異世界で双子の勇者の保護者になりました

ななくさ ゆう

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第三章 剣術修行と勇者の因子

1.剣術をならおう その1

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 冒険者ギルドの受付がある建物。その隣の建物はギルドが運営する道場と呼ばれる施設だ。
 その地下に俺は双子と共にやってきた。

「ごちゅじんちゃまぁ、ここでなにするのぉー?」

 尋ねるアレル。俺より前にフロルが答えた。

「もう、アレル。何度も説明したでしょう。これから剣術をならうの」
「そっかー、うん、がんばる。アレルけんぢゅちゅがんばるっ!」

 そんな双子のやりとりにほのぼのしてしまう俺。
 やっぱり、この2人はかわいいなぁ。

 道場の建物はギルドの建物以上に床面積が広い。地下1階では剣術指南、地上1階では一般教養や冒険者としての基本知識の講義、2階では魔法の修行を受けられる。
 冒険者登録している人間ならば、お金さえ払えば剣術や魔法、それに教養をえることができるのだ。

 昨日、初めて依頼を受けて、自分たちの未熟さを痛感した俺は、双子と共にまずは剣術指南を受けることにした。
 魔法の習得は値段が高すぎるし、教養は双子――特にアレルにはむしろ俺が教えてあげるべきことも多いだろう。
 もちろん、冒険者としての基礎知識は俺にも必要なので、いずれは受講するつもりだが、まずは剣術だと考えた。

 剣術指南はレベルごとに行なわれる。といっても、ギルドで剣術をならうのはレベル0かレベル1の冒険者がほとんどである。
 そのため、午前中はレベル0の、午後はレベル1の冒険者が集まるらしい。
 当然、俺達3人は午前中にやってきた。

 かなり早めの時間に地下道場に入出した俺達だったが、そこには先客がいた。
 10代前半の少年――見覚えがある。そうだ、昨日ツノウサギの死体を見つけてギルドに持ってきた少年冒険者パーティのリーダーっぽかった子だ。

「お? 兄ちゃんじゃん。昨日はどうもありがとうな。いやー、ツノウサギをあっさり手に入れられてラッキーだったぜ」

 ニヤっと笑う少年。
 どうやら彼も、あのツノウサギを倒したのが俺達だと、あの場のやりとりでさっしていたらしい。
 この場合、なんて応えたら良いんだろうな。別に、俺は彼に思うところはない。俺がバカだっただけで、彼に落ち度はないのだから。

 だが、そうは思っていなかった子もいた。

「あっ。昨日のツノウサギ泥棒ねっ!」

 フロルが少年を指さして言う。
 少年はニヤっと笑って、フロルに言い返す。

「何言っているんだ。俺達は捨ててあったモノを拾って持って帰ってきただけだぞ。そうだろ、兄ちゃん?」

 どうやら、彼は俺の意図を探っているらしい。フロルに同意するのか、それとも自分に同意するのかと。
 ここはフロルを説得すべきだな。少年も剣術指南を受けようとする仲間らしいし、無用な争いは避けたい。

「フロル、彼の言うとおりだよ。昨日のことは俺達の失敗だ。彼は何も悪くない」
「……わかりました」

 フロルはちょっと不満げにしながらも頷いた。
 頭のいい子だし、理屈では理解してくれていると信じたい。

「ところで兄ちゃん……えっと、そういえばまだ名前知らなかったっけ、俺はライトルール。仲間達からはライトって呼ばれている。兄ちゃん達もそう呼んでくれていいぜ」

 名乗られたからにはこっちも名乗り返すべきだろう。

「俺はショートだ」
「私はフロル」
「アレルはアレルだよー」

 互いに名乗り終えると、ライトは言う。

「ショート達も剣術をならいに来たんだな」
「ああ、今日が初めてだ」
「じゃあ、俺が先輩だな。ショート、アレル、フロルよろしくたのむぜ」

 日本ならおそらく中学生か、下手をしたら小学校高学年くらいの子にそんなことを言われてしまう。だが、不思議と腹は立たない。彼がサバサバした性格っぽいからだろうか。

「ああ、こちらこそよろしく」
「よろちくー」

 アレルが俺に習って言って、なんだか場が凄くほのぼのしたときだった。
 もう一人の訓練生が道場にやってきて空気が一変するのだった。

「あん? なんだ今日はガキばかりじゃねぇか。いつからギルドの道場はガキの遊び場になったんだ?」

 入ってきたのは一昨日も俺達に絡んできた筋肉ダルマ――ゴルだった。

 ---------------

 ゴルの暴言に、道場内の空気が一気に凍り付く。
 アレルは俺の足の裏側に隠れ、フロルはキッとゴルを睨んでいる。
 だが、フロル以上に不快そうなのはライトであった。

「なんだよ、ゴルのオッサン。文句でもあるのかよ!?」
「ああ、大ありだね。ガキどもに混じって一緒に剣術訓練なんて冗談じゃねーぜ」
「だったら、オッサンが帰ればいいだろっ!」

 まさに一触即発。
 しかも、そこにフロルから余計なひと言が。

「っていうか、あんた、大いばりしていたのにレベル0だったのね」

 フロル。お前まで喧嘩を売ってどうする。
 でも、確かにその通りだよな。
 今の時間はレベル0の冒険者が習う時間だ。

「う、うるせー、泣かすぞ、このガキ!」

 頭に血をのぼらせて、いきり立つゴル。
 だが、フロルも負けてはいない。

「私みたいなガキ・・に本当のことを言われてマジギレとか、かっこわるいわね。そんなんだからその歳になってもレベル0なのよ」

 本当ならフロルを止めるべきなのだろうが、なぜだろうそんな気分になれない。むしろ、今回ばかりは俺もフロルやライトの発言に賛同したい。
 ゴルはどうみても俺よりも年上の30歳代に見えるが、あまりにも大人げなさすぎるだろう。

「このガキ、いわせておけばぁぁぁぁ!」

 叫び、ゴルがフロルに飛びかかる。

「フロルっ!」

 俺は叫んで彼女を庇おうとする。
 が、その時だった。

「そこまでだ!」

 道場にまた別のリンとした女性の声が響いたのだった。
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