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第5話 皇国との戦い3
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「魔王様、魔王様。ご無事でしたか」
「ああ、万事抜かりなくピキュリアの作戦通り事が運んだぞ」
前線の砦の後方にある森のさらに後方、大型の迫撃砲と飛行艇が停泊している場所へと降り立つ。側近の三人が心配顔で俺を迎えてくれた。ピキュリアとリカールスが涙を浮かべて俺の元に走り寄る。
「魔王様にこのような仕事をさせてしまい、申し訳ありません」
「いや、これで皇国軍を殲滅できたのだ。総大将の驚愕に満ちた顔をお前達にも見せてやりたかったぞ」
前線の砦には、魔王ひとりと連絡要員のみを配置し、後方の基地より遠距離攻撃を行なうこの作戦。航空戦力や遠距離砲撃を知らないこの世界の者にとっては、理解しがたい攻撃だろうな。
「これで作戦は完了か」
「はい、現在飛行しています船が帰って来れば終了となります」
「そうか、皆ご苦労だったな」
立案、情報収集、兵の運用。皆の力で皇国軍を退ける事ができた。俺の眷属達を誇らしく思う。その者達の労をねぎらい、今宵は宴を開こう。この世界に我が名と眷属の力を示したこの一戦を祝して。
魔王城付近での戦いの後、魔王軍の猛攻は留まるところを知らず、周辺地域を併合しながら帝都へと向かう。敗れた皇国軍は打つ手を失い、大した抵抗もできず東方地域から後退するばかりだ。
領主の居る町を攻撃し、領主の代わりに眷属を置き占領していく。俺達が到着する前に逃げ出している領主もいる。町の占領は今までの戦いに比べれば容易い。
それに町の住民の抵抗がほとんどない。領主という特権階級が居なくなり、代わりに魔族が座るだけで、住民としてはあまり変わらないと言う事のようだ。
この国のトップは神の子孫というオオカミ一族が支配している。町の領主や要職に就いているのもオオカミ族のようで、平民との格差が大きかったらしい。
俺達は神からの開放を謳い、併合した領地で、平等な統治を行なっている。支配階級は魔族だが、従属する獣人に区別はなくトラ族やクマ族、オオカミ族であっても平等になる。
そのお陰か住民の暮らしが楽になったと聞いている。おおむね魔族の領主は評判がいいようだ。
各地を平定しながら、この大陸随一の勢力を誇る獣人の国、パルゲア皇国の帝都が見える位置まで軍を進めて来た。
「ようやく、ここまで来ることができましたね。魔王様」
「ああ、長い戦いだったな」
魔王城からここまで三年の月日を費やして戦い抜いてきた。途中の領地を併合しながら、いまでは皇国の半分を俺の眷属が占領するまでになっている。
この最後の決戦に勝てれば眷属を迫害するものは居なくなり、この世界での安住の地が得られることになる。
「帝都というだけあって、大きな町ですわね」
「あそこには、十五万人の住民が住んでいましたからね」
「オレ達魔族が来たってんで、ほとんどの住民は逃げ出したって話だがな」
二重の城壁で守られた中央の城の周りに多くの民家が建ち並ぶ都市。今は住民がいない代わりに、各地から九万のも兵を集めて帝都の周りに既に布陣している。
「さすがに、この帝都の守りは堅そうだな」
「とはいえ魔王様。相手は地上部隊の兵のみ、わたくし達に勝てるはずありませんわ」
こちらも六万の地上部隊の兵を連れてきている。敵の地上部隊を抑えて、飛行艇での攻撃を行なえば十分に勝てる戦いだ。
この帝都の西には大きな川が流れていて、他の町と物資の運搬をしている。後の事を考えると、造船や物流拠点などの民間施設は壊したくない。
「わたくし達は東から攻めて、天子が居ると言う城を飛行艇で落とします」
「肝心の空爆だが、魔法の届かない高高度からの爆弾投下となると、少し精度が落ちてしまうぞ」
