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第3章
第70話 帝国貴族5
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調べていくうちに隣りのリストス家とその向こうのヘブンズ家とで外国の武器を密輸しているのが分かってきた。
そしてついに、リストス家とヘブンズ家が連合して武力侵攻してきた。私達が調査しているのを察知したのか、最初からの計画なのか分からないけど、侵攻は早く2つの町が陥落した。
「お義父様。こんなことが許されるのですか!」
「ここは王都から遠く離れた辺境。後からいくらでも揉み消せると思っているのだろう」
「父上、それにしても侵攻が早い。民主連邦国から戦車を密輸しているのは本当の事のようですね」
町には頑丈な城壁と城門がある。それをあっさり突破している。住民を避難させる暇も無かった。相当な戦力だわ。
「今、隣町から戦力になる人と武器をここに運んでいる。次の戦場はここになるだろう。フロレアは子供を連れて避難しなさい」
「いいえ、わたくしもここで戦います。魔術の心得はあります。戦うのは貴族として当然です」
こんな時に戦わずして何が貴族だ。この町と家族は私が守る。子供だけはお義母様に預けて避難してもらい、それと入れ替わりに隣町から応援が来てくれた。
この執務室で作戦会議を開く。
「相手は戦車で攻めてくるだろう。城門は役に立たないと思ってくれ」
籠城することは不可能だ。攻めてきたら、それに対抗する他ない。お義父様が各部隊の隊長を前に指示を出す。
「城壁の端から魔法による遠隔攻撃を行う。敵が接近して来たら騎馬による攻撃を行ってくれ。相手は素早いだろうが騎馬なら渡り合えるだろう」
各部隊に配置についてもらう。
「お義父様。王都に救援要請は出されたのですか」
「出してはいるが、王都には届かない可能性が高い。街道は既にリストス家によって閉鎖されている」
2つのルートで使いを出したそうだけど、連絡は途絶えたままだと言う。
ミカシェルも王都を当てにしない方がいいと言う。
「今から軍を準備してこちらに派遣したとしても1週間以上かかるだろう。フロレア。いざとなったら君だけでも逃げてくれ」
「それはできません。私は最期まであなたの傍にいます」
既に覚悟はできている。私が生きるのはこの場所だけなのだから。
翌朝。町から離れた平原に部隊が集結しているのが確認された。
「あれは確かに民主連邦国の戦車ですわね。それを5輌も用意するなんて」
昔、商社が民主連邦国の武器を売り込みに来た時に、戦車を間近に見たことがある。鉄の塊が高速で走り回るのを見て恐怖を感じたことを覚えている。
「あの戦車を近づけてはだめです」
城壁には私を含め魔術師部隊が配置につき、敵部隊が侵攻を開始した。作戦通りまずは魔法で敵の足を止める。
戦車の砲撃は城壁まで届いていない。戦車は後部の蒸気機関部かキャタピラーを壊せば動けなくなる。しかしこの距離では狙いを付ける事はできない。足止めが精一杯だ。
魔力切れの者も出てきた。城門から騎馬部隊が出てかく乱してくれるけど、敵も弓と魔弾銃で対抗してくる。そして戦車の砲撃が城壁に届きだした。大きな爆発音と共に城壁の岩が崩れる。穴は開いていないけど、これが続けば城壁は崩れるだろう。
「私が頑張らないと」
中級魔法を戦車にぶつける。一時戦車は下がるけど破損はしていない。こちらの魔術師は半数が魔力切れになっている。平原の騎馬も倒れているのが見える。
「もうこれ以上は支えきれないかもしれない……」
そう思った時、大きな影が私を飛び越し敵部隊に向かって行く。敵戦車部隊と騎馬隊の中間に白い光の柱が立ち上がったと思った瞬間、炎の壁が広がり業火で敵部隊が囲まれる。
