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第一部 ラクルス村編 第二章 禁忌の少女
5.嫌だ【挿絵あり】
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夜の大地を踏みしめ、僕はリラの近くまで跳んだ。
スーンが巻き込まれないようアベックニクス騒動の時よりは加減した。
それでも僕が踏み抜いた地面は大きく崩れていた。
唐突に僕の力を見せつけられ他の皆が固まる中、僕はリラに叫ぶ。
「捕まってっ!!」
そう言って僕はリラに手を差し出す。
リラは一瞬躊躇した後、すぐに頷き返して僕の手を握った。
僕はその手を握り返す。
あまり強く握り返すとリラの手を潰してしまう。そうっと、でも引き寄せられるくらいには強く。
リラの顔にちょっと苦痛が浮かんだので、やっぱり力加減が上手くいかなかったのかと心配。
――でも、今は。
「リラ、僕の首に腕を回して、絶対に離さないで」
「わかった」
リラは頷いて僕の首に腕を回す。
「行くよ」
僕はそう宣言し、今度はアベックニクス騒動の時よりもさらに強く地面を蹴って飛び上がった。
---------------
僕は10メートルはあろうかという大木達よりもさらに高く跳んでいた。
――すごい。
僕が全力で跳び上がると、ここまでの高さとスピードに達するのか。
踏み抜いた地面には、きっとまた大きなクレーターができているだろう。
獣人達はともかく、お父さんや村長、スーン達が巻き込まれていないことを願う。
「きゃぁぁぁぁ」
さすがに悲鳴を上げるリラ。
それでも僕の首をつかんだままだ。首が絞まって苦しいけど我慢するしかない。
僕らは地面に着地する。
あれだけの高さと距離とスピードだったのに、両足でしっかりと着地できる。
もっとも、着地した場所も、やっぱりクレーターみたいな穴があいてしまったが。
距離としては先ほどの場所より100メートルは離れているはず。
何より、地面の崩壊に巻き込まれたなら、すぐには追ってこないだろう。
ついでに、空を跳んだので匂いでの追跡もしにくくなるかもしれない。
いや、それは甘いな。これだけ派手に着地していれば匂いは関係ないか。
「リラ、大丈夫?」
「なんとか、ね……」
そう答えつつも、リラは青い顔。
2人でクレーターからはい出して、辺りを見回す。
ランタンがないので真っ暗だ。
月明かりも木々に遮られて、隣のリラの顔すら識別しにくい。
「どうするの?」
「とりあえず、距離を取ろう」
「……また、跳ぶの?」
「こっからは走るよ。もう一度僕におぶさって」
リラは頷いて僕の首に手を回す。
おぶさるといっても、リラの方が身長が高い。そのせいで、リラの足のやり場が難しい。
「ねえ、これからどこに行くの?」
その問いに、僕は答えるすべを持たない。
もはやエルデンス村に行く意味はない。
アボカドさんに頼むというのは、獣人達に見つかる前だからこそ意味があるのであって、今更頼んだって、こんどはアボカドさんを巻き込むだけだ。
そして、商人であるアボカドさんは、獣人にリラを渡せと迫られれば村長以上に利によって動くだろう。
「今は……とにかく距離を取らないと」
僕はそう言ってリラを担いで走り出す。
走るだけでも地面を崩してしまうし、リラの足を引きずってしまうのだけど。
「考えていないのね」
「……ごめん」
助けると言い切ったのに、結局僕にはそのすべがない。
自分が悪質な詐欺師になったような気すらする。
「謝らないでよ。むしろ謝るのは私の方」
「?」
「私は結局、あなたの生活を壊してしまった」
憂愁を含んだ声のリラ。
「そうかもしれないね」
否定するべきだったかもしれない。
でも、それは不義理にも感じた。
だって、それは嘘だから。
「僕は家族皆で幸せにくらいしたいってずっと思っていた」
地面を駆けながら僕は言う。
確かに、一面の真実としてはリラがそれを壊したのかもしれない。
きっと僕のやっていることは間違っているのだろう。
「でも、誰かの犠牲の先に、僕の幸せはないと思うから」
あの真っ白な世界で、おねーさん神様が見せてくれた映像。
桜勇太の遺体にすがって嗚咽する前世のお母さんと、悲痛なお父さん、そして2人を抱きかかえた稔。
彼らはあの後幸せになれただろうか。
そう信じたい。
もしも、桜勇太が最後まで戦わず、『僕なんていない方が良いんだ』と舌を噛み切っていたら。
