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第11章 空の神
第113話 眷属化公開1
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マリアンヌの話を聞こうと、リビティナはエルメスのお城まで飛ぶ。
「ねえ、マリアンヌ。君にも理解してほしいんだけど、眷属になってもヴァンパイアの力や神の力が手に入る訳じゃないんだよ」
「はい、アタシは神様の姿になれれば、それだけでいいんです」
「君の苦しむ姿を、大勢の人の前で見せる事になるんだ。本当にいいのかい」
「はい。眷属になるありのままを見てもらいます」
両こぶしを握り、真っ直ぐにリビティナの目を見てくる。決意は固いようだね。
魔国への移住を希望する住民を阻止している教団とも話ができている。国境に近い町にある教会内で眷属化をするようにと言ってきた。
「それにね。手枷と足枷を付けろと言っているんだ」
手首と足首に鉄製のリングを取り付け、そのカギを教団が預かると言うのだ。
「マリアンヌが別の人物にすり替わるのを防止したいようなんだ。囚人みたいな扱いになっちゃうんだよ」
「結構ですよ。それで相手が納得するなら構いません」
変な情報やデマが広がらないためには、しっかりと検証できる方がいいんだけど……。マリアンヌには辛い思いをさせる事になるんじゃないかと心配だよ。
その後、眷属化を公開する日が決まり、マリアンヌを連れて馬車で指定された教会へ赴く。同行するのはネイトスとアルディア。
教会周辺には魔国移住を希望する住民と、インチキを暴こうと集まった教団関係者で騒然となっていた。
用意ができたようだね。馬車を降り打ち合わせをしていたネイトスが戻って来た。
「マリアンヌ。気持ちをしっかり持って頑張ってきてね」
「はい、アルディアさん」
馬車には御車とアルディアを残し、魔王然たるリビティナとネイトスがマリアンヌを真ん中に、両脇を固めつつ教会の玄関前へと進む。
教会前に設置された壇上にネイトスが立ち、今回の趣旨を皆の前で説明する。
「我ら魔国と眷属について誤った情報が広がっている。今回、魔王様立ち会いの元、実際に眷属化を行なう。その上で眷属となるかの決断を下すように」
「我に忠誠を誓い、魔国のため努力する者のみが眷属となれる。邪な心を持つ者はここより立ち去るがよい」
リビティナが一歩前に出て、周囲に集まる人々をひと睨みする。その言葉に下を向く者もいるようだ。
「では、こちらに」
この地域を管理する司教に案内されて教会内部に入る。前方の祭壇にはベッドが用意されていて、その手前には礼拝のための長椅子が何列も設置されている。検証する者達が座るようだけど、教会前に集まる全員分の席はないようだね。
司教が祭壇の手前で振り向き、マリアンヌに問う。
「神の元、嘘偽りのなき事ここに誓えるか」
「はい、誓います」
「では、こちらで手足にリングを付けてもらおう」
隣の部屋で身体検査と枷を取り付けるようだ。シスターと共にマリアンヌが部屋に案内される。
「その者は、お前達と同族のヘブンズ教の信者だ。丁重に扱え」
「魔王殿。我らは信者を守る事を第一としています。手荒な事は致しません」
武闘派と呼ばれる一派ではあるが、神を敬い信者の事を考える聖職者。その言葉に嘘はないようだ。その後混乱もなく、教会の中に住民と教団関係者が入って来て着席していく。中に入り切れない者達が、窓から中の様子を見逃すまいと覗き見ている。
部屋から出て来たマリアンヌは、魔除けの模様が入った白いガウンに着替えていて、手足には黒い鉄のリングが付けられていた。司教に付き添われ、一段高い祭壇に上がりリビティナと向かい合う。
「アタシは魔王様に忠誠を誓い、魔国のために働く事を約束いたします」
「良かろう。マリアンヌを我が眷属としよう」
