14 / 41
第2部 魔王と勇者、いじめっ子と対決する
第4話 魔王、日記を読む(後編)
しおりを挟む
7月に入ると、ササゴによる影陽へのイジメはさらにエスカレートしていく。
-----------------
〔7月2日(木)〕
あさ、教室に入ったら、ボクの机の上に花瓶に入った白い花が置かれていた。
ササゴが「やっぱ葬式には菊の花だよなぁ」と言った。
そのあと、クラスを見回して「死んだヤツと話をするヤツなんていないよなぁ?」とニヤニヤ笑った。
〔7月6日(月)〕
みんな、ボクをムシする。
話しかけても目も合わせてくれない。
ソラくんに「遊ぼうよ」と言ってもムシされた。
けさは勇美に「家の外では話しかけないで。特に学校では」と言われた。
〔7月8日(水)〕
朝の出欠確認で、先生がボクの名前を飛ばした。
わざとかどうかはわからない。
でも、このところ授業中に手を上げてもさしてくれない。
先生にもムシされるようになったの?
〔7月9日(木)〕
朝、学校に行ったらボクのつくえといすがなかった。
先生に言ったら目をそらされた。
今日はずっと、教室の後ろに立って授業をうけていた。
ボクはいない子?
ボクは死んだの?
ボクはゆうれい?
〔7月14日(火)〕
放課後、ササゴたちに首ねっこを捕まれて校舎裏に連れて行かれた。
絶対ひどい目にあうってわかっていたけど、それでもムシよりマシとちょっとだけおもってしまった。
クラスの男子のほとんどが待ち構えていた。
その中にはそらくんもいた。
ササゴはポケットからナイフを取り出した。
さすがにこわくて泣き出してしまった。
そしたら、みんなに「なきむしだぁ」って笑われた。
ナイフで刺されはしなかったけど、ササゴはボクを花壇の中に蹴飛ばした。
「いつまでも幽霊が学校にくるんじゃねぇ!」
ササゴたちはそう言って、僕の顔を地面にグリグリ押しつけた。
そのあと、土を食べさせられた。
幽霊に給食は贅沢で、土をたべてればいいんだって。いみがわかんないけど。
泥だらけで家に帰ると、ママに「どうしたの?」って聞かれた。
ぜんぶ、本当のことをいいたい。
でも、ママに心配をかけたくない。
それに、子どものケンカに親がでていっていいことなんてない。
前の学校の時だってそうだった。
-----------------
なにが子どものケンカか。
ナイフまで使って脅し、土を食わせるなどケンカではない。
読んでいるだけで腹立たしい。
そらという少年も大概だろう。
影陽に助けてもらったのに、裏切りもいいところだ。
勇美も兄弟がひどい目にあっているのになにもしない。
そして、担任教師まで一緒になってこんな……
同時に俺は思う。
影陽、少しは反撃しろと。
だが、彼が反撃しない理由は直後の日記で分った。
-----------------
〔7月16日(木)〕
コンパスの針で背中を刺された。
痛くて痛くて泣いた。
みんな、そんな僕を見て大笑い。
そらくんと勇美すら、少しにやけていた。。
学級委員長の丸木くんとかは笑いこそしないけど、迷惑そうな目だ。
ボクはハンゲキしたかった。
でも、前にプロレスごっこでハンゲキしたときのことを思い出してしまう。
「逆らうなら、お前の妹とプロレスしようかな」
最初は勇美のことかと思ったけど、そのあと「たしか瀬田谷幼稚園の年長だっけ?」といわれた。
ひかりまでまきこめない。
-----------------
俺はここまで読んで頭が沸騰しそうになった。
ササゴは集団でいじめるのみならず、ひかりにまで手を出そうとしていたのか?
卑怯などという言葉ではすまされん!