「なにが起こったの!」
その影が走り去った遥か上空を見ると、そこにはドラゴンが悠々と飛んでいた。そしてまた1体のドラゴンが高速で城壁のすぐ上を越えて敵に向かっている。そこには人が乗っているのが見えた。ドラゴンが口から炎を吐き、乗っている魔術師が戦車の蒸気機関を破壊し動きを止める。
上空高く飛んでいたもう1体のドラゴンも降りてきて、戦車を足で掴みひっくり返した。その後も巨大な岩魔法や何枚もの土の壁で戦場を分断する。ドラゴンの咆哮と連発される大魔法。まるで伝説にある戦いを目の前で見ているようだわ。
先の大戦で大陸最強と言われた帝国は、4体のドラコンと3人の魔女に囲まれて滅亡の淵まで追いやられた。そのドラゴンが2体、それとドラゴンに乗った魔女。
凄まじい戦闘力で、戦車は全て破壊され、あれだけ苦労した敵部隊が敗走していく。敵を退けたドラゴンが城門の前に降り立ち、大きなドラゴンに乗っていた女の子が降りてきた。
「私達は何でも屋です。ケルフェス侯爵からの依頼でここまで来ました。中に入れてもらえますか」
「何でも屋?」
疑問に思いながらも、この人達とドラゴンを町に入れる。近くで見るドラゴンは大きく、その眼光は鋭い。
でもこの人達はメアリィの何でも屋の店長と従業員だと言っている。人族の男の子とさっき大魔法を放った魔術師が後について来る。
何はともあれ、お義父様の所に連れて行き事情を説明してもらおう。
「私は王都で何でも屋を経営しているメアリィと言います。ケルフェス侯爵から、この地区に武力侵攻する者がいるかもしれないので、救援に向かって欲しいと依頼されて来ました」
預かってきた書状だと言ってお義父様に手紙を手渡す。
私達はケルフェス侯爵に直接の面識はないけれど、元帝国貴族の伯爵との繋がりがあると聞いている。
でも、到着が早すぎるわ。王都に出した救援要請が届くとしても早くて2日後。その前に独自で武力侵攻がある事を掴んでこの人達を派遣したことになる。
「間に合って良かったです。明日には王都から飛行機で監察官が到着する予定ですので、飛行場を使えるようにして欲しいと王都軍から言われています」
「あのドラゴンは王都軍のドラゴンかね」
「いいえ、キイエ様は私の従業員の使役魔獣です。もう一体も臨時従業員のドラゴンなんですよ」
そういえば人族が二人いたわね。ドラゴンは人族と共にある、絶対人族に手を出してはいけないと帝国のお父様が言っていたわ。この若いヤマネコ族の店長はその二人を従える人だと言うの。
「この後に王都軍が派遣されるかは聞いていません。その前に動きの早い私達が出向くことになっていますので。軍からは町へ侵攻している反乱勢力があれば、無力化するようにと指示をもらっています」
余程、軍から厚い信頼を得ているようね。ドラゴンの居る何でも屋。小さな国なら滅ぼすこともできるんじゃないかと思える戦力を持つ店が、王都にあるなんて知らなかったわ。
翌日。王都から監察官が来てお義父様が事情を話すと、何でも屋と一緒に占領された町へ行き開放してくれた。町に残っていた敵の戦力は少なかったそうだけど、あのドラゴンを見れば戦いを挑むことはないでしょう。
「ありがとう、君達のお陰でこの町は救われた」
「いえ、いえ。私達は依頼されて来ただけですから。王都での仕事も残ってますので私達は先に帰らせてもらいますね」
その5日後、軍用列車に乗って王国軍が来てくれた。リストス家とヘブンズ家が管轄する町に入って、抵抗を受けたようだけど上手く平定してくれたようだわ。
手配してくれたケルフェス侯爵とアリントン伯爵には感謝を申し上げないと。それとあの何でも屋にも。祖国を襲ったと言うドラゴンに今度は私が助けられる事になるなんて思ってもいなかったわ。
