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第1章

第18話 何でも屋で戦うセイラン

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 明日も魔の森での討伐がある。セイランには連携して戦う方法を覚えてもらいたい。セイランの国では、3人から5人の戦士が横一列に並んで魔獣と対峙するそうだ。

「それだと全然連携が取れないでしょう」

「いや、横の者が危うくなれば、助けに入るぞ」

「そう言うのじゃなくて、魔獣の群れを分断したり、細い道に誘導して1匹ずつ倒したりする事よ」

戦場いくさばにおいては、そのような事をするが、それは総大将が決めて我らに指示をする。メアリィ殿が総大将と言う事か?」

「そうじゃなくて、魔獣を倒すパターンがあって、それを理解した上で連携してチームとして戦うの」

 一人だけで闇雲に戦っても強い敵には勝てない。魔獣は人の力を遥かに凌駕しているものが多い。紙に絵を描いてセイランに説明する。

「今日のような群れなら、こちらに誘き寄せて距離がある間に、魔法や魔弾で数を減らすの。接近したら前衛で押さえてもらって後方から私が魔法で倒すわ」

「もし前衛を抜けられたらどうするのだ」

「前衛とは距離があるわ。後方に来る前に倒すことができるの。複数抜かれて危ないと判断したら、前衛の一人が下がり挟み撃ちにするか、魔弾銃で分散させたりするの」

「ボクは後ろに逃がさないように、防御することに専念しているよ。そうしてるとメアリィが倒していってくれるんだ」

「ユイトのようにあまり戦えない人でも、連携すれば倒すことができるのよ」

 セイランは腕を組み少し思案顔になる。

「なるほどな……。では熊のような強力な魔獣が単体の場合はどのようにするのだ」

「周りを囲んで、主力で戦える人の方向に誘導するの。魔獣は攻撃を受けた人に向かって来るわ。周りから順番に攻撃して弱らせてから主力の人が止めを刺すのよ」

 主力は剣士でも魔術師でも弓使いでもいい。魔獣と対峙できる者の所に誘導する。

「他の人は、牽制して隙を作るのよ。主力の人が怪我をしないようサポートするの」

「我らも、大型の魔獣に際しては3人で取り囲んで戦いを挑む。それを遠隔で行うという事だろうか」

「そうね、セイランも仲間が隙を作ってくれたら、戦いやすいでしょう」

「仲間の動きが分かっていれば、できるやもしれぬが、変に攻撃されると邪魔になる事もあるな」

「そうよ。今日みたいにセイランが動き回ってちゃ、こちらも攻撃できなくなるわ。私達の位置を把握して、そちらに魔獣の背中や側面を向けるように戦って欲しいわね」

「相分かった。ならば拙者も魔法を使わねばならぬが、魔法はあまり得意ではない」

 それでも中級魔法は使えて、上手く当たれば魔獣を倒すこともできると言っている。3属性使えるその魔法ならユイトよりも強力じゃない。

「次からはセイランにも魔弾銃を使ってもらうわ。これなら魔法が不得意でもすぐ使えるわ」

 私が持っている、少し古い型の魔弾銃を渡す。

「国で輸入している銃よりも短くて使いやすそうだな。ユイト殿が持っている物はもっと短いようだが」

「うん、これは最新式なんだ。お金を貯めて買ったんだ」

 聞くとセイランの国に輸出している銃は、銃身の長い相当古い型のようだ。王国で余った物を売りさばいているのだろうか。

 魔弾銃はカートリッジに詰めた8発の魔弾を連続して撃ち出すことができる。魔獣の弱点に合わせて属性の違うカートリッジを取り換えて攻撃する。魔弾自体は小指の先ほどの大きさだけど4属性のカートリッジを持ち歩くので、性能が同じなら銃は軽く小さい方がいい。

「セイラン。ボクの銃を使ってよ。この方が持っていても邪魔にならないと思うよ」

「良いのか、ユイト殿」

 確かにあれだけ動き回って戦うなら、小さい銃の方がいいだろう。

「扱いは一緒だしユイトがいいというなら、その銃を使った方がいいわね。じゃあ、銃の使い方を教えるわ。外に出ましょう」

 セイランには銃の使い方や戦術について覚えてもらい、翌日の討伐に望むことになった。
昨日とは違う場所での討伐。その魔の森でエアウルフの群れを発見した。

「ユイト、セイラン。前に出て」

 魔法で牽制しながら、前衛の方に誘導する。今日は二人とも魔弾銃を使いながら魔獣を倒していく。接近戦もセイランは上手く立ち回り、側面から私の魔法で倒していける。ユイトは相変わらず苦戦しているようだけど、後ろに逃がさず押さえているわね。

 程なくしてエアウルフの群れを全滅することができた。

「なるほど。これなら怪我もせず簡単に倒すことができるな」

「そうでしょう。さあ、次もいくわよ」

 その後、熊の魔獣にも出くわしたけど、打ち合わせ通り3人で囲んで倒すことができた。こんな順調に魔獣討伐できたのは初めてじゃないかしら。やはりセイランの力が大きいわね。

 ずっとセイランがいてくれたらいいのにと思いつつ今日の討伐を終えた。
その後もセイランは私のお店を手伝ってくれて2週間がたった。

「セイラン、今までありがとう。助かったわ」

「ボクにも戦い方をおしえてくれて、ありがとうございました」

 今日、お連れの人の怪我も良くなり、退院するそうだ。

「あなた方は命の恩人。少しでも恩を返せたのならば喜ばしいことだ。拙者も世話になったな」

 名残惜しいけど、帰国するなら仕方ないわね。荷物を持って病院に向かうセイランを笑顔で見送る。

 翌日。

「頼もう! 拙者は、セイラン。メアリィ殿にお目道り願いたい!」

 お店の前で、恥ずかしげもなくそこら中に響き渡る大きな声を出している人がいる。こんな人はセイランしかいないわ。

「社長、またあの鬼人の人がお店に来てるんですけど」

「どうしたの、セイラン。帰国したんじゃないの」

「連れとも相談し、拙者はこの国に残る事にした。メアリィ殿、また世話になりたい」

 お供の一人が、亡くなった人の遺骨を国に持ち帰り、目的だった王国を視察し見聞を広めることをセイランがするという。

「それは助かるわ。今度はちゃんと給料を払うから住み込みで働いてちょうだい」

 給料は要らないと言っていたセイランも納得してくれて、社員としてまた屋根裏の部屋に住んで働いてもらう事にした。そのうち2階の倉庫の部屋を空けてセイランに住んでもらおう。

 人も増えたし、これからも依頼をどんどん受けて、このお店を大きくしていきたい。このお店は私の夢だもの。
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