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めざせ!ダンジョンアドベンチュラ-
第2話 ダンジョンに挑む少年少女達 ~ダンジョン突入20分前~
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「遅い! 貴様らこの程度の山道を登るのに何時間かかっているんだ!」
そう叫んだ彼女とも麓の村で一度会っている。
今回の試験官を務める教官で、現役ダンジョンアドベンチュラ-だ。たしか名前は一角武巳とかいったか。
「ダンジョンアドベンチュラ-になるつもりなら、この程度三十分で登り切れ」
むちゃくちゃだなぁ。そんなに甘い道じゃなかったと思うけど。
「とはいえ、貴様らは仮にも一次試験を合格している。ここで帰れとも言えまい」
一次試験というのは山登りのことじゃない。
オレたちはすでに、ダンジョンの基礎知識を問う学科試験、短距離走やマラソンなどの体力測定、そして潜在能力を測る魔力測定という三科目の試験を受けている。
教官はこれ見よがしに一枚の紙を取り出して、オレたちをなめ回すように見た。どうやらそこにはオレたちの一次試験の結果が書かれているらしい。
「ふむ、飛来挑英。学科試験97点。運動能力は小学生としては高いな。少年野球のエースで四番。だが魔力は残念ながら0か」
魔力とはダンジョンで見つかる魔法のアイテムを使うための力だ。生まれながらの才能で、訓練とかではのばせない。今0なら将来にわたって0ということだ。
「次に海野蒼。学科試験は82点、運動能力は十二歳児の平均よりは上、魔力は191と」
マジかよ。三桁超えの魔力を持っているなんて規格外じゃないか。
「春風優汰。学科試験は満点。運動能力は十二歳児の平均よりも低い。魔力は98と」
優汰の魔力も測定後、担当官がどよめいたくらいに高かった。
「そして、志音疾翔。学科試験は32点。運動能力は飛来挑英と同じくトップクラス。剣道の全国大会出場経験もあり。魔力は43か」
オレの魔力はそこそこといったところ。低くもないが高くもないらしい。
挑英がボソリと言った。
「すべて四択のテストで32点とはな。深刻な馬鹿なのか?」
「うるせーよ。魔力0ヤローが」
「ふんっ。鍛えようのない潜在能力を馬鹿にされても何も思わんな」
そう言いあって、オレと挑英は再び『ふんっ』とそっぽを向きあった。
教官はオレたちの口ゲンカは耳に入っていないかのように話を続けた。
「さて、諸君。これからいよいよ実際のダンジョンに行っての実地テストを行う。だがその前に最終確認をしておこう。学科試験32点のヤツもいることだしな」
そう言って、教官はジロリとオレをにらんだ。
「まず、ダンジョンとは何か? 志音疾翔、答えてみろ」
何かって言われてもなぁ……とりあえず、知る限りを答えてみるか。
「えーっと、お宝がいっぱいある迷宮で、入るたびに構造が変わって、モンスターがいて、ワープゲートがあって、資格が必要で十二歳以上じゃないと取得できなくて、それからえーっと、十八歳以上になると入ろうとしてもはじかれて……うーんと、あとは……」
そんな風に言うオレに、教官は「なるほどな」とうなずいた。
「最低限の知識はあるようだな。安心したぞ。この質問すら答えられないならば、今すぐ帰ってもらうところだ。細かいことはともかく、あらためて重要な三点をまとめよう」
そう言って教官は「一つ目」と指を一本立てた。
「これが最も重要な点だ。ダンジョンは命がけの場所だ。この実地テストで入るダンジョンは初心者向けだが、命の保証はできない。毎年、この実地テストで大怪我をする者はあとをたたないし、過去には命を失った者もいる。まずはそこをしっかり認識してほしい」
ゴクリとつばを飲み込む音が聞こえた。優汰と、それに蒼ちゃんの喉がなったのだ。あるいはオレの喉もなっていたかもしれない。
教官は続いて「二つ目」と二本目の指を立てた。
「ダンジョンの構造は突入するたびに変わる。現れるモンスターや設置される宝箱、さらに罠もだ。ある程度の法則はあるがな。それこそがダンジョンの恐ろしさであり、魅力でもある。探検するたびに人類を救う宝が見つかる可能性がある一方で、なすすべもなく命を失う恐れもある、ハイリスクハイリターンな場所だ」
いまさら言われるまでもなく知っている。むしろ一般常識だ。
「なぜそんな不思議な現象が起きるかは誰も知らない。三十年前初めてこの世界にダンジョンへの入り口――ワープゲートが出現してから様々な調査が行われたが、根本的に『ダンジョンとは何か』は誰も知らないのだからな。ちまたでは『ダンジョンの神がそう作り出した世界だから』などと言われているが、正直私に言わせれば眉唾だ。いずれにしてもひとたびダンジョンに入れば、教官たる私にも予想できないことが起こりえる」
