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第5章
第94話 料理コンテスト3
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「あのね、みんな。コンテストに集中してもらうため、ミルチナ達の仕事を割り振ろうと思うの」
後1週間余りで二次予選だ。ミルチナとユイトは時々お店を休むことになる。
「ヨハノスのチームは薬草採取を増やしてくれるかしら」
「ああ、スケジュールが詰まっている訳じゃない。その程度なら大丈夫だ」
「ティノスとテニーニャは魔獣討伐の時、私が監視役を兼ねるから魔法攻撃が少なくなるわ。もう慣れてきてるから大丈夫と思うけど」
「そうだな。討伐は何回もして連携が取れてきている」
「お兄ちゃんとなら私の魔法だけで十分倒せますから、任せてください」
この子達兄妹で息も合っているし、任せても大丈夫でしょう。
「じゃあ、そういう事でよろしくね」
ある日、ミルチナがコンテストについて相談してきた。
「メアリィさん。コンテストに出すデザートなんですけど、甘いお菓子の料理何か知りませんか」
デザートに果物の盛り合わせを出すつもりのようだけど、それじゃ何の工夫もないと言う。ミルチナはお菓子をあまり作ったことがなく困っているらしい。
「そうね。お店で売っているゼリーのような物は知っているけど、作り方までは知らないわね」
「あっ、それなら帝国で作っているお菓子はどうですか」
話を聞いていたテニーニャが提案する。
「ワニの魔獣の卵とヤギの乳を混ぜて少し砂糖を入れたお菓子で、プルンプルンなんですよ」
お祭りやお祝いがある時に作るもので、滑らかな舌触りのお菓子でプリンというものらしい。
「でも、卵なんて王都には無いわよ」
大型のトカゲのような生き物が、子供をお腹ではなく卵で産むと言うのは聞いた事があるけど、売っているのを見たことは無い。
「そのワニって言うのは帝国には沢山いるの?」
「ええ、湿地帯や川にいますよ。岸の砂場の少しへこんだところを掘ると卵があるんですよ」
手に乗る大きさで丸くて白い物だとテニーニャが教えてくれた。冬以外の季節ならある程度の群れがいれば卵はあると言っている。
「それならレグルス国で見た事があるわよ」
シンシアも話に混ざってきた。
「お店で売っていたけど、すごく高かったし第一魔獣の子供なんでしょう。あまり食べる気にはなれなかったわね」
なるほど、南の地方のレグルス国か帝国なら、その卵が手に入るのね。
「それならボクが今度の休みを利用して、キイエと一緒に取りに行ってくるよ」
お店じゃなくて、ワニを見つけてその近くで卵を探すと言う。でもレグルス国まではキイエ様でも1日半かかる。
「夜に飛んでもらえれば1日かからずに行けるから、2日で帰ってこれるよ」
「あの、それなら私もついて行ってもいいですか。ワニの居る場所や卵の場所が分からないと思うので」
テニーニャも一緒に行ってくれると言う。確かに闇雲に探しても見つからないわよね。
「2人がお店を1日休むくらいなら、なんとかなるわよね。シンシア」
「そうね、それぐらいなら大丈夫よ」
「テニーニャ、そのお菓子って美味しいんでしょ。私も食べてみたいわ。必ず卵を取って来てね」
そして、二次予選まであと5日と迫った。
「ミルチナ。準備はどう」
「はい、出すメニューも決まって、今は味付けの調整をしています。お店休んですみません」
「お店の方は気にしなくても大丈夫よ」
ユイトは討伐のない日に食材の調達などをしているみたいね。この前は港町までエアバイクで行っていたわ。
「この間、作ってもらったプリンと言うお菓子、すごく美味しかったわよ。あんな触感初めてだわ」
「そうなんですよ。お陰でデザートも決まりました。今度、シャウラ村から牛乳やバターと牛のお肉を送ってもらえることになったんですよ。これでもっと美味しいものが作れますよ」
村から飛行機で王都まで送ってくれると言う。それなら日持ちしない食材でも大丈夫ね。あの食材で作る料理ってすごいのができるんじゃないかしら。何だか私もワクワクしてきたわ。
次の日。グランが木の箱に入った沢山のお皿をお店に持って来てくれた。
「どうしたの、これ!」
「実家の屋敷から、コンテストに使ってくれって言われて、料理用の皿を持ってきたんだ」
料理の見栄えを良くするには、盛り付けるお皿のデザインも大事だと言う。屋敷に務めているオーヴァンが料理長に掛け合ってくれて、お皿を貸してくれる事になったらしい。
「それと、俺から予選通過のお祝いとしてコックコートと帽子をプレゼントするよ」
料理人が着る厚手の真っ白なコックコート、それに背の高い白い帽子。それをミルチナとユイトのサイズに合わせて2着分用意してくれた。
「ねえ、ねえ、ミルチナ。これを着てみてよ」
サイズも合っているようね。腕まくりをして自前のエプロンを腰に巻く、背の高い帽子を被ると一流のシェフみたいでカッコいいわ。
「グランさん、ありがとうございます。こんなのまで用意してくれて」
「今度の予選は審査員の前で料理を作るんだろう。見た目で侮られるともったいないからな。良く似合っているよ」
コックコートはお店のユニホームみたいなものだ。他の料理人は多分お店に務めてる人だから、各々のお店のコックコートを着てくるんだろう。それに見劣りしないようにと配慮してくれるグランは流石だわ。
「ありがとう、グラン。私からもお礼を言わせてもらうわ」
「ミルチナには家に来た時に料理を作ってもらってるしな。予選頑張ってくれよ」
