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第七章 初めてのダンジョン/レベル2への試験
1.レルス=フライマントとの再会
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レベル2の試験日早朝。
俺達はギルドの道場へやってきた。
レベル0の間は毎日のように通っていたこの建物も、レベル1になってからはあまり訪れなくなっていた。
それでもブライアンに魔法を習うときくらいはやってきたのだが、剣術修行は受けていない。
アレルもライトも、もう修行よりも実戦の方が大切というレベルなのだ。素振りだけなら道場に行く必要もないしね。あ、俺とフロルは剣術は諦めた。
ソフィネにいたってはレベル0の時も道場にはほとんど立ち入っていないので、前回の試験の時くらいらしい。弓矢はレア武器扱いで、道場でも教えていない。
「ダンジョンってどんなところなのかなぁ? アレル楽しみ」
アレルが無邪気に言う。
相変わらずの舌っ足らずではあるが、5歳の頃よりはマシになったかな。半年前は『だんぢょん』って言っていたし。
一方、俺はぼやく。
「俺は楽しみよりも不安の方が大きいよ」
レベル2への試験の内容はほとんど知らない。
唯一分かっているのは、試験官とともに実際にダンジョンに行くということだけ。
で、そもそもダンジョンというのがどういう場所なのかが分からない。
レベル2の試験を受けられるようになるまで、ダンジョンが何か、どこにあるのか、冒険者は誰も教えてはいけない決まりなのだ。
そして、冒険者以外だと国王や大臣レベルの人しかダンジョンについては知らない。
つまり、事前にダンジョンがどのようなものか知ることは通常不可能なのだ。
もっとも、俺には反則技がある。
もちろん、シルシルのことだ。
あいつならダンジョンが何か知っているはずだろう。
だが、10日程前に尋ねたところ……
『ふふふのふ~、おしえないのじゃ。他の誰も知らないでテストに挑むのじゃから、お主にだけ教えたら不公平じゃろうが』
……だそうである。
俺に対して転移だの祝福だの助言だのしまくっている神様が、今さら公平不公平を語るかとも思うが、確かに俺だけ事前情報を手に入れるのは反則か。
そんなわけで、ぶっつけ本番である。
4人の仲間の様子を見ると、ライトは俺と同じく不安いっぱい、アレルとソフィネは楽しみ、フロルは全力を尽くすだけだと決意しているといったところか。
そして、ギルド道場で俺達を待っていた試験官は……
「久しいな、アレル。ショートくんとフロルくんも元気そうで何よりだ」
……まさかの、レルス=フライマントだった。
『お久しぶりです。レルスさん』
俺とフロルは慌てて頭を下げる。前回は彼の正体を知らなかったが、今回は知っている。礼儀は大切だ。
「こんにちは、レルスしゃん」
……なのに、なんでアレルはこうも不躾なのか。一応呼び捨てではなく『しゃん』をつけたのが救いか。
そんな俺達の様子に、驚愕してひっくり返りそうになっているのがライトとソフィネ。
「え、レルスって、え?」
「まさか……」
「レルス=フライマントさん!?」
「伝説の騎士!?」
あ、そういえば2人は初対面だったっけ。
そして。
2人とも慌てて礼。
『よろしくお願いします』
うん、ライトはともかく、ソフィネがこういう場面で慌てるのは珍しいな。
冒険者達の間でレルス=フライマントとは現在の生きる伝説扱いなのだ。
「ふむ。今回、君達の試験は私が担当する。よろしく頼む」
……これって、やっぱりアレルとフロル……いや、アレルに興味があるからなんだろうなぁ。
「それでは、早速だが5人の冒険者カードを確認させてくれたまえ。もちろん、全ての項目を表示させてな」
レルスはそう言って、俺達の冒険者カードを確認し始めたのだった。
---------------
「ふむ。いいだろう。5人とも合格だ」
……はい?
「合格、ですか?」
俺が眉を寄せる。ダンジョンで試験をすると聞いていたのだが……
もちろん、アレル達4人も戸惑っている。
レルスはすぐに言う。
「ああ、すまん。誤解を与えたな。申し訳ない。君達のステータスならば、レベル2の試験を受けさせられるという意味だ」
うん? 依頼回数をこなしているかをカードで確認したのか?