さっきからずいぶんと脅してくるな。
危険な場所に行くのだから警告するのは当然なのかもしれないが。
そして、教官は「三つ目」と言って三本目の指を立てた。
「ダンジョンに入れるのは十八歳の誕生日を迎えるまでだ。十八歳を超えると、ワープゲートを通ることができなくなる。その理由も不明。そういう風にできているとしか言いようがない」
それももちろん知っている。
だから、ダンジョンアドベンチュラ-は未成年者しかなれない。十八歳の誕生日を迎えたら、ダンジョンアドベンチュラ-は強制的に引退だ。
「以上三つのことを踏まえて話を進めよう。ダンジョンは命がけの場所。一般に危険な場所に未成年者が行くことに大人は難色を示す。それでもダンジョンアドベンチュラ-という存在を国が認めている。その理由は何か。志音疾翔、答えてみろ」
問われて、オレは困ってしまった。
「それは……だって、未成年者しか入れないんだからしょうがないっていうか……」
その答えに、教官は冷たい目でオレを見た。
「飛来挑英、お前はどう思う?」
「はい。ダンジョンの宝箱から手に入るアイテムが、人々に、国に、世界にとてつもなく有用だからです。今やダンジョンのアイテムなくしてこの世界の文明は成り立ちません」
挑英はよどみなく続けた。
「たとえば電気宝玉なくしては発電もできません。また霊薬系のアイテムによって命を救われる人々は我が国だけでも年間一万人を超えています。未成年者に危険な冒険をさせるリスクを受け入れてでも、ダンジョンのアイテムを入手しなければならないと判断しているのだと思います」
挑英はそこまで言ってから、一瞬だけドヤ顔でオレを見た。
教官は「ふむ」とうなずいた。
「その通りだ。現在の社会はもはやダンジョンのアイテムなしでは成り立たない。だが、危険な迷宮に未成年者を誰彼かまわず入れるわけにはいかない。それゆえに生まれたのが『ダンジョンアドベンチュラ-』という存在であり、制度でもある」
三十年前、初めてこの世界にダンジョンへの入り口が現れたとき、世界中で何も知らない少年少女たちがダンジョンへと迷い込み多くの犠牲者が出た。一方でダンジョンをクリアーした子のなかには、人類の科学技術では到底再現できないようなアイテムを持ち帰った者がいた。
「ダンジョンアドベンチュラ-になるには、いくつかの条件がある。その第一歩が今日の実地試験だ。今日の試験に合格すれば、諸君らは晴れて見習いアドベンチュラ-となる。見習いアドベンチュラ-として二年以上の訓練を積んでようやく一人前のダンジョンアドベンチュラ-になるための試験を受ける権利を得られる」
見習いアドベンチュラ-になる試験を受ける条件は十二歳以上であること。プロのダンジョンアドベンチュラ-になれるのは、どんなに早くても十四歳。つまり、ダンジョンアドベンチュラ-として活躍できるのは四年間だけということだ。
「それでも、毎年ダンジョンアドベンチュラ-や見習いアドベンチュラ-の犠牲はなくならない。昨年度犠牲になったダンジョンアドベンチュラ-は四十人、見習いアドベンチュラ-は十九人だ。これは日本だけの統計であり、全世界となれば犠牲者は数千単位になる。先ほども言ったとおり、見習いアドベンチュラ-になるための試験で大怪我をする者や、犠牲になる者もいる」
ゴクリ。
オレは、今度こそ自分が喉を鳴らしたのをはっきり自覚した。
一方、挑英が教官に言った。
「教官、そんなことはダンジョンアドベンチュラ-になると決意した以上当然知っていることです。ま、学科試験32点のヤツは別としてですが」
「たしかにその通りだな。すまない。この警告は実地試験前に行うようにダンジョンアドベンチュラ-委員会から命じられていてな」
ダンジョンアドベンチュラ-委員会とは、ダンジョンアドベンチュラ-制度や試験を管理する国の機関だ。ダンジョンに間違って迷い込む子が出ないように、ワープゲートの警備もしているらしい。
「それでビビるヤツなら、ダンジョンアドベンチュラ-になるのはやめた方がいいでしょうね」
そうだ。こんな話でビビってたまるかっ。
「たしかに飛来挑英の言う通りだ。だが、それでも最後に確認しよう。ここから先は命がけだ。貴様ら、覚悟はできているか?」
教官はオレたちを、再びなめ回すように見た。そして、一人一人の名前を呼んで覚悟しているか確認する。
「飛来挑英! 貴様はどうだ?」
「当然でしょう。いまさらビビって諦めるなどありえません」
「ふむ、なかなかの意志の強さだ。次、海野蒼! 貴様はどうだ?」
「私は……私は絶対にダンジョンアドベンチュラ-になります。ならなくちゃいけないんです」
「ふむ、その理由は聞くまい。だが覚悟は理解した。次、春風優汰! 貴様は?」
「ボクは……ボクは正直怖いです」
おいおい。優汰……いまさらここで逃げ帰るとか言うなよ?
たしかに優汰は昔から弱虫だし、小さな頃は泣き虫だったけど。
「でも、諦めるなんてしたくない。ずっと、ずっと夢だったんだ。パパやママのあとをついで、ボクもダンジョンアドベンチュラ-になる。なってみせます」
優汰は力強く断言した。
「ふむ、恐怖を知っていることは決してマイナスではない。ダンジョンアドベンチュラ-にとって、慎重さはなによりの武器だからな。最後、志音疾翔!」
「オレだって同じだ! オレは最高のダンジョンアドベンチュラ-になる男だぜ!」
そうビシっと言ってやると、教官は「なるほど」とうなずき笑った。
「ふむ、その自信に満ちた態度、気に入った。先ほどと矛盾するようだがあえて言おう。ダンジョンアドベンチュラ-にとって、自信を持って進むことは大きな力になる」
そして、教官はオレたち四人に言った。
「貴様ら四人。プロダンジョンアドベンチュラ-一角武巳の名において、実地試験を受けることを許可しよう。さあついてこい! ダンジョンへのワープゲートはこの洞窟の奥にある!」
そう叫んだ彼女とも麓の村で一度会っている。
今回の試験官を務める教官で、現役ダンジョンアドベンチュラ-だ。たしか名前は一角武巳とかいったか。
「ダンジョンアドベンチュラ-になるつもりなら、この程度三十分で登り切れ」
むちゃくちゃだなぁ。そんなに甘い道じゃなかったと思うけど。
「とはいえ、貴様らは仮にも一次試験を合格している。ここで帰れとも言えまい」
一次試験というのは山登りのことじゃない。
オレたちはすでに、ダンジョンの基礎知識を問う学科試験、短距離走やマラソンなどの体力測定、そして潜在能力を測る魔力測定という三科目の試験を受けている。
教官はこれ見よがしに一枚の紙を取り出して、オレたちをなめ回すように見た。どうやらそこにはオレたちの一次試験の結果が書かれているらしい。
「ふむ、飛来挑英。学科試験97点。運動能力は小学生としては高いな。少年野球のエースで四番。だが魔力は残念ながら0か」
魔力とはダンジョンで見つかる魔法のアイテムを使うための力だ。生まれながらの才能で、訓練とかではのばせない。今0なら将来にわたって0ということだ。
「次に海野蒼。学科試験は82点、運動能力は十二歳児の平均よりは上、魔力は191と」
マジかよ。三桁超えの魔力を持っているなんて規格外じゃないか。
「春風優汰。学科試験は満点。運動能力は十二歳児の平均よりも低い。魔力は98と」
優汰の魔力も測定後、担当官がどよめいたくらいに高かった。
「そして、志音疾翔。学科試験は32点。運動能力は飛来挑英と同じくトップクラス。剣道の全国大会出場経験もあり。魔力は43か」
オレの魔力はそこそこといったところ。低くもないが高くもないらしい。
挑英がボソリと言った。
「すべて四択のテストで32点とはな。深刻な馬鹿なのか?」
「うるせーよ。魔力0ヤローが」
「ふんっ。鍛えようのない潜在能力を馬鹿にされても何も思わんな」
そう言いあって、オレと挑英は再び『ふんっ』とそっぽを向きあった。
教官はオレたちの口ゲンカは耳に入っていないかのように話を続けた。
「さて、諸君。これからいよいよ実際のダンジョンに行っての実地テストを行う。だがその前に最終確認をしておこう。学科試験32点のヤツもいることだしな」
そう言って、教官はジロリとオレをにらんだ。
「まず、ダンジョンとは何か? 志音疾翔、答えてみろ」
何かって言われてもなぁ……とりあえず、知る限りを答えてみるか。
「えーっと、お宝がいっぱいある迷宮で、入るたびに構造が変わって、モンスターがいて、ワープゲートがあって、資格が必要で十二歳以上じゃないと取得できなくて、それからえーっと、十八歳以上になると入ろうとしてもはじかれて……うーんと、あとは……」
