異世界で双子の勇者の保護者になりました

ななくさ ゆう

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第四章 魔法修行とレベルアップ

5.対決!アレルVSライト(イラストあり)

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 模擬戦開始直後。

「行くぜ、アレル!」

 ライトはアレルに一気に詰寄った。
 そして素早く繰り出される、ライトの攻撃、攻撃、攻撃!

 素人目に見ても昨日のゴルの攻撃よりも素早い。
 一撃の威力はゴルよりも劣るのだろうが、確かに剣術の腕前はゴルよりライトの方が上かもしれない。

 アレルはライトの攻撃をかわし、あるいは木刀で弾く。
 だが、ライトは休まない。
 アレルはなんとか距離を取ろうとしているように見える。確かに『風の太刀』がある以上、距離を取れれば格段に有利だろう。
 だが、ライトも簡単にはそれを許さない。

 アレルも、ゴルの時と違って余裕がなさそうだ。
 攻撃に転じることもなかなかできないでいるらしい。

「でやぁぁぁぁっ!!」

 ライトは気合いを入れて攻撃を続ける。
 ライトの仲間達が口々に言う。

「ライトのやつ、本気ガチだな」「ああ、だけどアレルもすごいぞ」「俺なら避けられねー」

 ミリスは2人の戦いをジッと見つめている。

 そしてフロルは。

「アレル……」

 心配そうに両手を握りしめていた。

 戦いはライトが有利に見える。
 何しろ、アレルは未だ1度も攻撃を仕掛けていない。
 だが、ライトの攻撃もアレルにまともにヒットしない。



 と。

「スキあり!」

 木刀攻撃を避けたアレルの脇腹に、ライトの回し蹴りがまともに入る。
 おいおい、剣術の模擬戦で蹴りとかありなのかよ!?
 俺はそう思うが、ミリスもライトの仲間達も当然と受け止めているようだ。

 俺達の反対側の壁まで転がるアレル。
 フロルが叫ぶ。

「アレル!」

 だが、アレルはぴょこんとすぐに起き上がる。
 どうやらまだやれるようだ。
 そして、転がった結果ライトと距離が取れている。

「いくよっ!」

 アレルは叫んで木刀を振りかぶる。
『風の太刀』か!?
 この距離ならライトの追撃は間に合いそうもない。

 だが。

「そっから撃っていいのかよ、アレル!」

 ライトの言葉に、アレルが固まる。

 どういうことだ?
 一瞬分からなかったが、すぐに気がつく。
 あの位置から『風の太刀』を撃てば、俺やフロル、ライトの仲間達も巻き込みかねない。

 アレルは戸惑った表情。
 ライトはそのスキを逃しはしなかった。

「うりゃあぁぁぁ!!」

 ライトがアレルに一気に隣接!
 アレルは戸惑ったまま対応しきれない!

 ライトの木刀が次々に繰り出される。
 壁際で満足に躱せないアレル。

 そしてついに!

 アレルの横腹を、ライトの木刀が強かに打ち据えたのだった。

 床に転がるアレル。
 そのアレルにライトが木刀を突きつけたところで。

「そこまで! 勝者ライト!」

 ミリスがそう宣言をして、模擬戦は終了したのだった。

 ---------------

「ライト、ずるいよぉー」

 模擬戦終了後、口を膨らませて言うアレル。

「ふん、作戦だぜ、作戦」

 ライトはそう言って笑う。

「確かにライトの言うとおりだ。戦士ならば常に周囲の状況を慮り、敵と仲間がどこにいるかを把握しなければならない。今回は君の負けだ、アレル」

 ミリスの言葉に、「うー」っと不満げに声を上げつつもそれ以上は何も言わないアレル。

「だが、ライト。君の作戦も褒められたものではない。あのままアレルが撃っていれば、君の仲間も巻き込まれていた。戦士として、仲間を巻き込みかねない行動は下策だ」

 ミリスの言葉に、ライトは「うっ」と言葉に詰まる。

「それと、アレル。君の最大の敗因は『風の太刀』にこだわりすぎたことだ。確かに『風の太刀』は強力だが、それだけに頼ってはならない」
「……うぅ」

 2人のミスを的確に指摘していくミリス。
 ライトも勝利の喜びよりも反省点について考え始めた様子だ。

 そして、アレルは。

「ごめんなちゃい。まけちゃった……」

 俺とフロルの前に来て泣きそうな声で言う。

「いや、大丈夫さ。次頑張ればいい」

 俺はアレルの髪を撫でてやる。
 フロルは心配げにアレルに尋ねる。

「アレル、大丈夫? 怪我はない?」
「うーん、ちょっと痛い。でもだいじょーぶ」

 こうして、アレル2回目の模擬戦は、彼に敗北の悔しさを味合わせたのだった。

 ---------------

 剣術の訓練が終わり、俺はアレルの冒険者カードを確認する。

 ===========
 氏名:アレル
 職業:冒険者(レベル0)/ショート・アカドリの奴隷
 HP:45/65 MP:20/20 力:63 素早さ:62
 装備:旅人の服(子ども用)/木刀
 魔法:なし
 スキル:見切り Lv3/俊足 Lv3/風の太刀 Lv2/気合い Lv1
 ===========

 昨日ほどではないが、今日1日でアレルのステータスはまた上がったようだ。
 現在HPが減っているが、これは模擬戦のためだろう。休めば回復するだろうし、辛いようなら『体力回復』の魔法を使えばいい。

「そういえば、アレルのスキル効果ってなんなんだ?」

『風の太刀』はともかく、他のスキルの効果はイマイチ分かりにくい。

「うーんとね。うーんと、うーんと、アレルよくわかんなーい」

 すると、ミリスが解説してくれた。

「『見切り』は相手の攻撃を目で見て判断するスキル。『俊足』は瞬間的に素早さを底上げするスキル、『風の太刀』は昨日見たとおりだ」
「『気合い』っていうのも増えていますけど」

 俺の言葉に、ミリスの顔が引きつる。

「そ、そうか、本当にすごいな……『気合い』は力を込めることで、防御力や攻撃力が一時的にあがるスキルだ」

 なるほど。おおむね言葉通りといったところか。
 こりゃあ、俺やフロルも負けていられない。前衛よりも後衛の方が問題なパーティーになってしまう。

「よし、これからも頑張ろう。目指すはレベルアップだ!」
「はい! ご主人様!」
「アレルもがんばるー」

 盛り上がる俺達に、ライトが言う。

「俺らも負けねーからな。どっちが先にレベル1になるか競争だ!」
「アレルもまけないもん。フロルやごちゅじんちゃまもまけないもんっ!」

 どうやら、アレルにとって、ライトは最初のライバルになってくれたらしい。
 それも、強敵と書いてともと読むタイプのいい関係だ。

 あれ? ところで今日はゴルがいないな。
 ……ま、いいか。あいつがいると面倒だし。

 ---------------

 こうして、俺達は冒険者の道を歩き出したのだった。
 その先に、何が待っているのか、今の俺達はまだ知らない。

======================

作中のイラストはchole様にご提供いただきました。
素敵なイラストをありがとうございます。
↓chole様のpixiv
https://www.pixiv.net/artworks/88709454
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七草裕也の小説

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