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第四章 初めての戦い
12.エスパーダをカスタマイズしてみよう
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ソラと舞子が地球を旅立ってから、地球時間で約2ヶ月が経過した。
イスラ星人に土曜日、日曜日なんていう概念はないらしく、勉強や運動、エスパーダの訓練などは1日もかかさず行われていた。
もっとも、ソラはそれほど不満には思っていなかった。
勉強は毎日新しいことの発見があるし、運動はだんだんと自分の体力がついてくるのがわかるし、エスパーダの操縦は楽しいし。
疲れもそれほど感じない。最初は違和感のあったベッドだが、気がついてみれば、もはや布団で寝ていたのが嘘のようだ。むしろ、地球にいたときよりも安眠していた。
エスパーダの操縦は2人共かなり上達していた。
Gにもなれ、最近では2人で一緒に船の周りを跳び回るれるようになった。
まだまだ学ぶべきことはいくらでもあるようで、2週間前からは宇宙公用語なる言語の勉強も始まった。自動翻訳装置はあるが、装置がなくても話せた方が良いと言われたのだ。
そんなある日の訓練の時間。
「うわぁ」
ソラは舞子のエスパーダを見て声を上げた。
ここ数週間、舞子は自分のエスパーダのカスタマイズを楽しんでいる様子だ。
舞子の改造はゲームの時と同じく遠距離型だ。
ただし、ゲームとは違ってビーム光線ではなく、実弾の銃やミサイルを装備させている。
レランパゴを破壊するという目的に、ビーム兵器は役に立たないからだ。
「どう、この改造?」
舞子は胸を張ってソラとトモ・エに言う。
ソラとトモ・エは困惑しつつ答える。
「カッコイイと思うよ。思うけどさぁ……」
「これは……ちょっとやり過ぎじゃないですかね」
昨日の段階では舞子のエスパーダは右手に銃を持ち、両肩にミサイルを付けていた。
だが今は、両手が銃になっていた。
文字通り、手首があるべき場所がそのまま巨大な銃になっているのだ。
「昨日、銃を落としちゃったからさ。いっそのことこれならどうかなって」
確かに銃しか使わないなら合理的だ。
だが。
「これじゃあ、ソード持てないじゃん」
「接近するのはソラに任せるわ」
「そ、そう」
1ヶ月後、ソラ達が行なうのはレランパゴの破壊である。
超エネルギー体であるレランパゴはビーム光線系の攻撃は吸収してしまう。
故に、実弾を当てるかソードで叩き切るかだそうだ。
実弾武器の弱点は弾数に制限があることだ。
物質複製装置で回復はできるが、即座ではない。
もっとも、相手は敵機ではなく動かないエネルギー体だ。
確かに理にかなってはいるのかもしれない。
理にはかなっているのだが。
(でもやっぱり、ロボットの指を銃に変えちゃうのは違和感あるなぁ)
いくらその方が合理的だと言われても、ロボットの手には人間と同じ5本の指があって欲しいと思ってしまうソラ。
(男と女の感性の違い……なのか?)
ソラはそんなことを思ってしまう。
「まあ、ソラさんのカスタマイズも、それはそれでどうかと思いますけど」
ちなみにソラの機体もカスタマイズされている。
ミサイルなどはほとんど外した高速接近型だ。
「そう? 僕の戦い方に合っていると思うけど」
ゲームでも、ソラは接近してソードで叩く方が得意だった。
「……2人とも、あくまでもレランパゴを壊すのが目的だって忘れていませんよね?」
方向性は違えど兵器的な改造を施している2人に、トモ・エの顔が引きつっていた。
「いや、それは……」
「やっぱり、やり過ぎちゃったかしら?」
トモ・エは深く頷いたのだった。
結局、2人のほどこしたカスタマイズはほとんどが初期設定に戻すことになったのだった。
---------------
さらに1ヶ月の月日が流れた。
『ソラさん、舞子さん、起きてください』
熟睡するソラの耳にトモ・エの声が響いた。
部屋の監視はやめるといったが、こうして話しかけてくることはよくあった。
眠たい目をこすりながら上半身を起こし、時計を確認すると3時13分であった。
(真夜中じゃん)
文句の1つも言ってやろうかと思ったところに、トモ・エのさらなる声が聞こえる。
『まもなく、最初のレランパゴがあると思われる宙域に近づきます。夜分もうしわけありませんが、2人とも操舵室まで来てください』
そういわれれば、行くしかない。
慌てて着替える。
