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第4章
第83話 王国女王との会見
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「おぬしがこの王国の女王か。ワシはシャウラ村村長、ゲンブ ミカセの名代としてここに来ておる」
王国宮殿の一室、王族や公爵などの貴族が居並ぶ場所に、人族の若き女性がひとり入ってくる。その幼く見える顔立ちに反して、その堂々とした立ち振る舞い。
女王と全く対等であるような言動をするこの女性は、自分の事をイズホと名乗った。
「この度の海洋族に対する武器輸出について、ゲンブ殿の考えをお聞きしたい」
「今回の件は、海洋族からの要請に応じたまでのこと。海洋族と国交のない王国が関与する事ではないのではないのか」
「国外への兵器輸出は国が規制しておる。それに従っていただきたい」
女王側近の者が荒々し気に言う。国の許可も得ずに海洋族と交易するシャウラ村に対して国としての面子もあるのだ。
「今回海洋族に渡すのは、シャウラ村の独自技術で開発した物。王国に兵器登録もしていないゆえ、禁輸製品ではないであろう」
これは詭弁というものである事は皆が承知している。
「とはいえ、王国の懸念も分かる。今回の武力製品が王国はもとより、この大陸で使用されないとの誓約書を海洋族に書いてもらっておる」
イズホは鞄より帯封のある書状を取り出し、女王達が座るテーブルに放り出す。
その態度を苦々しく思いながらも、書状を側近が受け取り女王陛下の元に運ぶ。その書状を見て女王は驚き口にする。
「これはポセイドン王からの書状ではないですか!」
女王の言葉に貴族たちが騒めき立つ。この世の全ての海を支配する海洋族。その王であるポセイドン王。ポセイドンという名は歴代の王が名乗る名前であり、現在の王の素性や姿形までも謎に包まれている人物である。
「ポセイドン王からだと! なぜ貴様がそのような書状を持っておるのだ」
公爵が女王の元に行き、書状の帯封の印を確かめる。そこには海洋族の国旗を背景に古き文字でポセイドンと刻まれている。
「これは本物なのか? あのポセイドン王が我ら宛に書状を書くとは」
「失礼な奴らじゃのう。その印は本物じゃ。ワレと父上、それと人族の国の首相が出向き、わざわざ書いてもらった物じゃ」
王国は国交がないとはいえ、海洋族の許可のもと船舶による荷物や人の運搬を行っている。相応の対価は支払っているが海洋族の王が否と言えば海洋交通は全て止まってしまう。その絶大な権力を持つポセイドン王にこの国の女王ですら会った事はない。書状を受け取るのも初めてかも知れない。
その書状には今回建造された、海洋族所属の船とその搭載武器については海の魔物に向けるものであり、大陸では一切使用しない旨が書かれていた。
「王国は新大陸との航路の安全を、海洋族に要請しておるじゃろう。それらのためにも使われるものじゃ。王国としても利益となるのじゃから良い事ではないか」
空母という船自体は人族の国で建造し、それに搭載する航空機と魚雷などの武器をシャウラ村で製造したと言う。これだけ海洋族との繋がりを見せられては、王国としても輸出を許可しない訳にはいかない。
「今回製造した物は、兵器として登録していただきたい。そのうえで輸出の許可を出す」
「追加の製品や修理部品についてはワレらで決めて製造、輸出しても良いな」
「事後でも結構なので報告は上げていただかないと……」
「王国の書類作成は面倒なのじゃ。簡易にしてくれ。また父上の仕事が増えるではないか」
そう言い残してイズホは退席する。
◇
◇
「メアリィよ、ここでの仕事も終った。年末にはユイトと一緒に村に帰るが良いな」
「ええ、結構ですよ。年が明けたら、いつぐらいに戻ってきます?」
「そうじゃな。新年の5日にはユイトだけを戻そうと思っておる」
「イズホさんは年が明けたら、村の仕事をされるんですよね」
「そうじゃな。また人族の国までいかんとダメになってしもうてな」
「それは大変ですね。終わったらまたここで働いてくれたら助かるんですが」
「ワシもそうしたいんじゃが、今回は長くなりそうでな。ユイトを鍛えてあるから、あいつ一人でも仕事はこなせるじゃろう」
イズホさんに魔獣討伐の教官をしてもらって、このお店の戦闘力は上がった。2チームで討伐できるので広い範囲を受け持つことができて報酬も増えている。
イズホさんやセミュー様とお別れするのは寂しいけど、お仕事というなら仕方ないわね。
年末、ユイトはお正月を家族と一緒に過ごせると喜んでいたけど、お正月というのはよく分からない。シャウラ村で新年を祝う行事のようだけど、3日連続で行うと言う。
「まあ、シャウラ村だしね」
