転生ヴァンパイア様の引きこもりスローライフ。お暇なら国造りしませんか

水瀬 とろん

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第13章 受け継ぐもの

第144話 神との死闘1

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 戦場の真ん中にできたクレータの縁から、マイヤドベガは高笑いしながらゆっくりと降りて来る。真っ新な腕と焼け爛れたボディが不釣り合いだけど、歩きながらもビームを平原の塹壕に向けて撃ってきた。機能的には復活しているようだね。

 地上部隊がマイヤドベガに対して、魔法による総攻撃を行なう。お城近くからも短距離弾道ミサイルを水平発射する。放物線ではなく、最短距離で飛んで来るミサイルには素早く対応しなくちゃならないようだ。魔法攻撃を全身で受けながらも迎撃していく機動兵器。

 マイヤドベガはヘブンズ教国で無双していたように、戦場に作った石垣や塹壕に向かって無差別に砲撃し破壊していく。単独とはいえ火力では相手の方が上か……。
 でも、マイヤドベガ。勝利を確信するのはまだ早いよ。

 さっきのSS級魔術での攻撃は小手調べで、どの程度のダメージを与えられるか見る意味もある。宮廷魔導士ならば確実にダメージをあたえられるじゃないか。こちらにはまだ七人の宮廷魔導士が居るんだからね。

「リビティナ様・・・こちらはフィフィロ・・・準備できました」

 機動兵器の頭上、飛行ユニットを背負ったフィフィロが単独で空に浮かぶ。

「なに! 上空に高エネルギー反応だと!!」

 機動兵器に搭載された武器管制AIは、たった一人で飛行する人間を危険と認識できずに対応が遅れる。フィフィロが放ったのは軌道ステーションからのビーム砲を思わせる一条の光。回避行動を取るマイヤドベガの右半身を光の柱が貫いた。
 機動兵器は肩のレーザー砲と片腕、片足を失い穴の縁から底へと転げ落ちる。

 SS級魔術で再現された荷電粒子ビーム。初めての魔術で狙いが狂ったのかもしれないけど、充分な威力だったよ。

「よくやったわ、フィフィロ! 後は私達に任せなさい!」

 ウィッチアを含む残りの宮廷魔導士による集中攻撃が始まる。巨大な岩が左右から二つ、マイヤドベガを狙い落ちていく。その衝撃は凄まじく大地を揺らし、穴の底はぶつかり合った岩の摩擦熱で、既に溶岩と化していた。その上から巨大な炎で穴全体が溶け出す。溶岩の底からは助けを求めるように機動兵器の手が伸びる。

 やはりまだ生きているようだね。その手に向かって鋭い先端をした氷の塊が飛んで行く。一気に冷却すれば自慢の装甲も脆くなる。その後、再度岩と炎のSS級魔術でとどめを刺す。

 戦場のど真ん中で繰り広げられた、宮廷魔術師達の最大級魔術による共演に兵士達は一言も発することができず、その光景を見つめるだけだった。
 その一連の攻撃が終わり、勝利を確信した者が歓声を上げる。それは戦場全体に広がり怒号のような雄叫びへと変化していった。

「姉様、やりましたね」
「そうだね。いくらなんでもこれで奴も死んだだろう」

 リビティナもほっと息をつく。残り七人の宮廷魔導士が全力で放った七回のSS級魔術の連続攻撃。それを一身で受けたマイヤドベガ、チリも残らないはずさ。

「リ、リビティナ様。上空に飛行物体が……」
「何だって!!」

 フライボードがどこからともなくやって来た。自動操縦か? いや遠隔操作だ!! SS級魔術で作られた大穴の上空を低空で旋回している。急ぎ戦闘機に出動命令を出す。

 溶岩でまだ熱いままの穴の底から、球体のような物体が飛び出してきた。真っ赤に焼けているけど、丸い形を保ち下部から白い煙を噴出して飛び上がっている。

「あれはメインユニットか!!」

 コックピットと小型核融合炉が一つになった機動兵器の心臓部。旋回していたフライボードがホバリングし、底部のハッチが左右に開きメインユニットを格納した。

「あれだけやって、なんで破壊できないのよ!!」

 ウィッチアの悲鳴とも思える叫びが無線機から聞こえて来た。
 フライボードは元来た南の丘陵地帯を目指している。ここまできて奴を逃がすわけにはいかない!

「総攻撃を! 奴を逃がすな!」

 地上からも魔法攻撃を仕掛けているけど、フライボードとはいえ装甲は厚くパルスレーザー砲も撃ってくる。今までの攻撃で既に半数近い陣地が焼かれて火力が足りていない。このままでは逃げられてしまう。

 お城の後方から緊急発進した戦闘機が間に合ってくれたようだ。エンジンを破壊し墜落させるしかない。上下左右を取り囲み、一番脆いエンジン部に集中攻撃を仕掛ける。

 戦場の上空で戦闘機四十機とのドックファイトが繰り広げられた。半数の戦闘機が落とされたけど、エンジンを撃ち抜かれたフライボードが黒煙を上げ、王都の東に位置する森へと墜落していく。

 その途中、フライボードから切り離された物体が地上に落ちてきた。

「リ、リビティナ……。よ……くも……やってくれたな」

 通信機からは、あの男の恨みのこもった声が流れて来るのだった。
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