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第12章 ラグナロク-神との戦い-
第127話 疫病
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一旦エルメスのお城まで戻って、対策を検討しよう。
里やヘレケルトスのお城とも通信をつないで、まずは現状を報告する。
「ナノマシン?」
「目に見えない小さな機械でね。この疫病の原因となった細かな砂粒だと思ってくれたらいいよ」
「それを空の神様がばら撒いていると……」
神の行為だと言っても俄かに信じられないだろうね。そんな中アルディアだけは理解を示してくれた。
「多分赤道にある軌道エレベーターを使っているんですね。宇宙空間から直接ナノマシンはばら撒けませんから」
「するとこの状況はいつまでも続き、徐々に北にも広がっていくと」
「空に居るあの者の仕業なら、そうなるだろうね」
一度テロ行為に及んだあの女が、そう簡単に中止するはずないからね。
「空の女神様をお止めすることは出来ないのでしょうか」
「あれは狂った神、邪神だと思っていたほうがいいよ。直接止める方法はないだろうね」
「僕にとっては母様なんです。話して分かってもらえないでしょうか」
色んな意見が出てこちらも混乱している。もしリビティナが空に上がって諫めようとしても、聞く耳は持たないだろうね。それにあの空間では魔法が使えない。もし乗り込めば宇宙空間に放り出されて死ぬのはこっちだ。
「あの……これは私が空の神様に会いに行こうと言ったからなのでしょうか」
アルディアが責任は自分にあるのではないかと困惑している。
「あの者は空から地上を監視している。いずれ人族が多くなっているのを知る事になる。結果は同じだよ」
アルディアは人族による世界統一が、この世界を発展させると考え神様に会おうと提案してきただけだ。でもそれは他の種族を根絶やしにすることじゃない。アルディアのせいではないと慰める。
「リビティナ様。疫病を防ぐ方法はあるのでしょうか」
「人間化を防ぐ方法はあるんだ。病気の元になる細かな砂を吸わなければいいんだよ」
「きめの細かい布を口と鼻に当てるという事でしょうか」
「そうだね。煙などを通さない布ならいいんだけど」
「着物に使っている絹織物なら使えると思います。水に濡らせば縮み、より密な布となりましょう」
里でも生産している、魔獣の吐く繊維から作り出した織物。絹のように細く艶のある繊維から反物が作られる。確かにあれならウイルスと同じ大きさのナノマシンを通さないマスクができるかもしれない。
「では、手持ちの着物を加工して、そのマスクという物を作ってみましょう」
「里でもいい物が作れないか研究してみようかのう」
エリーシアは着替え用の着物で試作品を作ってくれるらしい。里の職人には、兵士などが屋外で活動しても大丈夫な高性能マスクを検討してもらう。とりあえず里には反物の増産をしてもらうように指示をした。
「多分これから、大陸中で混乱が起こるだろう。まずはガゼノラ帝国に乗り込んで混乱を止めに行こうと思う」
「リビティナ様、それは危険です。国民を逃がすため武力侵攻を考えているとの情報があります」
ここエルメスには、魔国商業ギルドの本部が置かれていて各国の情報が集まる。帝国国境近くの町で軍馬や荷馬車の出入りが激しくなっているようだ。
族長だったゲルトランドによると帝都の軍が動き出す前段階で、既に皇帝の指令が出ているのだと言う。
「それならなおさらボクが直接帝都に行って、皇帝と話さないといけないよ」
「ならば、わしが手紙を書いておきましょう。今の皇帝はわしら一族の傍系じゃからな」
「それは助かるよ。戦争だけは避けたいからね」
今回は手荒な事になるかもしれないと、リビティナとイコルティ二人だけで行く事にする。
「イコルティ、君も魔術が使えるようになってきた。自分の身は自分で守れるね」
「はい、姉様」
穏便に話し合いをしたいけど、いざとなったら帝都の城を破壊してでも脱出しないといけない。
戦闘機に乗り向かった帝都は、森と沼に囲まれ高い城壁で守られた都市だった。確か十年ほど前に皇帝が代替わりし、帝都も遷都されている。
乗って来た戦闘機を森に隠し、一番大きな門の前に立つ。
「き、貴様ら何者だ!」
「我は魔国の魔王なり。皇帝に取り次いでもらおう」
魔王と聞いた門番が慌てて中の者に連絡する。しばらくすると、その門番が帰って来て恐る恐る返答を行なう。
「ま、魔王殿に置かれましては急な来訪。準備整うまで今しばらくお待ち願うようにと……」
「皇帝は会うと言っているのだな。ならば城に行かせてもらうぞ」
門を潜り、イコルティと一緒に門番の上を飛び越え、城へと向かった。門番が何か叫んでいるけど、そんなのは無視し城に一番近い門の前に立つ。城に直接入って行ってもいいけど、一応穏便に事を済ませたいからね。筋は通そう。
城に入る門には衛兵達が立ち並び、三叉槍を構える。
「皇帝に会いにきた。門を開けてもらおうか」
「魔国の者だな。まだ許可は出ておらん」
そう言って槍先をこちらに向けて来る。
「無駄な事はするな。事は一刻を争う。すぐさま皇帝に会わせよ」
その衛兵の目の前で巨大な火柱を発動させる。
「姉様、これが穏便にというものなのですか?」
うん、うん。この世界ではね。ほら、城から慌てて伝令が走って来ただろう。
「皇帝がお会いになります。馬車を用意致しますので、ここでお待ちください」
「ならば城に入らせてもらうぞ」