きっと、お父さんやお母さんは自分を責めたと思う。
そして、その先には彼らの幸せなんてなかった。
病気で桜勇太が死んで、両親も弟も悲しんでいたかもしれないけど、僕が最後まで戦ったことで、少しは3人のその後の幸せにつながったと信じたい。
――だから。
「僕は最後まで諦めないよ。足掻いて足掻いて、死ぬのはそれからだ」
そうでなければ、誰も幸せになれないから。
「……ありがと」
リラは小さく僕の耳元で言った。
---------------
さらに走って。
気がつくと崖の上にたどり着いていた。
50メートルはありそうな切り立った崖だ。
暗闇の中だったので、もう少しで落っこちるところだった。
「パド」
「方向を変えよう」
言って向きを変えようとした、その時。
崖の先、頭上から何かが僕らめがけて飛んできた。
「何!?」
僕はとっさに身を躱す。
が、僕の頬にするどい傷が付き、血が滴った。
「鳥の羽?」
僕の頬を傷つけ、地面に突き刺さったのは、鳥の羽。
僕はもう一度崖の先の上空を見る。
暗闇で気づけなかったけど、そこには3つの人影があった。
1人は鷹のような羽を広げた男。
もう1人はコウモリのような羽の女。
そして、コウモリ女の背にまたがった、ブルフ。
「もう、追いつかれた!?」
僕は舌打ちする。
「違う。最初から見張られていたのよ」
そうか。
最初にブルフ達に追いつかれた時点で、鷹男とコウモリ女は上空で僕らを見張っていた。
そして、僕がリラと共に跳んだあと、ブルフと合流。
僕らの行く先にこの崖があると分かっていたから、空から先回りしたということか。
暗闇の中、よくぞ僕らを見失わなかったと思う。がむしゃらに直線上を走ったのは失敗だった。
あるいは、前世の世界の図鑑にはコウモリは夜目が利くと書いてあったから、コウモリ女も同じなのかもしれない。
先ほどの羽は鷹男が飛ばした物か?
いずれにせよ、ここは逃げの一択。
僕は再び元来た方向へ振り返り――
――だが、その目の前に、上空からブルフが降り立ち、剣を抜いた。
「悪いが、今度は逃がさん」
――くそっ。
――どうする? どうしたらいい?
実のところ、解決方法がないわけじゃない。
ブルフを倒して森の中に逃げ込めば良いのだ。
鷹男やコウモリ女からは森の木々がとりあえず護ってくれるだろう。だからこそ、ここまで手出ししなかったのだろうし。
――だけど。
倒す。
僕の馬鹿力でぶん殴れば、あるいはそれは可能なのかもしれない。
アベックニクスの頭を粉砕したように、ブルフの頭蓋骨を破壊できるだろう。
――でもそれは、彼を殺すということ。
僕が、人を殺すということ。
「パド」
リラが囁いて、僕の背から降りる。
「リラ、下がっていて」
――殺さずにブルフを無力化できるか?
例えば、手足を骨折させるとか、そのくらいなら死なないだろう。
でも、僕はそこまで力を制御できない。
アベックニクスの時だって、頭を粉々にするつもりなんてなかったのだ。
「僕の力、分かりますよね? 勝てると思いますか?」
僕はブルフに尋ねる。
脅して引いてくれるなら、それが一番良い。
だが。
「ああ、分かる。殺さない程度に手加減して戦えないし、殺す覚悟もないから、逃げ出したのだろう?」
――くそ。
内心舌打ち。
それが僕の顔に出たらしく、ブルフは続けた。
「さあ、最後の警告だリラを渡せ」
「嫌だといったら?」
「こうするだけだ」
ブルフが右手で、鷹男に合図を送る。
大きく翼を広げ、無数の羽を発射する。
よけられる量じゃない。
むしろ、さっきの羽はわざと外したのかもしれない。
僕やリラの身体に次々と羽が刺さる。
どれも致命傷になるほどじゃない。
例えるなら、体中に注射針を刺されたようなもの。
痛いけど、死ぬような……もの……じゃ……
……あれ?
なんか、身体が動かしにくい。
「ファッコムの羽に刺さると、そうなる」
――毒?
神経とかに影響を与える?
あるいは、強力な鎮静作用がある?
リラは苦しげにその場に膝を突いていた。
僕はなんとか立ったままブルフをにらみつけるが、身体がほとんど動かない。
ブルフはそんな僕の様子を確認すると、リラに近づいた。
「リラ、これ以上困らせるな。人族と獣人は関わり合いになってはならぬのだ」
自分の声には驚くほど力が無かった。
――ちくしょう。
結局こうなるのかよ。
助けるって大見得切って、結局何もできずに。
神様にもらった力なんて何の役にも立たない。
結局僕は役立たずで、皆に迷惑をかけるだけの存在なの?
