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第2章
第47話 帰宅
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その日はユイトの家に泊めてもらう。討伐した魔獣の解体処理をしていたミルチナとユイトも帰って来た。
「ミルチナ、お疲れ様。あれだけの数の魔獣を解体処理するの大変だったでしょう」
「村の皆さん、ナイフ捌きが早くてもうびっくりですよ。ユイトさんのナイフの扱いが上手くなるのも頷けますね。いい勉強になりました」
料理人であるミルチナから見ても、この村で普通に生活している人達の食材の扱いは最高だったと絶賛している。貸してもらったナイフも切れ味が良くてびっくりしたと言っていた。
「ミルチナさんは料理人だったのね。解体お上手だったわよ」
一緒に解体作業していたユイトのお母さんもほめていた。
「そうだわ。ミルチナさんには解体を手伝ってくれたお礼に料理用のナイフをプレゼントしましょう。腕のいい職人がこの村にいるのよ」
「えっ! いいんですか」
ミルチナはあの切れ味のいいナイフがもらえるとすごく喜んでいる。
ユイトも私達のいる居間にやって来たわ。
「今父さん達がお風呂に入ってるからその後、メアリィ達が先に入ってよ」
そう、それなら食事前に順番にオフロをいただきましょうか。今日は色んなものを見て精神的に疲れたわ。それにしてもこのオフロというのは癖になるわね。
オフロから上がって部屋でのんびりしていると、セシルさんが食事の用意ができたと呼びに来てくれた。
今日の討伐で狩った、魔獣の肉料理をごちそうになる。食事をしながらユイトのお母さんが、私達にお願いがあると言ってきた。
「メアリィさん。明日、王都に帰るんでしょう。すみませんが、ユイトの甲冑を一緒に運んでいただけないかしら」
ユイトが着ていた機動甲冑ね。予備の部品もあるそうで、全部合わせると大人3人分程の重さだという。そんな重い物、キイエ様に運べるかしら。
「お父さんが、エアバイクとカーゴを用意しているのよ。それに乗せて持って帰っていただきたいんです」
カーゴというのは初めて聞いたけど、エアカーのように浮き上がるけど自走できない荷車のような物らしい。エアバイク2台で引いて大人6人程度の重さの物を運べるそうだ。
「王都での仕事もあるだろうから、メアリィさん達には飛行機で先に帰ってもらってもいいんだが、ユイト一人を船に乗せるのはちょっと不安でな」
ユイトのお父さんも心配そうに言ってくる。
「帰りは船で帰るんですか?」
隣町のカイトス港からカーゴとエアバイクを荷物として、王都まで船で運ぶそうだ。丸2日で王都の港に着けるらしい。
「船に私達も乗って大丈夫なんですか? 海洋族は船に船員以外を乗せないって聞いていますよ」
定期の旅客船じゃないと人を運ばないはずだけど。
「俺達は海洋族とも交流があってな、乗ってもいい事になってるんだ。4人ぐらいなら貨物船でも乗せてくれる」
えっ! そうなの。王都の貴族でもそんなことできないと思うんだけど。私、船なんて初めてだわ。
「それほど日数も掛からないようですし、みんな一緒に帰れると言うなら、その方がいいですね」
「良かったなユイト。お前も一人だと不安だろう」
「父さん、ボクだって一人で帰れるよ」
「あら、ユイト。キイエ様もいないのに、港を降りて王都のお店までの道が分かるの?」
「あっ、いやそれは……。人に聞けばボクだって分かるさ」
ユイトには無理ね。お父さんが心配するのも分かる気がするわ。
「お店に甲冑を運んだ後、カーゴとエアバイクは送り返すんですか」
「いやいや、そのままメアリィさんの店で使ってくれ。バイクは中古だし、カーゴもあまり使ってないんでな」
そんな高価な物を私達で使ってもいいのかしら。遠慮しようかと思っていたらユイトのお母さんが言ってくれた。
