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6.残酷な投票ルール

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 話し合いタイムが終わると、ユグゥラが丸く並べられた机の中心に降り立った。

「それでは投票タイム、レッツ&スタートなのじゃ!」

 ユグゥラはいつの間にか紙と鉛筆を持っていた。

「これから鉛筆と投票用紙を配るから、そこにいじめっ子だと思う相手の名前を書くのじゃ。書き終えたら教卓の上にある投票箱に入れること」

 拳太は言われて黒板の前にある教卓を見た。
 そこには『投票箱』と書かれた銀色の箱があった。

(さっきまであんな箱なかったはずなのに)

 ユグゥラが置いた様子はなかったが、これも神様の力だとでも言うのだろうか。
 ユグゥラが紙と鉛筆をそれぞれの机の上に配っていく。
 全員に鉛筆と投票用紙が渡された時、夏風が右手を挙げた。

「ユグゥラ、投票の前に、いくつか確認したいことがあるんだけどいいかしら?」
「ふむ。なんじゃ?」
「1番投票数が多かった人が脱落になるのよね?」
「そのとおりじゃ」
「脱落者はどうなるのかしら?」

 夏風の言葉に、拳太の心臓が高鳴る。

(まさか、脱落したらその場で殺されるとか?)

「心配するな、玉村夏風。ゲームが最終的に決着するまで殺しはせん。脱落者にも後で役割があるからな。もちろん、いじめっ子が脱落したなら、その時点でゲームセットじゃから命はないわけじゃが」

 その言葉に、夏風はうなずいた。

「なるほど、安心したわ。仮に今回私が脱落しても、すぐに殺されはしないわけね」

 安心したのは拳太も同じだ。今回の投票で自分が殺される心配はない。

「お主がいじめっ子でなければそのとおりじゃな」

 夏風はその言葉にはなにも反応せず、さらにたずねた。

「もうひとつ聞くわ。この少人数で投票となると、最多得票者が複数出る可能性もそこそこありそうだけど、その場合はどうなるのかしら?」
「ふむ、そうじゃのう。可能性として考えられるのは2票投じられた者が2人出る場合と、5人全員が1票ずつの場合か」

 そのとおりだ。5人で投票する以上、3票以上投じられる人が複数名出ることはない。

「2票投じられた者が2人いた場合は、2人とも脱落。5人全員に1票ずつ投じられた場合は……」

 ユグゥラはそこで邪悪な笑みを浮かべた。

「全員敗北でゲームセットじゃな」

 その瞬間、5人の顔に緊張が走った。
 拳太は恐る恐る確認した。

「つまり、5人全員が1票ずつだった場合、問答無用で全員が殺されるってこと?」

 ユグゥラはあっさりうなずいた。

「そのとおりじゃ」

 その答えに、ヤマトが再び泣き出し、いちごと夏風も顔をゆがめた。

(願いを叶えるのは命がけか)

 やはりユグゥラは神様というよりも悪魔かなにかではないのか。
 拳太は無意識のうちに、またポケットの中のお守りをギュッと握っていた。

(優衣)

 妹の顔を思い浮かべ、それから拳太は重要な疑問が残っていることに気がついた。

「今回の投票で脱落者になった場合でも、その後いじめられっ子チームが勝てば願いを叶えてもらえる?」

 ユグゥラが答える。

「そりゃあ無理じゃな。願いを叶えてやるのは最後まで脱落せずに残った者だけじゃ。じゃが、最終的にいじめっ子が負ければ、それ以前に脱落したいじめられっ子の命も助けてやろう」

 今回拳太が脱落者となったら、優衣を助けてはもらえない。
 願いを叶えるためには、いじめっ子にはもちろん、他のいじめられっ子たちにも負けないようにしないといけない。

(複雑な話になってきたな)

 今回の投票でいじめっ子を負かせば話ははやい。
 いじめられっ子4人は願いも叶えてもらって、命も助かる。
 だが、そんなに上手くいくだろうか。

(それに、そうなったとしても、いじめっ子は殺される)

 いじめは悪いことだが、死刑にまでしていいのだろうか?

(ダメだ)

 拳太は自分に言い聞かせた。

(そのことは考えるな。今は優衣のことが最優先だろ)

 いじめが死刑に値するかとかそんなことは関係ない。

(ぼくは優衣を絶対に助ける! そのためには、勝ち残らなくちゃダメなんだ)

 拳太がそう決意する一方、夏風がさらに疑問を口にした。

「これって、最後は1対1になるかもしれないわよね? それじゃあ決着がつかなくなると思うわ。その点はどうなるのかしら?」

 ユグゥラが「ふむ」とうなずいた。

「残り2人になるまでもつれ込んだ場合は、先に脱落した3人に残った2人のうちどちらがいじめっ子だと思うか投票してもらう」

 その場合、2人のうちどちらかがいじめっ子なのだから、脱落者は全員いじめられっ子だったということになるからと、ユグゥラは補足説明をした。

「他になにか質問はあるかのう?」

 誰もなにも言わなかった。

「これ以上質問がないなら、今度こそ投票タイムスタートじゃ。10分以内に名前を書いて投票せよ」

 ユグゥラがそう言うと、黒板のタイマーに『10:00』と表示され、カウントダウンが開始された。
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