転生ヴァンパイア様の引きこもりスローライフ。お暇なら国造りしませんか

水瀬 とろん

文字の大きさ
上 下
183 / 212
第11章 空の神

第122話 人族化2

しおりを挟む
「問題は、これだけ多くの人数をどのようにして人族化するのかという事です」

 眷属化後すぐに人族化すると体力が持たない。中一日おいてから人族になってもらうから丸三日間は必要だ。
 四千人もの人が眷属になりたいと待機している。里のように三十人程の少人数で人族化すると何百日も掛かってしまうよ。

 人族に変われた眷属達とのんびり里で暮らせるようになったのに、里を離れて南部地方に通うなんて嫌なんだからね。

「ボク達は夜でも活動できるから、一気に人族化したいんだよ」
「千人規模のベッドを用意するのも大変でして……」

 スレイブンも悩んでいるようだけど、エルメス駐在の軍を使って簡易ベッドとテントを用意すればいいじゃんか。

「軍の装備をほとんど使いますと、いざという時この都市の守りが手薄になってしまいますので……」
「そんなの大丈夫だよ。短期間で終わらせるんだからさ」

 エルメスのお城近くの平原で、テントとベッドを用意してもらうようにした。
 一日五百人を人族化すれば、一週間ぐらいで終わっちゃうからね。

 そう、そんな呑気な事を考えていた時期もあったね……。

「もう無理~、無理だよ~」
「姉様……頑張ってください……」
「そう言うイコルティだって、もうヘロヘロじゃないか」
「もうアゴが疲れて……それに貧血気味で」

 疲れ知らずのヴァンパイアであっても、昼夜を問わずやってくる移民者を流れ作業のように人族化する作業は重労働だった。そう、ブラック……ブラック企業だよ~。
 最初こそ何百人も人族化していったけどペースはどんどん落ちて、十日経っても処理しきれないでいる。
 イコルティも血を与え過ぎたのか、頬もこけ目の下にクマができている。そんなヴァンパイアの姿なんて見てられないよ。

「リビティナ様、一旦休止いたしましょう。これではお体が持ちませんぞ」
「今来こられている移民の方は私が説得しますので、ここで中止しましょう」

 マリアンヌにまで心配をかけているようだし、仕方ないか。二千人以上は人族化できたし、今回はここまでとしよう。
 そう思っていると、里からエリーシアがプライベートジェット機に乗ってエルメスのお城までやって来た。

「リビティナ様。教国が移民を中止したいと申し込んできました」

 友好条約を結んだ際、双方で自由に移民を受け入れると決めていた。これは友好関係にある王国とも結ばれている。元ノルキア帝国のように流出を防ぐ政策をしていた国もあるけど、獣人三国では普通の事のようだ。
 教国からは現在までに八千人程が魔国へと流入していて、今後も増えていくと予想される。

「ヘブンズ教国の方が経済的に裕福ですので、これほどの移民が発生するとは思っていなかったのでしょう」
「経済じゃなくて、神様の姿になりたいと言う宗教的な思いからだからね」

 イコルティには時間を掛けてもいいから、残っている二百人ほどの人族化を終わらせるように言っておく。教国は急いでいるようで、詳しく話を聞くためにエリーシアを抱き上げ、教国首都のハイメルドへと飛んだ。

「魔王殿、ご足労いただきありがとうございます」

 急な訪問であったけど、すぐに話し合いの場をセットしてくれて、セイマール首相と本題に入る。

 五百万人以上もの人口を持つ教国。たかが八千人程の移民で、それほど問題になる事もないと思うんだけどね。エリーシアも難色を口にする。

「一年も経たずに条約改訂とはいかがなものでしょうか」
「移民の多くは東方地域からの流出なのです。現在この地方の治安が悪くなり、こちらも苦慮しておりまして……」

 平均的に流出するならいいけど、村人の半数が一気に居なくなった所もあるようだね。急速な減少で人手が足りなくなり、魔獣の被害も出ているようだ。
 教国の実質的な指導者である教皇はというと、信者が魔国に移っても信者であり続けるので、問題ないと考えているようだね。単に行政府の問題だとして首相に丸投げしているそうだ。

「この先、永遠に移住を禁止するわけではありませんで、少なくなった村の統合を進める間だけでも……」

 とはいえ、年単位で移住できない事になりそうだ。こちらとして移民は大歓迎だけど、それで教国が混乱するというなら一時的に禁止するのもやむを得ないかな。
 貿易や友好条約を破棄しようと言うんじゃないし、今回は相手の言う事をそのまま飲んでもいいだろうね。

「魔王殿。理解していただき、ありがとうございます。各領主に連絡し二週間後から移民を止めさせていただきます」

 準備があるから今すぐという訳じゃないようだ。しかしこの政策変更が後々の争いの種になってしまう。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

処理中です...