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第1章 追放されたちびっ子冒険者カイ、動画配信者になる
第1話 ちびっ子冒険者カイ、ダンジョンで追放される
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「きゃぁぁぁ!」
トロールの巨体を目の前にして、サニアの悲鳴がダンジョン内に響き渡った。
「サニア、あぶない!}
ぼくは叫んでトロールの首を一刀両断!
首から上を失ったトロールは倒れ、黒い霧となって消えた。
あとに残されたのは魔石だけだ。
すると、パーティリーダーのアグレットが怒りの表情で叫んだ。
「カイ! お前はトップオブゴッドから追放だ!」
ぼくはビックリしてしまった。
「どうして!? 一緒に世界一のダンジョン動画配信者を目指そうって言ったじゃないか!」
なんでアグレットは怒っているんだろう?
ぼくはこの数日のことを思い出してみた。
10日ほど前、ぼくは13歳になった。
成人を迎えて、両親から独り立ちすることが許される年齢になったんだ。
念願だったダンジョン動画配信者……B-Tuberになろう!
そう思って、仲間を探すため、ぼくは意気揚々と冒険者ギルドに向かった。
だけど、ぼくは最初の第一歩でつまずいてしまった。
ぼくを仲間にしてくれる冒険者がなかなか見つからなかったんだ。
理由はぼくが「ガキ」だから。
この国では13歳になると法律上成人とされる。
しかし現実にはまだまだ一人前と見なされない年齢らしい。
しかも、ぼくは13歳の中でも「チビ」だ。
そんななか、アグレットとサニアのパーティ――トップオブゴッドがぼくを仲間に入れてくれた。
しかも彼らはいずれ世界一のB-Tuberを目指すという、ぼくと同じ夢を持っていた。
ぼくは運命を感じ、アグレットをリーダーとした3人パーティになった。
チビのガキでもパーティに入れてくれるんだと大喜びして。
今日ぼくらは、初めて3人でダンジョンに訪れた。
ぼくは役に立とうとはりきってがんばった。
2人に迷惑をかけないように、いっぱいモンスターをやっつけて、宝物やオーブを探した。
第12階層までやってきたら、トロールが襲いかかってきた。
ぼくが10歳の時には倒せたモンスターだ。
それで、冒頭のようにぼくがトロールの首を一刀両断したんだ。
……うーん、思い返してみても、やっぱり何が悪かったのかよくわからない。
あっ、ひょっとして、トロールなんてザコを相手にサニアをかばったのが失礼だったのかも。
そうだよね。
それじゃあまるで、サニアがトロール以下みたいじゃないか。
うん、たしかにぼくが悪かったのかも。
ぼくはペコリと頭を下げた。
「ごめん。トロールなんかを相手に失礼だったよね。サニアが弱いって意味じゃないんだ」
そう謝ったんだけど、今度はアグレットだけじゃなくてサニアまで怒り出しちゃった。
「なによ、あんた!? とことん上から目線ね! あたしのことバカにしてんの!?」
一方、アグレットは空中に浮いたマホメラを手に取り、スイッチを切った。
マホメラとは、動画を撮影するためのアイテムだ。
「ホント、ふざけるなよ、カイ! テメェばっかりモンスターを倒しやがって!! 自分の活躍だけ撮影してうれしいのかよ!!??」
ぼくはようやく気がついた。
たしかにここまで、ぼくばかりがモンスターをやっつけてきた。
これじゃあ、アグレットやサニアの活躍が全然撮影できていない。
2人の役に立とうと張り切りすぎたのだ。
「ご、ごめん! ぼくそんなつもりじゃ……」
「ガキを優しく導く好青年キャラとしてウリだそうと思ったのに、これじゃあ撮れ高ゼロじゃねーか!!」
アグレットが怒った理由は分かったけど、追放は困る。
やっとぼくのことを受け入れてくれるパーティを見つけたのに!
