93 / 101
第5章
第93話 料理コンテスト2
しおりを挟む
「グランに頼るだけじゃなくて、私達も何かしてみましょう。街のレストランに行ってコース料理を食べるのはどうかしら」
「でも、あたしお金が無くて……」
「いいわよ。一次予選を通過したお祝いで、私が奢るわ、ユイトも連れてきなさい」
有名なお店でフルコースじゃないけど、それなりの料理を食べに行く。
「こんなお店に連れて来てくれて、ありがとうございます。メアリィさん」
「ボクも、王都の高級料理ってどんな味なのか楽しみだよ」
出された料理は、二次予選とよく似たもので前菜からスープ、そしてメインのステーキが出てくるコース料理。
二人は吟味しながら出された料理を食べていく。でもなんだか渋い顔をしているわ。
「どうしたの? 美味しくなかった」
「いえ、美味しいのですが、何というか……」
「そうだね。香辛料が効きすぎていて素材の味があまり感じられないね」
私は美味しく感じるけど、確かに家でミルチナが出してくれるものとは違うわね。あの味に慣れていると、ここの料理は少し味が濃い感じがするわ。
「でもこれが王都の料理だと思うわ。最初にミルチナと会った宮殿前広場のレストランもこんな味だったわよ」
こことは別の有名料理店で、最初ミルチナが働きたかったお店だ。
「そうですか、あのお店もここと同じでしたか」
どうも、ミルチナ達が求める料理の味とは方向性が違うようね。
「でも、ありがとうございます。こんな立派なお店で食べさせてもらって、参考になりました」
その後はユイトと料理の事について笑顔で話していた。少しでも参考になったのなら良かったわ。
2日後。シンシアから今夜家に来て欲しいと言われた。グランの実家から料理人が1人来るそうで、ミルチナに料理を作って欲しいと言ってきている。
「それでね、予選に出した料理を食べたいって言っているの。ミルチナちゃん、用意できるかしら」
「はい、もちろん大丈夫です。早速準備しますね」
ミルチナは貴族の家の料理人に、自分の料理を食べてもらえると張り切っている。今日の何でも屋の仕事は他の人にやってもらって、料理の準備をしてもらいましょう。
昼からはユイトも加わって、次の二次予選に出す予定の料理も作ると言っている。
夕方。料理を持ってシンシアの家に行く。
「今晩は、グラン」
「メアリィ店長、今晩は。この人が屋敷で料理を作ってくれているオーヴァンだ」
グランの隣には鹿族で大柄の男の人が立っている。グレーの短髪で少し口ひげを生やして精悍な顔立ちだ。
白いコックコートを着て黒と紺色のストライプのエプロンを腰に巻いている。職場の厨房からそのままここに来たような感じだわ。
「あんたが、ミルチナさんかい。早速で悪いんだが料理を食べさせてくれんか」
「はい。これが予選で出した野菜スープとステーキです」
木の板に乗せて蓋をしてまだ暖かい料理を食堂のテーブルの上に置く。オーヴァンさんは自分専用のカトラリーを持って来ているようで、薄い木の箱に納められたスプーンを取り出しスープをすくって飲む。次にナイフとフォークを取り出しステーキを1口食べる。
「なるほどな。これであれば一時予選は通過できて当たり前だな」
「あの、すみません。これは二次予選に出すつもりのステーキなんです。これも食べてもらえませんか」
ミルチナが作った大イノシシの肉のステーキをテーブルに置く。高級料理店に卸す程の質の良い肉だ。
オーヴァンさんは何も言わず、そのステーキを1口食べた。
「この料理を考えたのは、君なのかな。それとも仲間の料理人か?」
「あの、ボク達二人で考えて味付けしました」
ユイトが横から答える。
「予選の料理とは全然違うな。そこらにあるレストランの味だな。これだと二次予選は落ちるだろう」
ミルチナとユイトは驚き黙ってしまう。私がどういう事かと尋ねる。
「レストランの味だとダメなんですか? 私が連れて行った有名なお店があって、それが王都の料理の味だって言ったんです」
「なるほど、その味をまねたのか」
「どれどれ、俺にも食わせてくれんか」
グランがステーキの皿を取り食べてみる。
「なかなか美味いじゃないか。だが確かにレストランで食べている味だな。俺がいつも屋敷で食べていたのとは違うか」
「レストランの料理は客に受けようと色々と工夫をしている。流行りすたりはあるのだが、万人が好む料理で香辛料を多く使い、味を際立たせようとする」
「私がレストランに連れて行った時、この二人は素材の味があまり感じられないと言ってました」
私が良かれと思って料理店に連れて行ったのが悪かったのだろうか。
「俺のところの料理長は、味をごまかすなと日頃よく言っている。予選で出だしと言うスープは料理長の味に似ていて俺は驚いた。ステーキも質は落ちるが上手く味を引き出している」
あのいつも食べている料理の方がいいの?