ちなみに、ソラも舞子も、今では地球の服はほとんど着なくなっていた。眠るときもイスラ星の服だ。着替えるのは寝汗をかいたからである。
扉を出ると、舞子がいた。
「ソラ、おっそい」
「ごめん、舞子。ちょっと着替えていて」
言い合いながら、操舵室へと向かう。もう、勝手知ったる廊下である。迷うこともない。
「ソラさん、舞子さん、お待ちしていました」
操舵室に入ると、トモ・エが待っていた。
ソラは右側の、舞子は左側の座席に座る。なんとなく3ヶ月の間に座る場所が決まっていた。
「前方の映像をご覧ください」
トモ・エがそういうと、目の前の壁に宇宙空間の映像が広がった。
「レランパゴはあそこにあります」
トモ・エが言うと、画面に印が出る。
「うん? 星?」
そこには、何か黄色い点が見えた。星のように見えるが、少し違和感がある。
「拡大しましょう」
トモ・エの言葉とともに、画面上の点がズームアップされる。
それは金色の塊であった。丸ではなくいびつな形をしており、まるで太陽のように神々しく光っている。
もちろん、大きさは太陽よりもずっと小さい……のだろう。映像ではよくわからないが。
まさにエネルギーの塊といったかんじだ。
「あれを破壊すればいいんだよね?」
「その通りです。1cm四方まで砕くとレランパゴはエネルギー体として役に立たなくなります。
ただし、今回はそこまで砕くまえに、欠片を1つ持ち帰ってください」
「なんで?」
「この船の動力もレランパゴであることはお話しましたね?」
それは授業の中で聞いていた。いくらレランパゴが危険なものだ、破壊しなくてはといってみたところで、この船やエスパーダのエネルギーもレランパゴに頼っているのだ。
「船の動力はまだありますが、そろそろ心もとなくなっています。あと5年分くらいしかありません」
「それって、すごく余裕があるって言わない?」
「広大な宇宙でレランパゴをみつけるのにかかる時間を計算すれば、そこまで余裕があるとも言えないのですよ」
「なるほど」
トモ・エが言うならその通りなのだろう。
「この船の動力に使うなら、10センチ四方程度の大きさが1つあれば十分です。
ちなみに今回のレランパゴの全体の大きさは……」
「大体、直径125cmってところかしら。球体じゃないし、アバウトだけど」
舞子が言う。
「お見事です。舞子さん」
舞子の空間認識能力については聞いているが、こうやって目のあたりにすると、ソラには魔法のようにしか思えない。何しろ画面には拡大率すら表示されていないのだ。一体どうやってこの映像から大きさがわかるのだろう。
「これまでの訓練でわかっていると思いますが、最後のおさらいです。レランパゴを破壊するとき、ビームやエネルギー砲のたぐいは無効です。ソラさん、その理由はわかりますか?」
「レランパゴ自体がエネルギーそのものだから、それにエネルギーを当てても破壊どころか大きくしちゃうってことだろ」
3ヶ月の授業で習ったことを言う。
「その通りです。かといってミサイルで破壊しては粉々になってしまってこの船に必要なエネルギーすら回収できません。
よって今回はレランパゴをソードで細かく叩き割ります。とはいえ……」
「強大なエネルギーのレランパゴにむやみに近づくのも危険」
舞子がトモ・エの言葉の先を言う。
「その通りです。そこで、エスパーダ自体に防御機能があります。エネルギーコーティングと呼びますが、いわゆるバリアーですね。これを発生させている間はレランパゴに近づけます。ただし……」
「エネルギーコーティングは地球時間で30分しかもたない、だろ?」
正直、もう何度も聞き飽きている。
「正確には30分と27秒です。それを過ぎてなお、レランパゴの塊の近くにいると、エスパーダ自体が溶けます。そうなれば、2人共生きていられません」
つまりは時間オーバーすれば命がないということだ。
「でも、それじゃあかけらを持ち帰ったりできないじゃない?」
舞子がたずねる。
「ですから、舞子さんに回収用ボックスを持って行っていただきます。その中に入れておけば、レランパゴのエネルギーを封印できます」
「なるほど」
舞子が納得すると、トモ・エは続けた・
「レランパゴまで1キロメートル程度まで近づいたら、エネルギーコーティングをまとってください。その瞬間から画面上でカウントダウンが始まります。破壊に成功しようとしまいと、残り10分になったら全力で帰還してください。いいですね?」
『了解』
ソラと舞子は声を揃えた。
「最後に」
「まだあるの?」
「ここから先はゲームでも訓練でもありません。それを忘れないでください。戦闘ではないとはいえ、命がけだと思ってください」
