24 / 32
第七章 僕らは宇宙で母星を護る
24.最後の決戦へ
しおりを挟む
ソラ達は地球から50万kmほどの場所にいた。
すなわち、月の公転軌道よりもさらに外側ということになる。
そういうと地球からはかなり離れているようだが、宇宙レベルで考えれば大した距離じゃないともいえる。
「トモ・エ、やっぱりヤツらは地球に来るんだよね?」
エスパーダの中から、ソラは背後の宇宙船にいるトモ・エに最終確認をした。
『はい。残念ながら』
ソラ、舞子、ケン・トの3体のエスパーダは、ヒガンテの群れをここで迎え撃つ。
疑似ワープを使って、なんとかヤツらよりも先にこれたのは僥倖だったといえる。
いや、むしろヒガンテが疑似ワープ並のスピードを出していることに驚くべきか。
光速を超えるスピードを通常の方法で出せるわけがない。だが、トモ・エが観測したところによるとヤツらも疑似ワープに近い能力を持っているらしいとのこと。
ソラは舞子に話しかける。
「舞子、大丈夫?」
『うん、大丈夫』
その声には緊張がかなり含まれていた。
本当に大丈夫なのか不安になる。
「舞子、もし動けないようだったら船に戻る?」
心配して言うソラに、舞子が怒鳴り返してくる。
『ふざけないでっ! あんな見苦しいマネ、二度とするもんですかっ!』
(……大丈夫そう……かな?)
実際、戦力は足りない。舞子にも戦ってもらわなければ勝ち目はないだろう。
「ケン・トさん、巻き込んじゃってごめんなさい」
『今さらかよ』
「言うタイミングがなくて」
『全く、大損もいいところだ。これはお前らと地球に対してでっかい貸しだからな』
「はい。返せるかはわかりませんけど」
『とりあえずは、生き残れ。俺も生き残る。貸し借りあるまま死ぬのは商人の名折れだ』
ケン・トの軽口に、舞子が『ああっ』と声を上げる。
『そういえば、あんたって商人だったっけ』
『何だと思っていたんだよっ!?』
『……泥棒?』
『……やっぱり、俺、今すぐ帰ろうかな』
この2人、仲がいいのか悪いのか。
ともあれ、真面目な話を始める。
『ヤツらが来るまでどれくらいだ?』
『そうですね……このままのスピードなら、地球時間であと2時間後くらいでしょうか』
ケン・トの問いにトモ・エが答える。
舞子が少しウンザリした声で言う。
『案外、時間があるわね……』
(確かにね)
宇宙単位で考えれば2時間なんて誤差の範囲だが、人間の感覚からすれば暇としかいいようがない。
あと2時間緊張感を保つのは難しそうだが、ヒガンテがスピードを上げる可能性もある以上、油断するわけにもいかない。
「じゃ、作戦の最終確認でもしておこうか」
ソラの言葉に、舞子とケン・トも賛同する。
「作戦第一段階。核攻撃」
『まずは俺の出番だな』
ケン・トはこの1週間で核ミサイルを10発作ったらしい。
ソラや舞子は考えもしなかった。
地球人――というか、日本人の子どもとして、核爆弾には心理的ストップがかかっていたのかもしれない。
しかし、この際もっとも威力が出る攻撃を選んだケン・トは正解なのだろう。
なお、さすがの物質複製装置も、核ミサイルをすぐに作り出すことはできないらしい。必要なエネルギー量が多すぎるそうだ。
「作戦第二段階。ミサイル攻撃」
『私の出番ね』
核で全て片付けられればいいが、相手は100体以上いる。
全てを吹き飛ばすことは出来ないだろう。
残りの敵は舞子ができる限り通常ミサイルで狙い撃つ。
もちろん、ケン・トやソラの機体にも通常ミサイルはついているが、一番多く持っているのは舞子だ。
物質複製装置を使って、舞子の機体は実質無限にミサイルを発射できる。
「作戦第三段階、接近戦。僕がヤツらに突っ込む」
ミサイルで倒しきれなければ、ソードで叩く。
ソラの機体は接近戦仕様だ。
ミサイルは補助的に装備しているが、基本は高速移動仕様である。
『できれば、そこまでいかずになんとかしたいけどね』
「その時は2人とも、援護よろしく。で、それでも倒しきれなかったら……」
ソラはそこで言葉を句切った。
「ヤツらの群れのど真ん中で、僕が自爆する」
そう、それが作戦の第四段階。
できれば――いや、絶対に避けたい最終手段だ。
ソラのその言葉に、トモ・エが言う。
『ソラさん、やはりそれは……』
「しつこいよ、トモ・エ。これが一番可能性が高い方法だって何度も確認しただろう?」
『ですが』
「それに、僕だって死ぬつもりなんてない。自爆しないでもかたをつけるさ」
『……はい。無事の帰還をお待ちしています』
ソラは不思議と恐怖をほとんど感じていなかった。
むしろ、異様な高揚すら覚えている。
(もしかすると、自分は命がけの戦いを前に興奮しているのかな?)