衛兵のいる城門を飛び越え、深い掘りの内部に建つ城の入り口へと飛んで行く。鎧を着た兵士が集まりリビティナを取り囲む中、入り口が開かれ城の内部へと入って行った。
里やヘレケルトスのお城とも通信をつないで、まずは現状を報告する。
「ナノマシン?」
「目に見えない小さな機械でね。この疫病の原因となった細かな砂粒だと思ってくれたらいいよ」
「それを空の神様がばら撒いていると……」
神の行為だと言っても俄かに信じられないだろうね。そんな中アルディアだけは理解を示してくれた。
「多分赤道にある軌道エレベーターを使っているんですね。宇宙空間から直接ナノマシンはばら撒けませんから」
「するとこの状況はいつまでも続き、徐々に北にも広がっていくと」
「空に居るあの者の仕業なら、そうなるだろうね」
一度テロ行為に及んだあの女が、そう簡単に中止するはずないからね。
「空の女神様をお止めすることは出来ないのでしょうか」
「あれは狂った神、邪神だと思っていたほうがいいよ。直接止める方法はないだろうね」
「僕にとっては母様なんです。話して分かってもらえないでしょうか」
色んな意見が出てこちらも混乱している。もしリビティナが空に上がって諫めようとしても、聞く耳は持たないだろうね。それにあの空間では魔法が使えない。もし乗り込めば宇宙空間に放り出されて死ぬのはこっちだ。
「あの……これは私が空の神様に会いに行こうと言ったからなのでしょうか」
アルディアが責任は自分にあるのではないかと困惑している。
「あの者は空から地上を監視している。いずれ人族が多くなっているのを知る事になる。結果は同じだよ」
アルディアは人族による世界統一が、この世界を発展させると考え神様に会おうと提案してきただけだ。でもそれは他の種族を根絶やしにすることじゃない。アルディアのせいではないと慰める。
「リビティナ様。疫病を防ぐ方法はあるのでしょうか」
「人間化を防ぐ方法はあるんだ。病気の元になる細かな砂を吸わなければいいんだよ」
「きめの細かい布を口と鼻に当てるという事でしょうか」
「そうだね。煙などを通さない布ならいいんだけど」
「着物に使っている絹織物なら使えると思います。水に濡らせば縮み、より密な布となりましょう」
里でも生産している、魔獣の吐く繊維から作り出した織物。絹のように細く艶のある繊維から反物が作られる。確かにあれならウイルスと同じ大きさのナノマシンを通さないマスクができるかもしれない。
「では、手持ちの着物を加工して、そのマスクという物を作ってみましょう」
「里でもいい物が作れないか研究してみようかのう」
エリーシアは着替え用の着物で試作品を作ってくれるらしい。里の職人には、兵士などが屋外で活動しても大丈夫な高性能マスクを検討してもらう。とりあえず里には反物の増産をしてもらうように指示をした。
「多分これから、大陸中で混乱が起こるだろう。まずはガゼノラ帝国に乗り込んで混乱を止めに行こうと思う」
「リビティナ様、それは危険です。国民を逃がすため武力侵攻を考えているとの情報があります」
ここエルメスには、魔国商業ギルドの本部が置かれていて各国の情報が集まる。帝国国境近くの町で軍馬や荷馬車の出入りが激しくなっているようだ。
族長だったゲルトランドによると帝都の軍が動き出す前段階で、既に皇帝の指令が出ているのだと言う。
「それならなおさらボクが直接帝都に行って、皇帝と話さないといけないよ」
「ならば、わしが手紙を書いておきましょう。今の皇帝はわしら一族の傍系じゃからな」
「それは助かるよ。戦争だけは避けたいからね」
今回は手荒な事になるかもしれないと、リビティナとイコルティ二人だけで行く事にする。
「イコルティ、君も魔術が使えるようになってきた。自分の身は自分で守れるね」
「はい、姉様」
穏便に話し合いをしたいけど、いざとなったら帝都の城を破壊してでも脱出しないといけない。
戦闘機に乗り向かった帝都は、森と沼に囲まれ高い城壁で守られた都市だった。確か十年ほど前に皇帝が代替わりし、帝都も遷都されている。
乗って来た戦闘機を森に隠し、一番大きな門の前に立つ。
「き、貴様ら何者だ!」
「我は魔国の魔王なり。皇帝に取り次いでもらおう」
魔王と聞いた門番が慌てて中の者に連絡する。しばらくすると、その門番が帰って来て恐る恐る返答を行なう。
「ま、魔王殿に置かれましては急な来訪。準備整うまで今しばらくお待ち願うようにと……」
「皇帝は会うと言っているのだな。ならば城に行かせてもらうぞ」
門を潜り、イコルティと一緒に門番の上を飛び越え、城へと向かった。門番が何か叫んでいるけど、そんなのは無視し城に一番近い門の前に立つ。城に直接入って行ってもいいけど、一応穏便に事を済ませたいからね。筋は通そう。
城に入る門には衛兵達が立ち並び、三叉槍を構える。
「皇帝に会いにきた。門を開けてもらおうか」
「魔国の者だな。まだ許可は出ておらん」
そう言って槍先をこちらに向けて来る。
「無駄な事はするな。事は一刻を争う。すぐさま皇帝に会わせよ」
その衛兵の目の前で巨大な火柱を発動させる。
「姉様、これが穏便にというものなのですか?」
うん、うん。この世界ではね。ほら、城から慌てて伝令が走って来ただろう。
「皇帝がお会いになります。馬車を用意致しますので、ここでお待ちください」
「ならば城に入らせてもらうぞ」
衛兵のいる城門を飛び越え、深い掘りの内部に建つ城の入り口へと飛んで行く。鎧を着た兵士が集まりリビティナを取り囲む中、入り口が開かれ城の内部へと入って行った。
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