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第11章 空の神
第123話 移民政策1
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リビティナは、南部地方に移民してきた人の人族化を断続的に進めている。希望する人全員を人族に変える目途も立ってきた。
でも気になるのは教国側で移民を禁止された人達だ。
「どうもヘブンズ教国の町や村で争いが起きているようだね」
「魔国に入国した商人の話ですと、領主に抗議して内戦状態になっている町もあるそうですな」
特に教国の東部地方の争いが激しいようで、流通や経済にも影響が出ているらしい。
「強硬派と呼ばれる教団が、国の方針に反発しているようで移民者を支援しているとか」
「マリアンヌの事を女神様と慕っている人達ですわね。大きな争いにならなければ良いのですが」
それにしても強硬派というのは、魔国に兵を送ったかと思えば、今度は眷属になるのを支援するなど極端だね。
今のところ軍隊が出動するほどじゃないそうだけど、魔国に起因した争いだからね。他国の事とはいえ、早く収まってほしいものだよ。
その願いも虚しく、混乱は拡大する一方のようだ。教国はこの問題に関して魔国と協議したいと言ってきた。
今回は主要閣僚と文官の役人も連れて、ヘブンズ教国の中央付近にある第二の都市、イライヤで協議が行なわれた。
「魔王殿、遠路おいでいただきありがとうございます」
「セイマール首相。再度移民を許可するつもりなのかな」
それに対しては「いいえ」と回答する。国の方針を短期間に何度も変える訳にはいかないという事のようだね。
「今回の提案としまして、東部地方の一部を人族の自治区として、魔国と共同管理したいと思っております」
こりゃまた大胆な案を考えたものだ。
魔国国境に近い東部地方の四分の一ほどの土地を地図上に示す。
「魔王殿には、この自治区において希望する住民を人族へと変えていただきたい」
「人族になりたくないと言う住民はどうするつもりなんだ」
ネイトスの言葉に対して、セイマール首相は魔国の協力を仰ぐ。
「自治区外へと移動してもらいます。その移動にも魔国の協力をお願いしたいのです」
今までも魔国に統合された地域では、魔国に残りたくない者を他国に移動させた実績がある。大量の馬車を使い、多少の混乱はあるものの、無事に移動させている。
「大量の住民の移動には、相当の労力が必要です。しかも魔王様に自治区内で人族化させるとは。混乱を収めるためとはいえ、虫が良すぎるのではないでしょうか」
エリーシアは魔国に何のメリットもない案では交渉できないと言う。
「自治区とした地区については、近い将来魔国に譲渡するつもりでおります」
その言葉にエリーシアが絶句した。それだと逆に教国にとってのメリットが何もなくなるからね。
「この案は教皇様が出された案で、早期に混乱を収拾する事が我が国の利益になると考えております」
内戦の火種はできるだけ早く消しておきたいということか。
急な申し出でもあり魔国側で協議したいと休憩を取ってもらい、別の会議室へと移動する。
「エリーシアとネイトスはどう思う」
「戦争によらず国土を譲渡するなど、あり得ない事ですわね。他に狙いがあるのでしょうか」
「人族になりたいと言っているのは、強硬派の教団だ。それを完全に分離して魔国に編入させようとしてるんじゃないでしょうかね」
移民の事に口出ししてこなかった教皇が出してきた案なら、宗教絡みだろうね。今までも強硬派というのは、好き勝手な事をして教皇の反感を買っているそうだ。勝手に魔国に軍を送った教団だし、問題も多いんだろう。
「土地を渡すから、厄介事を引き受けてくれという事ですかね」
自治区として示した土地はそれほど広くない。政敵を排除できるなら安いと考えているんだろう。
前にマリアンヌから聞いた、この地域を管理する大司教の住む町が自治区内にあった。魔国領になった時点で、その大司教を解任する腹積もりなんだろうね。
こちらの考えをまとめた上で、再度セイマール首相と向き合う。
「そちらが提案した人族の自治区案、魔国も賛同しよう」
「魔王殿、ありがとうございます」
「首相。つきましては、魔国に譲渡する時期を明記していただきたいのですが」
「三年以内とさせていただきたい。混乱が収まれば早期に譲渡致しましょう」
自治区とする手続きは簡単だそうだ。町の境界線を連ねて区分し、魔国との移民を禁止したまま国内の移動として処理するそうだ。
自治区から魔国への移動は自治区内で決めると言うから、事実上魔国への移住が可能となる。その後は国境を画定し、新たな国境検問所を開設する運びになるようだね。
「住民の移動には、我らの技術を使わせてもらいます。一部教国内に魔国軍が入りますが、よろしいでしょうか」
「東部地方であれば結構です。こちらも協力は惜しみません」