病院のベッドの上で寝ていた桜勇太と同じように。
そんなの。
そんなのは――
――嫌だぁぁぁ。
---------------
僕が心の底で叫んだ時だった。
『じゃあ、助けてあげようか?』
とても無邪気で、とても無垢で、とてもとても冷たい声が僕の頭の中に響いたのだった。
=================================
本文中の挿絵はへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
スーンが巻き込まれないようアベックニクス騒動の時よりは加減した。
それでも僕が踏み抜いた地面は大きく崩れていた。
唐突に僕の力を見せつけられ他の皆が固まる中、僕はリラに叫ぶ。
「捕まってっ!!」
そう言って僕はリラに手を差し出す。
リラは一瞬躊躇した後、すぐに頷き返して僕の手を握った。
僕はその手を握り返す。
あまり強く握り返すとリラの手を潰してしまう。そうっと、でも引き寄せられるくらいには強く。
リラの顔にちょっと苦痛が浮かんだので、やっぱり力加減が上手くいかなかったのかと心配。
――でも、今は。
「リラ、僕の首に腕を回して、絶対に離さないで」
「わかった」
リラは頷いて僕の首に腕を回す。
「行くよ」
僕はそう宣言し、今度はアベックニクス騒動の時よりもさらに強く地面を蹴って飛び上がった。
---------------
僕は10メートルはあろうかという大木達よりもさらに高く跳んでいた。
――すごい。
僕が全力で跳び上がると、ここまでの高さとスピードに達するのか。
踏み抜いた地面には、きっとまた大きなクレーターができているだろう。
獣人達はともかく、お父さんや村長、スーン達が巻き込まれていないことを願う。
「きゃぁぁぁぁ」
さすがに悲鳴を上げるリラ。
それでも僕の首をつかんだままだ。首が絞まって苦しいけど我慢するしかない。
僕らは地面に着地する。
あれだけの高さと距離とスピードだったのに、両足でしっかりと着地できる。
もっとも、着地した場所も、やっぱりクレーターみたいな穴があいてしまったが。
距離としては先ほどの場所より100メートルは離れているはず。
何より、地面の崩壊に巻き込まれたなら、すぐには追ってこないだろう。
ついでに、空を跳んだので匂いでの追跡もしにくくなるかもしれない。
いや、それは甘いな。これだけ派手に着地していれば匂いは関係ないか。
「リラ、大丈夫?」
「なんとか、ね……」
そう答えつつも、リラは青い顔。
2人でクレーターからはい出して、辺りを見回す。
ランタンがないので真っ暗だ。
月明かりも木々に遮られて、隣のリラの顔すら識別しにくい。
「どうするの?」
「とりあえず、距離を取ろう」
「……また、跳ぶの?」
「こっからは走るよ。もう一度僕におぶさって」
リラは頷いて僕の首に手を回す。
おぶさるといっても、リラの方が身長が高い。そのせいで、リラの足のやり場が難しい。
「ねえ、これからどこに行くの?」
その問いに、僕は答えるすべを持たない。
もはやエルデンス村に行く意味はない。
アボカドさんに頼むというのは、獣人達に見つかる前だからこそ意味があるのであって、今更頼んだって、こんどはアボカドさんを巻き込むだけだ。
そして、商人であるアボカドさんは、獣人にリラを渡せと迫られれば村長以上に利によって動くだろう。
「今は……とにかく距離を取らないと」
僕はそう言ってリラを担いで走り出す。
走るだけでも地面を崩してしまうし、リラの足を引きずってしまうのだけど。
「考えていないのね」
「……ごめん」
助けると言い切ったのに、結局僕にはそのすべがない。
自分が悪質な詐欺師になったような気すらする。
「謝らないでよ。むしろ謝るのは私の方」
「?」
「私は結局、あなたの生活を壊してしまった」
憂愁を含んだ声のリラ。
「そうかもしれないね」
否定するべきだったかもしれない。
でも、それは不義理にも感じた。
だって、それは嘘だから。
「僕は家族皆で幸せにくらいしたいってずっと思っていた」
地面を駆けながら僕は言う。
確かに、一面の真実としてはリラがそれを壊したのかもしれない。
きっと僕のやっていることは間違っているのだろう。
「でも、誰かの犠牲の先に、僕の幸せはないと思うから」
あの真っ白な世界で、おねーさん神様が見せてくれた映像。
桜勇太の遺体にすがって嗚咽する前世のお母さんと、悲痛なお父さん、そして2人を抱きかかえた稔。
彼らはあの後幸せになれただろうか。
そう信じたい。
もしも、桜勇太が最後まで戦わず、『僕なんていない方が良いんだ』と舌を噛み切っていたら。
きっと、お父さんやお母さんは自分を責めたと思う。
そして、その先には彼らの幸せなんてなかった。
病気で桜勇太が死んで、両親も弟も悲しんでいたかもしれないけど、僕が最後まで戦ったことで、少しは3人のその後の幸せにつながったと信じたい。
――だから。
「僕は最後まで諦めないよ。足掻いて足掻いて、死ぬのはそれからだ」
そうでなければ、誰も幸せになれないから。
「……ありがと」
リラは小さく僕の耳元で言った。
---------------
さらに走って。
気がつくと崖の上にたどり着いていた。
50メートルはありそうな切り立った崖だ。
暗闇の中だったので、もう少しで落っこちるところだった。
「パド」
「方向を変えよう」
言って向きを変えようとした、その時。
崖の先、頭上から何かが僕らめがけて飛んできた。
「何!?」
僕はとっさに身を躱す。
が、僕の頬にするどい傷が付き、血が滴った。
「鳥の羽?」
僕の頬を傷つけ、地面に突き刺さったのは、鳥の羽。
僕はもう一度崖の先の上空を見る。
暗闇で気づけなかったけど、そこには3つの人影があった。
1人は鷹のような羽を広げた男。
もう1人はコウモリのような羽の女。
そして、コウモリ女の背にまたがった、ブルフ。
「もう、追いつかれた!?」
僕は舌打ちする。
「違う。最初から見張られていたのよ」
そうか。
最初にブルフ達に追いつかれた時点で、鷹男とコウモリ女は上空で僕らを見張っていた。
そして、僕がリラと共に跳んだあと、ブルフと合流。
僕らの行く先にこの崖があると分かっていたから、空から先回りしたということか。
暗闇の中、よくぞ僕らを見失わなかったと思う。がむしゃらに直線上を走ったのは失敗だった。
あるいは、前世の世界の図鑑にはコウモリは夜目が利くと書いてあったから、コウモリ女も同じなのかもしれない。
先ほどの羽は鷹男が飛ばした物か?
いずれにせよ、ここは逃げの一択。
僕は再び元来た方向へ振り返り――
――だが、その目の前に、上空からブルフが降り立ち、剣を抜いた。
「悪いが、今度は逃がさん」
――くそっ。
――どうする? どうしたらいい?
実のところ、解決方法がないわけじゃない。
ブルフを倒して森の中に逃げ込めば良いのだ。
鷹男やコウモリ女からは森の木々がとりあえず護ってくれるだろう。だからこそ、ここまで手出ししなかったのだろうし。
――だけど。
倒す。
僕の馬鹿力でぶん殴れば、あるいはそれは可能なのかもしれない。
アベックニクスの頭を粉砕したように、ブルフの頭蓋骨を破壊できるだろう。
――でもそれは、彼を殺すということ。
僕が、人を殺すということ。
「パド」
リラが囁いて、僕の背から降りる。
「リラ、下がっていて」
――殺さずにブルフを無力化できるか?
例えば、手足を骨折させるとか、そのくらいなら死なないだろう。
でも、僕はそこまで力を制御できない。
アベックニクスの時だって、頭を粉々にするつもりなんてなかったのだ。
「僕の力、分かりますよね? 勝てると思いますか?」
僕はブルフに尋ねる。
脅して引いてくれるなら、それが一番良い。
だが。
「ああ、分かる。殺さない程度に手加減して戦えないし、殺す覚悟もないから、逃げ出したのだろう?」
――くそ。
内心舌打ち。
それが僕の顔に出たらしく、ブルフは続けた。
「さあ、最後の警告だリラを渡せ」
「嫌だといったら?」
「こうするだけだ」
ブルフが右手で、鷹男に合図を送る。
大きく翼を広げ、無数の羽を発射する。
よけられる量じゃない。
むしろ、さっきの羽はわざと外したのかもしれない。
僕やリラの身体に次々と羽が刺さる。
どれも致命傷になるほどじゃない。
例えるなら、体中に注射針を刺されたようなもの。
痛いけど、死ぬような……もの……じゃ……
……あれ?
なんか、身体が動かしにくい。
「ファッコムの羽に刺さると、そうなる」
――毒?
神経とかに影響を与える?
あるいは、強力な鎮静作用がある?
リラは苦しげにその場に膝を突いていた。
僕はなんとか立ったままブルフをにらみつけるが、身体がほとんど動かない。
ブルフはそんな僕の様子を確認すると、リラに近づいた。
「リラ、これ以上困らせるな。人族と獣人は関わり合いになってはならぬのだ」
自分の声には驚くほど力が無かった。
――ちくしょう。
結局こうなるのかよ。
助けるって大見得切って、結局何もできずに。
神様にもらった力なんて何の役にも立たない。
結局僕は役立たずで、皆に迷惑をかけるだけの存在なの?
病院のベッドの上で寝ていた桜勇太と同じように。
そんなの。
そんなのは――
――嫌だぁぁぁ。
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僕が心の底で叫んだ時だった。
『じゃあ、助けてあげようか?』
とても無邪気で、とても無垢で、とてもとても冷たい声が僕の頭の中に響いたのだった。
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本文中の挿絵はへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
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