「はい、何としても予選を通らないとですね」
うん、うん。みんなも応援しているわよ。
後1週間余りで二次予選だ。ミルチナとユイトは時々お店を休むことになる。
「ヨハノスのチームは薬草採取を増やしてくれるかしら」
「ああ、スケジュールが詰まっている訳じゃない。その程度なら大丈夫だ」
「ティノスとテニーニャは魔獣討伐の時、私が監視役を兼ねるから魔法攻撃が少なくなるわ。もう慣れてきてるから大丈夫と思うけど」
「そうだな。討伐は何回もして連携が取れてきている」
「お兄ちゃんとなら私の魔法だけで十分倒せますから、任せてください」
この子達兄妹で息も合っているし、任せても大丈夫でしょう。
「じゃあ、そういう事でよろしくね」
ある日、ミルチナがコンテストについて相談してきた。
「メアリィさん。コンテストに出すデザートなんですけど、甘いお菓子の料理何か知りませんか」
デザートに果物の盛り合わせを出すつもりのようだけど、それじゃ何の工夫もないと言う。ミルチナはお菓子をあまり作ったことがなく困っているらしい。
「そうね。お店で売っているゼリーのような物は知っているけど、作り方までは知らないわね」
「あっ、それなら帝国で作っているお菓子はどうですか」
話を聞いていたテニーニャが提案する。
「ワニの魔獣の卵とヤギの乳を混ぜて少し砂糖を入れたお菓子で、プルンプルンなんですよ」
お祭りやお祝いがある時に作るもので、滑らかな舌触りのお菓子でプリンというものらしい。
「でも、卵なんて王都には無いわよ」
大型のトカゲのような生き物が、子供をお腹ではなく卵で産むと言うのは聞いた事があるけど、売っているのを見たことは無い。
「そのワニって言うのは帝国には沢山いるの?」
「ええ、湿地帯や川にいますよ。岸の砂場の少しへこんだところを掘ると卵があるんですよ」
手に乗る大きさで丸くて白い物だとテニーニャが教えてくれた。冬以外の季節ならある程度の群れがいれば卵はあると言っている。
「それならレグルス国で見た事があるわよ」
シンシアも話に混ざってきた。
「お店で売っていたけど、すごく高かったし第一魔獣の子供なんでしょう。あまり食べる気にはなれなかったわね」
なるほど、南の地方のレグルス国か帝国なら、その卵が手に入るのね。
「それならボクが今度の休みを利用して、キイエと一緒に取りに行ってくるよ」
お店じゃなくて、ワニを見つけてその近くで卵を探すと言う。でもレグルス国まではキイエ様でも1日半かかる。
「夜に飛んでもらえれば1日かからずに行けるから、2日で帰ってこれるよ」
「あの、それなら私もついて行ってもいいですか。ワニの居る場所や卵の場所が分からないと思うので」
テニーニャも一緒に行ってくれると言う。確かに闇雲に探しても見つからないわよね。
「2人がお店を1日休むくらいなら、なんとかなるわよね。シンシア」
「そうね、それぐらいなら大丈夫よ」
「テニーニャ、そのお菓子って美味しいんでしょ。私も食べてみたいわ。必ず卵を取って来てね」
そして、二次予選まであと5日と迫った。
「ミルチナ。準備はどう」
「はい、出すメニューも決まって、今は味付けの調整をしています。お店休んですみません」
「お店の方は気にしなくても大丈夫よ」
ユイトは討伐のない日に食材の調達などをしているみたいね。この前は港町までエアバイクで行っていたわ。
「この間、作ってもらったプリンと言うお菓子、すごく美味しかったわよ。あんな触感初めてだわ」
「そうなんですよ。お陰でデザートも決まりました。今度、シャウラ村から牛乳やバターと牛のお肉を送ってもらえることになったんですよ。これでもっと美味しいものが作れますよ」
村から飛行機で王都まで送ってくれると言う。それなら日持ちしない食材でも大丈夫ね。あの食材で作る料理ってすごいのができるんじゃないかしら。何だか私もワクワクしてきたわ。
次の日。グランが木の箱に入った沢山のお皿をお店に持って来てくれた。
「どうしたの、これ!」
「実家の屋敷から、コンテストに使ってくれって言われて、料理用の皿を持ってきたんだ」
料理の見栄えを良くするには、盛り付けるお皿のデザインも大事だと言う。屋敷に務めているオーヴァンが料理長に掛け合ってくれて、お皿を貸してくれる事になったらしい。
「それと、俺から予選通過のお祝いとしてコックコートと帽子をプレゼントするよ」
料理人が着る厚手の真っ白なコックコート、それに背の高い白い帽子。それをミルチナとユイトのサイズに合わせて2着分用意してくれた。
「ねえ、ねえ、ミルチナ。これを着てみてよ」
サイズも合っているようね。腕まくりをして自前のエプロンを腰に巻く、背の高い帽子を被ると一流のシェフみたいでカッコいいわ。
「グランさん、ありがとうございます。こんなのまで用意してくれて」
「今度の予選は審査員の前で料理を作るんだろう。見た目で侮られるともったいないからな。良く似合っているよ」
コックコートはお店のユニホームみたいなものだ。他の料理人は多分お店に務めてる人だから、各々のお店のコックコートを着てくるんだろう。それに見劣りしないようにと配慮してくれるグランは流石だわ。
「ありがとう、グラン。私からもお礼を言わせてもらうわ」
「ミルチナには家に来た時に料理を作ってもらってるしな。予選頑張ってくれよ」
「はい、何としても予選を通らないとですね」
うん、うん。みんなも応援しているわよ。
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