元の世界の戦争では、俺だって様々な策略を使った。
後世の歴史家からは『卑怯』といわれるようなことだってしたかもしれない。
それでも、だれかを人質にとるような作戦だけはしなかった。
そういう提案を部下がしたときは却下した。
人道問題もあるが、一度そういう手段にでたら後戻りができなくなる。
かつて、俺の母を人質にとった人族の先代国王と同じにはなりたくなかった。
ササゴという少年が本当にひかりに手を出すつもりだったかは分らない。
だが、しかし……
-----------------
〔7月19日(日)〕
日曜日は安心。
小学校がないから。
お昼すぎに勇美に言われた。
「あんた、もう学校に通うのやめたら?」
いじめられているボクを心配してくれたのかもしれない。
だけど、くやしい。
くやしすぎる。
ボクは泣きながら「ヤダ」と言った。
また、明日は学校だ。
希望はもうすぐ夏休みだってことだ。
-----------------
数日後から、夏休みという長期休暇になったらしい。
夏休みの間、日記はほとんど書かれていない。
学校の宿題で、この日記とは別に『絵日記』を書かなくてはならかったらしい。
ときどきこちらの日記にも数行書かれているが、祖父母の家に行ったとか、楽しそうな文言が多い。
ちなみに絵日記は探したが見つからなかった。学校の宿題だったそうだから、提出してしまったのだろうか。
驚いたのは8月中旬の日記だ。
-----------------
〔8月19日(水)〕
ひさしぶりにそらくんと遊んだ。
ゲーム楽しかった。
ゲームが終わったあと、外で遊ぼうって言ったけど、そらくんは「影陽くんとあそんでいるところをササゴにみつかりたくない」って言っていた。
でも、明日またそらくんっちでゲームする約束をした。
-----------------
影陽、お前まだそらと遊ぶのか。
子供同士のことだ。
日記の一方的な情報だけでは判断できないが、しかし……
そのあと、夏休みが終わるまで日記は書かれていない。
そして、9月になって2学期が始まる。
影陽と勇美の事故まで、あと半月。
そこからの日記は、もはや目を背けたくなるような内容だった。
===============
【♪昭和60年代豆知識♪】
○いじめ問題
詳述は避けますが、この時代、小中学校でのいじめがマスメディアを含め社会問題化しました。
きっかけとなったのはある中学校の事件だったそうです。(固有名詞の記載は避けます。コメントなどにも書かないでください)
ただし、昭和50年代以前にイジメが無かったわけではないでしょうし、平成や令和にイジメがなくなったわけでもありません。
……というわけで、第2部の主なテーマはいじめ問題というか、いじめっ子へのザマァです。
-----------------
〔7月2日(木)〕
あさ、教室に入ったら、ボクの机の上に花瓶に入った白い花が置かれていた。
ササゴが「やっぱ葬式には菊の花だよなぁ」と言った。
そのあと、クラスを見回して「死んだヤツと話をするヤツなんていないよなぁ?」とニヤニヤ笑った。
〔7月6日(月)〕
みんな、ボクをムシする。
話しかけても目も合わせてくれない。
ソラくんに「遊ぼうよ」と言ってもムシされた。
けさは勇美に「家の外では話しかけないで。特に学校では」と言われた。
〔7月8日(水)〕
朝の出欠確認で、先生がボクの名前を飛ばした。
わざとかどうかはわからない。
でも、このところ授業中に手を上げてもさしてくれない。
先生にもムシされるようになったの?
〔7月9日(木)〕
朝、学校に行ったらボクのつくえといすがなかった。
先生に言ったら目をそらされた。
今日はずっと、教室の後ろに立って授業をうけていた。
ボクはいない子?
ボクは死んだの?
ボクはゆうれい?