「カーゴはね、お父さんが作ったんですけど、単独で走る事ができなくて誰も乗りたがらないのよ」
「いや、あれはだな。積載量を多くしようと思ってだな……」
「結局、エアバイク2台で引かないと速く走れないの。普通のエアカーより不便なのよ」
積める荷物も少し多くなるだけで、全体で使用する魔力量も多くなってしまって使いにくいらしい。でも私達に貸してくれると言うなら助かるわ。寝泊まりできて高速移動できるなんて、何でも屋としては都合がいいわ。
「貸していただけるなら助かります。ありがとうございます」
翌日のお昼前、港町に向かって出発する。エアバイクは私とユイトで運転して、カーゴにはセイランとミルチナ、それに機動甲冑を乗せる。
私はセシルさんから足に合わせて調整してもらったジェットブーツを受け取り、セイランもユイトのお父さんから刀をもらっていたわね。ミルチナもユイトのお母さんからプレゼントされた料理用のナイフを大事そうに持っていたわ。
「お世話になりました」
「メアリィさん、ユイトの事をお願いしますね」
「ユイト。しっかりと働くんだぞ」
「はい、父さん」
見送りに来てくれたユイトの家族の人達に手を振って別れる。シャウラ村に来てほんとに良かったわ。色んなことを教えてもらったし、エアバイクなども貸してもらえることになった。
なんだか不思議な村だったけど、また来てみたいわね。
私達はカリン街道を東に走って、カイトスの港町に到着した。
船は鐘5つに出港するようで、その前に手続きしてカーゴとバイクを預ける。船は大きな蒸気の輸送船、今も荷物の積み下ろしをしている。
船の受付でユイトがお父さんから預かった書類を海洋族の人に見せる。
「王都までこの車を運ぶんだね。貨物は銀貨80枚だが、人は……。少し待ってくれるかい。特別料金なんで調べてくるよ」
受付の人が、奥の事務所へと歩いて行った。
「ねえ、ユイト。船の運賃って、高いんじゃないの。少しなら私達も払うわよ」
「父さんから、お金はもらってるから大丈夫だよ」
シンシアが新婚旅行で船の旅をするのに1人金貨1枚すると言っていた。輸送船だから安いかもしれないけど、そんなに負担をかける訳にはいかない。
「君達の運賃は人族の人は無料だけど、お付きの人は1人銀貨20枚払ってもらう事になるね。もちろん食事付きだよ」
えっ、たったの20枚でいいの。しかもユイトは無料って、何なの。
「そ、それは、私が払います」
こんな安くていいのかとユイトに聞いたら、海洋族と人族との昔からの取り決めがあってこうなっているから大丈夫だと言われた。
「まだ、出港までには時間があるし、この港町でお土産でも買ったらどうかな」
「そうね。折角こんな遠くまで来たんだから、何か買っていきましょう」
ここも観光地みたいになっていて、お土産物屋が沢山並んでいた。お魚が美味しいらしい。日持ちする干物や船の中で食べる物を買っていく。ミルチナも何か珍しい海の魔獣の干物を買っていたわね。
船が出港する時刻に船に乗ると、船長さんが出迎えてくれた。
「ユイト殿と、他3名だね。船長のバジルと言う。王都までは約2日間、明後日の昼過ぎには到着する予定だ」
丁寧に挨拶してくれて、船室へと案内してくれた。
「私はまだ仕事があるので、これで失礼するよ。夕食は別の者に部屋まで運ばせるようにしよう。それまでゆっくりしていてくれたまえ」
ありがとうございますと言って、部屋に入って荷物を降ろす。船が動き出したようね。窓から港町が遠ざかって行く。
「あれ? ベッドが2つしかないわよ、この部屋」
「ほんとですね。たぶんユイトさんの部屋に2つベッドがあるんでしょうね」
えっ、誰かユイトと一緒に寝ないとダメなの? 船長さんはもういないし、どうしよう。
「それなら、あたしが今夜、ユイトさんの部屋で寝ますよ。村での魔獣の料理法などもっと聞きたいですし」
ミルチナ、ユイトと一緒でいいの?
