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第13章 受け継ぐもの
第142話 地上の神との戦い2
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王国とキノノサト国の各部隊から、高速の岩の塊が一斉にあの男の機動兵器に向かって飛んで行く。
これはミシュロム共和国から供与された秘密兵器。魔道具が搭載された投石機だ。各部隊からキューンという魔力を充填する音が聞こえ、大きな岩が高速で遥か彼方まで飛んで行く
「そのような石ころ、簡単に撃ち落とせるわい」
ビーム砲とレーザー砲を連射し空中の岩を撃ち落としていく。手にも小型のビーム砲を装備したようで手数を増やしているようだね。
『マイヤドベガ。威勢がいい割には魔法攻撃をそのまま受けているじゃないか。自慢のボディが傷だらけだよ』
三方向からカタパルトで射出された岩と氷や岩魔法を同時に受け、対レーザー用の七色に輝くミラーコートのボディーが傷つき、くすんで見えるよ。
マイヤドベガはカタパルトの位置を割り出し、出力を上げたビーム砲で攻撃を仕掛けてくる。複数の一級魔術師が張った五層の防壁で何とか防いでくれたみたいだけど、防ぎきれず一部は塹壕ごと破壊された所もあるようだ。
そんな敵の足元を狙って、集中攻撃を仕掛けた部隊があった。二本の足で立つ機動兵器がバランスを崩し、発射されたビームが空へと流れていった。
鬼人族の部隊か! 戦い方をよく知っているようだね。連携はしていなくとも、各部隊で状況を見て的確な攻撃をしてくれている。
マイヤドベガは足のホバージェットを使い、集中攻撃を受けた地点から高速で離脱する。初めて機動兵器らしい使い方をしたようだね。
「リビティナよ。やはり戦闘と言うのはこうでなくてはな。ヘブンズ教国では抵抗もなくつまらなかったからな」
戦場から少し離れた場所まで後退し、マイヤドベガが語り出す。
「ワレは軌道ステーションで一万年近くも、地上を監視する面白くもない日々を送っておった。代わり映えもしない地上の下等生物を滅ぼそうと考えて何が悪いと言うのだ」
なんて自分勝手な事を言うもんだ。
「この地上の土地も、知恵も、武器も、ワレらが与えてやった物だ。それが無ければ魔獣と同じような生活をしておったであろう。今まで人並みの生活ができただけでも感謝するべきなのだよ」
『君にそんな事を言われる筋合いはないよ』
第一、土地や知恵や武器を与えたのは、君ではなく各地の伝承に残る神様と呼ばれる存在だ。それらに空の管理者が関わっていたとしても、この星はこの星に生きる者が受け継げばいい。君達に管理される云われはないよ。
「どちらにせよ、お前達には滅びの道しか用意されておらぬ。それまでワレを楽しませよ、リビティナ」
『君の楽しみに付き合う気はないよ』
こうやって話を長引かせている間にも、こちらはどんな攻撃が有効かなどの検討をし、対抗処置や部隊の再配置をしている。同じ人類の歴史を知るあの男も戦略や戦術の知識はあるはずだけど、戦力差が大きいからと傲慢になって、力任せの単調な攻撃しかしてこない。
無線をオープン回線にして戦場で長々と話をするなど、やはり狂っているとしか思えないよ。
「リビティナ様、準備が整いました」
「今の通信を聞いて各部隊に動揺はないかな」
「それは大丈夫です。皆の士気は落ちておりません」
「それは良かった。じゃあ次に奴が突っ込んで来たら、作戦通り動いてくれるように伝えてくれるかい」
「はっ。承知しました」
みんな冷静に戦ってくれているみたいだね。神との戦いに恐れを抱いていた兵士もいたようだけど、実際の戦闘になればみんな必死になるからね。遊び半分のあの男とは比べ物にならないよ。
◇
◇
「騎士たるお前は鏡の盾を持ち、後方の者を守れ」
「はっ」
「お前は巨人の肩の砲塔が自分に向いた瞬間に防壁を張るのだぞ」
「はい、分かりました」
