ドラゴンの居る、何でも屋。~目指せ遥かなるスローライフ!~

水瀬 とろん

文字の大きさ
上 下
17 / 101
第1章

第17話 何でも屋に来たセイラン

しおりを挟む
 セイランが今日からお店の手伝いをしてくれるようになった。体力があるから石垣の補修工事もできる。下水道の掃除も嫌がらずにしてくれた。今まで人手が足りず、後回しになっていた依頼を片付けていく。

「ありがとう、セイラン。明日は軍と共同で魔獣の討伐をするの。期待しているわよ」

「ああ、任せておけ。祖国でも魔獣退治は得意だったからな」

「ユイト。あんたも頑張りなさいよ」

「うん。ボクも強くなったところを見せるよ」

「そういえば、セイランの防具って変わっているわね。鬼人族の防具なの」

「鬼人族全てという訳ではないが、拙者のは動き易さを優先している鎧だな。大将はもっと防御力の高い兜と鎧を着ている」

 確かにフルプレートに比べると隙間が多いけど、軽鎧という訳でもない。肩当ての部分を見せてもらったけど、一枚の鉄板を加工しているんじゃなくて、細い鉄板を紐で縫って組み合わせているのね。この紐にも火に対する耐性があって、少々の魔法攻撃でも燃えないそうだ。

「凝った造りの鎧ね。この肩当ても少し大きいけど動き易そうだし、確か腰のあたりの鎧も膝上までしか無くて、ミニスカートのようだったわね」

「切れ込みが入っていて、走りやすくなっているぞ。脇の部分も開いておるから、刀なども振りやすいしな」

 そういえば横から見たら、胸の部分の肌が見えていた気がするわね。動き易いとはいえあれでいいのかしら。でもそれが鬼人族の戦闘衣装だという。

「セイランは前衛なんだから、注意して怪我しないように戦ってね」

「承知した」

 ユイトもセイランも住み込みで働いてもらっているから、夕食などで仕事の打ち合わせができる。
こういうのもいいわね。チームというか、気心知れた仲間と一緒に仕事できるなんて理想の職場だわ。

 翌日、予定通り軍と共同で魔獣討伐をする。こういう場合、大概一区画を割り当てられ、その森にいる魔獣を私達の何でも屋だけで倒していく事になる。一緒に訓練していない軍の人達とは連携が取れないから仕方ないんだけど。

「じゃあ、セイランとユイトが前衛でお願いね」

「任せておけ」

「分かったよ。じゃあ行こうか」

 魔の森の前に来て、監視しているとフェンリルウルフの群れを見つけた。大型のオオカミの魔獣で水魔法を操ってくる。
魔法で平原に誘導して、ばらけた個体を集中して順次倒していくのがセオリーだ。

 私が森に向かって魔法を撃ったとたん、セイランがガチャガチャと鎧を鳴らしながら、すごい勢いで走り出した。

「セイラン! 前に出すぎよ。ユイト、サポートして」

 ユイトにももっと前に出てもらう。私も前進してセイランを助けないと。
森の近くまで行ったセイランは、フェンリルウルフに囲まれて細長い剣で戦っている。

「ユイト。私たちは右側を倒すわよ」

 ユイトは魔弾銃で、私は魔法でセイランから少し離れた魔獣を倒しにかかる。セイランは魔獣と乱戦になっているから、ここから攻撃すると同士討ちになってしまう。

 だけどセイランは5匹の魔獣を相手に、一歩も引かずに剣だけで魔獣を倒していく。すごい動きだわ。走り回りながら牙を躱し剣で魔法を切り裂いている。

「何なの、あの子は……」

 こちらもフェンリルウルフを後ろに回り込ませないように、魔法で牽制しながら、単独になった魔獣に集中して攻撃する。ユイトも盾で魔法を防ぎながら、私の魔法に合わせて攻撃している。

 結局セイランが5匹、私達が3匹を倒して群れを全滅させた。

「セイラン! なんで魔獣の群れに向かって突っ込んでいくのよ」

「あれが、拙者達の戦い方だ。何か不都合はあるのか」

「一人で戦っちゃダメでしょう。ほらこんなに怪我してるじゃない」

「この程度は、怪我のうちに入らないぞ。お陰で全ての魔獣を倒せたではないか」

 セイランは笑顔で答えているけど、こちらは肝が縮み上がったわよ。

「確かに倒せたけど。もう、あんな無茶はしないでちょうだい」

 ユイトに魔獣の後始末を頼んでおいて、セイランの怪我の手当をする。
腕や足、顔にまで怪我をして血が出ている。

「あなたも、女の子なんだから、顔にまで傷をつけちゃだめでしょ」

「そうなのか。相済まなかった」

 危険な仕事ではあるけど、怪我をしていい訳じゃない。鬼人族とやり方は違うかもしれないけど、怪我をしない方法で戦って欲しい。

 その後は森から出てきた大イノシシなどの獣を倒して今日の討伐は終了となった。

「それにしてもセイランの動きはすごかったよね。あんな細い剣で折れもしないで5匹も魔獣を倒すなんて」

「ユイト殿。これは刀と言って、刀鍛冶が丹精込めて鍛え上げてくれた逸品だ。拙者の相棒だな」

「そんなすごい剣なんだね。だから魔獣の切り口もあんなに綺麗な切り口だったんだ」

「セイラン。よく切れる剣を持っていても、あんな無茶はもうダメよ。今度からはユイトと同じように魔弾銃を使った戦い方をしてもらうわ」

「今日ユイト殿が使っていた物だな。国元で使っている物と形が違うようであったが、拙者にも使えるのか」

 ユイトも最近やっと魔弾銃の扱いに慣れてきて戦えるようになってきた。セイランでもすぐ使えるわ。

「魔弾銃の扱いや戦い方は、お店に帰ってから教えるわね」

「すまぬな、メアリィ殿。よろしく頼む」

 まあ、こういう所は素直で助かるわ。とにかく怪我をしない様な戦い方を教えないとね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

抽選結果は大魔王だったので、剣と魔法と平和と欲に溢れた異世界で、のんびりとスローライフしたいと思います。

蒼樹 煉
ファンタジー
抽選で、大魔王として転生したので、取り敢えず、まったりと魔物生成しながら、一応、大魔王なので、広々とした領土で、スローライフっぽいものを目指していきたいと思います。 ※誹謗中傷による「感想」は、お断りです。見付け次第、削除します。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。 ※駄文+誤字脱字+その他諸々でグダグダですが、宜しくお願いします。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

処理中です...