実際、脳からアドレナリンか何かがドバドバでているのかもしれない。
死ぬかもしれないというのは分かっているのに、感情の高ぶりが抑えられない。
自分がこんな風になるなんて思ってもみなかった。
『皆さん、ヤツらがスピードを上げました。間もなく会敵します』
次の瞬間。
ソラのエスパーダのレーダーも、ヒガンテの群れを捕えた。
ケン・トが吠える。
『よっしゃー、じゃあ行くぜっ!!』
その言葉と共に、ケン・トの機体から、核ミサイルが放たれた。
すなわち、月の公転軌道よりもさらに外側ということになる。
そういうと地球からはかなり離れているようだが、宇宙レベルで考えれば大した距離じゃないともいえる。
「トモ・エ、やっぱりヤツらは地球に来るんだよね?」
エスパーダの中から、ソラは背後の宇宙船にいるトモ・エに最終確認をした。
『はい。残念ながら』
ソラ、舞子、ケン・トの3体のエスパーダは、ヒガンテの群れをここで迎え撃つ。
疑似ワープを使って、なんとかヤツらよりも先にこれたのは僥倖だったといえる。
いや、むしろヒガンテが疑似ワープ並のスピードを出していることに驚くべきか。
光速を超えるスピードを通常の方法で出せるわけがない。だが、トモ・エが観測したところによるとヤツらも疑似ワープに近い能力を持っているらしいとのこと。
ソラは舞子に話しかける。
「舞子、大丈夫?」
『うん、大丈夫』
その声には緊張がかなり含まれていた。
本当に大丈夫なのか不安になる。
「舞子、もし動けないようだったら船に戻る?」
心配して言うソラに、舞子が怒鳴り返してくる。
『ふざけないでっ! あんな見苦しいマネ、二度とするもんですかっ!』
(……大丈夫そう……かな?)
実際、戦力は足りない。舞子にも戦ってもらわなければ勝ち目はないだろう。
「ケン・トさん、巻き込んじゃってごめんなさい」
『今さらかよ』
「言うタイミングがなくて」
『全く、大損もいいところだ。これはお前らと地球に対してでっかい貸しだからな』
「はい。返せるかはわかりませんけど」
『とりあえずは、生き残れ。俺も生き残る。貸し借りあるまま死ぬのは商人の名折れだ』
ケン・トの軽口に、舞子が『ああっ』と声を上げる。
『そういえば、あんたって商人だったっけ』
『何だと思っていたんだよっ!?』
『……泥棒?』
『……やっぱり、俺、今すぐ帰ろうかな』
この2人、仲がいいのか悪いのか。
ともあれ、真面目な話を始める。
『ヤツらが来るまでどれくらいだ?』
『そうですね……このままのスピードなら、地球時間であと2時間後くらいでしょうか』
ケン・トの問いにトモ・エが答える。
舞子が少しウンザリした声で言う。
『案外、時間があるわね……』
(確かにね)
宇宙単位で考えれば2時間なんて誤差の範囲だが、人間の感覚からすれば暇としかいいようがない。
あと2時間緊張感を保つのは難しそうだが、ヒガンテがスピードを上げる可能性もある以上、油断するわけにもいかない。
「じゃ、作戦の最終確認でもしておこうか」
ソラの言葉に、舞子とケン・トも賛同する。
「作戦第一段階。核攻撃」
『まずは俺の出番だな』
ケン・トはこの1週間で核ミサイルを10発作ったらしい。
ソラや舞子は考えもしなかった。
地球人――というか、日本人の子どもとして、核爆弾には心理的ストップがかかっていたのかもしれない。
しかし、この際もっとも威力が出る攻撃を選んだケン・トは正解なのだろう。
なお、さすがの物質複製装置も、核ミサイルをすぐに作り出すことはできないらしい。必要なエネルギー量が多すぎるそうだ。
「作戦第二段階。ミサイル攻撃」
『私の出番ね』
核で全て片付けられればいいが、相手は100体以上いる。
全てを吹き飛ばすことは出来ないだろう。
残りの敵は舞子ができる限り通常ミサイルで狙い撃つ。
もちろん、ケン・トやソラの機体にも通常ミサイルはついているが、一番多く持っているのは舞子だ。
物質複製装置を使って、舞子の機体は実質無限にミサイルを発射できる。
「作戦第三段階、接近戦。僕がヤツらに突っ込む」
ミサイルで倒しきれなければ、ソードで叩く。
ソラの機体は接近戦仕様だ。
ミサイルは補助的に装備しているが、基本は高速移動仕様である。
『できれば、そこまでいかずになんとかしたいけどね』
「その時は2人とも、援護よろしく。で、それでも倒しきれなかったら……」
ソラはそこで言葉を句切った。
「ヤツらの群れのど真ん中で、僕が自爆する」
そう、それが作戦の第四段階。
できれば――いや、絶対に避けたい最終手段だ。
ソラのその言葉に、トモ・エが言う。
『ソラさん、やはりそれは……』