「お城は大きいですし、周りの民家には人も居ないようです。少々外れてもいいんじゃないですか。ねえ、魔王様」
「そうだな、西の倉庫地区が残ればいいからな」
敵の物資も西地区にあるのだろうが、今回は皇国のトップさえ排除できればいい。敵の九万の兵もオオカミ族以外の種族が多そうだ。支配者がいなくなれば瓦解するだろう。
戦闘準備を進めていると、メディカントが部下を連れて俺の所にやって来た。
「魔王様、実はこいつらの親戚やら知り合いが敵の部隊にいて、できれば戦闘を避けるようにしてやれないかと……」
「ま、魔王様。お目にかかれて喜ばしく思います」
部下だと言う四人の獣人は土下座して、戦々恐々と言う面持ちで話をする。この四人は師団長クラスでメディカントの直属の者らしい。
「わ、私の部下の多くは領主に仕えていた兵団の兵士。元冒険者などの平民上りが多く、敵に近親者がいる者がおります」
「それで、この魔王にどうせよというのか」
「はっ、できるならば、できるならば……魔王城の戦いのような殲滅戦は避けていただきたく……」
魔王城前で皇国軍を撃退した戦いは、魔族の恐ろしさを示すものとして既に伝説の戦として知れ渡っている。五万もの兵を一兵も残さず殲滅したことを、ここでは行なわないでほしいと言う事のようだな。
「約束はできんが、一考はしてみよう」
「ははっ! ありがたきお言葉。感謝いたします」
そう言って四人が魔王の前から去った後、メディカントと二人で話をする。
「あいつらは、獣人の兵達を良くまとめてくれていてな、できれば地上戦で知人と戦わせたくないんだがな」
「終戦後の反乱の事を考えて、敵兵力をできるだけ減らすのが良いとピキュリアは言っていたがな」
「オレ達魔族を目の敵にしているのは、天子に連なる特権階級だ。その者だけを倒すことはできないか」
メディカントが持ってきた帝都の地図には、特権階級が住んでいると言う屋敷の場所が示されていた。なるほど。城だけではなくその屋敷を焼き払ってしまえば良いと言う事か。明日にでもピキュリアに相談してみるか。
「ああ、万事抜かりなくピキュリアの作戦通り事が運んだぞ」
前線の砦の後方にある森のさらに後方、大型の迫撃砲と飛行艇が停泊している場所へと降り立つ。側近の三人が心配顔で俺を迎えてくれた。ピキュリアとリカールスが涙を浮かべて俺の元に走り寄る。
「魔王様にこのような仕事をさせてしまい、申し訳ありません」
「いや、これで皇国軍を殲滅できたのだ。総大将の驚愕に満ちた顔をお前達にも見せてやりたかったぞ」
前線の砦には、魔王ひとりと連絡要員のみを配置し、後方の基地より遠距離攻撃を行なうこの作戦。航空戦力や遠距離砲撃を知らないこの世界の者にとっては、理解しがたい攻撃だろうな。
「これで作戦は完了か」
「はい、現在飛行しています船が帰って来れば終了となります」
「そうか、皆ご苦労だったな」
立案、情報収集、兵の運用。皆の力で皇国軍を退ける事ができた。俺の眷属達を誇らしく思う。その者達の労をねぎらい、今宵は宴を開こう。この世界に我が名と眷属の力を示したこの一戦を祝して。
魔王城付近での戦いの後、魔王軍の猛攻は留まるところを知らず、周辺地域を併合しながら帝都へと向かう。敗れた皇国軍は打つ手を失い、大した抵抗もできず東方地域から後退するばかりだ。
領主の居る町を攻撃し、領主の代わりに眷属を置き占領していく。俺達が到着する前に逃げ出している領主もいる。町の占領は今までの戦いに比べれば容易い。
それに町の住民の抵抗がほとんどない。領主という特権階級が居なくなり、代わりに魔族が座るだけで、住民としてはあまり変わらないと言う事のようだ。
この国のトップは神の子孫というオオカミ一族が支配している。町の領主や要職に就いているのもオオカミ族のようで、平民との格差が大きかったらしい。
俺達は神からの開放を謳い、併合した領地で、平等な統治を行なっている。支配階級は魔族だが、従属する獣人に区別はなくトラ族やクマ族、オオカミ族であっても平等になる。