「俺も若い頃、コンテストに何度も出た。2度一次を落ち、3度二次を落ちた。本選でも上位にはいけなかった」
この人も苦労していたのね。
「審査員は色んなレストランの料理を食べ歩いている。ありきたりな味では点を入れない。より深みのある味か、別の角度からみた味を際立たせた物かその組み合わせ、そういった物が選ばれる。まあ、優勝もできない俺が言うのも変だがな」
「そんな事はありません。参考になりました。ありがとうございます」
「ミルチナさんだったか。あんたのような若さで一次を通過できたんだ。自信を持って自分達の料理を作るようにすればいい」
「はい、ありがとうございます」
「だが所詮、コンテストはコンテストだ。味の追及を忘れないでいてくれると嬉しい」
そう言い残して、オーヴァンは帰って行った。でも料理って奥が深いのね。有名店の料理よりミルチナがいつも出してくれる料理の方がいいなんて。そういえばユイトの実家で食べた料理もそんな感じだったわね。
ミルチナには二次予選も通過してもらいたいわ。お店のお仕事も融通をつけて料理に集中してもらった方がいいわね。明日シンシアとも相談してみましょう。
「でも、あたしお金が無くて……」
「いいわよ。一次予選を通過したお祝いで、私が奢るわ、ユイトも連れてきなさい」
有名なお店でフルコースじゃないけど、それなりの料理を食べに行く。
「こんなお店に連れて来てくれて、ありがとうございます。メアリィさん」
「ボクも、王都の高級料理ってどんな味なのか楽しみだよ」
出された料理は、二次予選とよく似たもので前菜からスープ、そしてメインのステーキが出てくるコース料理。
二人は吟味しながら出された料理を食べていく。でもなんだか渋い顔をしているわ。
「どうしたの? 美味しくなかった」
「いえ、美味しいのですが、何というか……」
「そうだね。香辛料が効きすぎていて素材の味があまり感じられないね」
私は美味しく感じるけど、確かに家でミルチナが出してくれるものとは違うわね。あの味に慣れていると、ここの料理は少し味が濃い感じがするわ。
「でもこれが王都の料理だと思うわ。最初にミルチナと会った宮殿前広場のレストランもこんな味だったわよ」
こことは別の有名料理店で、最初ミルチナが働きたかったお店だ。
「そうですか、あのお店もここと同じでしたか」
どうも、ミルチナ達が求める料理の味とは方向性が違うようね。
「でも、ありがとうございます。こんな立派なお店で食べさせてもらって、参考になりました」
その後はユイトと料理の事について笑顔で話していた。少しでも参考になったのなら良かったわ。
2日後。シンシアから今夜家に来て欲しいと言われた。グランの実家から料理人が1人来るそうで、ミルチナに料理を作って欲しいと言ってきている。
「それでね、予選に出した料理を食べたいって言っているの。ミルチナちゃん、用意できるかしら」
「はい、もちろん大丈夫です。早速準備しますね」
ミルチナは貴族の家の料理人に、自分の料理を食べてもらえると張り切っている。今日の何でも屋の仕事は他の人にやってもらって、料理の準備をしてもらいましょう。
昼からはユイトも加わって、次の二次予選に出す予定の料理も作ると言っている。
夕方。料理を持ってシンシアの家に行く。
「今晩は、グラン」
「メアリィ店長、今晩は。この人が屋敷で料理を作ってくれているオーヴァンだ」
グランの隣には鹿族で大柄の男の人が立っている。グレーの短髪で少し口ひげを生やして精悍な顔立ちだ。
白いコックコートを着て黒と紺色のストライプのエプロンを腰に巻いている。職場の厨房からそのままここに来たような感じだわ。
「あんたが、ミルチナさんかい。早速で悪いんだが料理を食べさせてくれんか」
「はい。これが予選で出した野菜スープとステーキです」
木の板に乗せて蓋をしてまだ暖かい料理を食堂のテーブルの上に置く。オーヴァンさんは自分専用のカトラリーを持って来ているようで、薄い木の箱に納められたスプーンを取り出しスープをすくって飲む。次にナイフとフォークを取り出しステーキを1口食べる。
「なるほどな。これであれば一時予選は通過できて当たり前だな」
「あの、すみません。これは二次予選に出すつもりのステーキなんです。これも食べてもらえませんか」
ミルチナが作った大イノシシの肉のステーキをテーブルに置く。高級料理店に卸す程の質の良い肉だ。