「それなら、明日は拙者がユイト殿と一緒に寝よう。拙者もお父上の事など聞いてみたいからな」
セイランもそれでいいの? なんだか二人ともユイトと仲がいいのね。私はそんなの恥ずかしくて無理だわ、あのユイトと一緒に寝るだなんて。
2日後予定通り、王都の港町に到着できた。
ここから王都までは、列車で半日以上、馬車だと2日かかってしまう。片道2車線の大きな街道を2台のエアバイクでカーゴを引っ張りながら走る。
「やっぱりエアバイクだと速いわね」
半日も掛からないで王都に着けた。まだ明るい時間だ。
1週間程しか離れていないけど、なんだか懐かしい我が家に帰ってこれた。さあ、みんなで夕飯にして、また明日からお仕事頑張りましょう。
「ミルチナ、お疲れ様。あれだけの数の魔獣を解体処理するの大変だったでしょう」
「村の皆さん、ナイフ捌きが早くてもうびっくりですよ。ユイトさんのナイフの扱いが上手くなるのも頷けますね。いい勉強になりました」
料理人であるミルチナから見ても、この村で普通に生活している人達の食材の扱いは最高だったと絶賛している。貸してもらったナイフも切れ味が良くてびっくりしたと言っていた。
「ミルチナさんは料理人だったのね。解体お上手だったわよ」
一緒に解体作業していたユイトのお母さんもほめていた。
「そうだわ。ミルチナさんには解体を手伝ってくれたお礼に料理用のナイフをプレゼントしましょう。腕のいい職人がこの村にいるのよ」
「えっ! いいんですか」
ミルチナはあの切れ味のいいナイフがもらえるとすごく喜んでいる。
ユイトも私達のいる居間にやって来たわ。
「今父さん達がお風呂に入ってるからその後、メアリィ達が先に入ってよ」
そう、それなら食事前に順番にオフロをいただきましょうか。今日は色んなものを見て精神的に疲れたわ。それにしてもこのオフロというのは癖になるわね。
オフロから上がって部屋でのんびりしていると、セシルさんが食事の用意ができたと呼びに来てくれた。
今日の討伐で狩った、魔獣の肉料理をごちそうになる。食事をしながらユイトのお母さんが、私達にお願いがあると言ってきた。
「メアリィさん。明日、王都に帰るんでしょう。すみませんが、ユイトの甲冑を一緒に運んでいただけないかしら」
ユイトが着ていた機動甲冑ね。予備の部品もあるそうで、全部合わせると大人3人分程の重さだという。そんな重い物、キイエ様に運べるかしら。
「お父さんが、エアバイクとカーゴを用意しているのよ。それに乗せて持って帰っていただきたいんです」
カーゴというのは初めて聞いたけど、エアカーのように浮き上がるけど自走できない荷車のような物らしい。エアバイク2台で引いて大人6人程度の重さの物を運べるそうだ。
「王都での仕事もあるだろうから、メアリィさん達には飛行機で先に帰ってもらってもいいんだが、ユイト一人を船に乗せるのはちょっと不安でな」
ユイトのお父さんも心配そうに言ってくる。
「帰りは船で帰るんですか?」
隣町のカイトス港からカーゴとエアバイクを荷物として、王都まで船で運ぶそうだ。丸2日で王都の港に着けるらしい。
「船に私達も乗って大丈夫なんですか? 海洋族は船に船員以外を乗せないって聞いていますよ」
定期の旅客船じゃないと人を運ばないはずだけど。
「俺達は海洋族とも交流があってな、乗ってもいい事になってるんだ。4人ぐらいなら貨物船でも乗せてくれる」
えっ! そうなの。王都の貴族でもそんなことできないと思うんだけど。私、船なんて初めてだわ。
「それほど日数も掛からないようですし、みんな一緒に帰れると言うなら、その方がいいですね」
「良かったなユイト。お前も一人だと不安だろう」
「父さん、ボクだって一人で帰れるよ」
「あら、ユイト。キイエ様もいないのに、港を降りて王都のお店までの道が分かるの?」
「あっ、いやそれは……。人に聞けばボクだって分かるさ」
ユイトには無理ね。お父さんが心配するのも分かる気がするわ。
「お店に甲冑を運んだ後、カーゴとエアバイクは送り返すんですか」
「いやいや、そのままメアリィさんの店で使ってくれ。バイクは中古だし、カーゴもあまり使ってないんでな」
そんな高価な物を私達で使ってもいいのかしら。遠慮しようかと思っていたらユイトのお母さんが言ってくれた。
「カーゴはね、お父さんが作ったんですけど、単独で走る事ができなくて誰も乗りたがらないのよ」
「いや、あれはだな。積載量を多くしようと思ってだな……」
「結局、エアバイク2台で引かないと速く走れないの。普通のエアカーより不便なのよ」