「これからは2人にもモンスターを譲るから追放は勘弁してよ」
「うるせぇんだよ、クソガキがっ! 大人をナメるのもいい加減にしろよ!! 今すぐ追放!! 消えろっていってるんだよ!!!!」
ついに、アグレットがロングソードを抜いてぼくに向けた。
こうなると、さすがにぼくも腹が立ってくる。
お父さんも言っていた。
ダンジョン内で仲間に武器を向けるのは、冒険者として絶対の禁忌だって。
一方、サニアがアグレットに言った。
「でもここって第12階層よ。あの子を追い出しちゃって大丈夫? もしもまたトロールが出てきたら……」
「へん、心配するなよ。あんなガキに一瞬で倒されるモンスターくらい、俺がどうにでもしてやるさっ!」
「そうよね。頼りにしているわ。マイダーリン♡」
そう言って、サニアはアグレットに抱きついた。
「分かったら消えろよ、クソガキ!」
アグレットがぼくに斬りかかってきた。
「わっ? わっ、わわっ!? ちょっと待ってよ!」
ぼくはアグレットの剣を飛び跳ねてよけた。
すると、アグレットはさらにいらついた声を上げた。
「消えろって言っているのがわかんねーのかよ!?」
「で、でもぼく……」
ぼくが立ち去ろうとしないのを見て、今度はサニアが魔法の杖を構えた。
「いいかげん、消えなさいよ、クソガキ」
サニアの杖から火の玉が飛んでくる。
くそっ、こうなったら戦うか?
だけど、1対2で勝てるかは分からない。
何よりダンジョン内での冒険者同士の戦いは御法度だ。
いくら相手から攻撃してきたとはいえ、お互いが傷ついた状態でモンスターに襲われたら最悪すぎる。
ちくしょう、しょうがない!
「わかったよ! もういい! 誰がお前たちなんかと組むもんかっ!!」
ぼくは叫んでから【脱出】の魔法を使ってダンジョンから帰還したのだった。
ぼくはプンスカ怒りながら拠点にしているアンバの町へと戻ってきた
(アグレットとサニア、絶対に許せない!)
そりゃ、ぼくもちょっとハリキリすぎたよ。
2人の活躍を全部奪っちゃったと言われればそうかもしれない。
でもいきなり追放して、剣や魔法で攻撃してくるなんてひどすぎる!
……とはいえ、他に仲間に入れてくれそうな冒険者もいなかったしなぁ
こうなったら、1人で活動するしかないのだろうか。
でもなぁ。
ダンジョン攻略だけならともかく、動画撮影や動画編集まで1人でやるのは難しいよなぁ。
そもそも、撮影のためのマホメラや、編集のためのマホレットも持っていないし……
やっぱりぼくみたいなガキがB-Tuberになるのは無理なのかな?
いやいやいや、ダメだ! 弱気になるな!
独り立ちしたあの日、絶対に世界一のB-Tuberになるって誓ったじゃないか!!
反対するお父さんや、心配そうなお母さんにもそう宣言した。
なにより、これでぼくが諦めたらアグレットたちは大笑いするだろう。
そんなの悔しすぎる!
こうなったら意地でもあいつらには負けられない!!
あの2人がギャフンというくらいすごいB-Tuberになってみせる!!!
ぼくが拳を握りしめて、やる気の炎をメラメラと燃え上がらせていたとき。
「きゃぁぁぁっ!」
裏路地の方から女の人の悲鳴が聞こえた。
お父さんは言っていた。
困っている人がいたら助けてあげなさいって。
ぼくは【俊足】のスキルを使って、悲鳴のした方に向かった。
ぼくが裏路地に着いたとき、美人なおねーさんがはげ頭で筋肉もりもりな男達に囲まれていた。
おねーさんはおびえた表情だ。服は泥で汚れ、胸の辺りが破れている。
なんとなくだけど状況が想像できた。
男達は泥棒で、おねーさんに襲いかかったんだろう。
これは助けてあげないとダメだよね。
大人の男が5人もいるし、勝てるかどうか分からないけど……
ぼくは男達とおねーさんの間に割って入って叫んだ。
「やめなよ!」
男達とおねーさんはびっくりした顔で、ぼくを見つめていた。
---------
(用語説明)
マホレット:魔法のタブレット
マホメラ:魔法のカメラ
トロールの巨体を目の前にして、サニアの悲鳴がダンジョン内に響き渡った。
「サニア、あぶない!}
ぼくは叫んでトロールの首を一刀両断!