仰々しく皆の前で宣言し、マリアンヌの首筋に牙を立て血を吸う。ウッと呻くマリアンヌ。その行為に監視者達が騒めいた。
「苦しむことになるけど、ボクが傍に付いているからね」
「はい、ありがとうございます」
マリアンヌの耳元でそっと囁き、優しくベッドに寝かせる。
この祭壇のベッド横にはリビティナとネイトスの席が用意され、教団代表の司教が監視役としてベッドの反対側に座る。
しばらくすると、ベッドの上でマリアンヌが激しく苦しみだし、ネイトスが体を押さえる。その様子を見て礼拝堂に座る教団関係者が騒ぎ出した。
「これは、悪魔憑きの症状である。退魔師部隊、前に出て信者を守れ」
壁際に立ち槍や杖を手に持った者達が、ベッドがある祭壇の前に居並ぶ。肩と袖口だけが赤い黒いロングコートに身を固め、銀色に輝く十字のペンダントを首にかけている者達。
これが教団の戦闘部隊か。対人だけでなく対悪魔的な意味もあるのだろう、一部の者は魔除けの仮面を付け、黒の宝石を手に何か呪文のようなものを唱える。
後方の信者達を守るように祭壇上のベッドに向かい武器を構えた。
「静まれ! そこより前に出る事は、この魔王が許さぬぞ!」
一喝しベッドの前に立つ。退魔師部隊と呼ばれた者達がリビティナの声にビクリと体を震わせる。
魔王と呼ばれる存在を前に、引かずに武器を構え続けられるのは日頃の鍛錬の賜物といったところか。中にはパニクり杖を振りかざし祭壇に上がろうとする若年者もいるようだが、リビティナが殺意のこもった目を向けると腰砕けとなり床に座り込んでしまった。
睨み合っている間もマリアンヌは苦しみ続け、うめき声が礼拝堂に響く。危険だから下がるようにと、教団関係者が長椅子に座る住民に言うが、住民達は前が見えないと押し問答をしている。
「退魔師達よ。私がここより祈りを捧げるゆえ控えるように」
祭壇にいた司教が前に出て、騒ぎ立てぬようにと皆を諭す。
その言葉に退魔師達が最前列で片膝を突くが、武器は手に持ったままだ。二名だけが祭壇に上がり司教の両脇に立つ形となった。
騒ぎが収まった頃、マリアンヌの容態も落ち着き、荒い息はするものの暴れる事はなくなった。
「ねえ、マリアンヌ。君にも理解してほしいんだけど、眷属になってもヴァンパイアの力や神の力が手に入る訳じゃないんだよ」
「はい、アタシは神様の姿になれれば、それだけでいいんです」
「君の苦しむ姿を、大勢の人の前で見せる事になるんだ。本当にいいのかい」
「はい。眷属になるありのままを見てもらいます」
両こぶしを握り、真っ直ぐにリビティナの目を見てくる。決意は固いようだね。
魔国への移住を希望する住民を阻止している教団とも話ができている。国境に近い町にある教会内で眷属化をするようにと言ってきた。
「それにね。手枷と足枷を付けろと言っているんだ」
手首と足首に鉄製のリングを取り付け、そのカギを教団が預かると言うのだ。
「マリアンヌが別の人物にすり替わるのを防止したいようなんだ。囚人みたいな扱いになっちゃうんだよ」
「結構ですよ。それで相手が納得するなら構いません」
変な情報やデマが広がらないためには、しっかりと検証できる方がいいんだけど……。マリアンヌには辛い思いをさせる事になるんじゃないかと心配だよ。
その後、眷属化を公開する日が決まり、マリアンヌを連れて馬車で指定された教会へ赴く。同行するのはネイトスとアルディア。
教会周辺には魔国移住を希望する住民と、インチキを暴こうと集まった教団関係者で騒然となっていた。
用意ができたようだね。馬車を降り打ち合わせをしていたネイトスが戻って来た。
「マリアンヌ。気持ちをしっかり持って頑張ってきてね」
「はい、アルディアさん」
馬車には御車とアルディアを残し、魔王然たるリビティナとネイトスがマリアンヌを真ん中に、両脇を固めつつ教会の玄関前へと進む。
教会前に設置された壇上にネイトスが立ち、今回の趣旨を皆の前で説明する。
