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第5章
第91話 2人のリザードマン
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午前中の仕事を終えてお店に帰ろうとしていたら、遠くにリザードマンが2人ウロウロしているのが見えた。王都では珍しいリザードマン、つい目がいってしまった。
何かを探しているのかしら、もし人探しならお客さんになってくれるかもしれない。近づいて行くと、見知った顔だ。
「あなた達は帝国兵だった兄妹ね。どうしてこんな所にいるのよ」
「あっ、メアリィさん。良かった、メアリィさんの何でも屋を探していたんです」
妹さんが私を見てほっとしたように言ってきた。この兄妹とは国境近くの町で知り合ったけど、その後はレグルス国に亡命していたはずだわ。
まずはお店に行って話を聞きましょう。
「あの時は、お世話になりました」
「あなた達、レグルス国に亡命したはずよね。まさかまた国境を抜けてきたんじゃないでしょうね」
「いえいえ、そんなことしてませんよ」
妹さんが事情を話してくれる。
「私達、レグルス国に難民として受け入れてもらって、集合住宅の1室と食事を与えてもらっていたんです」
難民だからテント暮らしかと思ったけど、それなりの生活はできていたようね。
「支援者の方もいて、なんとか生活できるんですけど仕事が無くて、王国で働きたいと言ったんです」
「そんな簡単に王国で働けるようになるの?」
聞くと、王国に身元引受人がいて王国で2年間働いてしっかりと税金を治めれば、王国に住んでもいい事になると言っている。亡命先のレグルス国も難民のように国内に居られるより、王国で働いてこちらに移ってもらった方がいいようだ。
「私達の話を聞いて、ヌンキの町の人が私達の身元引受人になってくれて、王都まで連れてきてくれたんです」
住むところは身元引受人が用意したアパートに住んでいると言っていた。まずは2年間安定して働くことが目標になる。
「メアリィさん。私達をここで雇ってもらえませんか」
私達と知り合って何でも屋に興味を持ったようだ。ここがダメなら他の何でも屋で働くつもりらしい。今、私のチームの前衛はユイト一人。イズホさんが抜けて少し不安に思っていたところだった。
「そうね。アルバイトとしてならすぐ雇えると思うんだけど、少し相談して雇うかどうか決めるわ」
「ありがとうございます。ほら、お兄ちゃんもお礼を言って」
「お、おう。よろしく頼む」
相変わらず、このアニキはぶっきらぼうな奴ね。
役所から帰って来たシンシアに2人の事を相談する。
「ねえ、シンシア。お店でもう2人雇う事はできそうかな」
「そうね。1人なら雇っても大丈夫だけど、2人目は今後の業績次第ね」
経営的には、なんとか2人雇うことはできるそうだけど、もし業績が悪くなると1人は解雇しないとダメみたいね。
「じゃあ、その事も言って、最初はアルバイトとして雇ってみましょう」
翌日お店にやって来た兄妹に説明して、それでもいいなら雇うと言った。
「はい、結構です。王都がどんな所かまだ分かっていませんし、アルバイトとして雇ってもらえるなら、それでいいです。お兄ちゃんもいいでしょう」
「お、おう」
ミルチナが1階に降りてきた。
「あれ、テニーニャちゃんじゃない。どうしてここにいるの」
「ミルチナちゃん! 私達ここで働くことになったの。よろしくね」
2人は仲がいいわね。チームで仕事するんだから仲がいいに越したことはないわ。
その日以降、何でも屋の仕事を教えながら働いてもらった。帝国との違いに戸惑ってはいたけど、しっかりと働いてくれている。
今日は魔獣討伐の仕事を2チームで行う。
「ティノスは、ユイトと前衛で戦って」
「おう」
「その後ろはテニーニャよ。魔法はしっかり狙って当てるのよ」
「はい、頑張ります」
今日、ミルチナは急ぎの仕事があって討伐はお休みだ。私が一番後方で魔獣の監視をし、指示を出す。
ヨハノスのチームは安定して魔獣を倒してくれているわね。リザードマンの二人は……。流石兄妹ね、息が合っていて上手く立ち回っているわ。
誰も怪我することなく今日の仕事を終えられた。
2週間が過ぎ、ティノス達を正社員として雇うかを決める日。
「メアリィ店長。俺はアルバイトのままでいい。妹のテニーニャを社員として雇ってくれないか。あいつはしっかり者で頭もいい。この王国に住んで欲しいんだ」
「なに言ってんのよ。あんたも一緒じゃないとテニーニャちゃんが悲しむじゃない。お母さんもこっちに来てるんでしょう」
「母さんは、体が弱くてあまり働けないが、俺達が永住権をもらえたら家族として一緒にいられるそうだ」
「それなら、あんたもしっかり働かないとダメじゃない。ちゃんと働くつもりがあるなら、あなた達2人を正社員として雇うわ」
「そうなのか! 俺はこれからも頑張って働く。ありがとう、ありがとう」