〔7月14日(火)〕
放課後、ササゴたちに首ねっこを捕まれて校舎裏に連れて行かれた。
絶対ひどい目にあうってわかっていたけど、それでもムシよりマシとちょっとだけおもってしまった。
クラスの男子のほとんどが待ち構えていた。
その中にはそらくんもいた。
ササゴはポケットからナイフを取り出した。
さすがにこわくて泣き出してしまった。
そしたら、みんなに「なきむしだぁ」って笑われた。
ナイフで刺されはしなかったけど、ササゴはボクを花壇の中に蹴飛ばした。
「いつまでも幽霊が学校にくるんじゃねぇ!」
ササゴたちはそう言って、僕の顔を地面にグリグリ押しつけた。
そのあと、土を食べさせられた。
幽霊に給食は贅沢で、土をたべてればいいんだって。いみがわかんないけど。
泥だらけで家に帰ると、ママに「どうしたの?」って聞かれた。
ぜんぶ、本当のことをいいたい。
でも、ママに心配をかけたくない。
それに、子どものケンカに親がでていっていいことなんてない。
前の学校の時だってそうだった。
-----------------
なにが子どものケンカか。
ナイフまで使って脅し、土を食わせるなどケンカではない。
読んでいるだけで腹立たしい。
そらという少年も大概だろう。
影陽に助けてもらったのに、裏切りもいいところだ。
勇美も兄弟がひどい目にあっているのになにもしない。
そして、担任教師まで一緒になってこんな……
同時に俺は思う。
影陽、少しは反撃しろと。
だが、彼が反撃しない理由は直後の日記で分った。
-----------------
〔7月16日(木)〕
コンパスの針で背中を刺された。
痛くて痛くて泣いた。
みんな、そんな僕を見て大笑い。
そらくんと勇美すら、少しにやけていた。。
学級委員長の丸木くんとかは笑いこそしないけど、迷惑そうな目だ。
ボクはハンゲキしたかった。
でも、前にプロレスごっこでハンゲキしたときのことを思い出してしまう。
「逆らうなら、お前の妹とプロレスしようかな」
最初は勇美のことかと思ったけど、そのあと「たしか瀬田谷幼稚園の年長だっけ?」といわれた。
ひかりまでまきこめない。
-----------------
俺はここまで読んで頭が沸騰しそうになった。
ササゴは集団でいじめるのみならず、ひかりにまで手を出そうとしていたのか?
卑怯などという言葉ではすまされん!
元の世界の戦争では、俺だって様々な策略を使った。
後世の歴史家からは『卑怯』といわれるようなことだってしたかもしれない。
それでも、だれかを人質にとるような作戦だけはしなかった。
そういう提案を部下がしたときは却下した。
人道問題もあるが、一度そういう手段にでたら後戻りができなくなる。
かつて、俺の母を人質にとった人族の先代国王と同じにはなりたくなかった。
ササゴという少年が本当にひかりに手を出すつもりだったかは分らない。
だが、しかし……
-----------------
〔7月19日(日)〕
日曜日は安心。
小学校がないから。
お昼すぎに勇美に言われた。
「あんた、もう学校に通うのやめたら?」
いじめられているボクを心配してくれたのかもしれない。
だけど、くやしい。
くやしすぎる。
ボクは泣きながら「ヤダ」と言った。
また、明日は学校だ。
希望はもうすぐ夏休みだってことだ。
-----------------
数日後から、夏休みという長期休暇になったらしい。
夏休みの間、日記はほとんど書かれていない。
学校の宿題で、この日記とは別に『絵日記』を書かなくてはならかったらしい。
ときどきこちらの日記にも数行書かれているが、祖父母の家に行ったとか、楽しそうな文言が多い。
ちなみに絵日記は探したが見つからなかった。学校の宿題だったそうだから、提出してしまったのだろうか。
驚いたのは8月中旬の日記だ。
-----------------
〔8月19日(水)〕
ひさしぶりにそらくんと遊んだ。
ゲーム楽しかった。
ゲームが終わったあと、外で遊ぼうって言ったけど、そらくんは「影陽くんとあそんでいるところをササゴにみつかりたくない」って言っていた。
でも、明日またそらくんっちでゲームする約束をした。
-----------------
影陽、お前まだそらと遊ぶのか。
子供同士のことだ。
日記の一方的な情報だけでは判断できないが、しかし……
そのあと、夏休みが終わるまで日記は書かれていない。
そして、9月になって2学期が始まる。
影陽と勇美の事故まで、あと半月。
そこからの日記は、もはや目を背けたくなるような内容だった。
===============
【♪昭和60年代豆知識♪】
○いじめ問題
詳述は避けますが、この時代、小中学校でのいじめがマスメディアを含め社会問題化しました。
きっかけとなったのはある中学校の事件だったそうです。(固有名詞の記載は避けます。コメントなどにも書かないでください)
ただし、昭和50年代以前にイジメが無かったわけではないでしょうし、平成や令和にイジメがなくなったわけでもありません。
……というわけで、第2部の主なテーマはいじめ問題というか、いじめっ子へのザマァです。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる