神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう

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第六部 少年はかくて勇者と呼ばれけり 第一章 反撃ののろし

2.再会の時

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 エインゼルの森林で、僕はバラヌ、そしてジラと再会した。

「いやー、バラヌ、大きくなったなぁ。ジラなんてかっこよくなっちゃって」

 感嘆の声を上げる僕に、バラヌとジラは唖然とした顔。
 いや、分かるけどね。
 あえて小ボケをかましてみたんだけど。

「いや、あの、パド兄さん……だよね?」

 自信なさげにいうバラヌ。
 さすがにこれ以上ふざけるべきじゃないか。

「ああ。そうだよ。戻ってきた。リラも一緒だ」

 僕らのそばにドラゴン形体のリラが降り立ち、いつもの姿へと変身する。頬の鱗も消えている。

 そんな僕らにジラが次々と疑問を投げかける。

「いや、だけど、2人ともどうみても年齢……それに、手も……っていうか、リラって龍族だったのか!? いや、それ以前に今までどこにいたんだよ!?」

 うーん、どこから説明したものか。

「まあ、なんていうか、異世界?」
「はぁ!?」

 あんぐり口を開ける2人。
 うん、そうなるよね。

 とりあえず、僕らはこれまでの経緯を話すことにした。

 ---------------

 かなり端折りまくりつつも、異世界で半年過ごして、神様の導きで『闇』を倒すために戻ってきたと説明すると、ジラはなるほどと頷いた。

「なるほどな、話は分かった」 
「いや、そんなに素直に信じるの!?」

 あまりにもあっさり頷くジラに、むしろツッコんでしまう僕。

「いや、だって、現に目の前に8歳のお前がいるわけだし」
「まあ、カルディからも2人が異世界に飛ばされた可能性は聞かされていたしね」
「つーか、パドに関しては8年前からもう、なんでもアリだと思っていたし」
「なんにせよ、この状況で兄さんが戻ってきてくれたことは助かるよ」

 口々に言うジラとバラヌ。

「それで、今はどういう状況なんだ? アル様やレイクさん達、ラクルス村の皆とか、どうなったんだ? っていうか、カルディって?」

 尋ねる僕に、2人は一転暗い表情を浮かべたのだった。

 ---------------

「そんな……」

 2人からの説明を受け、僕とリラは押し黙った。
 8年前『闇の女王』が降臨して、王都が消し飛んだ。
 その時、レイクさんとキラーリアさん、ラミサルさんが亡くなった。

 ジラと僕のお父さんは『闇の女王』降臨を察知してこの地を訪れ、アル様やバラヌとも出会った。
 なぜ察知できたかはカルディという存在のおかげらしい。どっかで聞いた名前だ。

 だが、4人がこの地にたどり着いた後、ピッケが『闇の龍』と化し、エインゼルの森林を襲い、アル様が命と引き換えにこの地を護った。

 今、この世界の人族や獣人のほとんどは死に絶え、残った者も絶望的な状況にある。
 龍族の守護があるエインゼルの森林はまだマシだが、他の地の者達はほとんどが殺され『闇』と化したか、ドワーフと共に地中深くに隠れ住んでいる。
 ラクルス村の他の人々がどうなったかは分からない。とても調べに行ける状況じゃない。

 想像以上に絶望的な状況。
 知り合い達の大半が亡くなっているなんて。

「そうだ、だとしてお父さんは?」

 僕の問いに、ジラは「そうだな」と頷いた。

「案内するよ」

 ジラ達はそう言って、僕らをエインゼルの森林の外れへと連れて行った。

 ---------------

 エインゼルの森林には、エルフや龍族だけでなく、人族や獣人が集まっていた。
 龍族の守護があるらしいと砂漠を越えてやってきた者達だ。

「ここに来られた人たちは、まだ運が良いんだ。ここだって何度も『闇』に襲われているけど、それでも龍族が助けてくれるから」

 ジラはそう言った。

 獣人の姿を見て、リラは僕の後ろに隠れる。
 気持ちは分かる。
 ジラもリラの事情は知っているはずだが、気にした様子はない。

「心配しなくても、いまさら禁忌もクソもないと思う。ここで争いを起こしたら、龍族に追い出されるから」

 そうはいっても、リラの正体は秘密にしておこう。とりあえずは。

「着いたぞ」

 ジラが案内してくれたのは、広めの小屋だった。
 どうやら今、この地ではエルフの魔力によって他種族にも家が提供されているらしい。
 かつて、僕がエインゼルの森林で見たエルフの家と同じく、魔力で植物を変化させた家である。

 小屋の中には、多くの人が寝ていた。
 大人も子どももいるが、皆うめき声を上げている。

「ここって……」
「病院……と言えばいいのかな。病気の人を集めている場所」

 ……そこに案内されたってことはお父さんは……
 僕は周囲を見回す。
 お父さんはどこ?

 だが、僕がお父さんを見つけるより前に、別の存在が現れた。

「ジラ、バラヌっ、お水は持ってきてくれた?」

 そう言って飛び出してきたのは、ふもふもしたモンスターだった。
 な、何、コイツ?
 この世界で5種族以外に言葉を操れる者っていたの!?

「ごめん、『闇』に襲われて。でも、もっとスゴイモノを見つけた」
「うん……?」

 ふもふもモンスターは僕らの方を見る。

「あなた……まさか、ゆうたん!?」

 僕を見て、声を上げるモンスター。

 うん?
 ゆうたん?

 その呼ばれ方、どこかで……
 そうだ。その呼び名は。

「まさか……」

 呆然となる僕に、バラヌが言う。

「そいつはカルディ。兄さんを転生させた神様……なんでしょう?」

 マジですか!?
 あのガングロお姉さんが、手のひらサイズのモンスターになって、この場所でバラヌやジラといっしょにいるなんて。

 これはさすがに予想外。
 っていうか、予想できるわけがない。
 デウスも何も言っていなかったし。

「えっと、ごめん、なにがなんだか……」

 混乱しまくる僕。声も出ない様子のリラ。
 だが、そんな僕らに、別の人が声をかけてきた。

「その声……まさかパドなのか……」

 苦しげな声は、間違いなくお父さんのものだった。
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