このアニキは妹の事となると感情的になるわね。まあ、いいわ。ちゃんと役に立ってくれているし、この先も頑張ってくれそうだわ。
何かを探しているのかしら、もし人探しならお客さんになってくれるかもしれない。近づいて行くと、見知った顔だ。
「あなた達は帝国兵だった兄妹ね。どうしてこんな所にいるのよ」
「あっ、メアリィさん。良かった、メアリィさんの何でも屋を探していたんです」
妹さんが私を見てほっとしたように言ってきた。この兄妹とは国境近くの町で知り合ったけど、その後はレグルス国に亡命していたはずだわ。
まずはお店に行って話を聞きましょう。
「あの時は、お世話になりました」
「あなた達、レグルス国に亡命したはずよね。まさかまた国境を抜けてきたんじゃないでしょうね」
「いえいえ、そんなことしてませんよ」
妹さんが事情を話してくれる。
「私達、レグルス国に難民として受け入れてもらって、集合住宅の1室と食事を与えてもらっていたんです」
難民だからテント暮らしかと思ったけど、それなりの生活はできていたようね。
「支援者の方もいて、なんとか生活できるんですけど仕事が無くて、王国で働きたいと言ったんです」
「そんな簡単に王国で働けるようになるの?」
聞くと、王国に身元引受人がいて王国で2年間働いてしっかりと税金を治めれば、王国に住んでもいい事になると言っている。亡命先のレグルス国も難民のように国内に居られるより、王国で働いてこちらに移ってもらった方がいいようだ。
「私達の話を聞いて、ヌンキの町の人が私達の身元引受人になってくれて、王都まで連れてきてくれたんです」
住むところは身元引受人が用意したアパートに住んでいると言っていた。まずは2年間安定して働くことが目標になる。
「メアリィさん。私達をここで雇ってもらえませんか」
私達と知り合って何でも屋に興味を持ったようだ。ここがダメなら他の何でも屋で働くつもりらしい。今、私のチームの前衛はユイト一人。イズホさんが抜けて少し不安に思っていたところだった。
「そうね。アルバイトとしてならすぐ雇えると思うんだけど、少し相談して雇うかどうか決めるわ」
「ありがとうございます。ほら、お兄ちゃんもお礼を言って」
「お、おう。よろしく頼む」
相変わらず、このアニキはぶっきらぼうな奴ね。
役所から帰って来たシンシアに2人の事を相談する。
「ねえ、シンシア。お店でもう2人雇う事はできそうかな」
「そうね。1人なら雇っても大丈夫だけど、2人目は今後の業績次第ね」
経営的には、なんとか2人雇うことはできるそうだけど、もし業績が悪くなると1人は解雇しないとダメみたいね。
「じゃあ、その事も言って、最初はアルバイトとして雇ってみましょう」
翌日お店にやって来た兄妹に説明して、それでもいいなら雇うと言った。
「はい、結構です。王都がどんな所かまだ分かっていませんし、アルバイトとして雇ってもらえるなら、それでいいです。お兄ちゃんもいいでしょう」
「お、おう」
ミルチナが1階に降りてきた。
「あれ、テニーニャちゃんじゃない。どうしてここにいるの」
「ミルチナちゃん! 私達ここで働くことになったの。よろしくね」
2人は仲がいいわね。チームで仕事するんだから仲がいいに越したことはないわ。
その日以降、何でも屋の仕事を教えながら働いてもらった。帝国との違いに戸惑ってはいたけど、しっかりと働いてくれている。
今日は魔獣討伐の仕事を2チームで行う。
「ティノスは、ユイトと前衛で戦って」
「おう」
「その後ろはテニーニャよ。魔法はしっかり狙って当てるのよ」
「はい、頑張ります」
今日、ミルチナは急ぎの仕事があって討伐はお休みだ。私が一番後方で魔獣の監視をし、指示を出す。
ヨハノスのチームは安定して魔獣を倒してくれているわね。リザードマンの二人は……。流石兄妹ね、息が合っていて上手く立ち回っているわ。
誰も怪我することなく今日の仕事を終えられた。
2週間が過ぎ、ティノス達を正社員として雇うかを決める日。
「メアリィ店長。俺はアルバイトのままでいい。妹のテニーニャを社員として雇ってくれないか。あいつはしっかり者で頭もいい。この王国に住んで欲しいんだ」
「なに言ってんのよ。あんたも一緒じゃないとテニーニャちゃんが悲しむじゃない。お母さんもこっちに来てるんでしょう」
「母さんは、体が弱くてあまり働けないが、俺達が永住権をもらえたら家族として一緒にいられるそうだ」
「それなら、あんたもしっかり働かないとダメじゃない。ちゃんと働くつもりがあるなら、あなた達2人を正社員として雇うわ」
「そうなのか! 俺はこれからも頑張って働く。ありがとう、ありがとう」
このアニキは妹の事となると感情的になるわね。まあ、いいわ。ちゃんと役に立ってくれているし、この先も頑張ってくれそうだわ。
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