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第3章

第65話 新人の魔獣討伐

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 今日から2チームによる初めての討伐。前衛のベテランさんも来てくれた。

「この人が、あなた達の班のリーダーになるヨハノスさんよ。旅馬車の護衛をしていたベテランの方よ」

「よろしくお願いします。自分はロアクロです。兵士の見習いをしていました」

「私はムルームよ、よろしく。魔術師関係の仕事を転々としていたの。中級魔法なら使えるわ」

「俺は1日だけここで働いた事がある。今日は店長に言われてこのチームで働けるか確かめに来た」

 軍用列車に乗り、討伐地区へと向かうその中で全体の陣形などを説明して、後はこのチームに任せる。

「私達が横について危なくなる前に助けに入るわ。初めてのメンバーで連携は取れないでしょうけど、怪我をしないように自分の力を発揮してちょうだい」

 チーム内の事はヨハノスに一任する。

「この店長さん達は強い。後ろにはドラゴンも控えている。冷静に戦う事を意識してくれればいい」

「このお店に来て、私はまだ見たことはないけど本当にドラゴンがいるのね。それなら安心ね」

「自分もドラゴンを間近で見れるなんて楽しみです」

 軍用列車が現地に到着した。ユイトとイズホさんはキイエ様達と先に飛んできて近くにいるわね。

「さあ、ここが私達の担当区域よ。右手をヨハノスのチームに任せるわね。ヨハノス、これを耳に装着してくれるかしら」

「これは、何だ?」

「インカムと言って、遠くにいても私達の声が聞こえるのよ。話す時はここを押してしゃべってくれればいいわ」

 イズホさんがシャウラ村から戻って来た時に、ユイトのお父さんからだと言って魔力波による通信機を持ってきてくれた。口元と耳に小さなデンデン貝が付いている物で、王都軍でも使っているそうだけど発明者特権で5周波分を自由に使えるそうだ。

 私とミルチナが装着して状況を伝えるようにする。ユイトの機動甲冑には既に内蔵されていて、私の周波数56に合わせてもらっている。

「みんな聞こえるかしら。ユイトは待機。右の大イノシシ2頭から倒しましょう。ヨハノス、頼んだわよ」

「了解した」

「メアリィ。お姉ちゃんがトカゲの魔獣を見つけたって。ボク達そっちに行ってもいいかな」

「ミルチナ。見えてる?」

「はい、見えてます。草原に近い所を6匹ほどが歩いていますね」

「じゃあ、ユイトはそっちをお願い。ヨハノス達が危なくなったら呼ぶから、その時は助けに行ってあげてね」

「うん、分かったよ」

 ユイトはイズホさんに「さっさと行け!」と蹴られながら草原の方に向かった。私がここにいればどちらにも対応できるわ。ヨハノスのチームは1頭の大イノシシを倒したみたいね。後1頭もすぐに倒せそうだわ。

 しばらくして、ヨハノス達が2頭の大イノシシを引きずって帰って来た。

「ミルチナに解体してもらうから、監視をムルームさん、お願いできるできるかしら」

 ここで解体するのかと兵士見習いだったロアクロ君が驚いていたけど、その方が高く売れるのよ。ロアクロ君とヨハノスにも解体を手伝ってもらう。
監視は後方の者がするから、魔術師のムルームさんも担当することがあるだろう。私が教えながら森の監視をしてもらう。

「あそこの森の奥に大蛇の魔獣がいますわ」

 ムルームさんが見つけてくれたようね。でもヘビの魔獣は厄介だわ。巻きつかれると骨が折れてしまう。

 ユイト達も帰って来て、どうするかイズホさんと相談する。

「それならユイトを前面に立たせればよいじゃろう。巻きついたところを剣でスパッと斬れば良い」

 ユイトを囮に使って、大蛇のクビ近くを剣で斬ればいいと言う。
ユイトも了解してくれたし、その作戦でいこう。

 森近くの平原にヨハノスとロアクロ君に隠れて待ち伏せしてもらう。その後方に私達が陣取る。
ユイトは大蛇のいる森の中へと一人入って行った。

「うわっ、ヘビが絡みついてきたよ~」

 通信機から情けない声が聞こえる。

「そのまま平原まで出てきなさい!」

 大蛇に巻き付かれて、口からの炎攻撃を受けながらユイトの機動甲冑が後退してきた。

「今よ!」

 平原に隠れていたヨハノスとロアクロ君が左右から同時に斬りつける。大蛇はユイトの鎧を締め付ける事に集中していたのか一撃で首をはねられ絶命した。

「お姉ちゃん、怖かったよ~」

「何を言っておる。そのようなでかい鎧を着ておると言うのに。ミルチナよ、その大蛇のキモは取っておくようにな。良い薬になるから高く売れるぞ」

 その後も狼の群れを討伐して今日の仕事は終了した。倒した魔獣はいつもの解体屋さんに行って買い取ってもらう。店主は新鮮な大イノシシの肉が手に入ったと喜んでいる。

「今日はみんなありがとう。これはあなた達が倒した大イノシシのお肉よ。美味しいから家で焼いて食べてね」

 お土産のお肉を渡してヨハノス達には帰ってもらった。私達も夕食にしましょう。やっぱりこのお肉は美味しいわね。


 翌日。ヨハノスがお店にやって来てくれた。

「メアリィ店長。俺をここで社員として雇ってくれ」

「仕事を続けてくれる決心をしてくれたのね」

「ああ、昨日のあのメンバーなら俺もやっていけそうだ。それに妻と子供から、あの美味しい肉をまた持って帰ってくれと頼まれてしまってな」

 そりゃ、高級料理店に卸すようなお肉ですもの。でもヨハノスが社員になってくれて良かったわ。これで今後は2チーム体制で仕事をこなしていけるわね。
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