いや、依頼回数はカードには表示されないはずだ。それに、レルスはステータスを確認したと言った。
「ふむ、説明が必要だったな。これは公表していないが、レベル1の依頼をこなしたとしても、ステータスが低すぎる者にはレベル2の試験は受けさせられないのだよ」
マジか。ミリスもミレヌも誰も教えてくれなかったけど。
「理由は簡単。この試験は命がけだからだ。ステータスの低い者はダンジョンには連れて行けん。
レベル2の試験での死亡事故は10人中1人くらい。その他後遺症の残る怪我は10人中2人くらいが負うとされている。
それをふまえて最後の意思確認だ。本当に試験を受けるかね?」
10人中1人が死亡。
かなりの確率である。
だが。
俺達の答は決まっていた。
『はい。もちろんです』
5人全員、即座にそう答えたのだった。
当然だろ? この日のためにずっと頑張ってきたんだ。
今さらやめるなんていうヤツ、この中にはいないさ。
レルスはニヤッと笑った。
「いいだろう。ではまず、試験とダンジョンについて説明する。こちらに来なさい」
そうして、俺達はまず、レルスから試験に向けた事前講義を受けることになったのだった。
俺達はギルドの道場へやってきた。
レベル0の間は毎日のように通っていたこの建物も、レベル1になってからはあまり訪れなくなっていた。
それでもブライアンに魔法を習うときくらいはやってきたのだが、剣術修行は受けていない。
アレルもライトも、もう修行よりも実戦の方が大切というレベルなのだ。素振りだけなら道場に行く必要もないしね。あ、俺とフロルは剣術は諦めた。
ソフィネにいたってはレベル0の時も道場にはほとんど立ち入っていないので、前回の試験の時くらいらしい。弓矢はレア武器扱いで、道場でも教えていない。
「ダンジョンってどんなところなのかなぁ? アレル楽しみ」
アレルが無邪気に言う。
相変わらずの舌っ足らずではあるが、5歳の頃よりはマシになったかな。半年前は『だんぢょん』って言っていたし。
一方、俺はぼやく。
「俺は楽しみよりも不安の方が大きいよ」
レベル2への試験の内容はほとんど知らない。
唯一分かっているのは、試験官とともに実際にダンジョンに行くということだけ。
で、そもそもダンジョンというのがどういう場所なのかが分からない。
レベル2の試験を受けられるようになるまで、ダンジョンが何か、どこにあるのか、冒険者は誰も教えてはいけない決まりなのだ。
そして、冒険者以外だと国王や大臣レベルの人しかダンジョンについては知らない。
つまり、事前にダンジョンがどのようなものか知ることは通常不可能なのだ。
もっとも、俺には反則技がある。
もちろん、シルシルのことだ。
あいつならダンジョンが何か知っているはずだろう。
だが、10日程前に尋ねたところ……
『ふふふのふ~、おしえないのじゃ。他の誰も知らないでテストに挑むのじゃから、お主にだけ教えたら不公平じゃろうが』
……だそうである。
俺に対して転移だの祝福だの助言だのしまくっている神様が、今さら公平不公平を語るかとも思うが、確かに俺だけ事前情報を手に入れるのは反則か。
そんなわけで、ぶっつけ本番である。
4人の仲間の様子を見ると、ライトは俺と同じく不安いっぱい、アレルとソフィネは楽しみ、フロルは全力を尽くすだけだと決意しているといったところか。
そして、ギルド道場で俺達を待っていた試験官は……
「久しいな、アレル。ショートくんとフロルくんも元気そうで何よりだ」
……まさかの、レルス=フライマントだった。
『お久しぶりです。レルスさん』
俺とフロルは慌てて頭を下げる。前回は彼の正体を知らなかったが、今回は知っている。礼儀は大切だ。
「こんにちは、レルスしゃん」
……なのに、なんでアレルはこうも不躾なのか。一応呼び捨てではなく『しゃん』をつけたのが救いか。
そんな俺達の様子に、驚愕してひっくり返りそうになっているのがライトとソフィネ。
「え、レルスって、え?」
「まさか……」
「レルス=フライマントさん!?」
「伝説の騎士!?」
あ、そういえば2人は初対面だったっけ。
そして。
2人とも慌てて礼。
『よろしくお願いします』
うん、ライトはともかく、ソフィネがこういう場面で慌てるのは珍しいな。
冒険者達の間でレルス=フライマントとは現在の生きる伝説扱いなのだ。
「ふむ。今回、君達の試験は私が担当する。よろしく頼む」
……これって、やっぱりアレルとフロル……いや、アレルに興味があるからなんだろうなぁ。
「それでは、早速だが5人の冒険者カードを確認させてくれたまえ。もちろん、全ての項目を表示させてな」
レルスはそう言って、俺達の冒険者カードを確認し始めたのだった。
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「ふむ。いいだろう。5人とも合格だ」
……はい?
「合格、ですか?」
俺が眉を寄せる。ダンジョンで試験をすると聞いていたのだが……
もちろん、アレル達4人も戸惑っている。
レルスはすぐに言う。
「ああ、すまん。誤解を与えたな。申し訳ない。君達のステータスならば、レベル2の試験を受けさせられるという意味だ」
うん? 依頼回数をこなしているかをカードで確認したのか?
いや、依頼回数はカードには表示されないはずだ。それに、レルスはステータスを確認したと言った。
「ふむ、説明が必要だったな。これは公表していないが、レベル1の依頼をこなしたとしても、ステータスが低すぎる者にはレベル2の試験は受けさせられないのだよ」
マジか。ミリスもミレヌも誰も教えてくれなかったけど。
「理由は簡単。この試験は命がけだからだ。ステータスの低い者はダンジョンには連れて行けん。
レベル2の試験での死亡事故は10人中1人くらい。その他後遺症の残る怪我は10人中2人くらいが負うとされている。
それをふまえて最後の意思確認だ。本当に試験を受けるかね?」
10人中1人が死亡。
かなりの確率である。
だが。
俺達の答は決まっていた。
『はい。もちろんです』
5人全員、即座にそう答えたのだった。
当然だろ? この日のためにずっと頑張ってきたんだ。
今さらやめるなんていうヤツ、この中にはいないさ。
レルスはニヤッと笑った。
「いいだろう。ではまず、試験とダンジョンについて説明する。こちらに来なさい」
そうして、俺達はまず、レルスから試験に向けた事前講義を受けることになったのだった。
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