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第4章
第81話 宮殿1
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ここが宮殿。ここに来る前に遠見の魔道具で見た白い塔。それをこんな間近に見れるなんて……。
地上にはこの塔を支える大きな4本の柱が曲線を描いて空へと伸びている。いったいどれほどの高さがあるのだろう。
将軍様が住むお城の2倍以上あるだろうか。
大きな木の幹のように先端が細くなっていて、上の方は人が住むようにはできていないようね。
「まあ、宮殿自体はこの奥にあってな、塔の下の建物は役所になっておる」
「なぜこのような高い塔を」
「他の地域と念話で話をするための魔道具がこの上にあってな……」
「陛下。そのような事を異国の者に教えるものではありませんよ」
馬車の中にいる側近と思われる女性が、陛下を窘める。
「別に良いではないか。これを破壊できる者がメレシルに入れる訳が無いのだからな」
軍事機密的なものなのだろうけど、確かにこの首都に建つ塔が破壊される時はこの国が亡ぶ時だろう。
塔の大きな柱の横を抜けて宮殿へと向かう。
石の柱と鉄の柵で囲まれた広い庭に、3階建ての白い宮殿が奥に控える。
門が開き入った庭は緑が多く、中央に大きな神龍族をかたどった彫像が立てられ、その周りには噴水がある。
馬車は庭を抜けて宮殿入口の扉の前に止まる。
「何て大きな扉なの」
2階部分まである2枚扉。その横には衛兵が4人立ち扉を開ける。でも開いたのは下部分にある人が通れる程度の扉だった。
「その大きな扉はギアデス用の扉なんじゃよ。あいつの力じゃないと開けることはできぬよ」
先ほど戦った神龍様もこの宮殿に暮らしているのね。扉の中も天井が高くて神龍様が歩けるようになっている。
「ギアデスも一緒に話をしたいからな、こちらの部屋に来てくれ」
中央の通路の奥に入口と同じ様な大きな扉のある部屋がある。中に入ると先に帰っていた神龍様が椅子に座って待っていた。
「遅かったな。あんたらの席も用意した。そこに座ってくれ」
女王陛下が座った前に膝を突き、セイランが将軍様より預かった書状を両手で差し出す。
「我が将軍よりの書状、お受け取り下され」
馬車の中から付いて来た側近の女性が書状を受け取り、女王陛下に手渡す。
「セイランよ、ここはギアデスの個室じゃ。先ほどの詫びも兼ねてそなたらを招いておる。そう硬くならずとも良い」
「そうだぞ。俺とまともに戦える奴はこの国にもそうはいない。友として接してくれんか」
「であれば、お言葉に甘えて失礼仕る」
セイランはテーブルを挟んだ反対側に用意された席に座り、私の事を紹介してもらい、私も横の席に着いた。
「書状の事については、他の者とも相談して返事をするが、今日はおぬしの事が聞きたい。ここまでどのように旅してきたのじゃ」
陛下は手にした書状をざっと読んで側近に渡して、側近を下がらせた。
テーブルに用意されたお茶を飲みながら、私達はここに来るまでの旅の話をする。
「なるほど。村を渡ってここに来たのも偶然ではないと」
「それよりもセイラン。お前の持っている刀はどうやって手に入れたんだ。鬼人族で俺の体を斬れる刀を打てるとは思えんのだが」
「王国に住まわれている、剣の師と仰ぐお方に加工していただいた。魔剣、水紋刀に御座る」
「もしかすると、その者はミカセ家の者か?」
「ゲンブ殿をご存じか」
セイランが王国で出会ったと言う剣豪の方。この神龍様も知っている程の方なのかしら。
「ゲンブという者は知らぬが、昔、130年程前か……。ここにミカセ家の者が訪れた事がある。俺は戦いを挑み剣で斬られた。頬の傷と肩の傷はその時の物。剣で斬られたのは、それ以来お前で2人目だ」
「その話は父上から聞いた事があるぞ、ギアデス。お前コテンパンにやられたそうだな」
「いや、あの頃は俺も若かったしな。相手の力量も分からず3人まとめて相手をしちまってな」
「剣士に魔術師に弓使い。それぞれが一流の達人達と聞いたぞ。神龍族を負かす者がこの世に居るとは驚きだと父上も言っておられたな」
この人達は笑って話しているけど、神龍族が負けたの? そんな化け物じみた人がいるなんて信じられないわ。
「そのお方が、ミカセ家の方々だと」