「しつこいよ、トモ・エ。これが一番可能性が高い方法だって何度も確認しただろう?」
『ですが』
「それに、僕だって死ぬつもりなんてない。自爆しないでもかたをつけるさ」
『……はい。無事の帰還をお待ちしています』
ソラは不思議と恐怖をほとんど感じていなかった。
むしろ、異様な高揚すら覚えている。
(もしかすると、自分は命がけの戦いを前に興奮しているのかな?)
実際、脳からアドレナリンか何かがドバドバでているのかもしれない。
死ぬかもしれないというのは分かっているのに、感情の高ぶりが抑えられない。
自分がこんな風になるなんて思ってもみなかった。
『皆さん、ヤツらがスピードを上げました。間もなく会敵します』
次の瞬間。
ソラのエスパーダのレーダーも、ヒガンテの群れを捕えた。
ケン・トが吠える。
『よっしゃー、じゃあ行くぜっ!!』
その言葉と共に、ケン・トの機体から、核ミサイルが放たれた。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
コボンとニャンコ
魔界の風リーテ
児童書・童話
吸血コウモリのコボンは、リンゴの森で暮らしていた。
その日常は、木枯らしの秋に倒壊し、冬が厳粛に咲き誇る。
放浪の最中、箱入りニャンコと出会ったのだ。
「お前は、バン。オレが…気まぐれに決めた」
三日月の霞が晴れるとき、黒き羽衣に火が灯る。
そばにはいつも、夜空と暦十二神。
『コボンの愛称以外のなにかを探して……』
眠りの先には、イルカのエクアルが待っていた。
残酷で美しい自然を描いた、物悲しくも心温まる物語。
※縦書き推奨
アルファポリス、ノベルデイズにて掲載
【文章が長く、読みにくいので、修正します】(2/23)
【話を分割。文字数、表現などを整えました】(2/24)
【規定数を超えたので、長編に変更。20話前後で完結予定】(2/25)
【描写を追加、変更。整えました】(2/26)
筆者の体調を破壊()3/

迷宮階段
西羽咲 花月
児童書・童話
その学校にはある噂がある
「この学校は三階建てでしょう? だけど、屋上に出るための階段がある。そこに、放課後の四時四十四分に行くの。階段の、下から四段目に立って『誰々を、誰々に交換』って口に出して言うの。そうすれば翌日、相手が本当に交換されてるんだって!」
そんな噂を聞いた主人公は自分の人生を変えるために階段へ向かう
そして待ち受けていたのは恐怖だった!
命がけの投票サバイバル!『いじめっ子は誰だゲーム』
ななくさ ゆう
児童書・童話
見知らぬ教室に集められたのは5人のいじめられっ子たち。
だが、その中の1人は実はいじめっ子!?
話し合いと投票でいじめっ子の正体を暴かない限り、いじめられっ子は殺される!!
いじめっ子を見つけ出せ!
恐怖の投票サバイバルゲームが今、始まる!!
※話し合いタイムと投票タイムを繰り返す命がけのサバイバルゲームモノです。
※モチーフは人狼ゲームですが、細かいルールは全然違います。
※ゲーム参加者は小学生~大人まで。
【完】ノラ・ジョイ シリーズ
丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴*
▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー
▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!?
✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~
世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。
友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。
ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。
だが、彼らはまだ知らなかった。
ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。
敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。
果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか?
8月中、ほぼ毎日更新予定です。
(※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる