38 / 94
第五章 魔の森の戦い
1.シルシル拗ねる
しおりを挟む
俺と双子がレベルアップした次の日。
「あー、シルシルじゃ」
うわっ、テンション低!?
いつもの謎のバックミュージックもなく、暗い表情でシルシルは教会の礼拝室に現れた。
「何かあったのか?」
「ふん、ずーっと、ワシのことを呼びださんからな。どーせ、ワシなんかよりあの双子の方がかわいいんじゃろ」
プンプンと拗ねるシルシル。
確かに最初に剣術をならった日以来、シルシルを呼び出しはしなかったけどさぁ。
「用もないのに呼び出すのも悪いと思っただけだ。いや、双子の方がかわいいのは事実だけどっ!」
「で、何の用じゃ?」
うわ、拗ねたままだよ。
とことんめんどくせー神様だな、おい。
「俺達のレベルが上がったからその報告と、今後のことだ」
「うん? あー、確かにレベル1になったようじゃな。よかったの」
うん、全然感情がこもってないね。
そんなに呼び出されなかったのが不満なのか?
ひょっとして、神様って暇なのかね。
「呼び出さなかったことは謝るから。今度からできるだけ1週間に1回くらいは呼ぶから」
「本当か?」
「ああ、できるだけな」
「うむ、ならば今回に限っては許してやるのじゃっ!!」
うわ、テンション一気に上げやがった。
「で、これからのことなんだけど……」
「まずは、レベル2を目指すことじゃな。なんにしろ、ダンジョンには入れないので話にならん」
うむ、やっぱりそうなるのか。
なんつーか、高校入試に受かった翌日に、大学入試をがんばれとお説教されたような気分だ。いや、俺の学歴は高卒だが。
「大丈夫、今のお主達のステータスを見る限り、能力は十分レベル2どころか、レベル5くらいはある。あとは実績を積むことじゃな」
ふむ。
「どんな依頼をこなせばいいのかね?」
「それは自由に選ぶがよい。別段ワシから指定する必要もあるまい」
「わかった。つまりは、これまで通り依頼をこなしながら修行ってことだな」
「ふむ、それでよいぞ」
よし。じゃあ、また気合いを入れよう。
……
…………
………………
あれ?
「あの、もう、用事は無いんだが?」
とっとと時間を動かしてほしい。
「……そうか、そうじゃろうな、うん、どうせワシなんて……」
あ、また拗ねだしたよ、この幼女神様。
「じゃあ、時間を動かすぞ、あとはテキトーにがんばれ」
なんか、投げやりになってるよ!?
---------------
拗ねてしまった幼女神様はともかくとして。
俺と双子は教会を出て冒険者ギルドに向かった。
受付場には何人かの冒険者がすでにいる。
その中にはミリスもいた。
「ごちゅじんちゃま、今日もミリスにけんじゅちゅならうの」
アレルはそう言う。
だが。
「アレル、君はもうレベル1になった。私の訓練は卒業だ」
ミリスの言葉に、アレルはちょっとショックを受けたらしい。
「大体、君はもう私よりも強いだろう。
……少なくとも、木刀での模擬戦なら」
そうなの!?
驚く俺に、ミリスは言う。
「そもそも、私は『風の太刀』や『光の太刀』なんぞ使えん。しょせん、普通のレベル3の剣士にすぎんからな」
いや、そんな風に言われるとどうにも反応に困るんだが。
「アレル、君の剣術はもう基礎レベルは超えた。これから必要なのは実戦だ」
ミリスの言葉に、アレルは目を見開く。そして。
「わかりまちた。ミリス先生、これまでどうもありがとうごぢゃいました」
礼儀正しくそう頭を下げたのだった。
「ふむ、これからが本番だ。がんばれよアレル。
それで、ショート、君達はこれからどうするんだ?」
「もちろん、レベル2を目指しますよ。そのためには……」
俺は依頼が貼られた壁を見る。
レベル2になるためには、レベル1の依頼をこなした実績が必要だ。
もちろん、レベル1になったからといって、レベル0用の依頼が受けられないわけではない。
だが、それはレベル1としての実績にはほとんどならない。薬草採取しかしたことがない冒険者にダンジョン探索はさせられないのだ。
レベル1の依頼。
うーん。
護衛依頼は……双子と一緒だからなぁ。昨日ダルネスが言っていたように、幼児が護衛というのは歓迎されないだろう。例え俺が一緒だとしても、3人分の依頼料を払ってもらえるかは心許ない。
それ以外だと、西の山の鉱石採取か、魔の森のモンスター退治。こちらはギルドからの依頼が多い。
実戦を積むならばモンスター退治だが……
「ショート、あるいは君達は他の町に行く手もあるかもしれん」
ミリスの言葉に、俺達は「え?」っとなる。
「この町のギルドにはこれまで魔法使いはブライアンとミレヌくらいしかいなかった。ゆえに魔法使い用の依頼はほとんど来ない。アレルはともかく、君やフロルに向いた依頼はなかなか見つからないだろう」
そうか。確かにそうなのかもしれない。
だけどなぁ……
俺がどうしようかさらに考えていたその時だった。
ギルドの入り口が乱暴に開かれた。
「たのむ、助けてくれっ!」
叫び、入ってきたのはライトだった。
「あー、シルシルじゃ」
うわっ、テンション低!?
いつもの謎のバックミュージックもなく、暗い表情でシルシルは教会の礼拝室に現れた。
「何かあったのか?」
「ふん、ずーっと、ワシのことを呼びださんからな。どーせ、ワシなんかよりあの双子の方がかわいいんじゃろ」
プンプンと拗ねるシルシル。
確かに最初に剣術をならった日以来、シルシルを呼び出しはしなかったけどさぁ。
「用もないのに呼び出すのも悪いと思っただけだ。いや、双子の方がかわいいのは事実だけどっ!」
「で、何の用じゃ?」
うわ、拗ねたままだよ。
とことんめんどくせー神様だな、おい。
「俺達のレベルが上がったからその報告と、今後のことだ」
「うん? あー、確かにレベル1になったようじゃな。よかったの」
うん、全然感情がこもってないね。
そんなに呼び出されなかったのが不満なのか?
ひょっとして、神様って暇なのかね。
「呼び出さなかったことは謝るから。今度からできるだけ1週間に1回くらいは呼ぶから」
「本当か?」
「ああ、できるだけな」
「うむ、ならば今回に限っては許してやるのじゃっ!!」
うわ、テンション一気に上げやがった。
「で、これからのことなんだけど……」
「まずは、レベル2を目指すことじゃな。なんにしろ、ダンジョンには入れないので話にならん」
うむ、やっぱりそうなるのか。
なんつーか、高校入試に受かった翌日に、大学入試をがんばれとお説教されたような気分だ。いや、俺の学歴は高卒だが。
「大丈夫、今のお主達のステータスを見る限り、能力は十分レベル2どころか、レベル5くらいはある。あとは実績を積むことじゃな」
ふむ。
「どんな依頼をこなせばいいのかね?」
「それは自由に選ぶがよい。別段ワシから指定する必要もあるまい」
「わかった。つまりは、これまで通り依頼をこなしながら修行ってことだな」
「ふむ、それでよいぞ」
よし。じゃあ、また気合いを入れよう。
……
…………
………………
あれ?
「あの、もう、用事は無いんだが?」
とっとと時間を動かしてほしい。
「……そうか、そうじゃろうな、うん、どうせワシなんて……」
あ、また拗ねだしたよ、この幼女神様。
「じゃあ、時間を動かすぞ、あとはテキトーにがんばれ」
なんか、投げやりになってるよ!?
---------------
拗ねてしまった幼女神様はともかくとして。
俺と双子は教会を出て冒険者ギルドに向かった。
受付場には何人かの冒険者がすでにいる。
その中にはミリスもいた。
「ごちゅじんちゃま、今日もミリスにけんじゅちゅならうの」
アレルはそう言う。
だが。
「アレル、君はもうレベル1になった。私の訓練は卒業だ」
ミリスの言葉に、アレルはちょっとショックを受けたらしい。
「大体、君はもう私よりも強いだろう。
……少なくとも、木刀での模擬戦なら」
そうなの!?