トモ・エの真剣な顔に、ソラはと舞子は頷くのだった。
イスラ星人に土曜日、日曜日なんていう概念はないらしく、勉強や運動、エスパーダの訓練などは1日もかかさず行われていた。
もっとも、ソラはそれほど不満には思っていなかった。
勉強は毎日新しいことの発見があるし、運動はだんだんと自分の体力がついてくるのがわかるし、エスパーダの操縦は楽しいし。
疲れもそれほど感じない。最初は違和感のあったベッドだが、気がついてみれば、もはや布団で寝ていたのが嘘のようだ。むしろ、地球にいたときよりも安眠していた。
エスパーダの操縦は2人共かなり上達していた。
Gにもなれ、最近では2人で一緒に船の周りを跳び回るれるようになった。
まだまだ学ぶべきことはいくらでもあるようで、2週間前からは宇宙公用語なる言語の勉強も始まった。自動翻訳装置はあるが、装置がなくても話せた方が良いと言われたのだ。
そんなある日の訓練の時間。
「うわぁ」
ソラは舞子のエスパーダを見て声を上げた。
ここ数週間、舞子は自分のエスパーダのカスタマイズを楽しんでいる様子だ。
舞子の改造はゲームの時と同じく遠距離型だ。
ただし、ゲームとは違ってビーム光線ではなく、実弾の銃やミサイルを装備させている。
レランパゴを破壊するという目的に、ビーム兵器は役に立たないからだ。
「どう、この改造?」
舞子は胸を張ってソラとトモ・エに言う。
ソラとトモ・エは困惑しつつ答える。
「カッコイイと思うよ。思うけどさぁ……」
「これは……ちょっとやり過ぎじゃないですかね」
昨日の段階では舞子のエスパーダは右手に銃を持ち、両肩にミサイルを付けていた。
だが今は、両手が銃になっていた。
文字通り、手首があるべき場所がそのまま巨大な銃になっているのだ。
「昨日、銃を落としちゃったからさ。いっそのことこれならどうかなって」
確かに銃しか使わないなら合理的だ。
だが。
「これじゃあ、ソード持てないじゃん」
「接近するのはソラに任せるわ」
「そ、そう」
1ヶ月後、ソラ達が行なうのはレランパゴの破壊である。
超エネルギー体であるレランパゴはビーム光線系の攻撃は吸収してしまう。
故に、実弾を当てるかソードで叩き切るかだそうだ。
実弾武器の弱点は弾数に制限があることだ。
物質複製装置で回復はできるが、即座ではない。
もっとも、相手は敵機ではなく動かないエネルギー体だ。
確かに理にかなってはいるのかもしれない。
理にはかなっているのだが。
(でもやっぱり、ロボットの指を銃に変えちゃうのは違和感あるなぁ)
いくらその方が合理的だと言われても、ロボットの手には人間と同じ5本の指があって欲しいと思ってしまうソラ。
(男と女の感性の違い……なのか?)
ソラはそんなことを思ってしまう。
「まあ、ソラさんのカスタマイズも、それはそれでどうかと思いますけど」
ちなみにソラの機体もカスタマイズされている。
ミサイルなどはほとんど外した高速接近型だ。
「そう? 僕の戦い方に合っていると思うけど」
ゲームでも、ソラは接近してソードで叩く方が得意だった。
「……2人とも、あくまでもレランパゴを壊すのが目的だって忘れていませんよね?」
方向性は違えど兵器的な改造を施している2人に、トモ・エの顔が引きつっていた。
「いや、それは……」
「やっぱり、やり過ぎちゃったかしら?」
トモ・エは深く頷いたのだった。
結局、2人のほどこしたカスタマイズはほとんどが初期設定に戻すことになったのだった。
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さらに1ヶ月の月日が流れた。
『ソラさん、舞子さん、起きてください』
熟睡するソラの耳にトモ・エの声が響いた。
部屋の監視はやめるといったが、こうして話しかけてくることはよくあった。
眠たい目をこすりながら上半身を起こし、時計を確認すると3時13分であった。
(真夜中じゃん)
文句の1つも言ってやろうかと思ったところに、トモ・エのさらなる声が聞こえる。
『まもなく、最初のレランパゴがあると思われる宙域に近づきます。夜分もうしわけありませんが、2人とも操舵室まで来てください』
そういわれれば、行くしかない。
慌てて着替える。
ちなみに、ソラも舞子も、今では地球の服はほとんど着なくなっていた。眠るときもイスラ星の服だ。着替えるのは寝汗をかいたからである。
扉を出ると、舞子がいた。
「ソラ、おっそい」
「ごめん、舞子。ちょっと着替えていて」
