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エピローグ
2.ただいま
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気がつくと、僕はお師匠様の小屋があった場所の近くに立っていた。
――ここに戻してくれるとはね。カルディも粋なことをするなぁ。
僕の願いは簡単だ。
『8歳のパドの姿でパドの世界に送ってほしい。ただし、今度は力と魔力は常人と同じで』
どうやら、カルディはその願いを叶えてくれたらしい。
試しに漆黒の刃の魔法を使おうとしたけれど、魔法の使い方は分かっても発動はしなかった。
バラヌのように全く魔力がないわけではないけれど、漆黒の刃の魔法をつかえるほどではないらしい。
足を踏みしめたり、石ころを拾ってみたりすると、力も普通だ。
桜勇太のように下半身麻痺ではない健康体だけど、硬い石を握りつぶせるような力も消えている。
お師匠様の小屋は、もうほとんど跡すらない。
8年以上前に倒れて、そのあと雨風に腐食されてしまったからね。
だけど、残っているものもある。
僕らが作ったお師匠様のお墓だ。
小さな石だけのお墓は、いまでもちゃんとそこにあった。
とりあえず、お墓参りでもするか。
僕はお師匠様のお墓の前に立ち、手を合わせた。
お師匠様、あれからいろんな事があったんだよ。
王様の前で王位継承権を巡って争ったり、世界が滅びかけたり、日本に行ったりさ。
うん、改めて考えてみるとすごいよね。
――さて、これからどうしよう。
僕の望みは叶った。
これからはこの世界で普通の子どもとして生き、普通の大人になり、普通の人生を送る。
チートも『闇』も王家も関係なく、普通に。
……だけどさぁ。
ここって、何もないよね。
冷静に考えてみると、力もない8歳児がいきなり誰もいない森の中に放置されているわけで。
あれ? 結構、僕ピンチ!?
このまま飢え死にとか獣に殺されるとかして速攻で真っ白世界に戻るのは、さすがにイヤだぞ。
……などと思っていると。
「……パド?」
僕に声をかけてきた人がいた。
僕は振り返る。
すると、そこには――
「リラっ!!」
僕はリラに向かって走り、飛びつく。
「パドっ」
僕とリラはお互い力いっぱい抱きしめ合う。
「……パド、生きていたのね?」
「うん、死んだけど生き返った」
「……は?」
「だから、ほら、もう変な力もないよ」
「……そ、そう」
わけがわからないという顔をするリラ。
が、すぐに別の顔になる。
「まあ、そんなことはどうでもいいわ。こうしてまたパドが戻ってきてくれたんだもの。ジラやバラヌやお父さんお母さんも待っているわよ」
あの後、リラは『闇の女王』から脱出する寸前にお母さんを救出。
そのあとバラヌ達と合流して、今はラクルス村で暮らしているという。
「ラクルス村の人たちもね、生き残りが結構いたの。獣人とも今ではそれなりに交流があってね、今日は私もお師匠様のお墓参りに来たんだけど……」
リラが次々に言葉を続ける。
「ちょ、ちょっと待って、あの戦いからどのくらい経ったの?」
僕の体感では1日と経っていないんだけど。
「え? 100日くらいだけど」
マジですか。
ま、いいか。
その100日のことはこれからゆっくり聞こう。
だって、僕らにはまだまだ時間はあるのだ。
これから、青年になって、大人になって、親になって、おじいちゃんおばあちゃんになって、もう一度あの真っ白な世界に行くまで、まだまだ人生長いんだ。
幸せも、悲しみも、楽しみも、これからいっぱいあるんだ。
お父さんやお母さんやバラヌやリラやジラ達と一緒に、それをたっぷり味わおうじゃないか。
だから、今はこう言おう。
「ただいま、リラ」
「おかえりなさい、パド」
【完】
――ここに戻してくれるとはね。カルディも粋なことをするなぁ。
僕の願いは簡単だ。
『8歳のパドの姿でパドの世界に送ってほしい。ただし、今度は力と魔力は常人と同じで』
どうやら、カルディはその願いを叶えてくれたらしい。
試しに漆黒の刃の魔法を使おうとしたけれど、魔法の使い方は分かっても発動はしなかった。
バラヌのように全く魔力がないわけではないけれど、漆黒の刃の魔法をつかえるほどではないらしい。
足を踏みしめたり、石ころを拾ってみたりすると、力も普通だ。
桜勇太のように下半身麻痺ではない健康体だけど、硬い石を握りつぶせるような力も消えている。
お師匠様の小屋は、もうほとんど跡すらない。
8年以上前に倒れて、そのあと雨風に腐食されてしまったからね。
だけど、残っているものもある。
僕らが作ったお師匠様のお墓だ。
小さな石だけのお墓は、いまでもちゃんとそこにあった。
とりあえず、お墓参りでもするか。
僕はお師匠様のお墓の前に立ち、手を合わせた。
お師匠様、あれからいろんな事があったんだよ。
王様の前で王位継承権を巡って争ったり、世界が滅びかけたり、日本に行ったりさ。
うん、改めて考えてみるとすごいよね。
――さて、これからどうしよう。
僕の望みは叶った。
これからはこの世界で普通の子どもとして生き、普通の大人になり、普通の人生を送る。
チートも『闇』も王家も関係なく、普通に。
……だけどさぁ。
ここって、何もないよね。
冷静に考えてみると、力もない8歳児がいきなり誰もいない森の中に放置されているわけで。
あれ? 結構、僕ピンチ!?
このまま飢え死にとか獣に殺されるとかして速攻で真っ白世界に戻るのは、さすがにイヤだぞ。
……などと思っていると。
「……パド?」
僕に声をかけてきた人がいた。
僕は振り返る。
すると、そこには――
「リラっ!!」
僕はリラに向かって走り、飛びつく。
「パドっ」
僕とリラはお互い力いっぱい抱きしめ合う。
「……パド、生きていたのね?」
「うん、死んだけど生き返った」
「……は?」
「だから、ほら、もう変な力もないよ」
「……そ、そう」
わけがわからないという顔をするリラ。
が、すぐに別の顔になる。
「まあ、そんなことはどうでもいいわ。こうしてまたパドが戻ってきてくれたんだもの。ジラやバラヌやお父さんお母さんも待っているわよ」
あの後、リラは『闇の女王』から脱出する寸前にお母さんを救出。
そのあとバラヌ達と合流して、今はラクルス村で暮らしているという。
「ラクルス村の人たちもね、生き残りが結構いたの。獣人とも今ではそれなりに交流があってね、今日は私もお師匠様のお墓参りに来たんだけど……」
リラが次々に言葉を続ける。
「ちょ、ちょっと待って、あの戦いからどのくらい経ったの?」
僕の体感では1日と経っていないんだけど。
「え? 100日くらいだけど」
マジですか。
ま、いいか。
その100日のことはこれからゆっくり聞こう。
だって、僕らにはまだまだ時間はあるのだ。
これから、青年になって、大人になって、親になって、おじいちゃんおばあちゃんになって、もう一度あの真っ白な世界に行くまで、まだまだ人生長いんだ。
幸せも、悲しみも、楽しみも、これからいっぱいあるんだ。
お父さんやお母さんやバラヌやリラやジラ達と一緒に、それをたっぷり味わおうじゃないか。
だから、今はこう言おう。
「ただいま、リラ」
「おかえりなさい、パド」
【完】
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