そのお陰か住民の暮らしが楽になったと聞いている。おおむね魔族の領主は評判がいいようだ。
各地を平定しながら、この大陸随一の勢力を誇る獣人の国、パルゲア皇国の帝都が見える位置まで軍を進めて来た。
「ようやく、ここまで来ることができましたね。魔王様」
「ああ、長い戦いだったな」
魔王城からここまで三年の月日を費やして戦い抜いてきた。途中の領地を併合しながら、いまでは皇国の半分を俺の眷属が占領するまでになっている。
この最後の決戦に勝てれば眷属を迫害するものは居なくなり、この世界での安住の地が得られることになる。
「帝都というだけあって、大きな町ですわね」
「あそこには、十五万人の住民が住んでいましたからね」
「オレ達魔族が来たってんで、ほとんどの住民は逃げ出したって話だがな」
二重の城壁で守られた中央の城の周りに多くの民家が建ち並ぶ都市。今は住民がいない代わりに、各地から九万のも兵を集めて帝都の周りに既に布陣している。
「さすがに、この帝都の守りは堅そうだな」
「とはいえ魔王様。相手は地上部隊の兵のみ、わたくし達に勝てるはずありませんわ」
こちらも六万の地上部隊の兵を連れてきている。敵の地上部隊を抑えて、飛行艇での攻撃を行なえば十分に勝てる戦いだ。
この帝都の西には大きな川が流れていて、他の町と物資の運搬をしている。後の事を考えると、造船や物流拠点などの民間施設は壊したくない。
「わたくし達は東から攻めて、天子が居ると言う城を飛行艇で落とします」
「肝心の空爆だが、魔法の届かない高高度からの爆弾投下となると、少し精度が落ちてしまうぞ」
「お城は大きいですし、周りの民家には人も居ないようです。少々外れてもいいんじゃないですか。ねえ、魔王様」
「そうだな、西の倉庫地区が残ればいいからな」
敵の物資も西地区にあるのだろうが、今回は皇国のトップさえ排除できればいい。敵の九万の兵もオオカミ族以外の種族が多そうだ。支配者がいなくなれば瓦解するだろう。
戦闘準備を進めていると、メディカントが部下を連れて俺の所にやって来た。
「魔王様、実はこいつらの親戚やら知り合いが敵の部隊にいて、できれば戦闘を避けるようにしてやれないかと……」
「ま、魔王様。お目にかかれて喜ばしく思います」
部下だと言う四人の獣人は土下座して、戦々恐々と言う面持ちで話をする。この四人は師団長クラスでメディカントの直属の者らしい。
「わ、私の部下の多くは領主に仕えていた兵団の兵士。元冒険者などの平民上りが多く、敵に近親者がいる者がおります」
「それで、この魔王にどうせよというのか」
「はっ、できるならば、できるならば……魔王城の戦いのような殲滅戦は避けていただきたく……」
魔王城前で皇国軍を撃退した戦いは、魔族の恐ろしさを示すものとして既に伝説の戦として知れ渡っている。五万もの兵を一兵も残さず殲滅したことを、ここでは行なわないでほしいと言う事のようだな。
「約束はできんが、一考はしてみよう」
「ははっ! ありがたきお言葉。感謝いたします」
そう言って四人が魔王の前から去った後、メディカントと二人で話をする。
「あいつらは、獣人の兵達を良くまとめてくれていてな、できれば地上戦で知人と戦わせたくないんだがな」
「終戦後の反乱の事を考えて、敵兵力をできるだけ減らすのが良いとピキュリアは言っていたがな」
「オレ達魔族を目の敵にしているのは、天子に連なる特権階級だ。その者だけを倒すことはできないか」
メディカントが持ってきた帝都の地図には、特権階級が住んでいると言う屋敷の場所が示されていた。なるほど。城だけではなくその屋敷を焼き払ってしまえば良いと言う事か。明日にでもピキュリアに相談してみるか。
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