あの村のやる事に驚いていたらきりがない。年末の1日前にユイトとイズホさんがドラゴンに乗って村へと帰っていった。
今年はセイランもいないし、ミルチナと二人ね。王都の年始のお祝いをして美味しいものでも食べて、のんびり過ごしましょう。
王国宮殿の一室、王族や公爵などの貴族が居並ぶ場所に、人族の若き女性がひとり入ってくる。その幼く見える顔立ちに反して、その堂々とした立ち振る舞い。
女王と全く対等であるような言動をするこの女性は、自分の事をイズホと名乗った。
「この度の海洋族に対する武器輸出について、ゲンブ殿の考えをお聞きしたい」
「今回の件は、海洋族からの要請に応じたまでのこと。海洋族と国交のない王国が関与する事ではないのではないのか」
「国外への兵器輸出は国が規制しておる。それに従っていただきたい」
女王側近の者が荒々し気に言う。国の許可も得ずに海洋族と交易するシャウラ村に対して国としての面子もあるのだ。
「今回海洋族に渡すのは、シャウラ村の独自技術で開発した物。王国に兵器登録もしていないゆえ、禁輸製品ではないであろう」
これは詭弁というものである事は皆が承知している。
「とはいえ、王国の懸念も分かる。今回の武力製品が王国はもとより、この大陸で使用されないとの誓約書を海洋族に書いてもらっておる」
イズホは鞄より帯封のある書状を取り出し、女王達が座るテーブルに放り出す。
その態度を苦々しく思いながらも、書状を側近が受け取り女王陛下の元に運ぶ。その書状を見て女王は驚き口にする。
「これはポセイドン王からの書状ではないですか!」
女王の言葉に貴族たちが騒めき立つ。この世の全ての海を支配する海洋族。その王であるポセイドン王。ポセイドンという名は歴代の王が名乗る名前であり、現在の王の素性や姿形までも謎に包まれている人物である。
「ポセイドン王からだと! なぜ貴様がそのような書状を持っておるのだ」
公爵が女王の元に行き、書状の帯封の印を確かめる。そこには海洋族の国旗を背景に古き文字でポセイドンと刻まれている。
「これは本物なのか? あのポセイドン王が我ら宛に書状を書くとは」
「失礼な奴らじゃのう。その印は本物じゃ。ワレと父上、それと人族の国の首相が出向き、わざわざ書いてもらった物じゃ」
王国は国交がないとはいえ、海洋族の許可のもと船舶による荷物や人の運搬を行っている。相応の対価は支払っているが海洋族の王が否と言えば海洋交通は全て止まってしまう。その絶大な権力を持つポセイドン王にこの国の女王ですら会った事はない。書状を受け取るのも初めてかも知れない。
その書状には今回建造された、海洋族所属の船とその搭載武器については海の魔物に向けるものであり、大陸では一切使用しない旨が書かれていた。
「王国は新大陸との航路の安全を、海洋族に要請しておるじゃろう。それらのためにも使われるものじゃ。王国としても利益となるのじゃから良い事ではないか」
空母という船自体は人族の国で建造し、それに搭載する航空機と魚雷などの武器をシャウラ村で製造したと言う。これだけ海洋族との繋がりを見せられては、王国としても輸出を許可しない訳にはいかない。
「今回製造した物は、兵器として登録していただきたい。そのうえで輸出の許可を出す」
「追加の製品や修理部品についてはワレらで決めて製造、輸出しても良いな」
「事後でも結構なので報告は上げていただかないと……」
「王国の書類作成は面倒なのじゃ。簡易にしてくれ。また父上の仕事が増えるではないか」
そう言い残してイズホは退席する。
◇
◇
「メアリィよ、ここでの仕事も終った。年末にはユイトと一緒に村に帰るが良いな」
「ええ、結構ですよ。年が明けたら、いつぐらいに戻ってきます?」
「そうじゃな。新年の5日にはユイトだけを戻そうと思っておる」
「イズホさんは年が明けたら、村の仕事をされるんですよね」
「そうじゃな。また人族の国までいかんとダメになってしもうてな」
「それは大変ですね。終わったらまたここで働いてくれたら助かるんですが」
「ワシもそうしたいんじゃが、今回は長くなりそうでな。ユイトを鍛えてあるから、あいつ一人でも仕事はこなせるじゃろう」
イズホさんに魔獣討伐の教官をしてもらって、このお店の戦闘力は上がった。2チームで討伐できるので広い範囲を受け持つことができて報酬も増えている。
イズホさんやセミュー様とお別れするのは寂しいけど、お仕事というなら仕方ないわね。
年末、ユイトはお正月を家族と一緒に過ごせると喜んでいたけど、お正月というのはよく分からない。シャウラ村で新年を祝う行事のようだけど、3日連続で行うと言う。
「まあ、シャウラ村だしね」
あの村のやる事に驚いていたらきりがない。年末の1日前にユイトとイズホさんがドラゴンに乗って村へと帰っていった。
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