そんな風に言うオレに、教官は「なるほどな」とうなずいた。
「最低限の知識はあるようだな。安心したぞ。この質問すら答えられないならば、今すぐ帰ってもらうところだ。細かいことはともかく、あらためて重要な三点をまとめよう」
そう言って教官は「一つ目」と指を一本立てた。
「これが最も重要な点だ。ダンジョンは命がけの場所だ。この実地テストで入るダンジョンは初心者向けだが、命の保証はできない。毎年、この実地テストで大怪我をする者はあとをたたないし、過去には命を失った者もいる。まずはそこをしっかり認識してほしい」
ゴクリとつばを飲み込む音が聞こえた。優汰と、それに蒼ちゃんの喉がなったのだ。あるいはオレの喉もなっていたかもしれない。
教官は続いて「二つ目」と二本目の指を立てた。
「ダンジョンの構造は突入するたびに変わる。現れるモンスターや設置される宝箱、さらに罠もだ。ある程度の法則はあるがな。それこそがダンジョンの恐ろしさであり、魅力でもある。探検するたびに人類を救う宝が見つかる可能性がある一方で、なすすべもなく命を失う恐れもある、ハイリスクハイリターンな場所だ」
いまさら言われるまでもなく知っている。むしろ一般常識だ。
「なぜそんな不思議な現象が起きるかは誰も知らない。三十年前初めてこの世界にダンジョンへの入り口――ワープゲートが出現してから様々な調査が行われたが、根本的に『ダンジョンとは何か』は誰も知らないのだからな。ちまたでは『ダンジョンの神がそう作り出した世界だから』などと言われているが、正直私に言わせれば眉唾だ。いずれにしてもひとたびダンジョンに入れば、教官たる私にも予想できないことが起こりえる」
さっきからずいぶんと脅してくるな。
危険な場所に行くのだから警告するのは当然なのかもしれないが。
そして、教官は「三つ目」と言って三本目の指を立てた。
「ダンジョンに入れるのは十八歳の誕生日を迎えるまでだ。十八歳を超えると、ワープゲートを通ることができなくなる。その理由も不明。そういう風にできているとしか言いようがない」
それももちろん知っている。
だから、ダンジョンアドベンチュラ-は未成年者しかなれない。十八歳の誕生日を迎えたら、ダンジョンアドベンチュラ-は強制的に引退だ。
「以上三つのことを踏まえて話を進めよう。ダンジョンは命がけの場所。一般に危険な場所に未成年者が行くことに大人は難色を示す。それでもダンジョンアドベンチュラ-という存在を国が認めている。その理由は何か。志音疾翔、答えてみろ」
問われて、オレは困ってしまった。
「それは……だって、未成年者しか入れないんだからしょうがないっていうか……」
その答えに、教官は冷たい目でオレを見た。
「飛来挑英、お前はどう思う?」
「はい。ダンジョンの宝箱から手に入るアイテムが、人々に、国に、世界にとてつもなく有用だからです。今やダンジョンのアイテムなくしてこの世界の文明は成り立ちません」
挑英はよどみなく続けた。
「たとえば電気宝玉なくしては発電もできません。また霊薬系のアイテムによって命を救われる人々は我が国だけでも年間一万人を超えています。未成年者に危険な冒険をさせるリスクを受け入れてでも、ダンジョンのアイテムを入手しなければならないと判断しているのだと思います」
挑英はそこまで言ってから、一瞬だけドヤ顔でオレを見た。
教官は「ふむ」とうなずいた。
「その通りだ。現在の社会はもはやダンジョンのアイテムなしでは成り立たない。だが、危険な迷宮に未成年者を誰彼かまわず入れるわけにはいかない。それゆえに生まれたのが『ダンジョンアドベンチュラ-』という存在であり、制度でもある」
