上 下
12 / 101
第1章

第12話 洞窟調査3

しおりを挟む
 扉の中は広い空間になっていて、ライトを照らしても奥まで届いていない。

「なんだか、怖いよ~、メアリィ~」

「もうっ、引っ付くんじゃないわよ。歩きにくいでしょ」

 床は平らで、所々に石の柱が伸びている。明らかに人工物だ。まだ誰も入ったことが無いのだろうか、床一面、埃と細かな砂で埋まっている。そこに私達の足跡だけが残る。

「メアリィよ。これはテーブルと椅子ではないか」

 一緒に入ってきたキイエ様が石の柱の近くで立ち止まる。天井のように見えていた物がテーブルの天板だと言う。

「ほれ、これなどは動かす事ができるぞ」

 4本の石の柱がズズズゥ~と同時に動いた。確かに巨大な椅子のように見える。

「ほんとだね。キイエなら座れそうだ」

「そうね、でもこれらは古いものだから崩れてしまうかもしれないわ。あまり触らない方がいいわね」

「それなら、このテーブルの上から周りを見てはどうじゃ」

 それはいい考えだわ。上から見渡した方が、全体が良く見えるわね。キイエ様に石のテーブルの上に乗せてもらい、周りをライトで照らしてみる。

「なるほど、確かにここは部屋のようね。それに全てが大きいわ」

 私達が小人になったように見えてしまう大きな部屋に、テーブル、椅子、家具が並んでいる。どれも埃を被っていて手付かずの状態だ。

「まるで巨人の部屋みたいだね」

 ユイトが言っているのが正解かも知れない。大昔に絶滅した巨人族がいたという話を聞いたことがある。昔の王都にも大きな城門があって、それは巨人族が通るために造られた門だと言っていた。

「キイエ様。この先も調査しましょう」

 キイエ様に床に降ろしてもらい先へと進むと、そこには別の部屋があり巨大なベッドのような物があった。やはり巨人族が住んでいた部屋のように見える。

 この部屋の見取り図を描いて、元いた部屋へと戻る。

「ねえ、メアリィ。さっきテーブルの上にフォークのような物があったよ」

「そうなの? それなら持ち帰りましょうか。キイエ様、取れますか」

「これかな」

 見せてもらったのは、巨人族が使っていた石のフォークの先端部分かしら。魔術師協会でちゃんと調べてもらわないと分からないけど、証拠品として持ち帰りましょう。

 すごいわ。私達で巨人族が暮らしていた部屋を発見できるなんて。
ある程度調査した後、ここの入口の扉をしっかりと閉めて、獣や魔獣が入らないようにしておく。
もう日も暮れかけている。今夜一晩はここで野営して、明日には王都へ帰りましょう。

「キイエ様のお陰ですね。あんな高い所の岩の隙間なんて、私達じゃ分からなかったもの」

「そうだね。キイエがいないとあの扉も動かせなかったしね。やっぱりキイエはすごいや」

「役にたてたのなら、それでいい。明日には王都に向かうんだな」

「ええ、早くみんなにこの大発見を知らせないと」

 全容は大規模な調査をしないと分からないでしょうけど、それは魔術師協会の方でするはずだわ。


 翌日から1日半かけて、私達は王都に戻って来た。まずは魔術師協会に行って報告をしないと。

「まあ、あなた達、早かったのね。それで調査は上手くいったのかしら」

「それがですね。洞窟の壁の奥に巨人族の部屋を発見したんですよ」

 私は得意顔で、協会の人に説明する。

「巨人族の部屋ですって! 本当なの」

「ええ、そこでこれを見つけてきました」

 調査した部屋の地図と、持ち帰ったフォークを見せる。

「確かに古い物のようね。少し調べてみるわね」

 後日、私達が持って帰ってきたフォークと、以前にこの洞窟で見つかったという土器の破片と比べると、同じような時代の物だという事が分かったそうだ。

 私達は魔術師協会に呼ばれて、第一発見者という名誉と共に増額の報酬を受け取る事ができた。
追加の報酬を渡してくれた職員さんが、興奮気味に私に言う。

「こんな大発見は何十年ぶりよ。これは早速調べに行かないといけないわね」

 歴史関係の部署は、地味な仕事が多くて魔術師協会でも日陰者だという。これで大々的に調査もでき、予算も増額できると喜んでいた。

 その後、軍も加わった本格的な調査が始まった。調査の結果、今は絶滅した巨人族の貴重な遺跡であることが判明し王都の街でも話題になった。

「メアリィ。遺跡の事について聞きたいって人が今日も沢山来ているわよ」

「いいわね、これで私達のお店の名前も世間に知られるようになるわ」

「そうね、お店始まって以来の大きな成果だもんね。これから依頼も沢山来るようになると思うわ」

 まだ借金は残っているけど頑張って働けば大丈夫。最初、シンシアと始めた小さなお店だけど、もっと大きなお店にしていきたいわ。これは私の夢だもの、頑張りましょう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

処理中です...