ドラゴンの居る、何でも屋。~目指せ遥かなるスローライフ!~

水瀬 とろん

文字の大きさ
上 下
28 / 101
第2章

第28話 隣町の魔獣討伐

しおりを挟む
「やあ、メアリィ店長。おはよう」

 昨日、魔道具店で会ったグランだ。遠見の魔道具を見せるのは1週間後って言ったのに、朝からこの店に来て何の用なのかしら。

「君達の何でも屋が今日からの討伐に参加するって聞いて。俺をここで働かせてれないかと思って来たんだ」

「働くって、あんた軍の仕事は?」

「いやあ、俺の隊も今回の討伐で隣町に行くんだ。それならこっちで働いても同じだからな。実戦で遠見の魔道具を使ってみたくて来ちまった。いいかな?」

「その、格好なら、グランも魔獣との戦闘ができるのよね」

「ああ、軍で鍛えられているからな」

 各パーツが別々になった身軽な鎧に、大きな剣。これから行く北の隣町への2泊3日の魔獣討伐には役に立ちそうね。給金は軍からもらえるんだから、私のところではタダ働きでもいいという事ね。

「それじゃ、頼むわ。ユイト、昨日言っていたのはこの人なの。あなたの遠見の魔道具を貸してあげてくれる」

「ええ、いいですよ。一緒に戦ってくれるんですよね。それなら使ってください」

「ありがとよ。俺は剣も魔法も使える。戦闘方法などの打ち合わせは軍用列車でしようか。もう出るんだろう」

「そうね、じゃあ行きましょうか。シンシア、後はお願いね」

 私達、4人と一緒に列車に乗り込み彼が事情を話す。

「……という訳で、遠見の魔道具見たさにこちらに来たという訳さ。俺の事はグランと呼んでくれ」

「魔法が使えるなら、メアリィと同じ後衛と言う事でいいのかな」

「メアリィ店長が後衛なら、俺はその前、ユイトとセイランの後ろの位置につく。臨機応変に対応する感じだな」

 それなりの魔法が使えて、剣も使えるならその方がいいわね。北の町まで列車で半日、昼過ぎに到着して私たちはすぐに魔獣討伐の任にあたる事になる。

「ミルチナはここで魔獣の監視、見つけ次第ユイト達が前に出るわ。グランもこの魔道具で監視をしてくれる」

 ユイトの遠見の魔道具をグランに貸して森を見てもらう。

「うぉ~。流石最高級品だけの事はあるな。こんなにはっきりと見えるとは」

 魔の森を眺めていたグランが感嘆の声を上げる。
ミルチナには私の魔道具を渡そうとしたけど、グランが持って来た物の方が性能はいいらしい。その少し大きめの遠見の魔道具をミルチナに渡す。

「ユイトさんの魔道具ほどじゃないですけど、グランさんの持ってきた魔道具も良く見えてますよ」

 それなりの品なのだろう、これならミルチナもしっかりと監視ができそうね。
早速森周辺にいる魔獣を発見して戦闘態勢に入る。私が魔獣に魔法を撃ちこみ平原へと追いやる。

 ユイトとセイランが前に出て魔弾銃で魔獣の数を減らす。グランの魔法攻撃も威力があるわね。前衛の位置に来る前に相当数倒せているじゃない。これだと私の出る幕はないわね。

「右の森に同じような群れが近づいています」

 後ろにいるミルチナが魔獣の群れを見つけたようだ。グランも遠見の魔道具を使って森を確認している。

「あの群れはまだ遠い。俺が前に出て対応しよう、メアリィ店長は今の群れの殲滅に集中してくれ」

 グランは右手に移動して、近づく魔獣を牽制して足止めしてくれるようだ。ユイトとセイランが戦っているのは残り3匹。殲滅しつつミルチナも一緒に左に移動して陣形を変更する。

 次に来る魔獣の群れに対して一直線に並び、回り込まれないようにする。グランもこちらの動きに合わせて攻撃しながら移動し、前衛3人態勢にするようだ。

 魔獣の数は多そうだけど、これなら十分余裕があるわ。グランの活躍もあって、後続の魔獣も全て殲滅することができた。
ミルチナが森の様子を探っているけど、もう近くに魔獣はいないようね。

 私も加わって、倒した魔獣の死体を回収する。しっかりと監視してくれる人がいると安心して作業ができるわ。
半日で14匹もの魔獣を倒せたなんて、今までの最高記録じゃないかしら。

 倒した魔獣を軍に引き渡して、私たちは町の宿屋へ向かう。グランは夜、軍の用意したテントで休むそうだ。明日また一緒に討伐に参加してくれると言っている。


 翌日も順調に魔獣を討伐できている。いち早く魔獣を見つけることができて、グランが前方で指示を与えてくれる。軍で訓練した人は、あんなふうに指揮もできるものなのね。私も勉強になるわ。

 森に入り大型獣を狩ったり、隣りの区域にいる兵隊さんの支援もできた。怪我もなく今回は上々の出来だわ。

「グラン、ありがとう。助かったわ」

「いや、こちらこそ貴重な体験をさせてもらったよ。君達の討伐の仕事は今日で終りだな。これは返しておくよ、ユイト君」

 グランは、借りていた遠見の魔道具をユイトに手渡す。

「君達はドラゴンの居る何でも屋だから、あのドラゴンで魔獣討伐しているものだと思っていたよ」

 グランはキイエ様の方に振り返りながら、私に尋ねた。

「キイエ様の攻撃は強力過ぎるから、いつもあそこで見守ってもらっているのよ。危ない時は助けてもらってるけど」

「そうだったのか。あのドラゴンに挨拶しておきたいんだが、いいか」

 そう言ってグランはキイエ様の方へと歩いて行った。私達は後片付けをして帰る準備をしよう。
グランはキイエ様と話した後、ビシッと敬礼していたわ。ああいうところは、やっぱり軍人さんなんだな。

「メアリィ店長。君達は明日、街道整備や城壁の補修だろう。俺はこれで部隊に戻るよ」

「そうね。あとの討伐は軍人さんに任せるわ。今までありがとう、グラン」

 明日は半日、土木工事の手伝いをして昼前には列車に乗って王都に帰る予定だ。グランもこっちにばかりいると部隊の隊長さんから怒られちゃうものね。

 なんだかおもしろい軍人さんと知り合いになれたわ。また手伝ってくれないかしら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

処理中です...