「我ら魔国と眷属について誤った情報が広がっている。今回、魔王様立ち会いの元、実際に眷属化を行なう。その上で眷属となるかの決断を下すように」
「我に忠誠を誓い、魔国のため努力する者のみが眷属となれる。邪な心を持つ者はここより立ち去るがよい」
リビティナが一歩前に出て、周囲に集まる人々をひと睨みする。その言葉に下を向く者もいるようだ。
「では、こちらに」
この地域を管理する司教に案内されて教会内部に入る。前方の祭壇にはベッドが用意されていて、その手前には礼拝のための長椅子が何列も設置されている。検証する者達が座るようだけど、教会前に集まる全員分の席はないようだね。
司教が祭壇の手前で振り向き、マリアンヌに問う。
「神の元、嘘偽りのなき事ここに誓えるか」
「はい、誓います」
「では、こちらで手足にリングを付けてもらおう」
隣の部屋で身体検査と枷を取り付けるようだ。シスターと共にマリアンヌが部屋に案内される。
「その者は、お前達と同族のヘブンズ教の信者だ。丁重に扱え」
「魔王殿。我らは信者を守る事を第一としています。手荒な事は致しません」
武闘派と呼ばれる一派ではあるが、神を敬い信者の事を考える聖職者。その言葉に嘘はないようだ。その後混乱もなく、教会の中に住民と教団関係者が入って来て着席していく。中に入り切れない者達が、窓から中の様子を見逃すまいと覗き見ている。
部屋から出て来たマリアンヌは、魔除けの模様が入った白いガウンに着替えていて、手足には黒い鉄のリングが付けられていた。司教に付き添われ、一段高い祭壇に上がりリビティナと向かい合う。
「アタシは魔王様に忠誠を誓い、魔国のために働く事を約束いたします」
「良かろう。マリアンヌを我が眷属としよう」
仰々しく皆の前で宣言し、マリアンヌの首筋に牙を立て血を吸う。ウッと呻くマリアンヌ。その行為に監視者達が騒めいた。
「苦しむことになるけど、ボクが傍に付いているからね」
「はい、ありがとうございます」
マリアンヌの耳元でそっと囁き、優しくベッドに寝かせる。
この祭壇のベッド横にはリビティナとネイトスの席が用意され、教団代表の司教が監視役としてベッドの反対側に座る。
しばらくすると、ベッドの上でマリアンヌが激しく苦しみだし、ネイトスが体を押さえる。その様子を見て礼拝堂に座る教団関係者が騒ぎ出した。
「これは、悪魔憑きの症状である。退魔師部隊、前に出て信者を守れ」
壁際に立ち槍や杖を手に持った者達が、ベッドがある祭壇の前に居並ぶ。肩と袖口だけが赤い黒いロングコートに身を固め、銀色に輝く十字のペンダントを首にかけている者達。
これが教団の戦闘部隊か。対人だけでなく対悪魔的な意味もあるのだろう、一部の者は魔除けの仮面を付け、黒の宝石を手に何か呪文のようなものを唱える。
後方の信者達を守るように祭壇上のベッドに向かい武器を構えた。
「静まれ! そこより前に出る事は、この魔王が許さぬぞ!」
一喝しベッドの前に立つ。退魔師部隊と呼ばれた者達がリビティナの声にビクリと体を震わせる。
魔王と呼ばれる存在を前に、引かずに武器を構え続けられるのは日頃の鍛錬の賜物といったところか。中にはパニクり杖を振りかざし祭壇に上がろうとする若年者もいるようだが、リビティナが殺意のこもった目を向けると腰砕けとなり床に座り込んでしまった。
睨み合っている間もマリアンヌは苦しみ続け、うめき声が礼拝堂に響く。危険だから下がるようにと、教団関係者が長椅子に座る住民に言うが、住民達は前が見えないと押し問答をしている。
「退魔師達よ。私がここより祈りを捧げるゆえ控えるように」
祭壇にいた司教が前に出て、騒ぎ立てぬようにと皆を諭す。
その言葉に退魔師達が最前列で片膝を突くが、武器は手に持ったままだ。二名だけが祭壇に上がり司教の両脇に立つ形となった。
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