でもまたこれで、愛する夫と子供に囲まれて平穏に暮らしてゆける。
ここは私の第二の故郷。幸せをかみしめ私はいつまでもこの地で生きていくだろう。
そしてついに、リストス家とヘブンズ家が連合して武力侵攻してきた。私達が調査しているのを察知したのか、最初からの計画なのか分からないけど、侵攻は早く2つの町が陥落した。
「お義父様。こんなことが許されるのですか!」
「ここは王都から遠く離れた辺境。後からいくらでも揉み消せると思っているのだろう」
「父上、それにしても侵攻が早い。民主連邦国から戦車を密輸しているのは本当の事のようですね」
町には頑丈な城壁と城門がある。それをあっさり突破している。住民を避難させる暇も無かった。相当な戦力だわ。
「今、隣町から戦力になる人と武器をここに運んでいる。次の戦場はここになるだろう。フロレアは子供を連れて避難しなさい」
「いいえ、わたくしもここで戦います。魔術の心得はあります。戦うのは貴族として当然です」
こんな時に戦わずして何が貴族だ。この町と家族は私が守る。子供だけはお義母様に預けて避難してもらい、それと入れ替わりに隣町から応援が来てくれた。
この執務室で作戦会議を開く。
「相手は戦車で攻めてくるだろう。城門は役に立たないと思ってくれ」
籠城することは不可能だ。攻めてきたら、それに対抗する他ない。お義父様が各部隊の隊長を前に指示を出す。
「城壁の端から魔法による遠隔攻撃を行う。敵が接近して来たら騎馬による攻撃を行ってくれ。相手は素早いだろうが騎馬なら渡り合えるだろう」
各部隊に配置についてもらう。
「お義父様。王都に救援要請は出されたのですか」
「出してはいるが、王都には届かない可能性が高い。街道は既にリストス家によって閉鎖されている」
2つのルートで使いを出したそうだけど、連絡は途絶えたままだと言う。
ミカシェルも王都を当てにしない方がいいと言う。
「今から軍を準備してこちらに派遣したとしても1週間以上かかるだろう。フロレア。いざとなったら君だけでも逃げてくれ」
「それはできません。私は最期まであなたの傍にいます」
既に覚悟はできている。私が生きるのはこの場所だけなのだから。
翌朝。町から離れた平原に部隊が集結しているのが確認された。
「あれは確かに民主連邦国の戦車ですわね。それを5輌も用意するなんて」
昔、商社が民主連邦国の武器を売り込みに来た時に、戦車を間近に見たことがある。鉄の塊が高速で走り回るのを見て恐怖を感じたことを覚えている。
「あの戦車を近づけてはだめです」
城壁には私を含め魔術師部隊が配置につき、敵部隊が侵攻を開始した。作戦通りまずは魔法で敵の足を止める。
戦車の砲撃は城壁まで届いていない。戦車は後部の蒸気機関部かキャタピラーを壊せば動けなくなる。しかしこの距離では狙いを付ける事はできない。足止めが精一杯だ。
魔力切れの者も出てきた。城門から騎馬部隊が出てかく乱してくれるけど、敵も弓と魔弾銃で対抗してくる。そして戦車の砲撃が城壁に届きだした。大きな爆発音と共に城壁の岩が崩れる。穴は開いていないけど、これが続けば城壁は崩れるだろう。
「私が頑張らないと」
中級魔法を戦車にぶつける。一時戦車は下がるけど破損はしていない。こちらの魔術師は半数が魔力切れになっている。平原の騎馬も倒れているのが見える。
「もうこれ以上は支えきれないかもしれない……」
そう思った時、大きな影が私を飛び越し敵部隊に向かって行く。敵戦車部隊と騎馬隊の中間に白い光の柱が立ち上がったと思った瞬間、炎の壁が広がり業火で敵部隊が囲まれる。
「なにが起こったの!」