驚く俺に、ミリスは言う。
「そもそも、私は『風の太刀』や『光の太刀』なんぞ使えん。しょせん、普通のレベル3の剣士にすぎんからな」
いや、そんな風に言われるとどうにも反応に困るんだが。
「アレル、君の剣術はもう基礎レベルは超えた。これから必要なのは実戦だ」
ミリスの言葉に、アレルは目を見開く。そして。
「わかりまちた。ミリス先生、これまでどうもありがとうごぢゃいました」
礼儀正しくそう頭を下げたのだった。
「ふむ、これからが本番だ。がんばれよアレル。
それで、ショート、君達はこれからどうするんだ?」
「もちろん、レベル2を目指しますよ。そのためには……」
俺は依頼が貼られた壁を見る。
レベル2になるためには、レベル1の依頼をこなした実績が必要だ。
もちろん、レベル1になったからといって、レベル0用の依頼が受けられないわけではない。
だが、それはレベル1としての実績にはほとんどならない。薬草採取しかしたことがない冒険者にダンジョン探索はさせられないのだ。
レベル1の依頼。
うーん。
護衛依頼は……双子と一緒だからなぁ。昨日ダルネスが言っていたように、幼児が護衛というのは歓迎されないだろう。例え俺が一緒だとしても、3人分の依頼料を払ってもらえるかは心許ない。
それ以外だと、西の山の鉱石採取か、魔の森のモンスター退治。こちらはギルドからの依頼が多い。
実戦を積むならばモンスター退治だが……
「ショート、あるいは君達は他の町に行く手もあるかもしれん」
ミリスの言葉に、俺達は「え?」っとなる。
「この町のギルドにはこれまで魔法使いはブライアンとミレヌくらいしかいなかった。ゆえに魔法使い用の依頼はほとんど来ない。アレルはともかく、君やフロルに向いた依頼はなかなか見つからないだろう」
そうか。確かにそうなのかもしれない。
だけどなぁ……
俺がどうしようかさらに考えていたその時だった。
ギルドの入り口が乱暴に開かれた。
「たのむ、助けてくれっ!」
叫び、入ってきたのはライトだった。
10
お気に入りに追加
1,322
あなたにおすすめの小説
異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~
存在証明
ファンタジー
不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?!
はたしてカイは運命をぶち壊して幸せを掴むことができるのか?!
火・金・日、投稿予定
投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
今、目の前で娘が婚約破棄されていますが、夫が盛大にブチ切れているようです
シアノ
恋愛
「アンナレーナ・エリアルト公爵令嬢、僕は君との婚約を破棄する!」
卒業パーティーで王太子ソルタンからそう告げられたのは──わたくしの娘!?
娘のアンナレーナはとてもいい子で、婚約破棄されるような非などないはずだ。
しかし、ソルタンの意味ありげな視線が、何故かわたくしに向けられていて……。
婚約破棄されている令嬢のお母様視点。
サクッと読める短編です。細かいことは気にしない人向け。
過激なざまぁ描写はありません。因果応報レベルです。
ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています
我儘女に転生したよ
B.Branch
ファンタジー
転生したら、貴族の第二夫人で息子ありでした。
性格は我儘で癇癪持ちのヒステリック女。
夫との関係は冷え切り、みんなに敬遠される存在です。
でも、息子は超可愛いです。
魔法も使えるみたいなので、息子と一緒に楽しく暮らします。
妹はわたくしの物を何でも欲しがる。何でも、わたくしの全てを……そうして妹の元に残るモノはさて、なんでしょう?
ラララキヲ
ファンタジー
姉と下に2歳離れた妹が居る侯爵家。
両親は可愛く生まれた妹だけを愛し、可愛い妹の為に何でもした。
妹が嫌がることを排除し、妹の好きなものだけを周りに置いた。
その為に『お城のような別邸』を作り、妹はその中でお姫様となった。
姉はそのお城には入れない。
本邸で使用人たちに育てられた姉は『次期侯爵家当主』として恥ずかしくないように育った。
しかしそれをお城の窓から妹は見ていて不満を抱く。
妹は騒いだ。
「お姉さまズルい!!」
そう言って姉の着ていたドレスや宝石を奪う。
しかし…………
末娘のお願いがこのままでは叶えられないと気付いた母親はやっと重い腰を上げた。愛する末娘の為に母親は無い頭を振り絞って素晴らしい方法を見つけた。
それは『悪魔召喚』
悪魔に願い、
妹は『姉の全てを手に入れる』……──
※作中は[姉視点]です。
※一話が短くブツブツ進みます
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる