異世界で双子の勇者の保護者になりました

ななくさ ゆう

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第七章 初めてのダンジョン/レベル2への試験

5.第三階層~第五階層

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 ダンジョン第三階層。

「ひいいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 俺は下り坂を全力で走っていた。
 第二階層とはまたうってかわって、洞窟のようなダンジョン。
 だが、第一階層とちがって、一本道の下り坂だ。

 問題は――

 走る俺達の後ろから、思いっきり巨大な岩が転がってきていることだった。

 ---------------

 第三階層にワープすると、そこはこれまでと比べて非常に単調なダンジョンだった。
 ただただ道は真っすぐな坂道で、ずーっと下った先には普通にオーブが見えて、モンスターの姿は欠片もない。

「……?」

 俺達5人はあまりの平和さに逆に訝しく感じつつ、制限時間が40しかないことを確認した。
 だとしても、40あれば十分、あのオーブにはたどり着けるだろう。

 そう思った次の瞬間だった。
 オーブがあるのとは逆方向――つまり、坂道の上の方からゴロンゴロンと音が鳴り響き、巨大な岩が、俺達の方に転がってきたのだ。
 まるで狙ったような大きさで、端に隠れてやり過ごすのは無理。
 球体ならば当然左右の下の方にスキマができるわけだが、この岩は円柱を横にした形でそんなスキマもない。

 要するに。

 極単純にすごいスピードで転がってくる岩から逃げて、オーブのある場所まで俺達は全力疾走するはめになったのだ。

 で、冒頭に戻る。

 俺とフロルのはるか前には、アレル、ライト、ソフィネ。
 ステータスの素早さの差って、普段はそこまで意識しいないが、やはり3人は足が速い。
 というか、フロルにもおいていかれかけている俺。

 俺の後ろにはレルスがいるが、もちろん、彼は本気で走ればアレル達と同じかそれ以上のスピードだろう。
 最悪の場合、俺やフロルを抱きかかえて走るつもりで後ろにいるのかもしれない。
 むろん、その時点で俺達は――すくなくとも、俺は不合格。

 くぅ、ダメだ。足が縺れる。
 このままじゃ――

 思ったその時だった。
 フロルが後ろを――つまり、俺や岩の方を向いて立ち止まる。

 なんのつもりだ!?

 思った次の瞬間。
 フロルは思念モニタを弄って魔法を発動。
 使ったのは『泥沼』
 岩のすぐ前の地面を泥沼に変化させたのだ。

 はたして、巨大円柱岩は泥沼の中に半分沈み、止まったのだった。

 たすかったぁぁぁぁ。

「フロル、ありがとう」
「いえ、すぐに気がつかなくてごめんなさい」

 それは俺もだ。『泥沼』は俺だって使えるのだ。
 普段の戦闘では、むしろ前衛のアレルやライトの邪魔をしかねないので使いにくい魔法。というか、『泥沼』がまともに役に立ったの初めてじゃね?

 ---------------

 俺達は第四階層までたどり着いた。
 第四階層は再び第一階層と同じような迷路の洞窟だった。

 違いはモンスターの強さ。
 魔の森で苦戦したベルモンキやフライル、そしてそれと同程度の強さのモンスターが次々と現れる。
 もっとも、今の俺達の敵ではない。
 アレルやライトの剣、俺やフロルの魔法で十分蹴散らしていける。むしろ、スライムと違って魔法を使う必要はほとんど無い。前衛2人でほぼ、対処可能。
 魔石の大きさは基本的にモンスターの強さに比例するようだ。

 もちろん、今回は最初から『地域察知』を使って次なるオーブへと向かう。
 制限時間の半分も使わずに、第四階層クリアー。

 ちなみに、レルスによれば、このダンジョンは全六階層。最後の階層はぬしの間なので、次がある意味最後の階層である。

 ---------------

 第五階層は巨大な部屋だった。
 俺達は四角い部屋の片隅に現れ、オーブは反対側にある。
 モンスターはいない。
 制限時間は50カウント。

 はっきりいって、クリアーだけならば簡単である。
 問題は――

「宝箱?」

 ライトが呟く。

 そう、このダンジョンに入って初めて、宝箱があった。
 それも100個近く整然と並んでいる。

「開けてみようぜ。頑張ったご褒美だろ」

 ライトはそう言って、宝箱の1つを開ける。

「ちょっと、ライト待ちなさいっ」

 ソフィネがあわてて止めようとするが――

「ほら、魔石だ。それもでかいぞ」

 ――どうやら、宝箱の中からは魔石が出てきたらしい。
 本当にボーナスステージなのか?

 ライトが喜び勇んで、次の宝箱に手をかける。
 次の瞬間。

 宝箱が爆発する!
 とっさに、ライトは飛び退くが、手に怪我を負ったようだ。

「ライト!」

 俺は彼にかけより『怪我回復』の魔法を使った。

「罠かよっ」

 ライトは苦々しく言う。
 どうやら、宝箱の中には、本物と罠とがあるらしい。

 ソフィネが言う。

「だから、待ちなさいって言ったのに」

 そんな俺達に、レルスが尋ねる。

「それで、どうするのかね?」

 その言葉の意味は分かった。宝箱の中身は諦めて安全に行くのか、それともと聞いているのだ。
 冒険者がダンジョンに来る理由は魔石のため。
 だとすれば、この宝箱を逃すのは試験的にもマイナス。
 だが、命あっての物種ともいう。先ほどはライトがとっさに飛び退いて無事だったが、もしも開けたのが俺やフロルなら、重傷か、あるいは死んでいたかもしれない。

 迷う俺に、ソフィネが言う。

「つまり、私の出番ねっ!」

 そう言って、彼女は宝箱を1つずつ『罠鑑定』しはじめたのだった。

 ---------------

 宝箱の半数は罠が仕掛けられていた。
 いや、実際には『罠鑑定』できた宝箱に限れば、半数だ。統計的にはおそらく全体的にも半分罠だったと思うが。

 ソフィネはやはりレンジャーとして優秀らしく、『罠鑑定』をミスることなく続けたのだが、途中で時間切れ。
 半分以上は未鑑定で残していくことになってしまった。
 ソフィネは悔しそうな顔だったが、仕方がない。
 名残惜しいが残りは触らず先に進むのが正解だろう。

 実際、このフロアだけで相当な魔石が手に入ったのだし、ダンジョンに入ってからというならば、100個以上だ。
 あらためて布袋の中を確認してみる。店で買えば、大判金貨50枚以上にはなるだろう。

 次は主の間か。
 俺は魔石の入った布袋を『無限収納』でしまった。
 最初から、主の間の前でしまうつもりだったのだ。

 これは裏技に近いのだが、『無限収納』は物を1つずつ出し入れするとそのたびにMPを1消費する。だが、袋などにまとめておいて出し入れすると、1回分のMPですむのだ。

「ふむ、次は主の間だな」

 レルスの言葉に頷き、俺達は次なるオーブに触った。

 ---------------

 主の間。
 そこは広い草原だった。
 そして、俺達から5メル――10メートルほど離れた場所に、主がいた。

「ほう、大物だな」

 レルスが言う。

「おいおい、冗談だろ……」

 俺は呆然と呟く。
 そこにいたのは、全長20メートルはあろうかという、巨大セルアレニだった。
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