積める荷物も少し多くなるだけで、全体で使用する魔力量も多くなってしまって使いにくいらしい。でも私達に貸してくれると言うなら助かるわ。寝泊まりできて高速移動できるなんて、何でも屋としては都合がいいわ。
「貸していただけるなら助かります。ありがとうございます」
翌日のお昼前、港町に向かって出発する。エアバイクは私とユイトで運転して、カーゴにはセイランとミルチナ、それに機動甲冑を乗せる。
私はセシルさんから足に合わせて調整してもらったジェットブーツを受け取り、セイランもユイトのお父さんから刀をもらっていたわね。ミルチナもユイトのお母さんからプレゼントされた料理用のナイフを大事そうに持っていたわ。
「お世話になりました」
「メアリィさん、ユイトの事をお願いしますね」
「ユイト。しっかりと働くんだぞ」
「はい、父さん」
見送りに来てくれたユイトの家族の人達に手を振って別れる。シャウラ村に来てほんとに良かったわ。色んなことを教えてもらったし、エアバイクなども貸してもらえることになった。
なんだか不思議な村だったけど、また来てみたいわね。
私達はカリン街道を東に走って、カイトスの港町に到着した。
船は鐘5つに出港するようで、その前に手続きしてカーゴとバイクを預ける。船は大きな蒸気の輸送船、今も荷物の積み下ろしをしている。
船の受付でユイトがお父さんから預かった書類を海洋族の人に見せる。
「王都までこの車を運ぶんだね。貨物は銀貨80枚だが、人は……。少し待ってくれるかい。特別料金なんで調べてくるよ」
受付の人が、奥の事務所へと歩いて行った。
「ねえ、ユイト。船の運賃って、高いんじゃないの。少しなら私達も払うわよ」
「父さんから、お金はもらってるから大丈夫だよ」
シンシアが新婚旅行で船の旅をするのに1人金貨1枚すると言っていた。輸送船だから安いかもしれないけど、そんなに負担をかける訳にはいかない。
「君達の運賃は人族の人は無料だけど、お付きの人は1人銀貨20枚払ってもらう事になるね。もちろん食事付きだよ」
えっ、たったの20枚でいいの。しかもユイトは無料って、何なの。
「そ、それは、私が払います」
こんな安くていいのかとユイトに聞いたら、海洋族と人族との昔からの取り決めがあってこうなっているから大丈夫だと言われた。
「まだ、出港までには時間があるし、この港町でお土産でも買ったらどうかな」
「そうね。折角こんな遠くまで来たんだから、何か買っていきましょう」
ここも観光地みたいになっていて、お土産物屋が沢山並んでいた。お魚が美味しいらしい。日持ちする干物や船の中で食べる物を買っていく。ミルチナも何か珍しい海の魔獣の干物を買っていたわね。
船が出港する時刻に船に乗ると、船長さんが出迎えてくれた。
「ユイト殿と、他3名だね。船長のバジルと言う。王都までは約2日間、明後日の昼過ぎには到着する予定だ」
丁寧に挨拶してくれて、船室へと案内してくれた。
「私はまだ仕事があるので、これで失礼するよ。夕食は別の者に部屋まで運ばせるようにしよう。それまでゆっくりしていてくれたまえ」
ありがとうございますと言って、部屋に入って荷物を降ろす。船が動き出したようね。窓から港町が遠ざかって行く。
「あれ? ベッドが2つしかないわよ、この部屋」
「ほんとですね。たぶんユイトさんの部屋に2つベッドがあるんでしょうね」
えっ、誰かユイトと一緒に寝ないとダメなの? 船長さんはもういないし、どうしよう。
「それなら、あたしが今夜、ユイトさんの部屋で寝ますよ。村での魔獣の料理法などもっと聞きたいですし」
ミルチナ、ユイトと一緒でいいの?
「それなら、明日は拙者がユイト殿と一緒に寝よう。拙者もお父上の事など聞いてみたいからな」
セイランもそれでいいの? なんだか二人ともユイトと仲がいいのね。私はそんなの恥ずかしくて無理だわ、あのユイトと一緒に寝るだなんて。
2日後予定通り、王都の港町に到着できた。
ここから王都までは、列車で半日以上、馬車だと2日かかってしまう。片道2車線の大きな街道を2台のエアバイクでカーゴを引っ張りながら走る。
「やっぱりエアバイクだと速いわね」
半日も掛からないで王都に着けた。まだ明るい時間だ。
1週間程しか離れていないけど、なんだか懐かしい我が家に帰ってこれた。さあ、みんなで夕飯にして、また明日からお仕事頑張りましょう。
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