「弓使い。貴様はゴーレムのひざ下、この部分に魔石の矢を突き刺せ」
「はい、お任せを」
「奴の走る速度は尋常ではないぞ。チャンスは一度だと思え」
「はっ!」
俺達三人一組のチームが八十組、敵が通るであろう戦場に散らばる。
「あんたのその矢じり、魔国の賢者様からもらったんだってね」
「ああ。これを当てると先端が壊れて、周囲の柔らかいロウでゴーレムの体にくっ付くらしい」
「お前達は絶対、俺の盾から顔を出すなよ。腰からは常に殺人光線が出ているらしい。ケルンは肩の砲塔だけを、サジは目標の足元だけを見るようにしてくれ」
リーダーの言葉に頷いて塹壕の中で、声のする機械に耳を澄ませる。
「ゴーレムの動きが止まったぞ。二十から六十番は中央に移動せよ」
「よし。俺達は二筋移動するぞ」
「了解」
私達三人は塹壕の中を走り、所定の位置に着く。ゴーレムが動き出し、足音が地響きとなって伝わってくる。塹壕を出てさっきのフォーメンションで敵を見たけど、やはり大きいわね。砲塔はこっちに向いていないけど、土の防壁を二枚だけ張っておく。こうしておかないと一度に五枚もの防壁を張ることはできない。
目に見えない殺人光線が防壁に当たったのか一部が破壊された。
「サジ、狙えそうか」
「ああ」
その巨大さ故か、ゆっくり歩いているように見えるけどその速度は速い。あっという間に近づいて来た。他のチームも塹壕から顔を出し、矢を放つ準備をしている。
隣で弦音がした。
「しまった、外しちまった。予備の矢を撃つ、防御を頼む」
ゴーレムが自分達の前を通り過ぎ、リーダーがその動きに合わせて盾を構え直す。
「よし、今度は当たったぞ。グゥワッ!!」
「サジ! 大丈夫か」
踏ん張った足が盾の外に出て、殺人光線で足が切断された。
「ケルン! サジを引っ張って塹壕に戻れ!」
「はい!」
リーダーの盾に隠れながら、サジを塹壕の中に入れて応急手当をする。
「グッ。すまない」
「何を言ってる。俺たちは役目を果たしたんだぞ」
「そうよ。後は賢者様が何とかしてくれるわ」
そう、あの賢者リビティナ様なら、邪神を倒して必ず勝利してくれるわ。
これはミシュロム共和国から供与された秘密兵器。魔道具が搭載された投石機だ。各部隊からキューンという魔力を充填する音が聞こえ、大きな岩が高速で遥か彼方まで飛んで行く
「そのような石ころ、簡単に撃ち落とせるわい」
ビーム砲とレーザー砲を連射し空中の岩を撃ち落としていく。手にも小型のビーム砲を装備したようで手数を増やしているようだね。
『マイヤドベガ。威勢がいい割には魔法攻撃をそのまま受けているじゃないか。自慢のボディが傷だらけだよ』
三方向からカタパルトで射出された岩と氷や岩魔法を同時に受け、対レーザー用の七色に輝くミラーコートのボディーが傷つき、くすんで見えるよ。
マイヤドベガはカタパルトの位置を割り出し、出力を上げたビーム砲で攻撃を仕掛けてくる。複数の一級魔術師が張った五層の防壁で何とか防いでくれたみたいだけど、防ぎきれず一部は塹壕ごと破壊された所もあるようだ。
そんな敵の足元を狙って、集中攻撃を仕掛けた部隊があった。二本の足で立つ機動兵器がバランスを崩し、発射されたビームが空へと流れていった。
鬼人族の部隊か! 戦い方をよく知っているようだね。連携はしていなくとも、各部隊で状況を見て的確な攻撃をしてくれている。
マイヤドベガは足のホバージェットを使い、集中攻撃を受けた地点から高速で離脱する。初めて機動兵器らしい使い方をしたようだね。
「リビティナよ。やはり戦闘と言うのはこうでなくてはな。ヘブンズ教国では抵抗もなくつまらなかったからな」
戦場から少し離れた場所まで後退し、マイヤドベガが語り出す。
「ワレは軌道ステーションで一万年近くも、地上を監視する面白くもない日々を送っておった。代わり映えもしない地上の下等生物を滅ぼそうと考えて何が悪いと言うのだ」
なんて自分勝手な事を言うもんだ。