言い合いながら、操舵室へと向かう。もう、勝手知ったる廊下である。迷うこともない。
「ソラさん、舞子さん、お待ちしていました」
操舵室に入ると、トモ・エが待っていた。
ソラは右側の、舞子は左側の座席に座る。なんとなく3ヶ月の間に座る場所が決まっていた。
「前方の映像をご覧ください」
トモ・エがそういうと、目の前の壁に宇宙空間の映像が広がった。
「レランパゴはあそこにあります」
トモ・エが言うと、画面に印が出る。
「うん? 星?」
そこには、何か黄色い点が見えた。星のように見えるが、少し違和感がある。
「拡大しましょう」
トモ・エの言葉とともに、画面上の点がズームアップされる。
それは金色の塊であった。丸ではなくいびつな形をしており、まるで太陽のように神々しく光っている。
もちろん、大きさは太陽よりもずっと小さい……のだろう。映像ではよくわからないが。
まさにエネルギーの塊といったかんじだ。
「あれを破壊すればいいんだよね?」
「その通りです。1cm四方まで砕くとレランパゴはエネルギー体として役に立たなくなります。
ただし、今回はそこまで砕くまえに、欠片を1つ持ち帰ってください」
「なんで?」
「この船の動力もレランパゴであることはお話しましたね?」
それは授業の中で聞いていた。いくらレランパゴが危険なものだ、破壊しなくてはといってみたところで、この船やエスパーダのエネルギーもレランパゴに頼っているのだ。
「船の動力はまだありますが、そろそろ心もとなくなっています。あと5年分くらいしかありません」
「それって、すごく余裕があるって言わない?」
「広大な宇宙でレランパゴをみつけるのにかかる時間を計算すれば、そこまで余裕があるとも言えないのですよ」
「なるほど」
トモ・エが言うならその通りなのだろう。
「この船の動力に使うなら、10センチ四方程度の大きさが1つあれば十分です。
ちなみに今回のレランパゴの全体の大きさは……」
「大体、直径125cmってところかしら。球体じゃないし、アバウトだけど」
舞子が言う。
「お見事です。舞子さん」
舞子の空間認識能力については聞いているが、こうやって目のあたりにすると、ソラには魔法のようにしか思えない。何しろ画面には拡大率すら表示されていないのだ。一体どうやってこの映像から大きさがわかるのだろう。
「これまでの訓練でわかっていると思いますが、最後のおさらいです。レランパゴを破壊するとき、ビームやエネルギー砲のたぐいは無効です。ソラさん、その理由はわかりますか?」
「レランパゴ自体がエネルギーそのものだから、それにエネルギーを当てても破壊どころか大きくしちゃうってことだろ」
3ヶ月の授業で習ったことを言う。
「その通りです。かといってミサイルで破壊しては粉々になってしまってこの船に必要なエネルギーすら回収できません。
よって今回はレランパゴをソードで細かく叩き割ります。とはいえ……」
「強大なエネルギーのレランパゴにむやみに近づくのも危険」
舞子がトモ・エの言葉の先を言う。
「その通りです。そこで、エスパーダ自体に防御機能があります。エネルギーコーティングと呼びますが、いわゆるバリアーですね。これを発生させている間はレランパゴに近づけます。ただし……」
「エネルギーコーティングは地球時間で30分しかもたない、だろ?」
正直、もう何度も聞き飽きている。
「正確には30分と27秒です。それを過ぎてなお、レランパゴの塊の近くにいると、エスパーダ自体が溶けます。そうなれば、2人共生きていられません」
つまりは時間オーバーすれば命がないということだ。
「でも、それじゃあかけらを持ち帰ったりできないじゃない?」
舞子がたずねる。
「ですから、舞子さんに回収用ボックスを持って行っていただきます。その中に入れておけば、レランパゴのエネルギーを封印できます」
「なるほど」
舞子が納得すると、トモ・エは続けた・
「レランパゴまで1キロメートル程度まで近づいたら、エネルギーコーティングをまとってください。その瞬間から画面上でカウントダウンが始まります。破壊に成功しようとしまいと、残り10分になったら全力で帰還してください。いいですね?」
『了解』
ソラと舞子は声を揃えた。
「最後に」
「まだあるの?」
「ここから先はゲームでも訓練でもありません。それを忘れないでください。戦闘ではないとはいえ、命がけだと思ってください」
トモ・エの真剣な顔に、ソラはと舞子は頷くのだった。
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