムカつくに決まってるでしょ。カイよりもアンタにね!!」
「はぁ!? なんで俺にムカつくんだよ!? 意味わかんねー」
「あんたがあの子を追放したあげく、うかつにトロールに斬りかかってあたしまで大怪我したのよ! ムカつくに決まってるでしょ!!」

 サニアはそう吐き捨てた。
 考えてみればこの女もクソだ。
 幼なじみだからしかたなくパーティに入れてやったというのに、まったく役に立たない。
 なにしろ、リーダーの俺より自分の回復を優先してトロールから逃げようとしやがったんだからな!
 俺は数日前の忌々しい出来事を思い出した。



 俺はダンジョン第12階層でトロールに殺されかけた。
 が、踏み殺される直前、運良く日付変更時刻を迎えた。
 ダンジョンは日付変更時刻に構造が変わり、内部にいる人間は強制的にダンジョンの外へ排出されるのだ。
 おかげで俺とサニアは死なずにダンジョンから脱出できた
 ま、日頃の行いが良かったのだろうな。

 だが、俺が半死半生の状態であることには変わりない。右腕右足、さらに肋骨も折れていた。他にも擦り傷切り傷など多数だ。
 ちなみにサニアは右腕と右足を捻挫していたらしい。
 なんで、俺よりサニアの方が軽傷なんだよ!

 冒険者がダンジョンから強制排出される時間、ギルドはダンジョンの入り口付近に毎日救護所を作っている。
 ダンジョン内で怪我をした冒険者を治療し、病院に運ぶためだ。
 俺の肋骨の骨折は命に関わるとして、優先的に回復魔法で治療されたが、手足の怪我は後回しにされて、入院するハメになった。
 医者にもMPマジツクパワーの限界があるとかなんとか説明された。クソが。

 で、病室で痛む腕に鞭打って適当にB-Tubeを閲覧していた。暇だしな。
 そしたら偶然カイの動画チャンネルを見つけたのだ。
 どうせ人気なんて出てないだろうが……と思って確認したら、1日で再生数が700に達しようとしていた。
 ちなみにB-Tuberは1日で500回再生されるようになれば初心者卒業と言われている。

「なんで、あんなクソガキの配信が700再生も行くんだよ!? インチキしてるんじゃねーのか? 自分で何度も再読み込みして再生数を稼いでんだろ!!」

 悔しさのあまり叫ぶ俺に、サニアが冷めた口調で言った。

「再読み込みで再生数を稼げたのなんて5年前まででしょ。今は同じ端末から何度動画を見ても再生数はプラスされないわよ」
「きっと、何か裏技でインチキをしているんだ」
「そんな裏技があるかは知らないけど、仮にあったとしてもあのクソガキにそんな知識があるとも思えないわね」
「サニア! てめぇ、どっちの味方なんだよ!?」
「別に。事実を言っただけ。あたしはカイと同じくらい、アンタにもムカついているから」

 くぅぅぅ! このクソ女がっ!

「テメェ、ぶっ殺すぞ!」
「うっさいわね。アンタとカイのせいで、あたしまでトロールに殺されかけたんだからね!」

 俺はその後もマホレットをいじった。
 すると、さらに嫌なものを見つけてしまった。

「なんだよ、このスレッド!?」
「今度は何よ?」
「『最強ちびっ子ダンジョン配信者カイくんを見守るスレ』だとよ!」
「へー、そんなんがあるんだ」
「どうせあのガキの自作自演だろっ!! ゆるせねー、こんなスレッドぶっ潰してやる」
「また『最強の神』? やめときなさいよ」

 俺は冒険者掲示板ではちょっとばかり有名なコテハン『最強の神』なのだ。
 こんなスレ潰すくらいわけがない……と思ったが、あっという間に俺への反論レスがあふれかえる。

「くそっ、こいつら俺のことをバカにしやがって!!」
「恥ずかしい男ね」
「るっせーよ!」

 なんだこいつら。
 俺を論破しているつもりか?
 絶対に負けねーぞ。
 怒りに震えながら書き込み続ける俺に、サニアが冷めた声で言った。

「どーせまた論破されて負けるくせに」
「いいや、今回も俺の勝ちだ。こいつら俺に勝てないと知ってNG登録しやがったぜ」
「うわぁ……それで勝利宣言とか、本当にゴミ男ね」

 あきれ顔で言いながら、サニアはベッド脇にあるテーブルの上から魔法の杖を手に取った。

「おい、何をしているんだよ?」

 返事はなかったが、ヤツがなにをしたかはすぐに分かった。
 サニアは回復魔法を自分自身にかけたのだ。

「MPが切れてたんじゃねーのかよ?」
「ふん、一晩寝たらある程度回復したわよ。当たり前でしょ」
「だったら、とっとと俺の怪我も治しやがれ」

 サニアは冷たい表情で言った。

「ムリムリ。悪いけど自分の治療だけで精一杯だわ」
「俺はトップオブゴッドのリーダーだぞ」
「へー、そうなんだ。じゃあ入院費の支払いはリーダーさんにお任せするわね」

 サニアはそう言って病室から出ようとした。

「てめぇ、こら、サニア! 待ちやがれ!」
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