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第13章 受け継ぐもの
第141話 地上の神との戦い1
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「国王陛下。敵がヘブンズ教国を離れ、国境に向かっていると報告を受けました」
「敵はこの王都を目指しているのか」
「真っ直ぐこちらに向かっております。明日の朝には姿を現すかと」
「魔王殿の言っていた通りになったな。全部隊にこの事を伝え、準備するようにと」
「はっ!」
伝令が去った後には、リビティナを含む三国の王が部屋に残る。
「途中の町や村は攻撃せず、この王都を先に攻め落とすつもりのようですな」
「予想通りだよ。ミシュロム共和国からの兵器も届いたし何とか戦えるさ」
「余は我が軍の本陣へ行くぞ。後の事は魔王殿にお任せする」
「通信機を忘れないでね。ボクはこの一番高い場所から指揮を執るよ」
「では魔王殿。私も本陣へ行きます。御武運を」
国王と大将軍がそれぞれの現地司令部へと向かった。この総司令部にはリビティナとイコルティ、それと伝令などの数人しか残っていない。
「いよいよ明日ですね、姉様」
「準備が間に合って良かったよ。何としても奴を倒さないとね」
「はい」
朝日が昇る頃。森に包まれた丘を越え、あの機動兵器がフライボードから降りて、王都前に広がる平原を眺める。
平原のあちらこちらに塹壕や岩壁が何重にも築かれており、選び抜かれた総数六万人にもなる精鋭の兵士が隠れている。
「王国の獣人共、無駄な事を」
そう呟くマイヤドベガの頭に直接声が届く。
『マイヤドベガ。教国では相当暴れたようだね』
「この声はリビティナか」
マイヤドベガは通信機のスイッチを入れ、オープン回線で話をする。
「リビティナよ、この頭に響く声は止めて通信機で話せと言ったであろう」
『通信機? そんな事をして君に居場所を教える訳にはいかないよ』
通信機で受信できる状態にしているけど、逆探知されないように送信はしない。
「まあ良いわ。リビティナよ、よくこれだけの獣人を集めてくれたな感謝するぞ。効率よく浄化できそうじゃ」
『なぜ君は、これほどの罪を犯そうとするんだい』
「罪だと。お前達がこの地で生きられるのは、人類が復活するまでの間であると最初から決められておる」
神を気取る、空の住人らしい考え方だね。
『人類復興計画と言っていたね。何十万年も前に決めたそんな事を、今のボク達が許すはずないじゃないか』
「リアアルタイルの復興計画は獣人達を人間の姿に戻すだけの古い計画だ。ワレの計画はもっと完璧なものだ」
そういや、真の人類復興計画とか言っていたね。
「リビティナよ、考えてもみよ。この世界には魔法という訳の分からんものが存在する。それに魔獣や姿形の異なる獣で溢れているではないか。地球にそんなものは存在せぬ。ワレはその地球を復活させたいのだよ」
この男は一体なにを言っているんだ。
「そのために、この惑星をリセットする。全ての生き物を根絶やしにし、テラフォーミングから始めるのだ」
『そんな事をしても、この星の魔素は無くならないよ』
この惑星だけでなく、おそらく太陽や近くの恒星を含むこの星域全体が魔素で覆われている。魔素がある限り、地球型の生物や人間がそのまま住み続けるのは無理な事だよ。
「それも簡単な事だ。この惑星の周囲全てをガラスで覆い、魔素粒子を全て抜き去るのだよ。その後に浄化した大気で満たせば、人類が生存できる環境が整う。今は無き地球の復活だ」
軌道ステーションのような環境を惑星規模で行なうつもりなのか。そんなバカげたことを一人でやれると本気で思っているなんてね……。もしできたとしても何十万年も掛かるだろう。そんな事が一万年を生き、寿命となっているあの男にできるはずないじゃないか。
『やはり君にはここで死んでもらうしかないようだね』
「たかがヴァンパイアの分際でこのワレに勝つつもりなのか? お前がいかに優秀なヴァンパイアであろうとも、これほどの科学技術の違いがあるワレを倒せるとでも思っておるのか」
高笑いする甲高い声が無線機から響く。
「まずはこの国の中枢から破壊してやる。そこだな、リビティナ!」
その言葉と同時に、お城に向かってビーム攻撃をしてきた。一発のビームで王国一のお城が無残に崩れ落ちる。
『何をしているんだい。お城が落ちれば勝ちだとでも思ったのかい。君こそ前時代的な考えをしてるじゃないか』
指揮を執るリビティナがお城に居るとでも思ったんだろうけど、それほど甘くはないよ。リビティナの指令でお城周辺の堀に隠されていた短距離ミサイルが火を噴く。
それと同時に、各部隊からの魔法攻撃が始まった。
「ガッハッハッ。リビティナよ、そのような古代兵器ごときではワレに傷すら付けられんぞ」
短距離弾道ミサイルを空中で迎撃し、魔法攻撃をその身で受けながらも前進してくる。戦いを楽しんでいるのか、走る事もなく平然と平原の塹壕を目指して歩いている。いかに自分の戦闘力を過信しているのか分かると言うものだよ。
しかしさっき迎撃されたミサイルには、チャフが混ぜ込まれていて戦場には小さな金属片が舞っている状態だ。これで電磁波のレーダーは機能低下しているはずだ。赤外線や透過能力の高い重力波レーダーは生きているから支障なく攻撃しているけど、細かな物は検知できなくなっているだろうね。戦いはこれからだよ。
「敵はこの王都を目指しているのか」
「真っ直ぐこちらに向かっております。明日の朝には姿を現すかと」
「魔王殿の言っていた通りになったな。全部隊にこの事を伝え、準備するようにと」
「はっ!」
伝令が去った後には、リビティナを含む三国の王が部屋に残る。
「途中の町や村は攻撃せず、この王都を先に攻め落とすつもりのようですな」
「予想通りだよ。ミシュロム共和国からの兵器も届いたし何とか戦えるさ」
「余は我が軍の本陣へ行くぞ。後の事は魔王殿にお任せする」
「通信機を忘れないでね。ボクはこの一番高い場所から指揮を執るよ」
「では魔王殿。私も本陣へ行きます。御武運を」
国王と大将軍がそれぞれの現地司令部へと向かった。この総司令部にはリビティナとイコルティ、それと伝令などの数人しか残っていない。
「いよいよ明日ですね、姉様」
「準備が間に合って良かったよ。何としても奴を倒さないとね」
「はい」
朝日が昇る頃。森に包まれた丘を越え、あの機動兵器がフライボードから降りて、王都前に広がる平原を眺める。
平原のあちらこちらに塹壕や岩壁が何重にも築かれており、選び抜かれた総数六万人にもなる精鋭の兵士が隠れている。
「王国の獣人共、無駄な事を」
そう呟くマイヤドベガの頭に直接声が届く。
『マイヤドベガ。教国では相当暴れたようだね』
「この声はリビティナか」
マイヤドベガは通信機のスイッチを入れ、オープン回線で話をする。
「リビティナよ、この頭に響く声は止めて通信機で話せと言ったであろう」
『通信機? そんな事をして君に居場所を教える訳にはいかないよ』
通信機で受信できる状態にしているけど、逆探知されないように送信はしない。
「まあ良いわ。リビティナよ、よくこれだけの獣人を集めてくれたな感謝するぞ。効率よく浄化できそうじゃ」
『なぜ君は、これほどの罪を犯そうとするんだい』
「罪だと。お前達がこの地で生きられるのは、人類が復活するまでの間であると最初から決められておる」
神を気取る、空の住人らしい考え方だね。
『人類復興計画と言っていたね。何十万年も前に決めたそんな事を、今のボク達が許すはずないじゃないか』
「リアアルタイルの復興計画は獣人達を人間の姿に戻すだけの古い計画だ。ワレの計画はもっと完璧なものだ」
そういや、真の人類復興計画とか言っていたね。
「リビティナよ、考えてもみよ。この世界には魔法という訳の分からんものが存在する。それに魔獣や姿形の異なる獣で溢れているではないか。地球にそんなものは存在せぬ。ワレはその地球を復活させたいのだよ」
この男は一体なにを言っているんだ。
「そのために、この惑星をリセットする。全ての生き物を根絶やしにし、テラフォーミングから始めるのだ」
『そんな事をしても、この星の魔素は無くならないよ』
この惑星だけでなく、おそらく太陽や近くの恒星を含むこの星域全体が魔素で覆われている。魔素がある限り、地球型の生物や人間がそのまま住み続けるのは無理な事だよ。
「それも簡単な事だ。この惑星の周囲全てをガラスで覆い、魔素粒子を全て抜き去るのだよ。その後に浄化した大気で満たせば、人類が生存できる環境が整う。今は無き地球の復活だ」
軌道ステーションのような環境を惑星規模で行なうつもりなのか。そんなバカげたことを一人でやれると本気で思っているなんてね……。もしできたとしても何十万年も掛かるだろう。そんな事が一万年を生き、寿命となっているあの男にできるはずないじゃないか。
『やはり君にはここで死んでもらうしかないようだね』
「たかがヴァンパイアの分際でこのワレに勝つつもりなのか? お前がいかに優秀なヴァンパイアであろうとも、これほどの科学技術の違いがあるワレを倒せるとでも思っておるのか」
高笑いする甲高い声が無線機から響く。
「まずはこの国の中枢から破壊してやる。そこだな、リビティナ!」
その言葉と同時に、お城に向かってビーム攻撃をしてきた。一発のビームで王国一のお城が無残に崩れ落ちる。
『何をしているんだい。お城が落ちれば勝ちだとでも思ったのかい。君こそ前時代的な考えをしてるじゃないか』
指揮を執るリビティナがお城に居るとでも思ったんだろうけど、それほど甘くはないよ。リビティナの指令でお城周辺の堀に隠されていた短距離ミサイルが火を噴く。
それと同時に、各部隊からの魔法攻撃が始まった。
「ガッハッハッ。リビティナよ、そのような古代兵器ごときではワレに傷すら付けられんぞ」
短距離弾道ミサイルを空中で迎撃し、魔法攻撃をその身で受けながらも前進してくる。戦いを楽しんでいるのか、走る事もなく平然と平原の塹壕を目指して歩いている。いかに自分の戦闘力を過信しているのか分かると言うものだよ。
しかしさっき迎撃されたミサイルには、チャフが混ぜ込まれていて戦場には小さな金属片が舞っている状態だ。これで電磁波のレーダーは機能低下しているはずだ。赤外線や透過能力の高い重力波レーダーは生きているから支障なく攻撃しているけど、細かな物は検知できなくなっているだろうね。戦いはこれからだよ。
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