上 下
18 / 101
第1章

第18話 何でも屋で戦うセイラン

しおりを挟む
 明日も魔の森での討伐がある。セイランには連携して戦う方法を覚えてもらいたい。セイランの国では、3人から5人の戦士が横一列に並んで魔獣と対峙するそうだ。

「それだと全然連携が取れないでしょう」

「いや、横の者が危うくなれば、助けに入るぞ」

「そう言うのじゃなくて、魔獣の群れを分断したり、細い道に誘導して1匹ずつ倒したりする事よ」

戦場いくさばにおいては、そのような事をするが、それは総大将が決めて我らに指示をする。メアリィ殿が総大将と言う事か?」

「そうじゃなくて、魔獣を倒すパターンがあって、それを理解した上で連携してチームとして戦うの」

 一人だけで闇雲に戦っても強い敵には勝てない。魔獣は人の力を遥かに凌駕しているものが多い。紙に絵を描いてセイランに説明する。

「今日のような群れなら、こちらに誘き寄せて距離がある間に、魔法や魔弾で数を減らすの。接近したら前衛で押さえてもらって後方から私が魔法で倒すわ」

「もし前衛を抜けられたらどうするのだ」

「前衛とは距離があるわ。後方に来る前に倒すことができるの。複数抜かれて危ないと判断したら、前衛の一人が下がり挟み撃ちにするか、魔弾銃で分散させたりするの」

「ボクは後ろに逃がさないように、防御することに専念しているよ。そうしてるとメアリィが倒していってくれるんだ」

「ユイトのようにあまり戦えない人でも、連携すれば倒すことができるのよ」

 セイランは腕を組み少し思案顔になる。

「なるほどな……。では熊のような強力な魔獣が単体の場合はどのようにするのだ」

「周りを囲んで、主力で戦える人の方向に誘導するの。魔獣は攻撃を受けた人に向かって来るわ。周りから順番に攻撃して弱らせてから主力の人が止めを刺すのよ」

 主力は剣士でも魔術師でも弓使いでもいい。魔獣と対峙できる者の所に誘導する。

「他の人は、牽制して隙を作るのよ。主力の人が怪我をしないようサポートするの」

「我らも、大型の魔獣に際しては3人で取り囲んで戦いを挑む。それを遠隔で行うという事だろうか」

「そうね、セイランも仲間が隙を作ってくれたら、戦いやすいでしょう」

「仲間の動きが分かっていれば、できるやもしれぬが、変に攻撃されると邪魔になる事もあるな」

「そうよ。今日みたいにセイランが動き回ってちゃ、こちらも攻撃できなくなるわ。私達の位置を把握して、そちらに魔獣の背中や側面を向けるように戦って欲しいわね」

「相分かった。ならば拙者も魔法を使わねばならぬが、魔法はあまり得意ではない」

 それでも中級魔法は使えて、上手く当たれば魔獣を倒すこともできると言っている。3属性使えるその魔法ならユイトよりも強力じゃない。

「次からはセイランにも魔弾銃を使ってもらうわ。これなら魔法が不得意でもすぐ使えるわ」

 私が持っている、少し古い型の魔弾銃を渡す。

「国で輸入している銃よりも短くて使いやすそうだな。ユイト殿が持っている物はもっと短いようだが」

「うん、これは最新式なんだ。お金を貯めて買ったんだ」

 聞くとセイランの国に輸出している銃は、銃身の長い相当古い型のようだ。王国で余った物を売りさばいているのだろうか。

 魔弾銃はカートリッジに詰めた8発の魔弾を連続して撃ち出すことができる。魔獣の弱点に合わせて属性の違うカートリッジを取り換えて攻撃する。魔弾自体は小指の先ほどの大きさだけど4属性のカートリッジを持ち歩くので、性能が同じなら銃は軽く小さい方がいい。

「セイラン。ボクの銃を使ってよ。この方が持っていても邪魔にならないと思うよ」

「良いのか、ユイト殿」

 確かにあれだけ動き回って戦うなら、小さい銃の方がいいだろう。

「扱いは一緒だしユイトがいいというなら、その銃を使った方がいいわね。じゃあ、銃の使い方を教えるわ。外に出ましょう」

 セイランには銃の使い方や戦術について覚えてもらい、翌日の討伐に望むことになった。
昨日とは違う場所での討伐。その魔の森でエアウルフの群れを発見した。

「ユイト、セイラン。前に出て」

 魔法で牽制しながら、前衛の方に誘導する。今日は二人とも魔弾銃を使いながら魔獣を倒していく。接近戦もセイランは上手く立ち回り、側面から私の魔法で倒していける。ユイトは相変わらず苦戦しているようだけど、後ろに逃がさず押さえているわね。

 程なくしてエアウルフの群れを全滅することができた。

「なるほど。これなら怪我もせず簡単に倒すことができるな」

「そうでしょう。さあ、次もいくわよ」

 その後、熊の魔獣にも出くわしたけど、打ち合わせ通り3人で囲んで倒すことができた。こんな順調に魔獣討伐できたのは初めてじゃないかしら。やはりセイランの力が大きいわね。

 ずっとセイランがいてくれたらいいのにと思いつつ今日の討伐を終えた。
その後もセイランは私のお店を手伝ってくれて2週間がたった。

「セイラン、今までありがとう。助かったわ」

「ボクにも戦い方をおしえてくれて、ありがとうございました」

 今日、お連れの人の怪我も良くなり、退院するそうだ。

「あなた方は命の恩人。少しでも恩を返せたのならば喜ばしいことだ。拙者も世話になったな」

 名残惜しいけど、帰国するなら仕方ないわね。荷物を持って病院に向かうセイランを笑顔で見送る。

 翌日。

「頼もう! 拙者は、セイラン。メアリィ殿にお目道り願いたい!」

 お店の前で、恥ずかしげもなくそこら中に響き渡る大きな声を出している人がいる。こんな人はセイランしかいないわ。

「社長、またあの鬼人の人がお店に来てるんですけど」

「どうしたの、セイラン。帰国したんじゃないの」

「連れとも相談し、拙者はこの国に残る事にした。メアリィ殿、また世話になりたい」

 お供の一人が、亡くなった人の遺骨を国に持ち帰り、目的だった王国を視察し見聞を広めることをセイランがするという。

「それは助かるわ。今度はちゃんと給料を払うから住み込みで働いてちょうだい」

 給料は要らないと言っていたセイランも納得してくれて、社員としてまた屋根裏の部屋に住んで働いてもらう事にした。そのうち2階の倉庫の部屋を空けてセイランに住んでもらおう。

 人も増えたし、これからも依頼をどんどん受けて、このお店を大きくしていきたい。このお店は私の夢だもの。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

処理中です...