「この地上の土地も、知恵も、武器も、ワレらが与えてやった物だ。それが無ければ魔獣と同じような生活をしておったであろう。今まで人並みの生活ができただけでも感謝するべきなのだよ」
『君にそんな事を言われる筋合いはないよ』
第一、土地や知恵や武器を与えたのは、君ではなく各地の伝承に残る神様と呼ばれる存在だ。それらに空の管理者が関わっていたとしても、この星はこの星に生きる者が受け継げばいい。君達に管理される云われはないよ。
「どちらにせよ、お前達には滅びの道しか用意されておらぬ。それまでワレを楽しませよ、リビティナ」
『君の楽しみに付き合う気はないよ』
こうやって話を長引かせている間にも、こちらはどんな攻撃が有効かなどの検討をし、対抗処置や部隊の再配置をしている。同じ人類の歴史を知るあの男も戦略や戦術の知識はあるはずだけど、戦力差が大きいからと傲慢になって、力任せの単調な攻撃しかしてこない。
無線をオープン回線にして戦場で長々と話をするなど、やはり狂っているとしか思えないよ。
「リビティナ様、準備が整いました」
「今の通信を聞いて各部隊に動揺はないかな」
「それは大丈夫です。皆の士気は落ちておりません」
「それは良かった。じゃあ次に奴が突っ込んで来たら、作戦通り動いてくれるように伝えてくれるかい」
「はっ。承知しました」
みんな冷静に戦ってくれているみたいだね。神との戦いに恐れを抱いていた兵士もいたようだけど、実際の戦闘になればみんな必死になるからね。遊び半分のあの男とは比べ物にならないよ。
◇
◇
「騎士たるお前は鏡の盾を持ち、後方の者を守れ」
「はっ」
「お前は巨人の肩の砲塔が自分に向いた瞬間に防壁を張るのだぞ」
「はい、分かりました」
「弓使い。貴様はゴーレムのひざ下、この部分に魔石の矢を突き刺せ」
「はい、お任せを」
「奴の走る速度は尋常ではないぞ。チャンスは一度だと思え」
「はっ!」
俺達三人一組のチームが八十組、敵が通るであろう戦場に散らばる。
「あんたのその矢じり、魔国の賢者様からもらったんだってね」
「ああ。これを当てると先端が壊れて、周囲の柔らかいロウでゴーレムの体にくっ付くらしい」
「お前達は絶対、俺の盾から顔を出すなよ。腰からは常に殺人光線が出ているらしい。ケルンは肩の砲塔だけを、サジは目標の足元だけを見るようにしてくれ」
リーダーの言葉に頷いて塹壕の中で、声のする機械に耳を澄ませる。
「ゴーレムの動きが止まったぞ。二十から六十番は中央に移動せよ」
「よし。俺達は二筋移動するぞ」
「了解」
私達三人は塹壕の中を走り、所定の位置に着く。ゴーレムが動き出し、足音が地響きとなって伝わってくる。塹壕を出てさっきのフォーメンションで敵を見たけど、やはり大きいわね。砲塔はこっちに向いていないけど、土の防壁を二枚だけ張っておく。こうしておかないと一度に五枚もの防壁を張ることはできない。
目に見えない殺人光線が防壁に当たったのか一部が破壊された。
「サジ、狙えそうか」
「ああ」
その巨大さ故か、ゆっくり歩いているように見えるけどその速度は速い。あっという間に近づいて来た。他のチームも塹壕から顔を出し、矢を放つ準備をしている。
隣で弦音がした。
「しまった、外しちまった。予備の矢を撃つ、防御を頼む」
ゴーレムが自分達の前を通り過ぎ、リーダーがその動きに合わせて盾を構え直す。
「よし、今度は当たったぞ。グゥワッ!!」
「サジ! 大丈夫か」
踏ん張った足が盾の外に出て、殺人光線で足が切断された。
「ケルン! サジを引っ張って塹壕に戻れ!」
「はい!」
リーダーの盾に隠れながら、サジを塹壕の中に入れて応急手当をする。
「グッ。すまない」
「何を言ってる。俺たちは役目を果たしたんだぞ」
「そうよ。後は賢者様が何とかしてくれるわ」
そう、あの賢者リビティナ様なら、邪神を倒して必ず勝利してくれるわ。
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