「ああ、その頃は共和国に住んでいると言っていたな。キイエも一緒にいたが、セイランは知っているか」
「キイエ殿には、拙者もお世話になっておりました」
「そうか、あいつは元気にしていたか。だがあいつはずるい奴でな、この大陸は俺が先に発見したんだが、あいつが発見者という事になっている」
130年前に来たミカセ家の方々と一緒にいたなら、そういう事になるわね。
「ギアデス様はどうのようにして、この大陸に渡って来られたのですか」
「俺はな大きな丸太を足で持って海を渡って来たんだ。夜眠るときは、その丸太を海に浮かべてその上で眠る」
「そんなご苦労をされて、ここまで来たのですね」
「ああ、そうだ。眠っている時に海の魔物に襲われた事が何度もある。この大陸に来る頃には、丸太も破壊されてずっと飛び続けてやっと陸地に着けたんだぞ」
「疲れ果てて、森にいたお前を父上らが見つけて保護したという訳じゃな」
「最初、頭に直接話しかけてくる奴がいてびっくりしたが、水や食料をもらい怪我の治療もしてくれたからな。それ以来俺はここに住み続けている」
ドリュアス族は心優しい人が多いのね。もし私の国だったら弱った魔獣として退治していたかもしれないわ。
「なのにキイエの野郎は船に乗って、楽してこの大陸に来やがったんだぞ」
当時は、あるかどうかも分からない大陸を目指しての船の旅。その人達は冒険者と名乗ったそうだ。竜神様も船でやって来た人もすごい冒険をして、この大陸へとやって来た。
ただ海の向こうに何があるのか知りたいという思いから、旅立ったとギアデス様はいう。船で来た冒険者も同じだろう。
広い世界の事を知りたいと、セイランも言っていたわね。自分の国の事しか知らない私はなんて小さな存在なのだろう。
「この国も海を渡って来られたミカセ家のお陰で発展できた。そのイヤリングや塔の上の通信機もミカセ家の方々に作ってもらった物。海洋族の方々とも親密になれた。感謝しておるよ」
その人達のお陰で我が国も発展できたと将軍様も言ったという。そんなすごい家の人とセイランは知り合いだったのね。
「セイランよ。またお前の話を聞きたい。しばらくはここに滞在するがよい。客人としてもてなそう」
女王陛下にそう言ってもらって、私達は宮殿の客室に泊まる事になった。
地上にはこの塔を支える大きな4本の柱が曲線を描いて空へと伸びている。いったいどれほどの高さがあるのだろう。
将軍様が住むお城の2倍以上あるだろうか。
大きな木の幹のように先端が細くなっていて、上の方は人が住むようにはできていないようね。
「まあ、宮殿自体はこの奥にあってな、塔の下の建物は役所になっておる」
「なぜこのような高い塔を」
「他の地域と念話で話をするための魔道具がこの上にあってな……」
「陛下。そのような事を異国の者に教えるものではありませんよ」
馬車の中にいる側近と思われる女性が、陛下を窘める。
「別に良いではないか。これを破壊できる者がメレシルに入れる訳が無いのだからな」
軍事機密的なものなのだろうけど、確かにこの首都に建つ塔が破壊される時はこの国が亡ぶ時だろう。
塔の大きな柱の横を抜けて宮殿へと向かう。
石の柱と鉄の柵で囲まれた広い庭に、3階建ての白い宮殿が奥に控える。
門が開き入った庭は緑が多く、中央に大きな神龍族をかたどった彫像が立てられ、その周りには噴水がある。
馬車は庭を抜けて宮殿入口の扉の前に止まる。
「何て大きな扉なの」
2階部分まである2枚扉。その横には衛兵が4人立ち扉を開ける。でも開いたのは下部分にある人が通れる程度の扉だった。
「その大きな扉はギアデス用の扉なんじゃよ。あいつの力じゃないと開けることはできぬよ」
先ほど戦った神龍様もこの宮殿に暮らしているのね。扉の中も天井が高くて神龍様が歩けるようになっている。
「ギアデスも一緒に話をしたいからな、こちらの部屋に来てくれ」
中央の通路の奥に入口と同じ様な大きな扉のある部屋がある。中に入ると先に帰っていた神龍様が椅子に座って待っていた。
「遅かったな。あんたらの席も用意した。そこに座ってくれ」
女王陛下が座った前に膝を突き、セイランが将軍様より預かった書状を両手で差し出す。
「我が将軍よりの書状、お受け取り下され」
馬車の中から付いて来た側近の女性が書状を受け取り、女王陛下に手渡す。