首から上を失ったトロールは倒れ、黒い霧となって消えた。
あとに残されたのは魔石だけだ。
すると、パーティリーダーのアグレットが怒りの表情で叫んだ。
「カイ! お前はトップオブゴッドから追放だ!」
ぼくはビックリしてしまった。
「どうして!? 一緒に世界一のダンジョン動画配信者を目指そうって言ったじゃないか!」
なんでアグレットは怒っているんだろう?
ぼくはこの数日のことを思い出してみた。
10日ほど前、ぼくは13歳になった。
成人を迎えて、両親から独り立ちすることが許される年齢になったんだ。
念願だったダンジョン動画配信者……B-Tuberになろう!
そう思って、仲間を探すため、ぼくは意気揚々と冒険者ギルドに向かった。
だけど、ぼくは最初の第一歩でつまずいてしまった。
ぼくを仲間にしてくれる冒険者がなかなか見つからなかったんだ。
理由はぼくが「ガキ」だから。
この国では13歳になると法律上成人とされる。
しかし現実にはまだまだ一人前と見なされない年齢らしい。
しかも、ぼくは13歳の中でも「チビ」だ。
そんななか、アグレットとサニアのパーティ――トップオブゴッドがぼくを仲間に入れてくれた。
しかも彼らはいずれ世界一のB-Tuberを目指すという、ぼくと同じ夢を持っていた。
ぼくは運命を感じ、アグレットをリーダーとした3人パーティになった。
チビのガキでもパーティに入れてくれるんだと大喜びして。
今日ぼくらは、初めて3人でダンジョンに訪れた。
ぼくは役に立とうとはりきってがんばった。
2人に迷惑をかけないように、いっぱいモンスターをやっつけて、宝物やオーブを探した。
第12階層までやってきたら、トロールが襲いかかってきた。
ぼくが10歳の時には倒せたモンスターだ。
それで、冒頭のようにぼくがトロールの首を一刀両断したんだ。
……うーん、思い返してみても、やっぱり何が悪かったのかよくわからない。
あっ、ひょっとして、トロールなんてザコを相手にサニアをかばったのが失礼だったのかも。
そうだよね。
それじゃあまるで、サニアがトロール以下みたいじゃないか。
うん、たしかにぼくが悪かったのかも。
ぼくはペコリと頭を下げた。
「ごめん。トロールなんかを相手に失礼だったよね。サニアが弱いって意味じゃないんだ」
そう謝ったんだけど、今度はアグレットだけじゃなくてサニアまで怒り出しちゃった。
「なによ、あんた!? とことん上から目線ね! あたしのことバカにしてんの!?」
一方、アグレットは空中に浮いたマホメラを手に取り、スイッチを切った。
マホメラとは、動画を撮影するためのアイテムだ。
「ホント、ふざけるなよ、カイ! テメェばっかりモンスターを倒しやがって!! 自分の活躍だけ撮影してうれしいのかよ!!??」
ぼくはようやく気がついた。
たしかにここまで、ぼくばかりがモンスターをやっつけてきた。
これじゃあ、アグレットやサニアの活躍が全然撮影できていない。
2人の役に立とうと張り切りすぎたのだ。
「ご、ごめん! ぼくそんなつもりじゃ……」
「ガキを優しく導く好青年キャラとしてウリだそうと思ったのに、これじゃあ撮れ高ゼロじゃねーか!!」
アグレットが怒った理由は分かったけど、追放は困る。
やっとぼくのことを受け入れてくれるパーティを見つけたのに!