その影が走り去った遥か上空を見ると、そこにはドラゴンが悠々と飛んでいた。そしてまた1体のドラゴンが高速で城壁のすぐ上を越えて敵に向かっている。そこには人が乗っているのが見えた。ドラゴンが口から炎を吐き、乗っている魔術師が戦車の蒸気機関を破壊し動きを止める。
上空高く飛んでいたもう1体のドラゴンも降りてきて、戦車を足で掴みひっくり返した。その後も巨大な岩魔法や何枚もの土の壁で戦場を分断する。ドラゴンの咆哮と連発される大魔法。まるで伝説にある戦いを目の前で見ているようだわ。
先の大戦で大陸最強と言われた帝国は、4体のドラコンと3人の魔女に囲まれて滅亡の淵まで追いやられた。そのドラゴンが2体、それとドラゴンに乗った魔女。
凄まじい戦闘力で、戦車は全て破壊され、あれだけ苦労した敵部隊が敗走していく。敵を退けたドラゴンが城門の前に降り立ち、大きなドラゴンに乗っていた女の子が降りてきた。
「私達は何でも屋です。ケルフェス侯爵からの依頼でここまで来ました。中に入れてもらえますか」
「何でも屋?」
疑問に思いながらも、この人達とドラゴンを町に入れる。近くで見るドラゴンは大きく、その眼光は鋭い。
でもこの人達はメアリィの何でも屋の店長と従業員だと言っている。人族の男の子とさっき大魔法を放った魔術師が後について来る。
何はともあれ、お義父様の所に連れて行き事情を説明してもらおう。
「私は王都で何でも屋を経営しているメアリィと言います。ケルフェス侯爵から、この地区に武力侵攻する者がいるかもしれないので、救援に向かって欲しいと依頼されて来ました」
預かってきた書状だと言ってお義父様に手紙を手渡す。
私達はケルフェス侯爵に直接の面識はないけれど、元帝国貴族の伯爵との繋がりがあると聞いている。
でも、到着が早すぎるわ。王都に出した救援要請が届くとしても早くて2日後。その前に独自で武力侵攻がある事を掴んでこの人達を派遣したことになる。
「間に合って良かったです。明日には王都から飛行機で監察官が到着する予定ですので、飛行場を使えるようにして欲しいと王都軍から言われています」
「あのドラゴンは王都軍のドラゴンかね」
「いいえ、キイエ様は私の従業員の使役魔獣です。もう一体も臨時従業員のドラゴンなんですよ」
そういえば人族が二人いたわね。ドラゴンは人族と共にある、絶対人族に手を出してはいけないと帝国のお父様が言っていたわ。この若いヤマネコ族の店長はその二人を従える人だと言うの。
「この後に王都軍が派遣されるかは聞いていません。その前に動きの早い私達が出向くことになっていますので。軍からは町へ侵攻している反乱勢力があれば、無力化するようにと指示をもらっています」
余程、軍から厚い信頼を得ているようね。ドラゴンの居る何でも屋。小さな国なら滅ぼすこともできるんじゃないかと思える戦力を持つ店が、王都にあるなんて知らなかったわ。
翌日。王都から監察官が来てお義父様が事情を話すと、何でも屋と一緒に占領された町へ行き開放してくれた。町に残っていた敵の戦力は少なかったそうだけど、あのドラゴンを見れば戦いを挑むことはないでしょう。
「ありがとう、君達のお陰でこの町は救われた」
「いえ、いえ。私達は依頼されて来ただけですから。王都での仕事も残ってますので私達は先に帰らせてもらいますね」
その5日後、軍用列車に乗って王国軍が来てくれた。リストス家とヘブンズ家が管轄する町に入って、抵抗を受けたようだけど上手く平定してくれたようだわ。
手配してくれたケルフェス侯爵とアリントン伯爵には感謝を申し上げないと。それとあの何でも屋にも。祖国を襲ったと言うドラゴンに今度は私が助けられる事になるなんて思ってもいなかったわ。
でもまたこれで、愛する夫と子供に囲まれて平穏に暮らしてゆける。
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