三十年前、初めてこの世界にダンジョンへの入り口が現れたとき、世界中で何も知らない少年少女たちがダンジョンへと迷い込み多くの犠牲者が出た。一方でダンジョンをクリアーした子のなかには、人類の科学技術では到底再現できないようなアイテムを持ち帰った者がいた。
「ダンジョンアドベンチュラ-になるには、いくつかの条件がある。その第一歩が今日の実地試験だ。今日の試験に合格すれば、諸君らは晴れて見習いアドベンチュラ-となる。見習いアドベンチュラ-として二年以上の訓練を積んでようやく一人前のダンジョンアドベンチュラ-になるための試験を受ける権利を得られる」
見習いアドベンチュラ-になる試験を受ける条件は十二歳以上であること。プロのダンジョンアドベンチュラ-になれるのは、どんなに早くても十四歳。つまり、ダンジョンアドベンチュラ-として活躍できるのは四年間だけということだ。
「それでも、毎年ダンジョンアドベンチュラ-や見習いアドベンチュラ-の犠牲はなくならない。昨年度犠牲になったダンジョンアドベンチュラ-は四十人、見習いアドベンチュラ-は十九人だ。これは日本だけの統計であり、全世界となれば犠牲者は数千単位になる。先ほども言ったとおり、見習いアドベンチュラ-になるための試験で大怪我をする者や、犠牲になる者もいる」
ゴクリ。
オレは、今度こそ自分が喉を鳴らしたのをはっきり自覚した。
一方、挑英が教官に言った。
「教官、そんなことはダンジョンアドベンチュラ-になると決意した以上当然知っていることです。ま、学科試験32点のヤツは別としてですが」
「たしかにその通りだな。すまない。この警告は実地試験前に行うようにダンジョンアドベンチュラ-委員会から命じられていてな」
ダンジョンアドベンチュラ-委員会とは、ダンジョンアドベンチュラ-制度や試験を管理する国の機関だ。ダンジョンに間違って迷い込む子が出ないように、ワープゲートの警備もしているらしい。
「それでビビるヤツなら、ダンジョンアドベンチュラ-になるのはやめた方がいいでしょうね」
そうだ。こんな話でビビってたまるかっ。
「たしかに飛来挑英の言う通りだ。だが、それでも最後に確認しよう。ここから先は命がけだ。貴様ら、覚悟はできているか?」
教官はオレたちを、再びなめ回すように見た。そして、一人一人の名前を呼んで覚悟しているか確認する。
「飛来挑英! 貴様はどうだ?」
「当然でしょう。いまさらビビって諦めるなどありえません」
「ふむ、なかなかの意志の強さだ。次、海野蒼! 貴様はどうだ?」
「私は……私は絶対にダンジョンアドベンチュラ-になります。ならなくちゃいけないんです」
「ふむ、その理由は聞くまい。だが覚悟は理解した。次、春風優汰! 貴様は?」
「ボクは……ボクは正直怖いです」
おいおい。優汰……いまさらここで逃げ帰るとか言うなよ?
たしかに優汰は昔から弱虫だし、小さな頃は泣き虫だったけど。
「でも、諦めるなんてしたくない。ずっと、ずっと夢だったんだ。パパやママのあとをついで、ボクもダンジョンアドベンチュラ-になる。なってみせます」
優汰は力強く断言した。
「ふむ、恐怖を知っていることは決してマイナスではない。ダンジョンアドベンチュラ-にとって、慎重さはなによりの武器だからな。最後、志音疾翔!」
「オレだって同じだ! オレは最高のダンジョンアドベンチュラ-になる男だぜ!」
そうビシっと言ってやると、教官は「なるほど」とうなずき笑った。
「ふむ、その自信に満ちた態度、気に入った。先ほどと矛盾するようだがあえて言おう。ダンジョンアドベンチュラ-にとって、自信を持って進むことは大きな力になる」
そして、教官はオレたち四人に言った。
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