オーヴァンさんは何も言わず、そのステーキを1口食べた。
「この料理を考えたのは、君なのかな。それとも仲間の料理人か?」
「あの、ボク達二人で考えて味付けしました」
ユイトが横から答える。
「予選の料理とは全然違うな。そこらにあるレストランの味だな。これだと二次予選は落ちるだろう」
ミルチナとユイトは驚き黙ってしまう。私がどういう事かと尋ねる。
「レストランの味だとダメなんですか? 私が連れて行った有名なお店があって、それが王都の料理の味だって言ったんです」
「なるほど、その味をまねたのか」
「どれどれ、俺にも食わせてくれんか」
グランがステーキの皿を取り食べてみる。
「なかなか美味いじゃないか。だが確かにレストランで食べている味だな。俺がいつも屋敷で食べていたのとは違うか」
「レストランの料理は客に受けようと色々と工夫をしている。流行りすたりはあるのだが、万人が好む料理で香辛料を多く使い、味を際立たせようとする」
「私がレストランに連れて行った時、この二人は素材の味があまり感じられないと言ってました」
私が良かれと思って料理店に連れて行ったのが悪かったのだろうか。
「俺のところの料理長は、味をごまかすなと日頃よく言っている。予選で出だしと言うスープは料理長の味に似ていて俺は驚いた。ステーキも質は落ちるが上手く味を引き出している」
あのいつも食べている料理の方がいいの?
「俺も若い頃、コンテストに何度も出た。2度一次を落ち、3度二次を落ちた。本選でも上位にはいけなかった」
この人も苦労していたのね。
「審査員は色んなレストランの料理を食べ歩いている。ありきたりな味では点を入れない。より深みのある味か、別の角度からみた味を際立たせた物かその組み合わせ、そういった物が選ばれる。まあ、優勝もできない俺が言うのも変だがな」
「そんな事はありません。参考になりました。ありがとうございます」
「ミルチナさんだったか。あんたのような若さで一次を通過できたんだ。自信を持って自分達の料理を作るようにすればいい」
「はい、ありがとうございます」
「だが所詮、コンテストはコンテストだ。味の追及を忘れないでいてくれると嬉しい」
そう言い残して、オーヴァンは帰って行った。でも料理って奥が深いのね。有名店の料理よりミルチナがいつも出してくれる料理の方がいいなんて。そういえばユイトの実家で食べた料理もそんな感じだったわね。
ミルチナには二次予選も通過してもらいたいわ。お店のお仕事も融通をつけて料理に集中してもらった方がいいわね。明日シンシアとも相談してみましょう。
10
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった
ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」
15歳の春。
念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。
「隊長とか面倒くさいんですけど」
S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは……
「部下は美女揃いだぞ?」
「やらせていただきます!」
こうして俺は仕方なく隊長となった。
渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。
女騎士二人は17歳。
もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。
「あの……みんな年上なんですが」
「だが美人揃いだぞ?」
「がんばります!」
とは言ったものの。
俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?
と思っていた翌日の朝。
実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた!
★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。
※2023年11月25日に書籍が発売!
イラストレーターはiltusa先生です!
※コミカライズも進行中!
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる