上 下
86 / 101
第4章

第86話 女王様とおじさんと

しおりを挟む
 ここは綺麗なところね。ごちゃごちゃした町もないし、大きな湖も近くにある。それにこの高い白い塔が気に入ったわ。一番てっぺんに止まって周りを見渡すのは気持ちがいいわね。

 あら、イズホが呼んでいるわ。女王様との話し合いが行われるようだわ。

「初めまして、イズホ様。よく来てくれました」

「ミネトリス女王。先代の王には、我が祖先が世話になったと聞いておる。祖先に代わり礼を言う」

「我らドリュアス一族も恩恵を受けており感謝しております」

「その祖先は、この大陸でやり残したことがあると代々伝えられておってな」

「それは交流を持てなかった、ビラマニ国の事でしょうか」

「そうじゃな。その思いを我らの代で成し遂げたいと思っておる。簡単な事でないと思っておるがな」

「では、これからの未来の事についてお話しましょうか」

 イズホは何やら難しい話をしているようで、私にはよく分からない。

「ねえ、ギアデスおじさん。いったい何の話をしているの」

「この大陸で大きな紛争が起きていてな、それをどう解決しようかと女王は考えている。その知恵をミカセ家に借りようとしてるんだ」

「人は何処ででも争っているわね。何で仲良くできないのかしら」

「さあな。俺はここが気に入ってここに居る。俺達にとってはそれだけで良い事だろう」

「そうね。私もシャウラ村は気に入っているわ。最近は余所の国を飛び回る事が多くて大変だけど、イズホといると面白い事が多いわ。そうそう、オクトパスって言う海の魔物なんだけど、すごく美味しかったのよ」

「そうなのか。ここに来てから海の魔物とは戦ってないな。今度、一緒に行ってその魔物を倒してみるか」

 そんな話をしていたら、イズホの方は話が終ったみたいね。今夜はここに泊まって明日帰るようね。
ここはのんびりしていていい所だから、もっと居ればいいのに。まあ、イズホにも仕事があるから仕方ないか。

 翌日。ここを離れる時、イズホはギアデスおじさんに尋ねた。

「ギアデスよ。お前はここで名前をもらったそうだが、セシウス大陸に帰って来ることは考えておらぬのか」

「俺は、海の果てを目指してここに辿り着いた。先代の王に借りもある。人族ではないがミネトリスに従いこの首都を守っていくつもりだ」

「そうか。もしドラゴンの故郷に帰りたい時は、船の都合をつけよう。あの船は速いからな。ここを留守にするのも短くてすむじゃろう」

「俺はここで骨をうずめるつもりだが、もしそのような時はお前に頼むとしよう」

「ああ、そうしてくれ」

 私はイズホを乗せて、空母へと帰って来る。途中ビラマニ国の上を飛んでいると、私を指差して口々に何か叫んでいるようだったわ。失礼な人達ね、私この国の人は嫌いだわ。

 ここ数日は、島の港に停泊してる空母の補給や整備をするらしい。
島のあちこちに山積みしている黒い石、石炭と言うらしいけど、それを沢山船に積み込んでいるようね。

「ねえ、イズホ。この黒い石って何に使うの」

「その石は燃えるんじゃ、この船を動かす燃料じゃよ。陸地ではあまりないんじゃが、海にはこういう石炭が出る場所が沢山あるそうじゃ」

 ふ~ん。こんな石でこの大きな船が動いてるんだ。こんな沢山燃やしてるから、あんなにすごい煙を吐きながら走っているんだわ。
海洋族の人はその石炭を海底で掘るために、ここに沢山集まっているのね。

 そんな作業を見ていたら、遠くからギアデスおじさんが飛んできた。

「セミューよ。海の魔物の討伐に行かないか。前に言っていた美味い魔物を食いに行こう」

「それは、いいわね。イズホ、ちょっと海に出るけどいいかな~」

「よいぞ。夕方までには帰って来るんじゃぞ」

「は~い」

 おじさんと魔の海の方に飛んで行く。この島に来る前に魔物を倒した海。

「この辺りでいいと思うんだけど。おじさんも翼を広げて海の上に影を落としてくれませんか」

「ほう、こうするのか」

 飛びながら二人でできるだけ大きな影を作る。そうすると海底の方から魔物が浮かび上がってきた。
白い体で三角の頭を持つ魔物。

「あ~、あれはクラーケンって言って、あまり美味しくないのよ。はずれね」

「そうなのか。では違う所に行ってみようか」

 別のところで同じように海面に影を落とす。

「あれよ、あれ。丸い頭で足がウニョウニョしてる魔物、オクトパスよ」

 大きな足を広げて影を掴もうとしているわ。バカな魔物ね。

「何処が急所だ?」

「目と目の間なんだけど、あの8本の足で防いでくるのよ。私が何本か足を切断するから、おじさんが目の間を狙って」

「よし、任せろ」

 ブレスを細くして横なぎに魔物の足を3本切断した。その隙間からギアデスおじさんが目の間を狙って細いブレスを突きさすように吐く。

「おじさん、上手い、上手い」

 魔物を黒コゲにする事もなく倒すことができた。本体をおじさんが、切断した足を私が持って船が停泊してる島まで戻ってくる。

「これは、なかなか大きな獲物だな。それに美味いな」

「そうでしょう。少しブレスで炙ると、また美味しくなるのよ」

 ブレスの加減は難しいけど、焼くと香ばしくなってまた違った味になる。

「イズホはお湯に入れて茹でていたわ。人って色々な食べ方するわね」

 私は生が一番だと思うけど。

「セミュー。この足を何本か持ち帰ってもいいか? ミネトリスにも食べてもらいたい」

「ええ、どうぞ、私は後2本もあれば十分だわ」

「すまんな。今日はありがとよ」

 そう言って残りの魔物の足を掴んで、嬉しそうに大陸の方に飛んで行った。私も面白かったわ。また来ることがあったら、おじさんと魔物を狩りに行きたいわね。

 翌日。出港準備も整い、新大陸での思い出と共に人族に国へとまた船の旅が始まる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

処理中です...