エリーシアの提案も受け入れられ、教国と共同で管理する自治区が設立された。その地域の住民の移動、町や村の統廃合を急ピッチで行なう事となった。
でも気になるのは教国側で移民を禁止された人達だ。
「どうもヘブンズ教国の町や村で争いが起きているようだね」
「魔国に入国した商人の話ですと、領主に抗議して内戦状態になっている町もあるそうですな」
特に教国の東部地方の争いが激しいようで、流通や経済にも影響が出ているらしい。
「強硬派と呼ばれる教団が、国の方針に反発しているようで移民者を支援しているとか」
「マリアンヌの事を女神様と慕っている人達ですわね。大きな争いにならなければ良いのですが」
それにしても強硬派というのは、魔国に兵を送ったかと思えば、今度は眷属になるのを支援するなど極端だね。
今のところ軍隊が出動するほどじゃないそうだけど、魔国に起因した争いだからね。他国の事とはいえ、早く収まってほしいものだよ。
その願いも虚しく、混乱は拡大する一方のようだ。教国はこの問題に関して魔国と協議したいと言ってきた。
今回は主要閣僚と文官の役人も連れて、ヘブンズ教国の中央付近にある第二の都市、イライヤで協議が行なわれた。
「魔王殿、遠路おいでいただきありがとうございます」
「セイマール首相。再度移民を許可するつもりなのかな」
それに対しては「いいえ」と回答する。国の方針を短期間に何度も変える訳にはいかないという事のようだね。
「今回の提案としまして、東部地方の一部を人族の自治区として、魔国と共同管理したいと思っております」
こりゃまた大胆な案を考えたものだ。
魔国国境に近い東部地方の四分の一ほどの土地を地図上に示す。
「魔王殿には、この自治区において希望する住民を人族へと変えていただきたい」
「人族になりたくないと言う住民はどうするつもりなんだ」
ネイトスの言葉に対して、セイマール首相は魔国の協力を仰ぐ。
「自治区外へと移動してもらいます。その移動にも魔国の協力をお願いしたいのです」
今までも魔国に統合された地域では、魔国に残りたくない者を他国に移動させた実績がある。大量の馬車を使い、多少の混乱はあるものの、無事に移動させている。
「大量の住民の移動には、相当の労力が必要です。しかも魔王様に自治区内で人族化させるとは。混乱を収めるためとはいえ、虫が良すぎるのではないでしょうか」
エリーシアは魔国に何のメリットもない案では交渉できないと言う。
「自治区とした地区については、近い将来魔国に譲渡するつもりでおります」
その言葉にエリーシアが絶句した。それだと逆に教国にとってのメリットが何もなくなるからね。
「この案は教皇様が出された案で、早期に混乱を収拾する事が我が国の利益になると考えております」
内戦の火種はできるだけ早く消しておきたいということか。
急な申し出でもあり魔国側で協議したいと休憩を取ってもらい、別の会議室へと移動する。
「エリーシアとネイトスはどう思う」
「戦争によらず国土を譲渡するなど、あり得ない事ですわね。他に狙いがあるのでしょうか」
「人族になりたいと言っているのは、強硬派の教団だ。それを完全に分離して魔国に編入させようとしてるんじゃないでしょうかね」
移民の事に口出ししてこなかった教皇が出してきた案なら、宗教絡みだろうね。今までも強硬派というのは、好き勝手な事をして教皇の反感を買っているそうだ。勝手に魔国に軍を送った教団だし、問題も多いんだろう。
「土地を渡すから、厄介事を引き受けてくれという事ですかね」
自治区として示した土地はそれほど広くない。政敵を排除できるなら安いと考えているんだろう。
前にマリアンヌから聞いた、この地域を管理する大司教の住む町が自治区内にあった。魔国領になった時点で、その大司教を解任する腹積もりなんだろうね。
こちらの考えをまとめた上で、再度セイマール首相と向き合う。
「そちらが提案した人族の自治区案、魔国も賛同しよう」
「魔王殿、ありがとうございます」
「首相。つきましては、魔国に譲渡する時期を明記していただきたいのですが」
「三年以内とさせていただきたい。混乱が収まれば早期に譲渡致しましょう」
自治区とする手続きは簡単だそうだ。町の境界線を連ねて区分し、魔国との移民を禁止したまま国内の移動として処理するそうだ。
自治区から魔国への移動は自治区内で決めると言うから、事実上魔国への移住が可能となる。その後は国境を画定し、新たな国境検問所を開設する運びになるようだね。
「住民の移動には、我らの技術を使わせてもらいます。一部教国内に魔国軍が入りますが、よろしいでしょうか」
「東部地方であれば結構です。こちらも協力は惜しみません」
エリーシアの提案も受け入れられ、教国と共同で管理する自治区が設立された。その地域の住民の移動、町や村の統廃合を急ピッチで行なう事となった。
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