「これからは2人にもモンスターを譲るから追放は勘弁してよ」
「うるせぇんだよ、クソガキがっ! 大人をナメるのもいい加減にしろよ!! 今すぐ追放!! 消えろっていってるんだよ!!!!」
ついに、アグレットがロングソードを抜いてぼくに向けた。
こうなると、さすがにぼくも腹が立ってくる。
お父さんも言っていた。
ダンジョン内で仲間に武器を向けるのは、冒険者として絶対の禁忌だって。
一方、サニアがアグレットに言った。
「でもここって第12階層よ。あの子を追い出しちゃって大丈夫? もしもまたトロールが出てきたら……」
「へん、心配するなよ。あんなガキに一瞬で倒されるモンスターくらい、俺がどうにでもしてやるさっ!」
「そうよね。頼りにしているわ。マイダーリン♡」
そう言って、サニアはアグレットに抱きついた。
「分かったら消えろよ、クソガキ!」
アグレットがぼくに斬りかかってきた。
「わっ? わっ、わわっ!? ちょっと待ってよ!」
ぼくはアグレットの剣を飛び跳ねてよけた。
すると、アグレットはさらにいらついた声を上げた。
「消えろって言っているのがわかんねーのかよ!?」
「で、でもぼく……」
ぼくが立ち去ろうとしないのを見て、今度はサニアが魔法の杖を構えた。
「いいかげん、消えなさいよ、クソガキ」
サニアの杖から火の玉が飛んでくる。
くそっ、こうなったら戦うか?
だけど、1対2で勝てるかは分からない。
何よりダンジョン内での冒険者同士の戦いは御法度だ。
いくら相手から攻撃してきたとはいえ、お互いが傷ついた状態でモンスターに襲われたら最悪すぎる。
ちくしょう、しょうがない!
「わかったよ! もういい! 誰がお前たちなんかと組むもんかっ!!」
ぼくは叫んでから【脱出】の魔法を使ってダンジョンから帰還したのだった。
ぼくはプンスカ怒りながら拠点にしているアンバの町へと戻ってきた
(アグレットとサニア、絶対に許せない!)
そりゃ、ぼくもちょっとハリキリすぎたよ。
2人の活躍を全部奪っちゃったと言われればそうかもしれない。
でもいきなり追放して、剣や魔法で攻撃してくるなんてひどすぎる!
……とはいえ、他に仲間に入れてくれそうな冒険者もいなかったしなぁ
こうなったら、1人で活動するしかないのだろうか。
でもなぁ。
ダンジョン攻略だけならともかく、動画撮影や動画編集まで1人でやるのは難しいよなぁ。
そもそも、撮影のためのマホメラや、編集のためのマホレットも持っていないし……
やっぱりぼくみたいなガキがB-Tuberになるのは無理なのかな?
いやいやいや、ダメだ! 弱気になるな!
独り立ちしたあの日、絶対に世界一のB-Tuberになるって誓ったじゃないか!!
反対するお父さんや、心配そうなお母さんにもそう宣言した。
なにより、これでぼくが諦めたらアグレットたちは大笑いするだろう。
そんなの悔しすぎる!
こうなったら意地でもあいつらには負けられない!!
あの2人がギャフンというくらいすごいB-Tuberになってみせる!!!
ぼくが拳を握りしめて、やる気の炎をメラメラと燃え上がらせていたとき。
「きゃぁぁぁっ!」
裏路地の方から女の人の悲鳴が聞こえた。
お父さんは言っていた。
困っている人がいたら助けてあげなさいって。
ぼくは【俊足】のスキルを使って、悲鳴のした方に向かった。
ぼくが裏路地に着いたとき、美人なおねーさんがはげ頭で筋肉もりもりな男達に囲まれていた。
おねーさんはおびえた表情だ。服は泥で汚れ、胸の辺りが破れている。
なんとなくだけど状況が想像できた。
男達は泥棒で、おねーさんに襲いかかったんだろう。
これは助けてあげないとダメだよね。
大人の男が5人もいるし、勝てるかどうか分からないけど……
ぼくは男達とおねーさんの間に割って入って叫んだ。
「やめなよ!」
男達とおねーさんはびっくりした顔で、ぼくを見つめていた。
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(用語説明)
マホレット:魔法のタブレット
マホメラ:魔法のカメラ
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