「セイランよ、ここはギアデスの個室じゃ。先ほどの詫びも兼ねてそなたらを招いておる。そう硬くならずとも良い」
「そうだぞ。俺とまともに戦える奴はこの国にもそうはいない。友として接してくれんか」
「であれば、お言葉に甘えて失礼仕る」
セイランはテーブルを挟んだ反対側に用意された席に座り、私の事を紹介してもらい、私も横の席に着いた。
「書状の事については、他の者とも相談して返事をするが、今日はおぬしの事が聞きたい。ここまでどのように旅してきたのじゃ」
陛下は手にした書状をざっと読んで側近に渡して、側近を下がらせた。
テーブルに用意されたお茶を飲みながら、私達はここに来るまでの旅の話をする。
「なるほど。村を渡ってここに来たのも偶然ではないと」
「それよりもセイラン。お前の持っている刀はどうやって手に入れたんだ。鬼人族で俺の体を斬れる刀を打てるとは思えんのだが」
「王国に住まわれている、剣の師と仰ぐお方に加工していただいた。魔剣、水紋刀に御座る」
「もしかすると、その者はミカセ家の者か?」
「ゲンブ殿をご存じか」
セイランが王国で出会ったと言う剣豪の方。この神龍様も知っている程の方なのかしら。
「ゲンブという者は知らぬが、昔、130年程前か……。ここにミカセ家の者が訪れた事がある。俺は戦いを挑み剣で斬られた。頬の傷と肩の傷はその時の物。剣で斬られたのは、それ以来お前で2人目だ」
「その話は父上から聞いた事があるぞ、ギアデス。お前コテンパンにやられたそうだな」
「いや、あの頃は俺も若かったしな。相手の力量も分からず3人まとめて相手をしちまってな」
「剣士に魔術師に弓使い。それぞれが一流の達人達と聞いたぞ。神龍族を負かす者がこの世に居るとは驚きだと父上も言っておられたな」
この人達は笑って話しているけど、神龍族が負けたの? そんな化け物じみた人がいるなんて信じられないわ。
「そのお方が、ミカセ家の方々だと」
「ああ、その頃は共和国に住んでいると言っていたな。キイエも一緒にいたが、セイランは知っているか」
「キイエ殿には、拙者もお世話になっておりました」
「そうか、あいつは元気にしていたか。だがあいつはずるい奴でな、この大陸は俺が先に発見したんだが、あいつが発見者という事になっている」
130年前に来たミカセ家の方々と一緒にいたなら、そういう事になるわね。
「ギアデス様はどうのようにして、この大陸に渡って来られたのですか」
「俺はな大きな丸太を足で持って海を渡って来たんだ。夜眠るときは、その丸太を海に浮かべてその上で眠る」
「そんなご苦労をされて、ここまで来たのですね」
「ああ、そうだ。眠っている時に海の魔物に襲われた事が何度もある。この大陸に来る頃には、丸太も破壊されてずっと飛び続けてやっと陸地に着けたんだぞ」
「疲れ果てて、森にいたお前を父上らが見つけて保護したという訳じゃな」
「最初、頭に直接話しかけてくる奴がいてびっくりしたが、水や食料をもらい怪我の治療もしてくれたからな。それ以来俺はここに住み続けている」
ドリュアス族は心優しい人が多いのね。もし私の国だったら弱った魔獣として退治していたかもしれないわ。
「なのにキイエの野郎は船に乗って、楽してこの大陸に来やがったんだぞ」
当時は、あるかどうかも分からない大陸を目指しての船の旅。その人達は冒険者と名乗ったそうだ。竜神様も船でやって来た人もすごい冒険をして、この大陸へとやって来た。
ただ海の向こうに何があるのか知りたいという思いから、旅立ったとギアデス様はいう。船で来た冒険者も同じだろう。
広い世界の事を知りたいと、セイランも言っていたわね。自分の国の事しか知らない私はなんて小さな存在なのだろう。
「この国も海を渡って来られたミカセ家のお陰で発展できた。そのイヤリングや塔の上の通信機もミカセ家の方々に作ってもらった物。海洋族の方々とも親密になれた。感謝しておるよ」
その人達のお陰で我が国も発展できたと将軍様も言ったという。そんなすごい家の人とセイランは知り合いだったのね。
「セイランよ。またお前の話を聞きたい。しばらくはここに滞在するがよい。客人としてもてなそう」
女王陛下にそう言ってもらって、私達は宮殿の客室に泊まる事になった。
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